ソードアート・オンライン-青き少女の証明-   作:海色 桜斗

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予定日より1日ずれ込む形になってしまって本当に申し訳ない!

……ですが、やりましたぜ!遂に、遂に皆様御待望のアノス様の登場回です!!

今日発売の最終巻は買いましたか?それとも昨日の時点でフラゲして何度目かの結末を見届けられましたか?因みに作者はAmazon購入で昨日届いて今日の午前中を使って見て、テンション上がった状態で書いていました。(恐らく)いい感じに書けたと思います!

それでは、どうぞ!!


第七話「Reunion Of Fate」

 

2023年12月27日13:20 《アインクラッド》第58層・迷宮区 山岳エリア

 

 

 

『『『『■■■■■■■ォォォ!!』』』』』

 

「うひゃあっ!?ど、どどどどどうしよう、何かすっごい囲まれちゃってるよ、私達!?」

 

「退路も塞がれたわ。くっ・・・・・・無尽蔵に湧いてくるからキリがないわね・・・・・・!」

 

此処はアインクラッド第58層の迷宮区。幾つもの山岳地帯に囲まれたこの土地で、二人の少女が危機に瀕していた。一人は長いブロンドの髪を後ろで縛りポニーテールにしている少女、そのアバターの背中からは綺麗な2枚の羽が生えている。もう一人は水色のショートヘアに何処ぞの傭兵のような恰好をした少女、あくまで冷静に慎重に手元の銃で必死に応戦している。

 

そして、そんな二人は今まさにSAO内で急に発生し始めた異形の存在《黒の使徒》と戦闘していた。敵はやはり何時もの如く倒しても倒しても無尽蔵に湧き出てくる。最悪だ、まさかいきなり自分の知らない世界に飛ばされたと思ったら、辿り着いた先がこんな地獄とは。

 

「ねぇ、アナタ。この辺りに救援に来てくれそうなプレイヤーはいる?」

 

「う~ん・・・・・・さっきから見てるけど、全然人通らないじゃ~ん!!」

 

しかも、偶々通りがかって助けてくれそうなプレイヤーの存在もない。このまま何もできずに積んでしまうのか。しかし、それではあまりに不条理だ。まだこの世界が何処だかも分からないうちに死んでたまるか、と。

 

「――そこにいるお前達。少し屈んで居ろ、当たっても知らぬぞ」

 

不意に、誰もいないはずのフィールドから声が聞こえた。傭兵の少女はその声をしっかりと聞き取り、近くにいた妖精の少女と共にその場で地面に屈む。すると――

 

獄炎殲滅砲(ジオ・グレイズ)

 

何かの呪文を唱えたかのような声が響いた次の瞬間、《黒の使徒》の大群は真正面から発射された巨大な灼熱の火球に焼かれて消え去り、二度とそこから湧き上がってくることはなかった。

 

「す、凄い威力・・・・・・あんな魔法、ALOでも見た事ないよ」

 

「オーバースペック過ぎじゃないかしら、あり得ないわね」

 

此処はファンタジーやそう言った世界ではない、ただのVRMMORPGの世界だ。故に先程の人物が放った技は言うなればチート級。不正にデータを改造していなければ、あれほどまでの威力が出るはずがない。パワーバランスがあまりもあり過ぎる。そして何より。

 

「如何やら無事の様だな、お前達。さて、いきなりで悪いが単刀直入に聞こう」

 

「キリト、と言う少年に心当たりはないか?」

 

 

 

――SAOは剣の世界。槍や細剣、両手剣やメイスはあれど、魔法は全く存在していない。

 

 

 

 

 

2023年12月28日9:18 《アインクラッド》第57層・マーテン

 

 

 

「ん~・・・・・・なっかなか情報が集まらねぇな、どうなってんダ?」

 

日付は変わり翌日の朝。嘗て《圏内事件》と呼ばれたとあるギルドが引き起こした事件が発生した場所だ。流石に今は解決し、その事件でキーとなった圏内殺人は行われていなかったのだから良かったのだが、そんな街でしかめっ面をしてメモ帳を眺める女性が一人。そう、情報屋のアルゴである。

 

