ソードアート・オンライン-青き少女の証明-   作:海色 桜斗

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※この作品はサチ生存√を作者なりの曲解で描いた物語です。尺としてはSAO編のみとなります(※中盤からホロウ・フラグメント編に酷似した内容になっていきます。)。ご了承ください。
~その他注意事項~
※サチの相棒的な立ち位置でフィリアを出しています。原作と比べて性格がかなり違います。フィリア推しの方はそれを覚悟のうえでご覧ください。
※原作で死んだはずのキャラが生存したり、逆に生存してたはずのキャラが死んだりします(ネタバレになるので詳しくは書きませんが)。
※ほぼ全てのSAOキャラを出演させる予定ですが、都合によりアリシゼーション編キャラは出ません。ユージオ、アリス推しの方は何卒寛大な御心でご了承ください。
※最後に、MORE DEBAN組ですが・・・・・・君らだけがMORE DEBANだと思うなよ?原作SAOで死んでったキャラが一番MORE DEBANじゃぁぁぁぁぁぁっ!特にサチッ!!中の人が早見沙織さんなのにあの最期は滅茶苦茶もったいなさすぎるだろ、大体)ry

出来れば、こっちも読んでね↓
https://syosetu.org/novel/235731/



序章「Sword Land」
第一話「Re;start」


2024年12月20日 9:30 ???

 

「そっちに逃げたぞ!全員、総攻撃開始!」

 

「「「「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」」」」

 

逃亡を始めたエネミーに対して、その場に群がる全プレイヤーが追跡し、集中攻撃を開始する。ここで逃せば次はいつ出会えるかわからない。そうすれば今までの努力も水の泡である。ならば、そうさせないのが撃破するためのコツである。

 

「うぉりゃあっ!」

 

「ギィィィィ・・・・・・!!」

 

プレイヤー達の中の一人が飛び上がり、上空から一撃。その瞬間、そのエネミーのHPゲージの横に雷が描かれたアイコンが表示される。作戦通り、これは状態異常の麻痺だ。これで一定時間の間、エネミーを一定の場所に固定しておけるという、まさに動きまわる標的にはもってこいの状態異常だ。

 

「いよぉっし、相手の腹ががら空きになったぜ!やっちまえ、キリト!」

 

「あぁ、任せろ!」

 

身動きを止められ、弱点部位を曝け出したエネミーに、プレイヤーの集団の中から一人の黒づくめの青年が果敢に突進していく。そして、徐々に距離を詰めていき、まさにエネミーの腹部が眼前に迫った時、彼の十八番ともいえるSS《ソードスキル》が発動された。

 

「スターバースト・・・・・・ストリーム!!」

 

瞬間、彼の二振りの剣から繰り出される無数の剣舞がエネミーを襲った。標的の鎌を砕き、弱点を守っていた殻を破り、3つある頭の内の2つを切断し、最後の一撃を弱点部位である腹部に向かって思いっきり叩き込んだ。

 

「ギガァァァァァァァァァ・・・・・・!?」

 

エネミーは断末魔をあげ、その姿を霧散させた。そして、空中にはQuest Complete!!の文字が浮かび上がり、その場にいたプレイヤー全員から大きな歓声が次々と上がる。

 

「うぉぉぉぉぉっ、やったぜ、キリト!これでひと段落だ!」

 

「ふふっ、毎度毎度いいところばかり持って行けるなんて。流石、有名人は待遇が違うわね」

 

「やりました~!いや~、私的に物凄くギリギリの戦いだったっす~」

 

「う~ん、これはボクも俄然負けてられなくなってきたね~。次は負けないよ、キリト」

 

「わぁぁ!流石、お兄ちゃ・・・・・・げふんげふん。流石、キリト君!」

 

そして、エネミーを見事撃破したその青年の周囲に次々と集まってくる仲間達。しかし、これ程に信頼度が高いということは同じギルド内の仲間だからだろうか、だが答えは否である。彼等は、所属ギルドは皆違えど同じ目的や志を持って集まった仲間達。キリトと言う小柄な青年の持つ何かに魅力を感じ、手を差し伸べてきてくれた仲間達。故に、ネットの世界だけでの知り合いという曖昧な友情等で繋がっているわけではない為に、こんなにもお互いを真の意味で信頼しあえるのである。そして、今日この場所で同じ目的を持った新たな仲間が待っていたのである。

