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紅翔は風紀委員の腕章を身に付けた状態で介旅の周囲をうろついていた。そして、
(ビンゴ)
介旅からの見当違いな憎しみの目線を感じて内心ほくそ笑む。適当に、できる限り人通りの少ない場所を選んで歩いていると、
「お兄ちゃーん!」
「?」
「これ!眼鏡のお兄ちゃんがお兄ちゃんに渡せって!」
少女が持っているのはカエルのぬいぐるみだ。その意味を理解し、紅翔から表情が消失した。
────────────
『白井さん急いでください!!その先300mの歩道橋です!!』
「分かっていますの!!」
白井黒子は焦燥に駆られていた。虚空爆破事件関連のパトロール中に入った重力子の加速反応、それが再び観測されたという連絡に。
(間に合ってくださいまし!これ以上犠牲者を出すわけには……!)
「全員伏せろォォォォオ!!!!」
その声に反応して、白井は周囲の人々何人かを保護しつつその場に伏せた。すると次の瞬間、凄まじい爆発が空中に発生した。
『白井さん大丈夫ですか!?』
「私は問題ありません!ですが何故か空中で爆発が……!」
白井が即座にテレポートで爆発地点の近くに向かえば、真っ赤な髪で長身の少年がいた。その右手は黒い装甲に包まれている。
「
『了解。機能を変更します』
その黒い装甲が少年の言葉に反応して姿を変える。少年の右手に銃が握られた。赤い光が所々から出ている、ハンドガンに形状が近い銃だ。彼はその銃を何かに向けて狙いを付ける。
「待っ」
白井が止めるよりも先に、引き金が引かれた。銃口から赤い閃光が飛び出し、その先にいた眼鏡の青年の右足を貫いた。
「ギャァァアア!!?!?」
痛みにのたうち回る青年に、少年は近づいていく。その異様な雰囲気に、白井は止めねばと飛び出そうとして、足が止まった。
その表情に浮かぶ強い怒りに、呼吸を止めた。
「痛い!痛い!何するんだよ!!僕が、僕が何をしたんだよ!!?」
「自分の罪を理解しているか」
青年の様子などどうでもいいと言うかのように、少年が問う。しかし青年は痛みでまともに言葉が聞こえていない。しかし、
「クソ!クソ!いつもこうだ!力で上からねじ伏せ」
「自分の罪を、理解しているか」
「ヒッ……!」
重く、深い怒気の孕んだ声が、青年から痛みを忘れさせた。
「自分の罪を理解しているか」
「何……を……」
「ああそうか、予想以上に救いようがない」
ゴッ!と少年が青年の腹に蹴りを入れる。軽い動作で放たれたそれは、しかし青年を数メートル吹き飛ばす程の威力を持っていた。
白井はそこで漸く気を持ち直し、追撃しようとする少年の肩を掴んだ。
「お待ちなさい!やりすぎですわ、虚空爆破事件の犯人なのだろうということは分かりますがこれ以上は……!」
「私刑になる、か?」
「そうですわ。怒りは分かりま」
「だから何だ?」
「え?」
少年は白井の手を振り払って青年に近付いていく。青年は痛みと苛立ちに顔を歪ませていた。
「クソ!クソ!クソクソクソクソォ!!!お前らだ!お前ら風紀委員のせいだ!!お前らみたいに力を持ったやつが悪いんだ!!」
「で?」
「は?」
「それがどうした?それがどうして風紀委員に危害を加える理由になるんだ?それが!どうして!何の関係もないただの女の子を巻き込む理由になる!!言ってみろォ!!」
青年の胸倉を掴み、引き寄せる。
「てめぇの行動には何ら正当性は無ぇ!力を持つのが悪い?抜かせクズが!悪いのは力じゃない!その使い方だ!!」
「うるさい!!お前みたいな高位の能力者に僕の何が分かるんだ!!」
「はっ!残念だったな、俺は
侮蔑の籠った言葉に、青年は言葉を失った。
「力が能力だけとでも思ってんのか?馬鹿かよ、人間の持つ最も強い力は知恵だ!力で上からねじ伏せられる?知恵を使えよ、警備員に通報する、風紀委員に通報する、何かしら方法はあるだろうが!それもせずに、馬鹿みてぇな逆恨みで被害者を出し!いざ捕まれば自分は悪くない?ふざけてんじゃねぇぞ!!」
呆然とした様子の青年に、少年は続ける。
「あまつさえ、お前はその逆恨みの対象である風紀委員ですらない!ただの女の子を殺そうとした!立派な殺人未遂だ!良かったなクソ野郎、お前はもう力でねじ伏せられない。そんなことするまでもなく、これから数十年暗い檻の中で臭い飯食って生きていくことになるからな!!」
少年は、紅翔は胸倉から手を離し、青年を放る。呆然としたまま崩れ落ちる青年を睨みつけてから、彼は携帯を手に取った。
その手に、白井は手錠をかけた。