「フツーこんな時にレベルカンストしてるんなら誰もが目を引くはずだロ?」

 

「なのに何で目撃証言が全然ねぇんだヨ・・・・・・」

 

彼女が今追っているのは、暫らく前に得意先のキリトから聞いたレベルがカンストしている謎のプレイヤー「タツヤ」の行方であった。しかし、幾ら調査と言う名目で他のプレイヤーから情報取集を続けていたが、話しかけたプレイヤーの殆どが知らないと答えるという前代未聞の壁にぶち当たっていたのである。

 

「いや、もしかしたらキー坊やオレっちみたいにハイドスキルを駆使できるのかもナ・・・・・・」

 

「だとすれば、かなりのやり手って事か。そりゃそうだ、伊達にレベルカンストしてる訳じゃねーだろうし、サ」

 

何分、SAOについて他の情報屋とは訳が違うくらいに最先端で色々知っている事はあれど、自分達がまだ至っていない領域については例え情報通のアルゴであっても知る由のない事。彼を追うには如何やらまだ情報量が圧倒的に足りていないらしい。

 

「仕方ねぇ・・・・・・こうなりゃとことん地道に調べ尽くしてやろうじゃねーカ」

 

今までに挑んだことがない難題にアルゴの心は熱く燃え滾っていた。何より、自分の知らない情報があったとあれば『一流情報家アルゴ』の名が泣くと言うものだ。必ず本人に行き着いて見せる。

 

そう決意を新たにしたアルゴ、そんな彼女の目の前を偶々通りかかった二人のプレイヤーが妙な噂話をし始めた。勿論、それを聞き流すほど彼女の耳も衰えているはずもなく。

 

「なぁ、聞いたか?何でも58層の迷宮区の辺りにいきなり城みたいなもんが建ったらしいぞ」

 

「あ、それ、俺も見た見た!スゲェよな、誰かが何かの隠しギミックでも見破ったのかな?」

 

「(58層の迷宮区に城・・・・・・?んな隠しギミック、存在したのカ?)」

 

プレイヤーの二人組から聞こえてきたその話は、謎のプレイヤー「タツヤ」を追っていたはずのアルゴの好奇心を瞬く間に引き寄せた。それと同時に、自分が知らない情報がまた一つ増えたという事が彼女にとっては即時調査するべき代物が一つ増えたという事でもあった訳で。

 

「中には入ったのか?」

 

「いやぁ、流石に止めたよ。何か、裏ボスみたいな奴が出てきそうな雰囲気でさ。流石に一人じゃ心細いからその内ギルメン集めてから行こうかな、と」

 

「だよなぁ・・・・・・万が一のことがあって死んだら今までの事が全部おジャンになるからな」

 

「(ふんふん・・・・・・成程。情報としてはもう広がってんのかね、確かめてみるカ)」

 

二人の会話を一字一句聞き逃さないように耳を傾けつつ、アルゴはSAOの情報版のつい最近更新された最新号をストレージから取り出し、パラパラとめくる。しかし、その中にはその噂と思しき情報が全くと言っていい程掲載されていなかった。と言う事はつまり。

 

「もしかしたら、とんでもないレアアイテムとか手に入るかもな!俺も参加していい?」

 

「あぁ、人数は一人でも多い方が助かるしな」

 

「(情報誌(コイツ)の発行が1週間前の出来事だから、それが出てきたのはそれ以降ってことになるよナ・・・・・・)」

 

次に、情報屋の間で取れたての情報を取引するチャット掲示板を開く。すると、昨今の混乱した状況の元凶である《黒の使徒》達や、元よりこの世界の根幹を揺るがしている殺人ギルド《ラフィン・コフィン》の話題で持ちきりになっていて、そのような情報が取引されている、もしくは噂されている気配すらなかった。

 

「それにそこに入れば情報通でお馴染みの《黒の剣士》にも会えるかもだし」

 

「あー、あのプレイヤーやけに色んな情報持ってやがるもんな。流石ビーターだぜ」

 

「(その上、他の情報屋にも気取られてない。つまり、出来たのは昨日か一昨日の話って訳ダ)」

 

