さて、一応文章を書きながら度々此方の様子を見に来ているわけですが。
何と有り難い事にこの小説へのUAが2000を越えました!有難う御座います!!
……それとSAOの力スゲェな、と改めて実感しております。
原作のSAOは劇場版のプログレッシブのPVが公開されてましたね。
プログレの中ではそうですね、キズメルが好きですね(漫画版が特に)。
そしてそして!魔王学院の不適合者2期が来ましたね!!しかも分割2クール!!
確かに次の話からは「1クールでまとめるには厳しいかもなァ……」と思っていたので嬉しい限りで御座います。嗚呼、早く放送時期来ないかな……。
まぁ、作者の話は此処までにして。早速本編行ってみましょう、どうぞ!!
2023年12月28日10:30 《アインクラッド》第58層・迷宮区 魔王城デルゾゲート 玉座
「――エウゴ・ラ・ラヴィアズという名前を何処かで聞いたことはないか?」
「エウゴ・ラ・ラヴィアズ・・・・・・?」
魔王アノスからの問いに挙げられた名前をサチは思わず復唱する。勿論、サチ自身はその名前を聞いたことはない。しかし、それは情報屋のアルゴとて初耳の情報だった。
「オレっちでも聞いたことはないな、ソイツの名はヨ」
「そうか」
アルゴの言葉を聞いて、魔王アノスは特に感情を込めることなく呟いた。如何やら、彼方もすぐに手に入る情報ではないと踏んでの質問だったのだろう。そんなあくまで冷淡な対応をした彼に今度はアルゴが逆に問いかけた。
「アンタの狙いは何だ、ソイツが何か関係しているのカ?」
「何、此方の世界側の不始末ともいえる些末事だ。気にする必要はない」
だが、アノスはその問いには答えようとせず、適当に濁した答えのみを言い放つ。気にする必要はない・・・・・・そのアノスの発言が情報屋アルゴの癇に障ったのは言うまでもなく。
「そうかい。いやぁ、それは残念・・・・・・このオレっちの情報源を持ってすれば、右も左も分かんねぇような輩があちこち回って探すよりは十分時短できるんだがなァ?」
「何・・・・・・探し当てれるとでも言うのか?」
「あぁ、当然さ。尤も今は情報集めしなくちゃないが、それが何処かのフロアボスを指してるっていうなら話は別だ。アンタがソイツの特徴の情報さえ提供してくれれば、特別料金で調べてやるヨ」
・・・・・・こういう時でさえ、商売を忘れないのは実にアルゴらしいと言えばらしかった。
「ふむ、こういう時こそ出資を惜しむものではないとも言うしな。よかろう、その提案を受けてやる」
「オーケー、交渉成立ダナ」
アノスとアルゴがその場でガッチリと握手を交わす。アルゴにとって思っても見ない収穫であった。
「あぁ、そうだ。交渉成立のついでに、此処で有益な情報を一つ」
「ほぅ、それは何だ。言ってみろ」
「実は今、例の《黒の使徒》が最初に出たエリアで、彼のPKギルド討伐戦が行われててサ・・・・・・」
2023年12月28日10:38 《アインクラッド》第24層・迷宮区 草原エリア
「へっ、如何やら正規の連中が、無謀にも俺等を狩りに来たらしい」
「血が・・・・・・騒ぐ」
「クックック、楽しい、楽しいねェ。精々殺し尽くしてやろうじゃないか、攻略組をよォ・・・・・・!」
徐々に辺りに喧噪が響いてくる。手始めに撒いた連中には如何やら勝てたようだな。しかし、テメェらの行く先に待っているこの精鋭部隊を、キレイキレイな連中が倒せるか?
「行くぞ、ザザ、ジョニー」
「応よ、リーダー」
「・・・・・・」
リーダーの俺と側近の二人、ザザとジョニーが今まで腰を下ろしていた石のオブジェクトの上から飛び降りて、武器を構えた。次の瞬間。
「――だあぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
目にも止まらぬ速さで駆け抜ける、黒き一閃。あぁ、ずっと待っていた。もしかしたらもしかしたらと思っていた。俺達と同類の目をした貴様が俺達を直接倒しにくる、その時を・・・・・・!
