優希-Yūki-、再び全国へ   作:瑞華

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第71回目の少女たちの軌跡

『決まったああああー!!白糸台高校の宮永照、高校麻雀界で超人無敵の絶対者が2年連続優勝をここで派手に決める!!今年もインターハイ個人戦と団体戦2冠を握った!!』

 

 福与アナの高く何処までも鮮明に広がる声が鳴り響く。解説の小鍛冶プロの拍手の音も後ろから混じっていた。

 全国中継が流されてる無数のテレビ画面の中に、最後の牌から手を離したインターハイ王者が凛々しく立ち上がった。

 

『宮永選手のインターハイ最後の競技に相応しい見事な競技でした』

『宮永照選手は高校3年のうちにいったい何回の優勝を勝ち取ったのでしょう?これで西東京の白糸台高校はもう一度全ての高校生雀士1万人の頂点に立つ事が出来ました!母校の歴史とインターハイの歴史を書く、恐い、恐ろしい!宮永照!!』

『女子高生にそんな言い草は何かと……』

『チャンピオンが笑ってる!!恐いけど可愛いですね!!!』

『……一緒に決勝の卓を囲んだ荒川憩選手、神代小牧選手、宮永咲選手にも視聴者の皆さんの拍手をお願いします』

『それと、今年の夏に誰よりも輝いた全ての高校生雀士にもです!!!』

 

 第71回全国高等学校麻雀選手権大会は幕を閉じた。

 そして、その年インターハイ初出場の清澄高校の名は、高校麻雀界に広く知られた。

 誰もが認めるインターハイの絶対王者で象徴と成った宮永照、その姉の前に立ち輝きを保てた僅かな高校生だった宮永咲。その存在は照の妹で無くひとりの雀士として、この道に関わる誰もが知る事になった。

 彼女だけでは無い。

 昨年インターミドルチャンピオンとして、高校一年の初舞台でも団体戦と個人戦の両方で見事な成績を残した原村和。

 宮永照、辻垣内智葉、松実玄の三人を相手に個人戦の点数だったら東1局で3人を飛ばし終了したという大記録の持ち主である片岡優希。

 一年生ながらも全国何処の強豪高に居てもレギュラーになれる3人が揃って清澄高校の1年トリオ

 その年の秋が終わる頃までは、そうだった。

 

 

 

 

「それじゃこれ、コクマに向けて合宿プランだからまこが先に読んどいて和と優希に渡して、じゃ私は寝るから」

「抜けてんのうー、そんなに世界ジュニアの代表に選ばれなかったのが悔しいのか?どうでもいいってまで言ってたくせに」

「それとは関係ないから」

「ワシらの中で代表が出ただけでも大手柄じゃ」

「違うって言ったでしょう」

「はいはい睨みつけるなよ、しゃーないなーそんじゃワシがやっとるわ」

 

 ぶらぶらと揺れながら、ベッドに入り布団の中に身を隠す久はもう何も言わなかった。まこは今の久には休憩が必要だと思って見守ってあげる。

 

 

「とうとう秋の合宿か!またまたこの片岡優希様の腕を全国にお披露目出来るじぇ!全部打ちのめす!」

「和も、コクマは個人戦の恨みを晴らす機会だよ、今度こそインターミドルチャンピオンとして高校の頂点を目指そうか!」

「そうじゃの、個人戦以来咲に負けるのに馴れた雰囲気が出とる、今度は勝て!」

「……すみません部長、合宿ですけど……この期間なら私は参加するのは無理そうです」

「え?まいったなー、これは一緒に参加する他校と調律して決めた日程だから、こっちの都合に合わせて変るのは無理なんだけど……」

「なら私は不参にして下さい、部長」

「ええ!のどちゃんが行かないと咲ちゃんもないし、清澄の一年生はうち一人だけじょ!」

「すみません優希、でも今回は私抜きでお願いします、両親とどうしても抜けない用事が有りまして」

「そう、残念だわ」

「仕方ない、なら京太郎はこの私だけにご奉仕すればいいじぇ」

「何でそうなるんだよ!俺は知らねえぞ!」

「きひひひ!」

 

 半冗談に京太郎が怒るが、優希は構わない。和の後ろに隠れて和を盾にすると言うえげつない事をした。

 

 