通でもあまり知りえない話題が何の因果か自分の元へ転がり込んできた。更に言えば、今目下調査中で持て余している話題よりも、追いやすい上に証拠が大々的に姿を現している。ならば、今自分が取るべき行動はただ一つだ。

 

「案外、そこに裏ボスがいて、倒したら勇者装備一式とか貰えたりしてな」

 

「そうなんじゃね?だって、見た目とか完全にファンタジーの魔王城だったし!」

 

「(行き詰った時は方向転換も必要、だったナ)」

 

先ずはそこを調べ尽くす。他の情報屋には決して真似できない位、綿密に繊細に。自分自身の過去に積み上げてきた研鑽で誰よりも正確に調べ尽くす。これ程までに『一流情報屋』アルゴにとって相応しい仕事はない、故に態々見逃すつもりもない。

 

「そうと決まれば、早速噂の本拠地に乗り込むとするか・・・・・・善は急げダ!」

 

「(それに、もしそこに超強い裏ボスがいるんだとしたら奴も出向くかもしれないからナ・・・・・・!)」

 

ファンタジー世界の魔王城のような要塞が、何の変哲もない攻略層である第58層の迷宮区にいきなり出現した。これ以上SAOプレイヤーの心を惹き付けるものもなし、なればこそ。件のレベルがカンストしている彼でも興味を持って、その場に姿を現すかもしれない。そうなればまさに一石二鳥。そう考えた彼女は多少調査に影響が出るとは思いつつも、リスクを覚悟して、その情報を纏めて態と各情報掲示板に流した。その気になる調査書の内容は。

 

 

 

【緊急】アインクラッド第58層に突如、魔王城出現! 腕に自信がある《猛者》よ、集え!!

 

 

 

 

 

2023年12月28日10:00 《アインクラッド》第58層・迷宮区 魔王城(仮)前

 

 

 

「我が元・《血盟騎士団》は圧倒的に資金不足である。故にこれより、此処の調査に当たる!」

 

「「「「「貯蓄第一、一攫千金!!」」」」」」

 

「約束しよう。私は、私は必ずかの暴虐の魔王を討ち、我等が民に平和の世を捧げる事をッ!」

 

「「「勇者様ァァァァァ、バンザーーーイ!!」」」

 

「我々の進む道にこそ、勝利の糧はある!立てよ、ギルメン・・・・・・ジーク・ギオン!!」

 

「「「「ジーク・ギオン!ジーク・ギオン!!ジーク・ギオン!!!」」」」

 

「おっ、集まってる集まってる・・・・・・にひひッ」

 

情報が開示されてから数時間もしないうちに、例の魔王城前には多くのプレイヤーが自らが立ち上げたギルドの面々やフレンド一行と隊列を成して集結。アルゴはそんな様子を物陰から見てほくそ笑んでいた。全ては、彼女の読み通りである。

 

「(キー坊は・・・・・・いないか。ま、今はアーちゃんの後輩ちゃんと例の《黒の使徒》について調査してるみてぇだから当然と言えば当然カ)」

 

大体、アルゴが引っ張り出してきた情報にいつもならすぐに食いつくであろう少年の姿は今この場にはなかった。彼は彼で忙しいのだろう、そうとは分かっていても、いなければいないで一抹の寂しさみたいなものを覚えてしまう・・・・・・そういう存在だった。

 

「(そして例のアイツは・・・・・・やっぱりいないか。時間を置いて来る気なのかナ)」

 

プレイヤーの大群の中に『タツヤ』という名前の人物がいないか確かめてみるが、いない。やはり、彼はそう一筋縄ではいかないらしい。これも分かっていた事だが、実際に肩透かしになってしまうと多少げんなりしてしまう。

 

「おや、あれハ・・・・・・?」

 

ふと、視線を集団から外して城のあるエリアとその手前のエリアの境目辺りに目を向けると、そこで不思議そうに此方の様子を伺っている二人のプレイヤーの姿を捉えた。

 

「(装備がすげぇ豪華になってるから一瞬気づけなかったけど・・・・・・もしかしてあれ、サッちゃんじゃないか?)」

 

