佐天涙子のお姉ちゃん   作:シーボーギウム

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感想評価ありがとうございます。

話もうちょっと長くしたいんだけどなぁ……


幻想御手(レベルアッパー)
引き金(トリガー)


虚空爆破(グラビトン)?」

「ああ」

 

 首を傾げる紅翔に資料を見せる。私は先日の下着事件の埋め合わせとして紅翔に飯を奢っていた。因みにかなり高い焼肉屋だ。

 

「飯食ってる時に仕事の話は嫌だなぁ」

「我慢してくれ。これから私は忙しくなるから話すタイミングが無くなると困るんだ」

 

 溜息をつきながら、紅翔は一度箸を置いて資料に目を通す。すると次第に表情が険しくなっていく。私含め、何だかんだ裏がある身の上な私達懲罰部隊の中で、彼は唯一完全に一般人の少年だ。根も善良で、懲罰部隊というよりは白井黒子達の方が精神的には近いだろう。

 

「被害者に風紀委員が多いですね」

「狙いは風紀委員と見てほぼ間違いないだろう。偶然と言うには都合が良すぎる」

「で、おとり捜査でもしろと?犯人の目星はついてるんですか?」

「こいつだ」

 

 もう一枚資料を渡す。介旅初矢という名前がその資料には刻まれている。しかし紅翔の表情は思わしくない。理由はまぁ、

 

「異能力者じゃないですか」

 

 やはりレベルだろう。理由は幻想御手(レベルアッパー)なのだが、まだ問題にもなっていない上に裏付けも無いんじゃ情報は伝えられない。

 その為、別の理由を伝える。

 

「事故現場近くの監視カメラに必ずそいつが写ってる。レベルの件はどういう理屈かは分からないが、犯人じゃないにしろ重要参考人だ」

「なるほどねぇ…………」

 

 しばらく資料を眺めてから、紅翔は再び焼肉に手を付け始めた。

 

「分かりました。こっちで片付けておきます」

「ありがとう。今後もいくつか頼むかもしれない」

「いや、それはユーリカ先輩とか副委員長とか委員長に頼んで下さいよ」

「アイツらは人格に問題がある」

「アンタが言うかそれ……」

 

 あ?こらどういうことだそれ詳しく説明しやがれッ!!

 

 

 

 

 

────────────

 

 

 

 

 

 翌日。

 

(さて、どうしたもんかなー。犯人君見つけないことには始まんないんだけど……)

 

 紅翔は第7学区を行く宛てもなく彷徨っていた。その腕には風紀委員の腕章が付けられている。

 バンクを見ることが出来れば楽になるが、バンクは覗けない。状況証拠だけでは許可が降りないし、許可無しに覗くにしてもバンクをハッキングできるほどの技術は彼に無いからだ。

 

(これで釣れれば楽なんだけどなぁ……)

 

 腕章を見ながら紅翔ははぁ、とため息をつきながら紅翔は周囲を警戒する。

 余談になるが、彼は光に位置する場所にいる存在だが身に付けた技術はそのほとんどが暗部由来のモノだ。それ故、闇に近いもの程彼の警戒には引っかかりやすい。だが逆に、闇から遠い存在は意図的に特定の人物を探している場合でもなければ、彼は無意識に意識から外れるようにしている。

 結果、

 

「あれ?無紙君何で風紀委員の腕章付けてるんですか?」

「ウェッ!?」

 

 彼は知り合い(初春)を見逃した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「知りませんでしたよーまさか無紙君が風紀委員だったなんて!」

「ははは……」

 

 乾いた笑いを零しながら、内心紅翔は焦りまくっていた。

 紅翔は初春、更に言えば涙子とも同じ柵川中学の同じクラスだ。彼の学力ならもう少し上を狙えるのだが、零子からの頼みで入学したのだ。

 

『涙の、妹の護衛役やってくれ』

『は?』

 