 

「えっと・・・・・・確かこの辺りにいるって言ってたはずなんだけどな」

 

「・・・・・・」

 

「おっ、あそこの丘の上にいるプレイヤーがそうなんじゃねぇか、キリト」

 

「そ、そうかな?」

 

「おいおい、馬鹿言えよキリト。前に共闘したことのある女の子を見分けることくらいお前なら楽勝だろうよぉ?」

 

「クラインこそ、そう言う言い方やめろよな。俺はナンパ師じゃないだぞ」

 

彼は、クラインと呼んだ男に苦笑いを浮かべてそう言うと、真っ直ぐそのプレイヤーの立っている丘の上まで登っていった。そして、彼が丘の上まで上り詰めた時、彼女はゆっくりと彼の方へ振り向き、口を開いた。

 

「・・・・・・もぅ、少し遅かったよ、キリト」

 

「ご、ごめんな。途中でクエストモンスターと遭遇したからさ。どうしても見逃せなくて」

 

私的用事に夢中になってしまって申し訳ない、と言わんばかりの彼の表情を見て、彼女はしょうがないなぁ、と微笑みながら溜息をつく。だが、彼女のそんな仕草から、今回ばかりは特別彼の事を咎めるようなことはしないという優しさが見えた。

 

「ん~、じゃあ少し遅れた罰として、そのモンスターがドロップしたもの私にも頂戴?」

 

「う・・・・・・別にいいけど片手剣没収だけは勘弁してくれよ?」

 

「あははっ、罰って言っても流石にそんな意地悪しないよぉ。それに私が使ってるのは槍だし、そんなことしたら宝の持ち腐れになっちゃう」

 

彼女の悪戯っ子っぽい笑みが、青年の必死の交渉を見て元の優しげな笑みへと変わる。彼女の青色の髪が風に揺れる。そして、彼はようやく彼女の名前を口にした。

 

「久しぶり、サチ。中々会うことできなくてごめんな」

 

「別にいいよ、キリトだって普段は攻略組の仕事で忙しいんだから。でも、もうそんな不便ともお別れ。これからは一緒に同じ小隊の仲間だよ、頑張ろうねキリト」

 

「あぁ、またよろしく頼む、サチ」

 

彼と彼女がお互い向かい合い、手を握り合う。こうして、長くも短い年月をかけて果たされなかった彼と彼女の再会がこの時、果たされたのであった。そう、これは数奇な出会いをした青年と少女がオンラインゲームの世界で巻き起こった、とある事件を解決に導くまでの冒険譚である。

 

 

――遡ること2年前。この地獄とも言える恐怖のデス・ゲームの全てはそこから始まった。

 

 

2022年11月08日 16:00 《アインクラッド》第一層 始まりの街・広場

 

 

「繰り返す。諸君らのストレージからログアウトボタンが消失しているのは、不具合ではなく、ソードアート・オンライン本来の仕様である」

 

SAOが正式なサービスを開始したその日の夕刻。全フィールド上から、広場へ強制転移されたプレイヤー達がゲーム開発者の茅場晶彦を名乗るアバターに言い渡されたのは、紛れもない死刑宣告そのものだった。しかし、それだけでは終わらず、茅場を名乗るアバターは更にプレイヤー達に残酷な現実を叩きつけた。

 

「諸君らが解放される条件はただ一つ、このゲームをクリアすれば良い。ただし、十分に留意してもらいたい。今後、蘇生手段は機能しない。HPが0になった瞬間、諸君らのアバターは永久に消滅し、同時に諸君らの脳はナーヴギアによって破壊される」

 

この仮想空間での死=現実世界での死である事を告げられたプレイヤー達はあまりに突然の出来事に混乱して状況が整理できずにただ立ち尽くすことしかできなかった。

 

「嘘・・・・・・だろ・・・・・・!?」

 

「そんな・・・・・・!」

 

「有り得ねぇ・・・・・・マジかよ・・・・・・!?」

 