メインの青に金やら銀やらの装飾が成された槍を携え、少しばかり露出の多い・・・・・・一見すれば《血盟騎士団》の服に酷似しているその鎧を纏い、背中には白いマントを靡かせている。傍から見ても中々の上級装備揃いの彼女は、如何やら相棒と共に偶々その場を通りかかったようであった。

 

「そこの道行くお嬢さん達、止めときな、此処は危険だゼ?」

 

「えっ、わっ、アルゴさんだ。こんなところで会うなんて奇遇ですね、お久しぶりです」

 

揶揄い混じりにその二人組の所へアルゴが歩いて行くと、彼女はすぐにアルゴの存在に気付き声を掛けてきた。後ろの相棒も「うわっ、胡散臭いのが来た」とでも言いたげな顔をしている。そう、彼女こそアルゴがアスナから託されたもう一人の教え子、サッちゃんこと《彗星》のサチであった。

 

「ん、そうだな。でもって、その様子じゃ偶々通りかかっただけみたいだナ」

 

「はい、本当に偶々です。それでえっと・・・・・・何かのイベントですか?」

 

「まぁ、それに近い感じかな。詳しくは掲示板を見てくれれば助かル」

 

アルゴがそう伝えるとサチはすぐに掲示板を開いて、内容を確認し始める。現状のSAOには珍しく、人から聞いた情報をすぐ鵜呑みにしてしまうこの性格は彼女の長所でもあり短所でもある。だからこそ、情報に強い自分が何としてでも彼女を魔の手から守ってやらなくては、と意気込みながらアルゴは彼女を優しく見守っていた。

 

「詳細とかは、まだ分かってないんですね」

 

「今から調査するところだったしナ」

 

「ええと、それなのに何で人を集める様な真似を?」

 

「そこは業務機密だから詳しくは言えないけど、一種の賭け事をしたんダ」

 

「賭け事・・・・・・?」

 

「サッちゃんは知らなくていいんだよ。結局、賭け自体成立しなかったしサ」

 

「???」

 

アルゴの言っている意味が良く分からず、首をかしげるサチ。情報の為とは言え、時には汚れ仕事もやってきたアルゴだったが、やはり純粋を絵に描いたような人物に自ら穢れを教えなければならないとなると、少なからず抵抗を覚えるのであった。

 

「んで、サッちゃんはどれだけ強くなったのかな・・・・・・へぇ、70か。かなり腕を上げたネ」

 

攻略組の大手である《血盟騎士団》が解散した今、攻略層は74層で止まっている。そして攻略組の最高戦力であるキリトのレベルが現在90。まだまだ差があるとはいえ、最前線組の面子がそろそろ追いつかれそうな段階まで彼女は強くなっていた。

 

「実はさっきまで上の階でレベリングしてまして」

 

「そっかそっか。じゃあそんなサッちゃんが態々この階層まで下りてきて何の用かナ?」

 

「あ、それについてはサチじゃなくて私が言い出しっぺなんだけど」

 

アルゴの問いに先程までサチの後ろで黙り込んでいたフィリアがそう答える。それを聞いて、アルゴはそれならば納得だ、とでも言いたげな笑みを浮かべた。

 

「へぇ、フィーちゃんの差し金ってところカ」

 

「さっきサチが言ったように偶々此処に降りてきたらね、久々にトレジャーハンターの血が騒いだから、サチを誘って来てみたってワケ」

 

ただの自称なだけなんだけどね、と苦笑いしつつ、フィリアは肩を竦める。自分の意志とは無関係に勝手に本能がそれを求める・・・・・・彼女もまた現実(リアル)では完璧なゲーマーの鏡である事の何よりの証明と言える事実だった。

 

「後はまぁ、サチがキリトに会えるかなぁってそればっかりで」

 

「へェ・・・・・・?」

 

純真な乙女心は時として大きな原動力となる。此処へ来る前に二人だけの秘密と言う体で本人から聞いた話をフィリアは何の悪びれる様子もなくアルゴに話した。勿論、そんな内緒話を告げ口された本人は一瞬で顔が真っ赤になり、フィリアの肩をポカポカと叩きながら抗議の声を上げた。

 

「ちょっ、フィリア!?それ、内緒って言ったよね!?///

 