「はっはァ!待ってたぜ、黒の剣士さんよォ!!」
ラフィン・コフィン討伐戦。その狂気と混沌の織り成す大地にて。彼、《黒の剣士》キリトは現れた。
「――成程な、有象無象の快楽殺人者がうろうろと。実にくだらん連中め」
「あの・・・・・・こんな場所に私達が来て良かったんですか?」
「酷だろうがな。だが、敢えて見ていろ、サチ。これがこの世界の裏の顔というものだ」
そして、その戦場の草陰には。先程アルゴによって情報を吹き込まれたアノスとサチ、フィリアも姿を見せていた。サチにとって快楽殺人者とまで呼ばれた者達が実際にPKをする場面には立ち会ったことがなく、これが初めて。だが、それを含めてサチが更なる強さを手に入れる為の刺激となれば。そう思って、彼はサチを此処へ連れて来たのであった。だが、本当の理由は。
『その討伐戦の場所に、今さっきキー坊が姿を現したって情報が入っタ』
『状況は悪いが、アイツに会うなら今だぜ、サッちゃん』
そう、イレギュラー要素である《黒の使徒》の出現や《血盟騎士団》の解散により、本来の予定から大分遅れて開かれたこの討伐戦に、あのキリトが参加しているとの情報が入っていたのだ。
攻略組最強の称号を欲しいままにした剣士であるキリトが入ったことで、討伐部隊の士気は大幅に上がり、同時に敵部隊においてもリーダーのPoHが彼と接敵したことによって上がったテンションを感じ取り、士気も上がっている・・・・・・そんな状況。
「けど、今は確か《血盟騎士団》がいないのよね?じゃあ、この戦線、誰が仕切ってるの?」
「それはアルゴにも分からんそうだ。何でも、新進気鋭の者達による指揮らしい」
「はぁ、この機会に攻略組のトップに躍り出ようってワケ?何処のどいつよ、それは」
「ねぇ、フィリア。もしかして、あそこにいる人達じゃない?」
サチが指さした方角。ここからだと少し見えにくいが、遠方にそれらしき人物たちの姿が目に入る。
――彼等の姿を見た時、誰もが思った。背が、エグ過ぎるほど高いと。
いや、しかし此処はVRMMOの世界。身長など幾らでも調整可能だ。もしかすると自分が設定したキャラを態とガタイのいい外国人並みの高身長にしているのかもしれない。
だが、忘れてはならない。此処はSAO。茅場明彦によってデスゲーム開始が宣言された日に、合わせ鏡によってアバターが現実での姿そのままに再調整されていて、髪型や髪色等の細かなパーツ設定は出来ても個人を象徴する骨格や体形までの調整は出来ない仕様になっている。つまりは。
「あれがマジの身長ってワケね・・・・・・」
あれこそが、彼等のナーヴギアによって読み込まれた、そのままの姿である可能性が高い。
「この俺よりも背が高いとは。フ、中々に面白そうな人間達だ」
「えっ、ちょっと、アノスさん!?」
「サチとフィリアはそこに居ろ。あの者達との交流がてら、少々ウォーミングアップをしてくる」
普通の人間なら、怖いから関わり合いになりたくないなぁと思ってしまうだろう。しかし、そこは魔王アノスだ。本来の常識が彼に通用するはずもなく、興味を持った彼は単身戦場へと向かっていった。
「行っちゃった・・・・・・ねぇ、どうすんのサチ。あの人、目立ちすぎるわよ、色んな意味で」
「言われた通り、待ってよう。キリトもまだ見つからないし」
「うわぁ出たよ、サチのクソ真面目過ぎるところが・・・・・・」
自分も飛び出しては行きたいが、親友であるサチを置いてはいけない。結局、フィリアはサチと共にその場に留まる事にした。
「――では、行かせてもらおう。罪人共よ、我がバエルの揮う、正義の錆となるがいい・・・・・・!」
「乳のでけぇ女すら手にかける連中だ。遠慮はいらねぇ、派手にブチかますぜ!!」
「それはお前の中での基準だろうが・・・・・・まぁ、いい。どうせやることに変わりはねぇ」
「そっか、じゃあ遠慮なく殺すね」
アノスが向かった戦場の一角。そこでは既に噂の新進気鋭のギルド《鉄華団》の面々と《ラフィン・コフィン》に身を置く殺人者たちとの戦いが始まっていた。
「なァに、調子ブッこいてんだァ・・・・・・あァ!?」
「実力の差も分からぬとは・・・・・・愚かな」