そんな中、細身の青年を中心とした5人のプレイヤーのグループがいた。彼等は同じ学校の部活仲間で揃ってSAOにアクセスしていたのである。そう、後のギルド《月夜の黒猫団》のメンバー、ケイタ、ササマル、ダッカー、サチ、テツオだった。

 

「それでは最後に、諸君らのアイテムストレージに私からのプレゼントを用意してある。確認してくれたまえ」

 

茅場のその言葉を受け、彼等を含む全プレイヤーが自身のアイテムストレージからプレゼント、手鏡を取り出す。そして、彼等がそれを覗き込んだ瞬間、その場にいる全プレイヤーが光に包まれ、光が収まるとプレイヤー達は元の自身で設定したアバターの容姿ではなく、現実世界での自身の容姿へと変貌していたのである。

 

「これにてこのゲームにおけるチュートリアルは終了だ。では、諸君らの健闘を祈る」

 

全員の姿が変わったのを確認した茅場は、そんな言葉だけを残してこの空間から姿を消した。その瞬間、今まで聞いていた非現実的なチュートリアルが全て本当のことだと悟ったプレイヤー達の反応は様々だった。ある者は事の恐怖にその場から立ち去り、ある者は地面に座り込んで叫び声をあげ、ある者は怒号をあげ抗議の意を示した。そんな混乱の最中、彼等《月夜の黒猫団》メンバー達はやっとの思いで押し寄せる人ごみから逃れ、始まりの街の正門前にたどり着いた。

 

「や、やっと人の波からは解放されたけど・・・・・・ログアウト出来ないだって!?」

 

「ほ、ほんとだ。システムメニューからログアウトだけ消えてる・・・・・・!」

 

「じゃ、じゃあ本当に100層のボスを倒すまでゲームを終了できないってことか、冗談じゃないぜ!?」

 

「βテスターに選ばれた僕の知り合いが言ってたけど、βテスト時でも各層ごとのボスがかなり強いみたいだ。それを100層までとなると到底無理な話だ・・・・・・!!」

 

ケイタ、ササマル、ダッカー、テツオの四人はこの言い逃れようのない事実に頭を抱え込み、またサチもそんなプレッシャーに押しつぶされ、ただ迫り来る恐怖に怯えるしかなかった。

 

「あっははははは、男四人集まってるっていうのに、馬鹿みたいに突っ立ってることしか出来ない訳?」

 

突如、頭上から降ってきた声に反応しその場にいる全員が上を見上げる。すると、転移門のある高台の上で彼らを見下ろしている女性がいた。そして、そのまま女性は高台から飛び降りると彼らのすぐ目の前までやって来た。

 

「お、お前は・・・・・・!」

 

「あーあー、オンラインゲームの中で実名出すの禁止ねー。にしても全然やっていける気がしない感じじゃない、ケイタ達。これじゃあ、サチの事任せておくなんて無理な話ね」

 

「フィリア・・・・・・!」

 

行く手に立ちふさがるケイタを退かして、サチの呼びかけに答えるかのように彼女に手を振り、彼女の前に歩み寄ると再び口を開いた。

 

「ね、サチ。ケイタ達の事ほっといて私とゲームの攻略、目指さない?」

 

「げ、ゲームの攻略・・・・・・!?」

 

フィリアの口から出た言葉はサチにとっては衝撃を受ける言葉だった。攻略ということはつまり、自分がフィリアと組んで、全プレイヤー達の絶対目標である100層制覇を目指すという事。だが、それは今の自分には無理だ。仮にここで勇気を振り絞って誘いに応じたとしても、今の自分より少しマシにはなるが、結局戦闘に関しては足手まといになるだけだろうとそう思えた。

 

「お、おい!俺達の許可なしに勝手に――」

 

「はぁ?私はサチだけを誘ってるのよ、そもそもアンタ達の許可なんて必要ないでしょ」

 

「いや、関係あるね。俺達はこれからこの5人でギルドを作る。だから、その前にメンバーを引き抜かれるわけには行かないからな」

 

「そんなまだ設立してもいないギルドの話をしたって仕方ないでしょ。勝手にリーダー振ってんじゃないわよ、ヘタレバカ」

 