「はっはっは、サチも随分とまぁチョロくなったよねぇ・・・・・・」

 

「やっぱりそうなのかぁ・・・・・・頑張れよ、サッちゃん。アイツはそういう事に凄く鈍いぞ」

 

「もぅ、アルゴさんまで・・・・・・!///

 

サチがキリトと行動を共にしたのは、ほんの僅かな時間だった。けれど、その限られた時間の中と偶に見る並行世界の彼の雄姿が物凄くカッコよくて。ときめくのにそう時間は掛からなかったのである。

 

「んー・・・・・・でも、残念ながらキー坊は此処には来ないと思うゼ?」

 

「え、どうして・・・・・・って、もしかしてまた《黒の使徒》についての情報収集ですか?」

 

《黒の剣士》キリト。《閃光》のアスナ、血盟騎士団団長ヒースクリフ・・・・・・この両名がいなくなったこの世界において彼はまさに最強格の称号を手にしたと言っても過言ではない。故に人伝に頼まれて調査に出向くこともあれば、自主的に《隼》のキリノと共に調査をしているというのがここ最近の彼の行動パターンであるとサチはアルゴから事前に情報を仕入れていたのである(尚、サチは只キリトが今現在どこの階層にいるかを聞きたかっただけで、行動パターン報告等は完全にアルゴのお節介である)。

 

「そんなところさ。ま、アーちゃんの事もあってからかなり熱心に調べてるみたいだし」

 

「別に変な行動をとるつもりではなさそうだから、オレっちはこうして自由にフラフラしてんだけどサ」

 

「それでもキー坊は少し思い詰め過ぎるところがあるからさ。だから、サッちゃん達も何処かで偶然見かけることがあったら、アイツの話に少しだけ付き合ってやってくれねぇカ?」

 

友達と呼べる程の厚い信頼がある訳ではないが、それでもここ数年の内で彼が情報を求めにやって来て自分の店の常連になる頃には。ソロで活動したがる彼へ、ついついお節介を焼いてしまうような「年上のオネーサン」染みた感情を向けずには居られなくなっていたのだった。

 

「そう、ですね。はい、私で良ければいつでも」

 

「あー、でも最近のアイツのハーレム具合にはちょっとウンザリもしてたからな。ついでに欲しい情報があるかどうかも聞きだしておいてくれ、いい値で売り付けてやル」

 

「あはは・・・・・・お手柔らかに」

 

同時に、数々の女性を惹きつけて止まない癖に、彼のその超鈍感とも言える態度に若干のイライラを覚えつつあるアルゴであった。

 

「ま、キー坊の話は此処まででいいだろ。で、オネーサンと一緒に行くかイ?」

 

「あっ、はい!ご一緒させてください!」

 

「私も異議なーし」

 

と言う事で、サチ、フィリア、アルゴといった何とも不思議な組み合わせで、彼女達は魔王城内部への潜入を開始した。

 

 

 

――暫らくして。他のギルドチームもそれに倣うように進軍を始め、エリア調査に当たる事十数分後。途中途中で仕掛けられたギミックの解除に各陣営共苦戦を強いられ、漸くたどり着いたと思った最後のエリアらしき大広間の先は完全に行き止まりとなっていてこれ以上の道はありそうにもなかった。だが、それ以前に。

 

「何だぁ、苦労して奥まで来たってのに宝箱一つすらないだとぉ?」

 

「やっぱり只の建造物だったってオチだったんスかねぇ・・・・・・」

 

「何だよー、意味深なところに立ってる癖にマジ在り得ねぇんですけど」

 

かなり開けた場所だというのに。そこには宝箱がある訳でもなければ、フロアボス級のネームドモンスターが待ち受けている訳でもなく。只々、無駄に広いマップが一面に広がっているだけだった。

 

「あーぁ、時間の無駄だったわー。帰ろ、帰ろ」

 

「だなー。んじゃ皆、お疲れーしたー」

 

サチ達と共に険しい道のりを乗り越えてきた猛者達は、そんな事を宣いながら諦めムードで次々と出口へ引き返していく。そんな中、アルゴとフィリアだけは明らかな違和感を察知して、誰もいなくなったフィールド上をうろうろし始める。