「馬鹿言え、こちとら勝てりゃあどんな手段を使っても――あ゛?」
「さらばだ、バエルに逆らう逆賊よ」
刹那。構える動きすら相手に察知させず、彼が手にした黄金の剣は、あっという間に殺人者の上半身と下半身を真っ二つにした。殺人者は、断末魔を上げることなく消え去った。
「・・・・・・潰す」
「クソ、強すぎる・・・・・・何なんだよ、テメェらは!?」
「アンタには教えないよ」
ほぼ高身長な彼等の中でも異彩を放つ一人の少年。彼は背は他の者より低くとも、その目に宿る殺意は目の前の殺人者の集団を目にしても衰える事はなく、彼の持つ巨大なメイスが殺人者の身体を無慈悲にも貫いた。
「・・・・・・こっちは一先ず終わったよ、オルガ」
『おう、お疲れさん、ミカ。まだ行けるか?』
「当たり前でしょ。それで、次はどいつを殺ればいい?」
消滅した者に一切の感情のソースすら割かず。彼、三日月・オーガスは次の標的の元へ向かった。
「おらおらァ、天下の《鉄華団》所属の、このシノ様がテメェらを地獄に送ってやらぁ!!」
「遠距離砲撃・・・・・・そんなことが出来るのか!?」
「そんなもん、やってみなきゃ分かんねぇだろうがよぉ!」
「全力で行かせてもらうぜ、ギャラクシーキャノン・・・・・・発射ァ!!」
彼、シノの持ったスナイパーライフルのような装備からヴヴヴヴヴヴ、と音がして。次の瞬間には、中に込められた銃弾が殺人者の胸部中央を大きく抉り取る。VRMMOの中でなければ、周りの地面ごと吹き飛ばされているに違いない。それくらいに、凄まじい衝撃であった。
「もう大方倒しきりやがったのかよ・・・・・・三日月もシノも張り切り過ぎだろ」
「て、テメェ・・・・・・こんなことして、ウチのリーダーが黙ってると、思う――な」
「悪いな。俺達、《鉄華団》の為に・・・・・・死んでくれ」
他のメンバーの活躍に溜息をつきながらも、自分が追い詰めた標的を彼の装備である巨大なペンチのような武器で相手を容赦なく絞め殺した。もしこれが現実世界であったのなら、相手は立ちどころに見るも無残なペシャン公になっていただろう。
「何だ、もう蹴りが付きそうなのか・・・・・・つまらんな」
その様子を戦場の地を踏みしめながら堂々と見物していたアノス。彼は争いがあまり好きではない。だが、その争いの因子が彼の大切にしている子孫や仲間に襲い掛かった時、彼は彼の持ちうる絶対的な『破壊に特化した力』でそれを払う。
アルゴから話を聞いた時から彼は考えていた。もし、その討伐戦で殺人を犯したことないキリトが近い将来、それらに責任感を背負いすぎてしまわないかと言う事を。ならば、丁度いい。盟友である彼にそんな事をやらせるくらいならば。
「おいおい、レベル1の癖して此処に迷い込むとか馬鹿かァ!?」
「何だ、貴様は」
「俺か?俺はなァ、今からテメェを殺す殺人者だよ、ヒャッハァ!」
「俺を、殺す?ほぅ、良く吠えた」
「では、ハンデをやろう。俺は此処から一歩も動かん、見事殺してみよ。・・・・・・出来るのならばな」
宣言通り、彼はその場で腕を組んで立ち尽くす。普通であれば正気の沙汰ではない。だが。
「なめ腐りやがって・・・・・・死ねや――ごふっ!?」
アノスは何もしていない。だが、飛び掛かった殺人者は彼の前で謎の衝撃波に吹き飛ばされた。
「な、に・・・・・・一体、何が・・・・・・!?」
「分からぬか。”
「は・・・・・・!?」
「
心臓の鼓動。そんなスキルや攻撃手段などSAOには存在しない。だが、この男は魔王アノス・ヴォルディゴード。必要があればどんな理だろうとねじ伏せてしまう、史上最強の魔王だ。
如何に厳重に管理されたデータの世界とは言え、誰も彼に常識を当てはめる事は出来ない。
「さて、殺人に快楽を覚えた異常者よ。覚悟は良いな?」
「だから何が――」
アノスが倒れこんだ男の顔面近くで指を弾く。男は・・・・・・瞬く間に消滅した。
「《
「――は、なッ・・・・・・!?」
が、アノスが呪文のようなものを唱えると、消滅した男が再び蘇る。HPが完全に回復した状態で。
「驚いたか。この俺に掛かればこの世界でも死して3秒までなら死者を蘇生することが出来る」
