優希-Yūki-、再び全国へ   作:瑞華

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清澄高校麻雀部
第1話、二人の部室


 清澄高校の旧校舎、その最上階に麻雀部がいる。春が過ぎて新入部員とワイワイ騒ぐという計画は完全に崩壊していた。

 

「これは大変だぞ、染谷部長」

「でも、どうしようもないんじゃー。慌てても部員が増えやじゃない」

「それはそうだけど、ちょっとはいいじゃないか? 新入生を期待くらいしたって」

「その、あんたの後輩も駄目だったからしかたがないのう」

「辛いぞ」

 

 優希にも分かっているがソワソワするのは仕方がない。もうインターハイ県予選も遠からずだ。なのに部員はたった二人、個人戦は良いけど団体戦にはエントリーすることすらままならないと言う状態だった。

 それは卒業生の抜け穴を埋めようと努力するどの高校にとっても同じだが清澄高校にはちょっと厳しい年になってしまった。まるで2年前の部室に戻ったのように寂しい風が吹く。

 

「部長は嘘つきだ、全国で力を見せた清澄になったから新入生の中できっと麻雀が好きな子が有るだろうと言ったのに!」

「部長はワシじゃが、まぁええわ」

 

 優希には麻雀を始めた中学以来初の状態だ。誰もいない寂しい部室に慣れている染谷まこにとっては久々だが、まぁ慣れた経験値はそう簡単に忘れられるもんじゃなかった。

 優希が声を上げても落ち着いた様子で眼鏡を外すたまま、時間が過ぎるのを待ちながら、もう主を失った本棚を見上げた。

 

「部長の悪待ちがここの伝統だから逆に希望的になったのが裏目に出たのかも知らんな」

「新入部員一人期待がむしろ部員抜けになるなんて、これだったら臨海のスカウトに応じた方が良かったじょう」

「それは聞き捨てならないわね、優希」

「部長!」

 

 聞き慣れた声に優希は目を光らせた。

 

「これはこれは大嘘つきの部長だ」

「よー来たのう、久々の久じゃ」

「何それ、ボケのつもり? まぁ良いけど。」

「どうしてくれるんだこのバカ部長め、私、もうネット麻雀と17歩は懲り懲りだじょ」

 

 久は結んでいたちょっと長くなった髪を降ろしながらウロウロとしながら絡みつく優希の頭をなでた。

 

「それはそれは、たいへんだね」

「優希はこれ以上我慢できないようじゃ」

「知ってるわ、だから来たのだよ」

「だからってなんなんだじょ?」

「待っててくれたまこと優希のために、それは見てからの楽しみにしておこう」

 

 何がなんだか、一切察しがついてない優希をおいといてまこと久は目を合わせ意味有りげに笑いを浮かべる。

 

「じゃあ行こうかのう」

 

 清澄高校麻雀部の二人と元部長の三人は部室を去った。

 間もなくして三人が届いたのは皆がご存知のループトップだった。見知りの場所へ着いて優希はあまりいにも落ち込んだ姿を見せる。

 

「別にまこ部長の手伝いをするつもりはないぜ、そのつもりはないけどツモ和了りまくりならいいけどな!」

「そんな事させるつもりないのう、手伝いもツモりまくるのも両方」

「麻雀ならまだ二人、足りないんじゃないかな」

「え? 部長はやらないのか?」

「私はもう部長じゃないからね」

「それは解ってるけど、別に他に呼び方変えるのも変だし別にこのままでもいいじぇ」

「いや、ワシは染谷部長に変えたのにか?」

「呼び方はどうでも良いけど、今私が言ったのはインターハイも含めての事だよ。」

 

 久の言葉に優希は店の済に有る雀卓を見つめた。部室の雀卓をじゃんと触ったのが何時だったのかよく覚えられなかった。ホコリはないものの、17歩の後に片付けるのを忘れないから大丈夫だったが雀卓が持つそれ以上の役割を果たしていなにのは主である自分たちのせいだった。

 

「和の抜け穴を未だに気にしても仕方ないんじゃない?」

 

 久の言っている事は確かだったが、優希にはそう簡単に片付けなかった。ちょっと凹んだ雰囲気を一掃するようにまこが皿を2つ運んで来た。

 

 「あんたも気にしているからこうやって、ワシらを手伝うのじゃないんか?誰か呼んだんだろう? ワシらの力になってくれそうな者を」

 

 まこはニヤけながら優希と久の間にタコスを一つずつ置いた。

 

「それ言うの早すぎだよ、まだ何も決まって無いから」

「まぁ、あれの絶品タコス程ではないけど召し上がれ」

「ありがとうだじぇ部長! 両方ともな!」

 

 久のデレそうな顔を見た優希は変わらない清澄高校の雰囲気を吸い込みながらタコスを口の中に入れ込んだ。

 

「それで、来るのは誰なんじゃ?」

「優希の因縁の相手って事かな?」

「分かったぞ! 娘になった京太郎だな? これでわたしら夫婦もiPS細胞の力を借りる事になるぜ!」

「違うわよ」「違うじゃろう」

 

 同時に答える二人の前に優希はガハハと笑う。その時、テーブル上にあった久の携帯が鳴った。

 

「もしもし、ついた?なら入って、私達中に居るわよ」

「誰だ?」

 

 休日と書いあったドアをゆっくりと開けながら入ったのは白い制服の少女だった。背丈がまっすぐでロングポニテールが似合う落ち着いた雰囲気の彼女はペコリと挨拶をする。

 

「久しぶりです清澄高校の皆さん」

「来た早々だけど、数絵ちゃん一局どう?」

 

 荒ぶる逆風が激突するように片岡優希と南浦数絵は目を合わす。

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