 

「ったく・・・・・・根性のねぇ奴らだ。情報屋の名が泣くゼ」

 

「別にいーじゃん。その代わり出てきたら全部私達のものだし」

 

「へっ、違げぇねェ・・・・・・!」

 

独占欲丸出しの彼女らを背に、サチは何となく壁伝いの捜索を開始していた。

 

「(フィリアとかアルゴさんみたく何かを求めてるつもりじゃないけど・・・・・・)」

 

「(何かしらのギミックが隠れてるなら多分壁が一番怪しいはず、だよね?)」

 

コンコンと叩く度、注意書きの『Not Broken Object』という表記が幾つも連なる。それを横へ横へと叩く位置を少しずつずらしていき、同じ動作を繰り返す。すると。

 

「あれ・・・・・・?」

 

最初に始めた位置から数十歩進んだとある一枚の城壁。そこを何度叩いても、先程のような『Not Broken Object』の表記が一向に現れない。ということはこの壁だけ破壊可能、ということだろうか。しかし、こういうのに不慣れな自分が一人で対処できるかと言えば多分無理である。なので、サチは背後にいる相棒と同行者を呼んで協力を得ることにした。

 

「ねぇ、フィリアー、アルゴさーん」

 

「何ー、サチー?」

 

「一枚だけ『Not Broken Object』の表記が出ない壁があるんだけどー、どうしたらいいのかなー?」

 

「え、それ、ホント!?やったね、流石サチ!」

 

「フ、まさかここでも物欲センサーが適用されるとは思いも寄らなかったゼ・・・・・・」

 

サチの言葉を聞くなり、猛ダッシュで傍に駆け寄るフィリアと何やらブツブツと独り言ちりながらサチのいる方へ歩いてきたアルゴ。彼女達が自分の近くに来たことを確認すると、サチは再びその一箇所の壁を叩くと同時に隣の壁も叩く。隣の壁だけに浮かび上がった『Not Broken Object』の表記を目の当たりにして二人は思わず息を飲んだ。

 

「何処かにスイッチとかあるのかな?」

 

「どうだろう・・・・・・もしかして此処の部屋に来る手前の部屋に隠しギミックがあったとか」

 

「マジかよ・・・・・・だとしたらちょっと面倒くさい事になるなァ・・・・・・」

 

これよりも前のフロア・・・・・・の仕掛けは少し複雑で、しかも一回エリアを出るとリセットされてもう一回解除しなければいけない仕様のものであった。解き方は既に何回もやって頭に叩き込まれているので問題ないが、少々手間に感じてしまうのは否めない事であった。

 

「うーん・・・・・・よし、一回全力で叩いてみるね!」

 

「「へっ・・・・・・?」」

 

と、何を思ったか、サチは自分の槍をその手に握りしめ、何の躊躇いもなくSSを至近距離で放った。

 

《ソニック・チャージ》!」

 

サチの放ったSSがその壁を捕らえた次の瞬間。ズガァァァァァァン、という派手な音と共に攻撃した場所の壁が粉々に粉砕し、その奥にさらに奥の階層へと続く道が姿を現した。

 

「ふうっ・・・・・・わ、やればなんとかなるものだね。じゃあ、行こっ!」

 

その光景と自身がとった行動に何の疑問を抱くことなく、若干テンションの上がった状態で奥へとスイスイ進んでいくサチ。そんな彼女の一連の行動を見た二人は溜息交じりに口を揃えてこう言った。

 

「「見た目に似合わず、脳筋過ぎる・・・・・・!」」

 

確かな決意を胸に成長していく彼女の意外な一面を目にして、二人は嬉しいやら悲しいやら良く分からないモヤモヤとした感情を抱えながら、彼女の後に続いた。

 

「はぁっ、何か最後は意外とシンプルでスッキリしたね!」

 

「うん、ソウダネ(絶対これダッカーの影響だわ、次会ったら一回ブン殴る・・・・・・!)」

 

「えっと、フィリア?どうしたの、大丈夫???」

 

「別に・・・・・・何でもないから」

 

「そう?でも、本当に調子悪くなったらあんまり無理しないでね?」

 