「これが俗にいう、3秒ルールだ」
右手の指で3を表すポーズを取りながら、堂々と宣言するアノス。だが、そのジョークはまたもや何の反響もなく終わった。
「・・・・・・ふむ、ここでもか。仕方がない、次からはハイレベルなジョークで攻めてみるとしよう」
そう言ってアノスは、事前にアルゴに渡されていた回廊結晶で何が起こったのか訳が分からず朴ける殺人者の彼を指定の場所へと転送した。
「討伐、とは言ったが。やはり何人かは牢獄へ転送した方がよさそうだな」
「そうだな、試しにリーダー格の男を捕えてみるとするか」
――去り際に、そんな事を口にしながら。
現場で反応はなかったが、一方のアノスにかけられた気配遮断スキルのお陰で、生い茂った草むらの陰に隠れていたサチとフィリアはその光景を目にして。
「はぁ!?何よ、現状のSAOでプレイヤー蘇生が出来るなんて、禁じ手じゃない!?」
「3秒以内って制限も含めて、《背教者ニコラス》クエストのアレと同じ効果なんだね」
ひそひそ声ではあるが、かなり動揺していた。当然だ、SAO内での死は現実世界での死を意味し、本来は決して回避する事は出来ない。彼女達が言っているクエスト限定アイテムの《蘇生結晶》もたった一つしか落ちないドロップ品の為、そこまで万能ではないのである。
「・・・・・・そうなると、実質アレを無限に持ってるって話になるわね。在り得ないんだけど」
「でも、その蘇生手段をああやって何回も使われて蘇生してたら、精神面的にどうなるか分からないよね」
「急に怖い事言わないでよ、サチ。ちょっとゾッとしちゃったじゃない」
死にはしないが、その内確実に精神崩壊を起こす。蘇生とは聞こえがいいが、やはり「死」というものが絶対的なもので、ある意味での救済と捉える者の多いこの世界では、実現してしまえばとても末恐ろしいものであった。
「でもまぁ、味方にそういうスキル使える人がいるといざって時は助か――」
「ごめん、フィリア。ちょっと静かに」
先程の話題から雰囲気を変えようと、敢えてポジティブに捉えようとしたフィリアの発言を、サチが突然遮り、視線をアノスのいる場所から少し離れた森林エリアの入り口付近へ向けた。
「ちょ、ちょっとサチ、いきなりどうした――の」
勿論、喋っている途中で遮られて少し不満そうなフィリアは、サチの行動に若干驚きつつも同じ方向を見やる。すると、膝下まである黒いポンチョを被り、同色のフードで顔全体を覆ったプレイヤーと特徴的な黒いコートを着たプレイヤーが剣戟を交わしている様子が視界に飛び込んで来る。
恐らく誰が見ても見間違うはずがない。黒いコートの彼は、きっと。
「うん、やっぱり。キリトだ」
彼・・・・・・キリトは、単身でありながら黒フードの男以外に赤い逆十字のマントの男と黒いマスクをした男3人とやり合っていた。状況的に見て、今のところ彼にダメージはそこまで入っていないようだが。
「不味いわ、アレ《ラフィン・コフィン》のリーダーのPoHとその幹部のザザとジョニーよ」
「・・・・・・ッ!」
《ラフィン・コフィン》の中でも最も手が付けられない3人組を纏めて相手にしているのだ。後々、彼が死の淵まで追いつめられることは目に見えて明らかであった。
「幾ら、攻略組最強の《黒の剣士》でも、アイツらに勝てるかどうか・・・・・・って、サチ!?」
「ごめんフィリア、此処で待ってて・・・・・・!」
その光景を見て、居ても立っても居られなくなった彼女は。心の奥底から襲い来る恐怖心を何とか抑え込み、フィリアの制止も聞かず、不慣れな戦場へ一目散に駆け出す。
「ふむ・・・・・・待っていろと言ったはずだが。こればかりは仕方ないか」
「お陰で、次の標的も定まったことだしな。取り敢えずは感謝するぞ、サチ」
――当然その行動は、同じく戦場にいた
「・・・・・・!」
駆けだした。一目散に。他の些細事には特に目も暮れず。只、彼のいる場所を目指して。
「(ソードスキル、セット・・・・・・!)」