「咲ちゃん、凄いじぇ!」

「ちっ、この私より目立つだなんて……!」

「これ、美穂子はどう思う?」

「前局から宮永さんがカンで宮永……照さんの助けをしている様に見えますね、これなら早いです」

「だが、あちらの姉妹も簡単には引けない筈だ、これが世界の壁か……本当に怖ろしい物だ、我が身の小ささを感じさせる」

「そんな!先輩は最強、私も先輩と一緒に勝ちたいっす!私達なら世界にも十分に通用するっすよ!」

「ワハハー、学年でジュニアAとBに別れるコクマでは、ももとゆみちんの共闘は叶わないなー残念」

「へっ、カナちゃんはコクマでもキャプテンの役に立つ予定だし!」

「透華、衣も旅行に行きたい!砂浜が見たいなー」

「ふむ、もう寒くなる時期ですし、なるべく近い所に行くとしたら……今度の冬にはグアムにでも行きますか」

「やった!」

 

 衣がうさぎのぬいぐるを持って両腕を上げ大喜びすると、透華は可愛い娘を見る様な顔をしてハギヨシに何か伝える。龍門渕家、冬の旅行先くらい簡単に決定だ。

 

 

「久しぶりだね優希ちゃん、今日からまた登校だよ」

「咲ちゃんの凄い大活躍、皆で見たじぇ!」

「あはは……お姉ちゃんと荒川さんの足手まといに成らない様に頑張ったんだけど、まぁー結果はあれだったよ」

「日本の1と2が一緒に座れないから咲ちゃんだけ結構苦労したの知ってるじょ」

「いやいや、辻垣内さんと姉帯さんがもっと苦労したよ、それと愛宕さんと松実さんと」

「そんなに並べると切がないじょ」

「ははっ、そうだね」

「まぁ、全世界の制覇は惜しかったな、でもそれは来年に清澄の私ら三人で叶えばいいじぇ!」

「そうなれると嬉しいなー」

「ほほう、ならその為に練習だ!今日から咲ちゃんが戻るからまた打てるじぇ!と言いたいけど、のどちゃん今日欠席だから三人揃っては明日からだじょ」

「そうなの?和ちゃん風邪とかじゃ無いよね?」

「いや、昨日も電話したけど声は全然大丈夫そうだったよ」

「なら大丈夫だけど、じゃー今日は京ちゃんと部長と打ちたいな、明日は皆で打とう!」

 

 私が笑顔になると、優希ちゃんは親指を上げて一緒に笑う、これが友達だよね。

 

 

「えぇーのどちゃん、そんなの冗談だじょー!いきなり過ぎる!」

「すみません、もっと早めに言ってべきでしたが皆さんの顔ぶれを見たらとても言えませんでした」

「嫌だじょう……!のどちゃんは親友だからもっと嫌だじょう!」

「もう、優希!送ってあげるのが和の為じゃ」

「和ちゃん……」

 

 和ちゃんにくっついて離れない優希ちゃんを観ながら、私は何も言えなかった。

 

 

「私は……何だか分かってたかも、阿知賀との事を知ってから予想は付いていたよ、インターハイ以来の和ちゃんはなんだか良く言えなかったけど暗い感じも有ったし」

「そうでしたか……私は隠し事が上手ではなさそうですね」

「和ちゃん、それでもまた会えるよね?」

「勿論です、また会いましょう何時でも」

「そうだ、来年の夏にまたインハイで東京に行く!インターハイでまた一緒の卓に座って楽しもうよ!」

「来年の夏でも冬でも良いですが、一緒の卓では無理だと想います」

「あぁ、東京は全国でも1番の激戦地だからそうかもね……でも和ちゃんなら大丈夫だよ!きっと県代表で出られるよ」

「違います咲さん……私はもう麻雀はしません」

「えっ……?」

「今日をけじめとして、麻雀は終える事にしました」

 

 いつか、ふたりだけで話してた諏訪湖の風景に既視感を感じながら眺めていた私は、素っ頓狂な顔で和を見上げた。

 

「転校は関係ないよ、何で麻雀をやめるの?和ちゃんは今までもやって来たんだよね?これからも何処へ行っても続けられるよ?」

「東京への転校とは別です、転校と関係なく、高校生になって遊びはやめるのが約束でしたから」

「……約束?」

「遊びは今年までにして、私はこれからは本当にやるべき事に励む事にしました」

「遊びって何?今まで私達がやって来たのはただの遊びだったって事?要らないやらないべきだったって言うの?」

「いや、失言でした、そこまでの深い意味では有りません、ただこれからは私に必要な自分の為になるようにと……」

「何が違うの……?私達がやって来たのは何の為にも成らないって言いたいんだよね?」

「いえ、いえ、そうじゃなくて……すみません咲さん、その様な事は決して……」

「違う!全然間違ってるよ!」

 