 何だかんだそれを請け負った紅翔だが、涙子とは関わりをほとんど持っていない。それこそただのクラスメイトのままだ。理由はその方が護衛が楽だからだ。下手に関わりを持つより、関わり無しに少し遠くでいた方が狙う輩も見つけやすいのである。

 

(ヤバいな……確実に初春さん経由でバレるだろこれ……)

「そう言えば何で支部が違うんですか?」

「小学校の時点で別の支部に所属してたからそのままそこに籍を置いてるんだ」

「なるほど、でも遠かったりしないんですか?」

「いや、もう慣れたよ」

 

 ほぼ諦めながら紅翔は適当なシナリオを初春に伝える。

 懲罰部隊は腕章を持っていない。代わりに与えられるのが手帳だ。初春のような一般の風紀委員に与えられる懲罰部隊に関する情報のほとんどはダミーだ。懲罰部隊の主な役割は通常の治安維持ではなく違法な実験、それも普通の手段ではどうやっても知り得ないようなものを止めるというものだ。相手取るのも当然そういった輩になる。だから腕章があるとかえって邪魔になるのだ。

 

「今日はパトロールを?」

「ああ、虚空爆破の件で」

「そういう事ですか……」

 

 紅翔の言葉に、初春の表情が分かりやすく暗くなる。それを見て、紅翔は自分の持つ情報を伝えるべきか悩んだ。彼の持つ情報はまだ公開するべきでない情報だ。状況証拠だけで犯人と決めつけ行動するのは、本来ならよろしくない。懲罰部隊としての経験が犯人は介旅であると紅翔に告げてはいるが、確たる証拠が無いのでは信用が無いのだ。

 

(いや、多少情報を隠しつつ伝えてみるか……)

「初春さん、今回の事件の被害者のデータって支部にあるかな?」

「へ?はい、ありますよ。何なら今から見せましょうか?」

「え?」

 

 初春はゲーム端末をカバンから取り出してそれを操作し始める。「何を……」と疑問を持った紅翔だが、初春に見せられた端末の画面を見て驚愕する。

 

「え?は?待っ、これゲーム端末だよな?」

「そうですよ?」

(いやゲーム端末で風紀委員のデータベースハッキングするなんて無理だろ!?)

 

 どんな技術してんだ!?と驚く彼だが、そこでふと、一つの考えが飛来した。

 

「なぁ、もしかしてバンクとかも見れる?」

 

 

 

 

 

────────────

 

 

 

 

 

「もしもし、ユーリカ先輩ですか?学舎の園に有名なケーキ店あるじゃないですか、あそこのケーキ全種類、今から送る住所に送って下さい」

『へ?何で唐突に?』

「お願いしますね」

『え?ちょ待っ』

 

 紅翔は電話を一方的に切ると、ビルの上から眼下の高校の校門を見下ろす。そこから、イヤホンと眼鏡を付けた青年がトボトボと出てきた。

 

「ははっ!これは初春さんに足を向けられない……なっ!」

 

 紅翔がビルから跳び降りる。

 

「3番、4番、起動」

『声紋を確認。3番、4番の起動を開始します』

 

 そんな音声と共に、彼の足が足首から黒い装置に包まれていく。下半身全てが黒い装置で包まれたと同時に紅翔は着地した。

 

「3番、4番、停止」

『了解。3番、4番を停止します』

「さて……」

 

 装置が収納されていくのを一瞥しながら、視線の先の介旅を睨みつける。

 

犯罪者(クズ)狩りの始まりだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 介旅初矢は、虚空爆破事件の犯人だ。彼は同級生の不良にイジメられた苛立ちを風紀委員にぶつけて発散していた。

 到底、許される行為ではない。

 

(あれは…………)

 

 しかし今のところ、彼を咎める者はいない。結果、彼は増長し、被害者は増え続けていた。

 そんな彼が、新たなターゲットを見つけた。

 

(無能な風紀委員は全員粛清してやる……!)

 

 それは赤髪の、長身の少年だった。

 






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