本当なら、PKと戦うなんてとても怖くてできない。プログラムの一部であるモンスターでさえ、やられたら死ぬと考えると怖くなるように。それが意思を持った殺意の塊を相手にするとなれば、怯んで行動できなくなってしまっても何もおかしくはない。
「(本当にごめん、フィリア。でも私は、見てしまった以上は見て見ぬフリなんてできない)」
無謀かもしれない。今度こそ、本当に死んでしまうかもしれない。
でも、それ以上に彼が自分の目の前で傷付いていく様を黙って見ていられる程、冷静じゃいられない。以前、彼が私を何度も助けてくれたように、今度は私が彼を守れるようにならなきゃ駄目だと。その思いだけが強く心の中で渦巻いて。
『大丈夫、サチはもっと強くなれるわ。自信を持って』
脳裏に、師であり親友でもあった
「(アスナ・・・・・・キリトを守れるだけの力を、勇気を。私に頂戴・・・・・・!)」
――精一杯の覚悟を抱いた時、私は一陣の風となっていた。
「ぜぇやぁぁぁぁぁぁぁっ!!」
「クフフフ、楽しい、楽しいねェ!」
「アンタもそう思わないかい?なァ、黒の剣士サマ!!」
「ふざけるな、誰がお前らなんかと・・・・・・!」
リーダーであるPoHと激しい口論を交えながら戦いつつも、その取巻きであるザザとジョニーの動きにも警戒する。大凡、並みのプレイヤーにはとても捌くことの出来ない膨大な情報量を《黒の剣士》キリトはたった一人で把握しながら戦っていた。
「そんなに遠慮しなくていいだろうがよ、俺には分かるぜ。アンタは俺等と間違いなく同類だ」
「いっその事、手を組むってのもありかもなァ・・・・・・どうだい、この退屈でクソッタレな世界を一緒に壊してやろうぜ?」
「・・・・・・断る!」
段々と激しくなる剣戟の応酬。PoHの繰り出すメイトチョッパーの一撃を自身を象徴する黒剣《エリュシデータ》で。
――弾き。
――受け流し。
――躱す。
「おやおや、冷たいねェ・・・・・・だが、その余裕ももうすぐ終わる」
「――チェックメイトだ、《黒の剣士》キリトォ・・・・・・!!」
「何ッ・・・・・・!?」
横からザザとジョニーの連撃が入り、それを防いだと思ったら今度はその二人がバックステップで距離を取り、麻痺毒をたっぷりと塗り込んだ投げナイフの連投がキリトを襲う。
アレに当たってしまえば、麻痺毒状態で動けなくなり、その内に殺られる。それだけは避けなくては。
「(このままじゃ不味い、どうする・・・・・・『アレ』を使うか・・・・・・!?)」
《黒の剣士》キリトにはいざと言う時の奥の手があった。しかし、出来る事なら現在の攻略層よりもっと上の階の階層ボス戦までなるべく口外せずにいたい。その為には、今使うのは得策ではない。けれど、何か手を打たねばこれは容易に避ける事は出来ないだろう。
「(いや、まだ他の手段で凌ぐことが出来るかもしれない、考えろ・・・・・・!)」
自分の奥の手を使わずにどう凌ぐか、その考えに集中していたキリト。そんな彼の元に。
「――キリト、避けて・・・・・・っ!」
「《フォーチュネイト・アイル》・・・・・・!」
疾風をその身に纏ったサチがSSで全てのナイフを薙ぎ払い、その勢いのままザザとジョニーに強烈な一撃をお見舞いした。
「何・・・・・・だと・・・・・・!?」
「畜生ッ・・・・・・テメェは・・・・・・!」
バックステップで距離を置き、サチはキリトと背中合わせで彼等3人と再び向き合う。キリトは、目の前で繰り広げられるその光景があまりにも信じ難いものであった為、一瞬だけ思考停止してしまうが。即座に切り替えて、自分の目の前に現れた彼女に問う。
「サチ・・・・・・何でキミが此処に?」
「何でって・・・・・・ホント、何でだろうね。私にも分かんないや」
「でもさ、キリトが此処でやられちゃうくらいなら。私はその脅威からキリトを守りたい」
――斯くして、この狂気と混沌の渦巻く戦場で。黒の少年と青の少女が、再び巡り合った。
「へへッ、《彗星》のサチか。俺はなァ、最近ちやほやされるテメェに虫唾が走ってんだよォ!!」
だが、そんな感動的な再会の余韻に浸る暇もなく。ザザが狂気を纏い、サチに襲い掛かる。しかし、サチは武器を弾き飛ばし。
「――っ、貴方はあの時の・・・・・・!」