再び目の前でケイタとフィリアのひと悶着が始まる。現実の世界でもこの二人はこんな感じである。遭遇するたびに毎回こうやって口論をする、それも主にサチ絡みの話だ。どちらも互いにメンバーの中で気の弱いサチに変な思いをさせないためのお節介として言い合っているのだから否定しようにも真っ向からの否定ができない事態に陥ってしまっているのである。

 

「ケイタ、少し落ち着けって。こういう混乱でただでさえ冷静さを失ってるのに、これ以上欠いてしまったら色々問題になってしまうぞ」

 

「そうだぜ、ケイタ。馬鹿みたいにあたふたし過ぎた俺らが悪いんだから落ち着いてくれ」

 

テツオとダッカーが左右からケイタを押さえつけて必死になだめる。その様子を見たフィリアはヒートアップしてしまった自分を深呼吸で落ち着かせ、改めてサチに、向き直った。

 

「で、どうする?行く、行かない?」

 

「ちょっと行きたい気もする。でも、私じゃ足手まといになっちゃうし、途中で私のせいで他の人が倒されちゃったら怖いし、自分が死ぬのも・・・・・・怖い」

 

「そっか。じゃあ、ちょっと気分転換も兼ねてフィールドに出てみる?」

 

「えっ?で、でもモンスターに遭遇したりしたら――」

 

「大丈夫、大丈夫。モンスターがリポップされてこない安全圏にいれば接触してこないよ。さ、まずは試しに行ってみよう!」

 

そんなフィリアの言葉を信じてか、サチはフィリアに手を引かれるがままに始まりの街周辺のフィールドへと向かっていったのだった。

 

「俺等、さっきから放置されっぱなしだな・・・・・・」

 

「でも仕方ないだろ、フィリアだし」

 

「まぁ、仕方ないといえば仕方ないね。お陰で冷静さ取り戻せた分もあるし」

 

「・・・・・・認めない、からな」

 

フィリアに言われた通り、終始何も出来ていない男達はある種の諦観を覚えて、フィリアに引きづられていったサチを素直に見送る事に徹したのだった。ケイタ以外は。

 

 

2022年11月08日18:20 《アインクラッド》第一層 始まりの街・周辺フィールド

 

 

「ほら、サチ。早く、早くぅ~」

 

「ま、待ってよ、フィリア~」

 

上手く敵の目を掻い潜って先に進んでいくフィリアに対し、サチは慎重に歩を進めながら間一髪のところで敵を回避しつつフィリアの後に続いた。

 

「はーい、安全圏に到着~!」

 

「もぅ、いつも強引なんだから」

 

「いいじゃん、いいじゃん。無事切り抜けてこられたんだから問題無し!」

 

間一髪とは言え危険な目に合わされたサチはフィリアに不満を漏らした。だが、当の本人は全く反省していない様子で、その顔に笑みを浮かべていた。

 

「で、どう?ここまで来てみて」

 

「どうって言われても、凄く怖かったとしか・・・・・・」

 

「うわっ、これはかなり重症だ。ヘタレ共の癖でも移ったかな」

 

サチ本人は思ったままの本心で答えたが、親友から返ってきたのは辛辣な言葉だった。そんな事はない。そう思ったサチは、目の前の親友にその事をありのままぶつけた。

 

「ち、違う!ケイタ達は、何も悪くない!私が、私が弱いから・・・・・・」

 

「そうかな、私はどちらかと言ったらサチはアイツらと違って強くなれる気がするけど?」

 

「えっ・・・・・・?」

 

このゲームの世界に入ってから、確かに色々なプレイヤーに話しかけられはした。しかし、サチ自身、そこまで言われたことはなかった。それもそうだ。自分はデスゲームだと知る前から、徘徊するモンスターとの戦闘においては消極的だったからだ。しかし、目の前の親友はそれは違う、と言う。では一体、何が違うというのか?