「ん、気を付けるわ」

 

もしこれが原因でいつかキリトと再会できたとしてもちょっと距離を置かれるかもしれないと一瞬だけサチの身を心配したフィリアであったが。

 

「(あ、でもそう言えば、アイツ周辺の女子って皆若干脳筋気味よね・・・・・・アスナとか)」

 

《血盟騎士団》副団長として前線を支え、その容赦ない猛攻撃ぶりから、攻略組と敵対関係にある殺人ギルドのメンバー達からも恐れられる存在。そんな彼女の姿がフィリアの脳内を掠めた。やはり、キリトをアスナ同様に好いている彼女には予め用意された才能だったと言う事なのだろうか。

 

「(でもキリト達とはあまり長く行動してなくて影響受けづらいはずだから・・・・・・うん、やっぱり後でダッカーの奴を思い切り〆てやる・・・・・・!)」

 

 

 

一方、その頃。ギルド《月夜の黒猫団》にて――

 

「あ、ヤベ・・・・・は、はっ・・・・・はっほぉい!!

 

「うわ、びっくりした。急に驚かすなよ、ダッカー」

 

「う・・・・・悪ィ悪ィ、何か急に悪寒が走ってさ」

 

「えぇ~大丈夫かよ?戦闘中に体調崩して死ぬんじゃねーぞ?」

 

「バッカ野郎、俺がそう簡単に死ぬと思うかァ?いいか、俺は天下の・・・・・・ぶえきしっ!!

 

「・・・・・・本当に大丈夫かよ?」

 

殺意を抱かれた事による、一種の危険予知的なくしゃみと悪寒に襲われ、仲間に心配されていた。

 

 

 

 

そして場面は戻り、《アインクラッド》第58層・迷宮区にある魔王城の玉座の間。奥へ奥へと進んでいったサチ一行が辿り着いたのは先程のギミックの合った大広間と同等の広さを持った、かなり広々とした空間だった。

 

「わ、凄っ・・・・・・!?」

 

大広間とはまた違った非常に豪華絢爛な装飾に彩られた空間。左側には厳重そうな扉があり、その近くには二人の少女が座っている。その最奥に聳える高く大きな玉座に一人の男が頬杖を突きながら、此方を見つめていた。そして。

 

『よくぞここまで辿り着いた、この世界に囚われし人間達よ』

 

『つい最近建てたばかり故、当然ではあるが入り口や大広間までは人はくれど、終局である此処まで辿り着いた者は誰一人としていなかった』

 

『つまり、貴様達が初めての正式な来客となる』

 

静かに笑みを携えながら、その男は玉座から一歩も動かずに雄弁にものを語る。

 

『問おう、望みは何だ。金か、名誉か、力か、根源か』

 

『それともまさか・・・・・・この俺との戦いを望むなどと、つまらん戯言を言うつもりは無かろうな?』

 

その一言一言は威力のある言霊となりて。空間を通じて、ビリビリとした衝撃をサチ達の身体に刻み込む。もう此処にいる時点で分かる、対象とのあまりに圧倒的な格差が。

 

「貴方が・・・・・・この魔王城のフロアボスで間違いありませんか?」

 

しかし、そんな空気の中でサチはその男に真っ向から相対し、質問をする。と、その男は何を思ったか突如として笑い声を鳴り響かせた。

 

「フロアボス、だと・・・・・・?ク、フハハッ、中々に面白い事を言う。そもそもゲームの中において、この俺のように理不尽で扱いに困る者をボスに添えるような開発者は、決してクリアさせる気持ちは持ち合わせてはいないはずだ」

 

「あぁ、はっきり言おう。それはとんでもないクズなんだろうな、きっと」

 

そこで一旦言葉を切り、男は玉座から立ち上がり此方へゆっくりと近づいて来る。遠くからでも感じ取れていた圧倒的なオーラがプレッシャーとなり、男に距離を詰められる度にまた一段、更に一段と重く圧し掛かる。ついに眼前に迫ったその男にサチ達は武器を向ける事すら叶わなかった。だが。

 

「ふむ・・・・・・成程な。人間にしては崇高な根源を持っている、貴様の名は?」

 