「ケ、覚えてたんだな。そうさ、以前テメェら《月夜の黒猫団》をハメてやったのはこの俺さァ!」
「この前はちと失敗したが、今度は確実に殺してやるぜェ・・・・・・!」
27層の回廊エリア。そこのモンスターハウス殲滅をギルドの依頼で請け負った《月夜の黒猫団》一行を罠に嵌め、最終的に麻痺毒の入ったポーションで全滅に追いやろうとした張本人。あの時の依頼人こそ、このザザであったのだ。
「ザザ、援護を・・・・・・!」
「させるかぁッ!!」
サチによって斬り込まれた傷を回復し、サチと応戦するザザの援護に回ろうとしたジョニーをキリトが阻む。勿論、そんな状況をPoHがただ眺めているわけもなく。
「ナイスだ、ジョニー・・・・・・その背中、もらったァ!」
「・・・・・・!」
「そうか。ではその言葉、そのまま貴様に返すぞ」
「なッ・・・・・・!?」
「《
キリトの背後に飛び掛かろうとしたPoHは自身のいた空中に突如として現れた膨大な雷撃の塊を間一髪で回避し、声のした方角を見やる。そこには。
「な、何だテメェは!何でこのSAOで魔法が使える・・・・・・!?」
「この世界で魔法が使えぬからと言って、この俺に使えないとでも思ったか」
「は、はァ・・・・・・!?」
SAO全ての常識が通用しない、たった一人の存在・・・・・・魔王アノスがいた。
今まで狂気とも思えるその感覚で殺人を愉しんできたPoHであったが、これ程までに異質で。尚且つ話が通じず常識すら通じない相手との対峙は初めてだった。故に、彼にしては珍しくたじろいでしまう。
「お、おい、アンタ!此処はアンタのレベルじゃ無謀過ぎるぞ!」
ジョニーを相手取りながら、瞬間移動のような速さで割って入って来たアノスにキリトが声を掛ける。キリトがそう思ってしまうのも無理はない。彼は現在最初期レベルのままであるのだから。
「こんな時でさえ他人を心配している余裕があるとは、やはりお前は優しいなキリト」
「な、何を言って・・・・・・!?」
「時にイレギュラーの最中ではその数値だけがものをいう訳ではない、覚えておけ我が盟友よ」
「・・・・・・尤も、この時間軸のお前はまだ俺の事を知らないだろうがな」
盟友と呼ばれたキリトが幾ら彼について思考を巡らせて考えようと、今現在の彼に彼と何処かで遭遇したと言う記憶は何処にもない。彼が初めて魔王アノスと巡り合うのは、本来であればもっと先の未来の話。だが、アノスはその事実を承知で彼を盟友と呼んだのだ。
「俺の事はいい。お前は目の前の戦いとサチの事を気にかけてやれ」
「・・・・・・死ぬなよ」
「フ、任せよ」
キリトとアノスは必要最低限の言葉を交えて、再び自らの戦う相手に向き直る。
初めての共闘。だが、志を同じくする彼等が互いを理解するのに時間を掛ける必要はなかった。
「死に曝せやぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
「この平和な世界において、敢えて闘争を望む愚かな人間よ。精々、己が罪と向き合うがいい」
「しゃらくせぇぇぇぇぇぇ!!」
「――キリト、サチ、その二人を俺の元に寄こせ。奴らを『牢獄』へ送る」
PoHの攻撃を回避しつつ、アノスがキリトとサチにそう呼び掛けた。それを受けて、両者は其々向き合っていたザザとジョニーを剣戟で吹き飛ばす。
「貴様らに似合いの住処のプレゼントだ、有難く受け取れ」
「がはっ・・・・・・!?」
アノスに向かって来たPoHの腹部に蹴りを一撃。その蹴りを直撃で受けたPoHは衝撃で吹き飛び、同じく飛ばされたザザとジョニーとぶつかり、合流する。その一瞬の隙を利用して。
「――回廊結晶、転送先《地下監獄》」
「・・・・・・ハ、まんまと嵌められたのは俺達ってワケか」
「まぁ、いいさ。もし次があったなら、必ずテメェら全員皆殺しだァ!クハハハハハハハハ!!」
回廊結晶での強制転移によって、犯罪者プレイヤーが最後に行き着く場所とされる地下監獄エリア。そこへ転送されながらも、最後にPoHはあくまでそれを笑い飛ばした。
「全く、最後の最後まで執着心の強い奴らよ」
「はは、全くだな・・・・・・」