 

「実は私もね、正直言うとあんなこと言われた後で戦うの、ホントは怖いんだ」

 

「でも、実際問題このゲームから脱出するには攻略していくしかない。そう思って、必死に奮い立たせてるだけでさ、他の事考えてる余裕ないんだ」

 

先程までに自身で溢れているような彼女を見ていたサチは、それを聞いて驚いた。現実でも私を引っ張っていってくれる彼女がそこまで怯えているなんて。自分はそんな事気づけなかった、と。

 

「だけどね、私はこのゲーム内にサチがいたってことが分かって、ホッとしたんだ」

 

「私が、何で・・・・・・?」

 

「何でだろーね。でも、まぁ、一つだけ分かってることはある」

 

「現実世界でも此処でも、私がサチを助けてるようで、実はサチの存在にずっと助けられてるって事。へへっ、見っとも無い親友でごめんね」

 

そんな親友の言葉にサチの心は激しく揺れ動かされた。思えば、これが全てのきっかけ。ずっと何かに怯えていた私が、自信を持って戦いに身を投じていくことになる、最初の重要なトリガーだった。

 

「ううん、そんなことないよ、フィリア。私だってそうだもん、貴方にいつも助けられてる」

 

「お、漸くサチのその笑顔が見れた。癒されるね、大聖母のようだね」

 

「っ・・・・・・もぅ、やめてよぉ」

 

サチは照れて、下を向く。そして、その時感じたのは不思議な感覚だった。今まで自分を覆っていた不安の塊は何処かへ消し飛び、ほんの少しだが勇気が湧いてきた。うん、今の調子なら弱いモンスターであれば自分でも立ち向かえる・・・・・・かも。

 

「それにさ、ほら。この世界の事実を知って尚、向かい合おうとしてる人もいるみたいだよ」

 

その言葉に倣って、サチは親友の指差した方角に視線を向ける。すると、その先には次々と襲い掛かってくるモンスターを数秒もかからぬ内に切り捨てていく一人の少年の姿があった。

 

「凄い・・・・・・まだ始まって間もないのに、あんな数のモンスター相手に少しも怯まないなんて」

 

「もしかしたら彼、βテスターなのかもね。まぁ、それ以前に元々別格なのかも」

 

恐らく、彼が目指しているのは、この先にある第一層の攻略の拠点となる街。彼には追い付けないかもしれないが、彼の後についていけば私たちもそこへたどり着けるかもしれない。

 

「ま、今からだと先の街に行くのは早すぎるから、ここら辺でレベル上げ、しよっか」

 

「そ、そうだね。一応、頑張ってはみるよ」

 

「よーし、その調子だ、サチ!大丈夫、危ない時は私が上手く立ち回るから」

 

あの少年がその時どんなことを思っていたかなど、今の彼女達には知る由もない。それでも、その行動に揺れ動かされた身としてはやり遂げなければならないと思った。そう、サチの運命を決めるトリガーが今この瞬間、本格的に稼働し始めたのである。

 

「あ、因みに私のスキルは《短剣》ね。サチは?」

 

「私?えっと、私は《槍》だよ」

 

「へぇ、サチの癖に中々いい武器を選んだね。リーチが長い分、敵との戦闘が少し楽かもね」

 

フィリアはこれをいい武器、とはいうものの、自分の確固たる意志でこれを選んだ訳ではなく、何となくこれがいいと選んだものだ。性能なんて、あまり気にしてはいなかった。

 

「じゃあ、レベル上げのついでに武器の性能、ちゃんと把握しなきゃね」

 

「う、うん、それも頑張ってみる」

 

最初に彼女たちが向かっていったのは、ここに出現するモンスターの中で一番攻略しやすい《フレンジーボア》という猪の姿をしたエネミーだった。

 

『ピギュウ!』

 

「よーっし、先制攻撃成功!サチ、そっちからお願いね」

 

「うん、分かった!」

 

フィリアが素早い動きで相手を翻弄しつつ、サチが背後がガラ空きになった相手に槍を叩き込む。息の合ったプレーで、その場に集まってきた同じモンスターを次々と一掃していく。

 

「行くよッ、《ファッドエッジ》!」

 

フィリアの放った、必殺の8連撃が次々とフレンジー・ボア達を襲う。

 

「《フェイタル・スラスト》!」

 

サチは、スキルと通常攻撃の連鎖で周囲のモンスターを牽制しながら、確実に目標を仕留めていく。

 

