佐天涙子のお姉ちゃん   作:シーボーギウム

7 / 7

感想評価ありがとうございます。

日刊3位!?




宵闇

 第二位。それは凛子を守ろうとする上で最も大きな障害だ。原作での彼の一方通行への執着はかなりのもの。それがそのまま凛子に向かうとなれば、如何に厄介か分かるだろう。

 

「まずはあの金髪女を席から外せ」

「はっ!随分嫌われたな心理定規(メジャーハート)

「私何かしちゃったかしら?」

「それも思い出せないような脳は不便だろ?頭ごと潰してやろうか?」

「冗談よ、そんなピリピリしないでちょうだい」

 

 軽口を叩きながらクソ女が部屋から出ていく。そうして金髪女がいなくなったのを確認してから、垣根が切り出した。

 

「それで?用件はなんだ?」

「その前にこの子の情報は得ているか?」

「あ?」

 

 凛子を指してそう聞けば、垣根は眉をひそめた。なるほど、まだ知らないらしい。それを安堵しつつ、これからこいつにわざわざ伝えないといけない、ということに嘆息した。隣に座る凛子の手を強く握る。

 

「ユーリカは優秀だな」

「何の話だ……」

「この子は、一方通行のDNAから造られた人間だ」

「っ!?」

 

 驚愕のあまりに垣根が立ち上がった。鋭い目付きで凛子をマジマジと見つめている。それに怯えるように凛子は私の後ろに隠れた。それを咎めれば、垣根は手のひらで顔を押さえながらクツクツと笑い始めた。

 

「は、ははは!本当にてめぇのとこのオペレーターは有能らしいな!」

 

 交渉の内容を察したのか、垣根は途端に機嫌が良くなる。その顔には獰猛な笑みが張り付いていた。これだけ機嫌が良ければ多少条件足しても問題無さそうだ。

 私が交渉に来た理由、それは一方通行の能力データを取るためにこの子の力を貸す、ということ。無理矢理奪いに来るなら、安全のために条件を付けて無理矢理奪う必要性を無くせばいい。

 

「で?条件はなんだ」

「この子が怪我するようなことはしないこと、この子が嫌がる事はしないこと、何か実験を行う際には木原定理を除く懲罰部隊のメンバーを必ず1人以上同伴させること、非人道的実験は行わないこと、取れたデータはこちらにも共有すること」

「多いな。が、まぁ良い。それぐらいでこれ以上無い第一位のデータが手に入るなら喜んでのんでやる」

「そうか、交渉成立だな」

 

 立ち上がってエレベーターの方に向かう。出来るだけ早くこの場から離れたかった。しかし垣根に呼び止められたために足を止める。露骨に嫌なことを表情に出すが、垣根は気にすることなく話を続けた。非常識野郎め。

 

「いつからだ?」

「一週間後だ。一週間後にこの子の一通りの延命治療が終わる。それからだ」

「そうか、なら一週間後そのガキをここに連れてこい。できる限り早くデータが取りてぇからな」

「……分かった……ああ、それと」

 

 凛子の手を握ってエレベーターに乗る寸前で、立ち止まり、もう一つの条件を伝える。

 

「それぐらいなら構わねぇ」

「そうか」

 

 今度こそエレベーターに乗って部屋から離れる。気分は落ちたままだった。

 

 

 

 

 

────────────

 

 

 

 

 

「嫌われすぎだろ」

「まぁ理解できなくはないけどね」

 

 『心理定規を凛子に近付けるな』それが零子が最後に付け加えた条件だ。

 

「そう言えば詳しく知らねぇな。何やったんだお前」

「簡単よ。地雷踏んじゃったの」

 

 佐天零子にとって最も大切な存在、その心理的距離に、心理定規は自身を置いた。

 結果として、その時心理定規は死にかけた。まだ強能力者(レベル3)だった零子を、まだ懲罰部隊ではなかった零子のレベルを引き上げ、この街最強の大能力者として覚醒させた。

 その説明を聞いて、垣根は首を傾げる。

 