「……何してる」
「やはり、やりすぎですわ。貴方の言い分には、同意致します。ですがその前の暴力は必要なかった。となれば同じ風紀委員だとしても拘束するのは不思議では無いでしょう?一通り警備員の対応等が終わったら、私の支部に来てもらいますの。良いですわね?」
「………………はぁ……分かったよ……」
「そういえば貴方、初春のクラスメイトの方だったりします?」
「初春さんから聞いてたのか」
「ええ」
そんな返しの紅翔に、白井は僅かな違和感を覚えた。
(随分と落ち着いている。先程人の足をぶち抜いたばかりとは思えませんわね)
「よろしければ、どういった能力か教えてくださいませんか?介旅の足を撃ったレーザー、あれが能力なのでしょう?」
「そうだな、正解だ」
そう言って紅翔は左手の人差し指を立てる。すると指先に赤色の光球が現れた。しかしそれはフラフラと揺らめき、形状も不安定だ。
「それは……」
「『
「第四位の……」
思わぬビッグネームに驚く白井に向けて、紅翔はその光球からレーザーを飛ばす。それに身構えた白井だったが、レーザーは1mも飛ばずに霧散するように消えた。
「第四位なら今のであんたの……白井だったか?」
「はい、白井黒子ですわ」
「今ので白井の心臓ぶち抜いてただろうな」
「先程はもっと威力があったようですが」
「あれは装置で能力行使を補助してるからだな」
1番、起動。紅翔がそう言えば、彼の右腕が黒い装置に包まれた。
「携帯式能力補助用駆動鎧『
「一介の風紀委員に与えられる武装としては行き過ぎですの」
「そりゃ一介の風紀委員じゃないからな」
「へ?」
言葉と共に、紅翔は懐から手帳を取り出し、白井に見せた。その役職を見て白井は驚愕に目を剥いた。
「懲罰部隊……」
「そういうこと」
「呆れた、風紀委員のトップが不必要に暴力を加えたということではありませんか……」
「返す言葉もございません……」
呆れと同時に、白井にはどこか腑に落ちるものがあった。普段荒事に首を突っ込むことの多い自分よりも、更に荒事ばかりであろう彼ならば、この落ち着きようにも納得がいった。しかし、危うさも感じていた。初春と同い年ということはまだ13歳。その歳で人体を貫いてから1時間も経たないうちにここまで普通にしているという事実に、白井はゾッとしたものが背筋に走るのを感じた。
「と、出来れば初春さんには俺か懲罰部隊だってことは伝えないでほしい」
「構いませんが、何故?」
「涙子さんにバレると困る」
「涙子、佐天さんのことですわね……?」
疑問符を浮かべる白井に紅翔は零子から頼まれた護衛の話を全て伝えた。
説明を終えると、微妙な表情の白井が呆れ顔で呟いた。
「過保護すぎますの……」
「ハハハ……」
内心完全に同意しながら2人は彼等は支部を目指して歩く。
先輩のせいで苦労している、という点で二人には通じるものがあったようだ。
────────────
「はぁ……」
目の前のビルを見て、思わずため息をつく。手を繋いでいる凛子がそんな私を見て首を傾げているのが非常に可愛らしいが、それですら私の精神状態は回復しない程にうんざりしていた。
理由はこれから会う相手のせいである。
「懲罰部隊所属の佐天零子と、1501室の人間に伝えてくれ」
「少々お待ちください」
今から会う相手はこのビルの最上階、スイートルームにいる。確認が取れたようで、エントランスの係員にエレベーターに案内された。
「ごめんね、少し怖い思いをするかもしれない」
「……?」
ぶっちゃけめちゃくちゃ不本意だが、ここで交渉しておいた方が後々には安全だ。
エレベーターが最上階に到達し、扉が開いた。この階は本来二部屋だ。だが、相手は所有権を持っている為か壁をぶち抜いてこのフロアを丸々一つの部屋にしている。
そのため、エレベーターを降りればすぐ目の前に
「よぉ、てめぇから俺と話したいなんて言い出すとはな。下らねぇことじゃねぇだろうな?」
「安心しろ、私も不本意だ。交渉の価値があるかないかは自分で判断するんだな、」
茶髪の、ホストのような様相の青年。完全に存在しない素粒子を操る、学園都市二番目の規格外。
「
この街最高の非常識が、今回の交渉相手だ。
零子が垣根と会っている頃の初春。
初春「はわわわわわわ!!」
涙子「どうした初春!?」
初春「さ、さささ佐天さん!!見てください!!あのお店のケーキが全種類届いてるんです!!」
涙子「なんだそんなことか……」
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