「よしっ、最後の一匹!」

 

「うんっ!」

 

周囲のエネミーを蹴散らし、最後に残った一匹をフィリアとの同時攻撃で仕留めようとしたその時だった。急にサチの視界がフラッシュバックし、目の前にぼんやりとした白黒の映像が流れた。

 

『しまった、モンスターハウスだ!』

 

経緯は不明だが、部屋に踏み入った瞬間に部屋と通路をつないでいた入り口が封鎖され、四方八方に強力なエネミー達が続々と出現し始める。どうやら、転移結晶も使えないようだ。

 

「あれは・・・・・・私とテツオとササマルとダッカー、かな」

 

モンスターにじりじりと中央部に追い詰められ、武器を構えているのは、初期防具から装備を変えて姿は違えど、見覚えのある顔をしていたのですぐに分かった。しかし。

 

「あの人は・・・・・・誰?」

 

予想だにしなかったモンスターの大群にすっかり怯え切ってしまった自分を守りながら戦っている、あの黒いコートを着た人物は誰だろうか。見覚えはない、だが不思議と懐かしいと感じた。

 

『うわぁぁっ、ああぁぁぁぁっ!!』

 

『ぎゃああああぁぁぁぁっ!?』

 

『そ、そんな・・・・・・お、俺は、まだ・・・・・・うわぁぁぁぁぁぁぁっ!?』

 

「そんな・・・・・・ッ!?」

 

次の瞬間、彼女が目にしたのは、次々とモンスターたちの手によって消滅させられていく、仲間達の最期の姿だった。そして、残ったのは映像の中の自分と黒コートの少年だけ。

 

『サチ・・・・・・ッ!!』

 

『キリト・・・・・・ッ!』

 

「キリト・・・・・・?」

 

今、この映像に映る自分は確かにそう叫んだ。恐らくは、この黒コートの少年のプレイヤーネームなのだろう。防戦一方ではあるが、辛うじて生きながらえている自分。だが、一抹の不安としてあったその時は無慈悲にもやってきた。

 

『うあッ・・・・・・!?』

 

黒コートの少年が自分に手を伸ばし、自分がその手を掴もうとした時、背後にいたゴーレム系のモンスターの長い腕による攻撃が、私の背中を切り裂いた。

 

『ありがとう・・・・・・さよなら』

 

映像の中の自分が最期に口にしたその言葉を、彼はきちんと聞けていただろうか。そのままHPが0になり、消滅する私と、それを見て絶望に包まれた表情になる彼。結局、彼の事を全く知ることが出来ないまま、その映像は不意に途切れた。

 

「――サチ、危ない・・・・・・ッ!」

 

「えっ!?」

 

『プギィィィ!!』

 

刹那、再び視界が元に戻り、目の前にはフレンジー・ボアが突進しようと迫っていた。本来なら、もう防御したとしても間に合わない距離だ。しかし。

 

「・・・・・・ッ!(さっきのは、幻覚?でも、妙に現実味があったような・・・・・・駄目だ、こんなこと考えてたら間に合わない!でもっ、さっきのみたいになるのは・・・・・・嫌だッ!)」

 

先程まで、覚束ない手ながらも、奮闘していた自分の動きとは思えないほどの的確で正確な槍の構えを瞬時に行い、敵の攻撃を槍で受け止めるサチ。そして、そのまま相手の勢いを完全に殺しきり、カウンターともいえる強烈な一撃をお見舞いした。

 

『ピギュゥゥ・・・・・・!』

 

それを受けた相手は、地面に叩きつけられた後、断末魔を発して消滅した。そんな彼女の奮闘をフィリアは横から見て驚いていた。

 

「サチ、大丈夫だった!?」

 

「え、う、うん、何とか・・・・・・」

 

「良かったぁ。ていうかさ、さっきのあの動き、カウンターパリングだよね。どうやったの?」

 

「へっ・・・・・・?」

 

初めて聞いたスキル名だった。そして勿論、意識して放ったわけでもない。では、なぜ発動したのか。サチは急いで自分のステータス画面を開き、スキル一覧を確認してみる。

 

「ない・・・・・・そんなスキル、私覚えてないよ?」

 