特に此方側に攻撃してくる事もなく、目の前のサチにそう問いかけてくる。今にも目の前の男のオーラに飲まれそうになりながら、サチは必死に耐えて問いに答えた。

 

「・・・・・・サチ、私はサチ。後ろの二人は友達のフィリアとアルゴさん」

 

「サチ、とその友か。良かろう、その勇気と直ぐに無謀に身を任せぬ冷静さ・・・・・・気に入ったぞ」

 

そう言って、男は先程よりも少しサチ達との間に距離を置き、再び口を開いた。

 

「故に、先刻の問いに答えよう。安心しろ、俺はフロアボス等ではない」

 

「俺の名はアノス。異世界より来たりし真の魔王・・・・・・《暴虐の魔王》アノス・ヴォルディゴードだ」

 

男が自身の名を明かしたその時。男の顔の横にサチ達と同様にこのゲームのプレイヤーである証のHPゲージが表示される。一見普通に見えるHPゲージ。だが、この男は常識では考えられない数値を叩きだしていた。

 

「レ、レベル1でHPが階層ボス並み・・・・・・何だよ、この滅茶苦茶な数値は・・・・・・!?」

 

その規格外さにアルゴが驚愕の表情を浮かべる。そう、通常であれば最初期のレベルである1の段階でここまで体力値が高いスキルは現在確認されているユニークスキル全てを照らし合わせても存在しない・・・・・・いや、存在するはずがないのだ。

 

「チートバグでも仕込むには膨大な時間を必要とするのに・・・・・・一体どうやって!?」

 

「あぁ、そうだ。当然、チートなどと言う小狡い手段は一切使っていない、全てが元々だ」

 

確認の為、より詳細なステータスを表示してもらうと、その規格外さがはっきりと分かった。先に提示したHPは勿論の事、他のSTR・VIT・DEX・DPS・SP・移動速度倍率。これら全てのステータスが現時点でのレベル表記にしてはあまりにも高すぎた。

 

「嘘臭いけど、マジっぽいな。改竄の形跡とバグの後遺症が全くないゼ・・・・・・」

 

存在しないユニークスキル《魔王》。最初期レベルだが、経験値の表記が既に傍点となっていて、これ以上レベルが上がらない事を示している。そんな異常なステータスの持ち主、《魔王》アノス・ヴォルディゴードは今まで表記していたステータス画面を消し、彼女達に向き直り、口を開く。

 

「ステータスの話はもう終わりで良いか?唐突だが、お前達に聞きたいことがある」

 

「な、何でしょう、えっと・・・・・・」

 

「フ、好きに呼んで構わん」

 

「は、はい。じゃあ、アノスさん・・・・・・聞きたい事とは?」

 

「あまり身構えるな、サチとその友人達よ。何、簡単な質問だ。知らなければ他を当たるだけの事」

 

再び言葉を切ると、男・・・・・・アノスは地面から剣のような形をした影を取り出し、その柄を握る。刹那、それを覆っていた影が拡散し、漆黒の魔剣が姿を現す。アノスはそれを持ったまま彼女達に一つの問いをぶつけた。

 

 

 

「――お前達は、()()()()()()()()()()()という名前を何処かで聞いたことはないか?」

 

 

 

 

                                 To be continues… 

                                                                                                         

 

~次回予告~

 

 

異端(イレギュラー)湧く、混沌の地にて。暴虐の魔王がついに動き出す。

 

 

その最中、闇に蠢く者達の鎮魂歌(レクイエム)が響き渡り、不浄の者は地へ還る。

 

 

次回、ソードアート・オンライン-青き少女の証明-第八話「Laugh Coffin」。

 

 

「――関係ないよ、コイツらは・・・・・・死んでもいいヤツだから」

 

 




原作で破壊不可のヤツなんて表記だったっけ……?と作者がド忘れしてしまったので仮名称として『Not Broken Object』にしたけど、間違ってたら済まん。

それはそれとして、今日の21:30から『魔王学院の不適合者』のDVD/Blu-ray全巻発売記念の生放送がありますね!……もしかしたら2期発表あるかも!?今宵は共に楽しみましょう!

それでは、また来月!!
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