「・・・・・・」
こうして、長らくSAOの舞台で暗躍し続けた犯罪者ギルド《ラフィン・コフィン》は壊滅。以降、この討伐戦での戦果が瞬く間にゲーム内に広がると同時に、それ以外の多くの犯罪者ギルドが無抵抗の上で一斉検挙されることとなり、SAOから一時的にPKと言う名の殺戮行為による脅威は去った。
だが、彼が最後に残した言葉。これは、単なる負け惜しみか。それとも、彼等への未来の警告か。それはまだ、誰にも分からない。
2023年12月28日11:15 《アインクラッド》第22層・コラルの村
「――では、俺は他に目的がある故。お前達とは暫しの別れとなる」
それから少し間が空いて。討伐戦を終えた彼等は、休憩がてらタウンのある第22層を訪れていた。 町に入ってそう時間が経たないうちにアノスがそう言って、次の目的地へ向かう準備を始める。急なタイミングでそんな話をされたキリト達はというと。
「何でこのタイミングで・・・・・・?」
「ず、随分急なんですね・・・・・・」
「そうか・・・・・・正直、この先アンタがいれば階層攻略も楽になりそうだったんだけどな」
「ク、お前にしては心にもない事を言うではないか」
余りの急さにちょっと呆れている感じのサチとフィリア。彼にしては珍しく、他人を階層攻略へ誘おうとするキリト。アスナやクラインのお陰で人との交流について徐々に慣れてきた彼であったが、知り合って間もないプレイヤーとはそこまで早く打ち解けられるほどコミュ力は上がっていない。故に、先程の言葉は彼なりに別れ際の軽いジョークを言ってみた、と言うところだろう。
「・・・・・・む、そうだった。忘れるところだったぞ」
彼等から別れの言葉を受け取って、転移魔法《
「お前が先程口にした、この世界の主たる目的・・・・・・階層攻略」
「もし再び挑むというなら、俺の代わりとして我が配下を此処へ置いて行こうではないか」
「え、えぇ・・・・・・それは有り難いけど、いいのか?」
またもやの突然の提案に少し度肝を抜かれるキリトであったが、アノスへ一応の確認を取る。すると彼は。
「何、構わんさ。この世界へ来て初めて出会った者達だが・・・・・・実力は申し分ないぞ?」
「そうか。悪い、助かるよ」
「うむ。という訳で、早速自己紹介といこうではないか・・・・・・《
キリトの返事を受け、アノスが魔法陣を起動してその場に二人のプレイヤーを呼び出した。
そう、彼女達はサチ達が初めてアノスと会った時、魔王城の玉座にいたプレイヤー達。初めての転移魔法に驚きつつも、彼女達はアノスに促されるがままにキリト達の前へ出て、軽く自己紹介をする。
「えっと、その、リーファです。よ、よろしくね?」
「シノンよ。訳あって急にこっちの世界に飛ばされてきたの」
リーファ、シノンと名乗った彼女達は、目の前の彼等と初めましての握手を交わす。
サチ、フィリアと来て、最後にキリトと向き合ったリーファが突然。
「――って、あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!?」
まるで此処にいるはずもない者へ向けた驚愕の声を漏らす。
そして、彼女は暫らくキリトを見つめたまま固まって動かなくなり・・・・・・次に紡いだ言葉が。
「嘘・・・・・・お兄、ちゃん?」
「えっ・・・・・・?」
「「「「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」」」」
To be continues…
前回の冒頭と魔王城デルゾゲートのシーンでチラッと登場したリーファとシノンが遂に(といってもそれほど間が空いてもないですが)参戦!!
そして、アノス様の戦闘描写がなかったなーと思い、魔王学院の不適合者の例の初回登場無双シーンを導入してみました。
……ラフコフの3人に関しては、完全に作者が性格忘れてますね。申し訳ない。
キリトとサチを此処で一旦合流させて、次回からSAOの要である階層攻略に移ります。勿論、戦う事になる階層ボスは……ここまで読んでくれた皆さんなら察してますよね?
それではまた来月、お会いしましょう。それでは!!