「だとしても、何であいつはお前に攻撃出来た?普通無理だろ」

「さぁね?レベルが上がった瞬間能力が強引に解除された(・・・・・・・・・・・)のよ」

「…………」

 

 心理定規の言葉に疑問を持ち、思考を巡らせようとした垣根だったが、すぐに中断してソファに深く座り込んだ。

 

「まぁ、あの女のことはとりあえずどうでもいいか」

 

 そうやって、軽く片付けた。

 

 

 

 

 

────────────

 

 

 

 

 

幻想御手(レベルアッパー)ねぇ……」

 

 夜の学園都市。バッチリ門限を破っている御坂はコンビニで都市伝説についてまとめられた雑誌を手に取っていた。目に付いたのはその都市伝説の一つ、幻想御手についてだ。

 

(佐天さんが好きそうな話題ね……)

 

 姿形何も分からないが、使えばレベルの上がる不思議な代物。学園都市の生徒であれば欲しがる者は多いだろうが、御坂には興味よりも忌避感の方が強かった。

 興が削がれたのか、御坂は雑誌を閉じてコンビニを出る。そうしてしばらく歩いていると、

 

「よぉよぉ君可愛いね〜」

「ちょっとお兄さん達と遊ぼうぜ〜」

 

 ニタニタと、下心が透けて見える男達三人に囲まれた。またか、とため息をつき、撃退しようと演算を始めようとして、

 

「フハハハハハハ!!!」

 

 そんな謎の高笑いに意識がズレた。彼女の周りの不良達も同様に声の方を向けば、坂の上の方で仁王立ちする少女がいた。

 黒い髪をショートカットにし、右目には医療用の眼帯を付け、黒いセーラー服とパーカーに身を包み、身体の至る所に包帯を巻き付けた少女だ。

 

 先に言っておこう。彼女は厨二病である。自身の黒歴史を刺激されたくない方はブラウザバックだ。

 

「我が名はナハト!!宵闇と正義の悪魔!!そこな娘の助けの声を聞き、ここに降臨した!!」

「いや、助け呼んでないけど……」

「無理をする必要はない!私は助けを求める者の心の声が聞こえる!!」

読心能力(テレパス)?」

「いや発火能力(パイロキネシス)だ!!」

「違うじゃないのよ!?」

 

 御坂に突っ込まれてなお、ナハトは威風堂々としか言いようのない態度をやめない。不良達はそんな彼女を馬鹿にしたように絡みに行く。

 

「おいおい邪魔すんなよ」

「何だぁ?お前が相手してくれんのか?」

 

 いやらしい笑みを浮かべる彼等の言葉に、ナハトはニコリと笑う。

 

「お前らのような不良の相手ならそこの娘よりも私の方が適任だろう」

 

 そう言ったと同時に、ナハトがその場から掻き消えた。

 

「ごっ!?」

「フハハ!!遅い!!」

 

 次の瞬間には、ナハトは不良の一人に蹴りを叩き込んでいた。仲間が悲鳴を上げたことで残りの2人はようやくそれに気が付く。

 

「なっ!」

「てめっ!」

 

 残った不良達がナハトに向けて拳を振るうが、しかし彼女はその場で高く跳び上がって容易く回避した。

 

「はぁっ!!」

 

 ボンッ!!そんな爆発音と共にナハトの足が空中で加速し、不良の一人の背中に直撃する。そのまま倒れた不良の背中に着地した彼女を狙ってもう1人が拳を構えるが、放つよりも先に彼女の膝がその不良の腹に突き刺さった。

 

「フハハハハハ!!!その程度の実力でこのナハトを倒そうなど笑止千万!!鍛え直してくるのだな!!では娘よ、さらばだ!!」

「えぇ……」

 

 再びボンッ!と爆発音を響かせナハトはその場から去っていく。御坂は彼女の思わぬ実力に困惑していた。

 

(この街で頭のおかしな奴は皆強いのかしら……)

 

 そう考える彼女の頭には白井(変態)が浮かんでいた。

 

 





ナハトちゃんは実力の伴った厨二病。

感想評価よろしくお願いします。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10についてはそれぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。