「えぇ!?ってことは、もしかしてバグな訳?参ったなぁ、この現状でバグあるのは勘弁してよ」

 

当然ながら、今までの戦闘で漸くレベル5に上がったばかりだというのに、そんなスキルは覚えられるはずがないし、覚えた記憶もない。というかそもそも槍使いにそんなスキルは存在しない。では、フィリアの言う通り、バグの一種なのだろうか。

 

「もしかしたら、このエリア限定で起こるのかも。ポーション多めに買ってきてから、ちょっと試してみようか」

 

「えぇ、大丈夫!?やられちゃったり、しないかな」

 

「大丈夫、大丈夫。私がフォローするから」

 

素直に賛成できなかったサチだが、またもやフィリアに強引に連れていかれ、やらざるを得なかった。一回ポーション買いの為に街中に戻ったフィリアとサチは、たっぷりと買い占めた後にレベル1の雑魚に限定して検証を繰り返したが、何度やってもそれが二度と発動することはなかった。

 

「はぁ、はぁ・・・・・・出る気配がないからレベル上げに切り替えたら、いつの間にか10まで上がっちゃったね」

 

「でも、肝心のスキルが一回も発動できなかったね・・・・・・何だったんだろう」

 

結局、その時の私達には何故覚えてもいないスキルがいきなり発動出来たのか、全くもって分からなかったのである。

 

 

2022年11月08日 19:30 《アインクラッド》第???層 管理コンソール前

 

 

「ふむ、並行世界からの一時的な可能性の譲渡か。興味深いな」

 

一面の壁が無機質な機械で覆われたその空間に男は立っていた。白い白衣を身にまとい、先程の戦闘の映像の一部分を繰り返し閲覧していた。

 

「やはり、この世界は何らかの意思を持っている、ということか。そうでなくては、私がこの世界に心奪われたりなどするものか」

 

彼の名は、茅場明彦。このゲーム《ソードアート・オンライン》生みの親であり、VRMMOをプレイするための専用機器《ナーヴギア》の開発者でもある。そして、何より此処をデスゲームの地とした張本人・・・・・・つまりはこの事件の黒幕でもある。

 

「EXスキルに選ばれる権利を有した少年と、可能性に愛された少女。この二人には暫らく注目させてもらうとしよう」

 

茅場明彦は静かに笑みを携えた。そして、先程の白衣を着た現実の姿から、灰色のプレートアーマーを装備した騎士の姿へと変貌を遂げた彼は、ゆっくりと転移門のある場所へと歩き始めた。

 

「恐らくは、彼等の導かれる先に、私の求めているものがあるのやも知れぬな」

 

製作者である自分の意志通りに動きつつも、また違った方向で動き出しつつあるこの現状。その男、茅場明彦は密かに状況を楽しんでいたのだった。

 

 

                                                                        To be continues…

 

-------------------------------------------

 

~次回予告~

こうして、彼女は目覚めた。かつての世界で手に出来なかった確かな強さをその身に宿して。そして、世界は最初の想定を超えた展開を悪とせず、楽しむ意志を貫いていた。次回、ソードアート・オンライン~青き少女の証明~第二話「Change the destiny」。大いなる意思よ、彼らに祝福を。

 




如何でしたでしょうか。色々なSAOの二次創作出てますが、大体生存しませんよね、サチどころか黒猫団メンバー全員が。もう生存させるにゃ主人公にするしかないのでは。そう思って書き始めました。

数年前の話になりますが、SAOIFなるアプリゲーが出たと聞いたときは迷わず事前登録して、プレイしてみました。確かに、初期で死ぬディアベルはんの生存を確認。ただ、そのあとの階層攻略が凄く億劫で……途中で辞めました。「黒猫団救出√だいぶ先やん……正直しんどい」と心が折れた瞬間は未だに覚えています。

そんな、私と同類の攻略組から撤退した皆々様方に贈る新しい物語の形。今更過ぎるとかそう言うのは置いといて是非ともご一読の程、よろしくお願いします。

現在書いているもう一作品の方と合わせて更新していきたいと思っております。出来れば、月一での更新目指します。感想、お待ちしております。
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