 怒ってるからかな、和の顔がよく見えない、私がどんな顔してるのかもよく解らない。雨のせいかな?きっとそうだ。

 

「私に、私が麻雀の楽しさを再び思い出せたのは和ちゃんが居たからだよ……なのに!和ちゃんはそう思っていたのね」

「いいえ、そうではありません、咲さん!私の気持ちをわかってください!」

「他人に心なんか解る訳ないよ!皆は自分の心さえも知らないんだ、和も自分の心の内を全部知らい、違うって言っても本当は自分も知らない、だからそう言ったんだよ」

「そんな……私は今まで皆で励んで来た事全てを大切な思い出にしてますし、これからも変わりません」

「心の済に思い出にして片付けるんじゃなく続ければいい!」

「それは咲さんに言われても出来ません、もう私が納得して約束して決めた事です、けど私は……」

「じゃぁもう、和ちゃんにとって麻雀なんか何でも無いんだよ、そうなんだ」

 

 和の言い訳なんか聞きたくない、私が欲しいのはこんな物じゃない。

 

「もう要らない、私も麻雀をやめる、部も退部する」

「そんな、何故そんな事に成るんですか?咲さん!」

「和が思い出させてくれたこの気持ちは本物だと信じ切れなくなったから」

「咲さんには咲さんの未来が有ります!」

「ごめん、私はお揃いじゃ無いと要らないみたい、これも、お揃いじゃないと意味無い」

 

 何を言っているのだろう、私は。

 

「返して、それも私の気持ちも全部」

 

 私は……これが有ったから私がひとりの時もひとりじゃないって思えた、和ちゃん一緒だと思った。

 だから今まで何よりも大事にしてきたキーホルダーを手に取った。お揃いのキーホルダー、私たちもお揃いだった筈なのに。

 

 私は和ちゃんの手から無理やり奪った。けど私はもっと失ったから。

 気持ちもこれも何もかも雨の中に流した。

 

 何もかも嘘だったのかな?

 

 帰り道の雨は冷たかった、肌が悲鳴を上げる。

 和ちゃんも粒濡れになって追いかけた時、こんなに寒かったのだろう。

 

 

「優希ちゃん、染谷先輩すみません、私もう麻雀が要らなくなりました」

「咲ちゃん、何があった?」

 

 優希ちゃんには嘘をついた、でもひと目に見抜かれたみたいだ。

 いつも馬鹿は私の方だ。

 

「……勝つべき時は負けて、勝たなくても良い時は勝ったんだ」

 

「こんな私の麻雀では、これから勝てないよ」

 

「私は負けて勝って、二度も和ちゃんも泣かせてしまったんだ」

 

 また奪ったのは私だ。

 

 

 

 

 夜遅く空港直通列車の乗り場へ向かうエスカレーターに立って、右手は日傘を差し、左手はキャリーケースのハンドルバーを握っていた雀明華は、いきなり携帯がビビビッと振動を鳴らすと少し慌ててしまった。

 下に到着してやっとハンドバッグの中から携帯を取り出した。

 明華は発信者を確認してからほっぺに軽く携帯を当てた。

 

「Allô?Hallo?もしもし」

『遅いな、観光は楽しかった?』

 

 アレクサンドラ・ヴィントハイム、臨海女子高校を仕切る監督のちょっと威厳が不足してる声が聞こえてくる。

 

「こっちも久しぶりだったので帰るのが嫌なくらいですよ、監督』

『皆が待ってるから困るが……それで、対局は出来た?』

「そうですね、また新たな面白い経験を積んで頂きました、今は女優にでも成った気分です」

『見込みは有りそう?』

 

 明華の口からすぐは答えが出なかった。2秒程の沈黙の後で話を続ける。

 

「やっぱり夏の高校生は侮れませんね……多分ですけど今年なら活躍すると思いますよ、宮永照も有りませんし」

『潜在能力なら宮永の姉に劣らないだろうけど、今聞いてるのはそれでなく、こっちに来る気が有りそうなのかを聞いているんだよ』

「ふむ、監督は御土産は何がいいですか?」

 

 明様に本題を先延ばしにする明華のいたずらに監督は笑えない。

 

『……話を逸らさないでくれ、経費出さないわよ?』

「飛行機のチケットくらいお小遣い沢山溜まってるから大丈夫ですが……お聞きしたいのなら、私の意見を言うと……これからネリーちゃんに宜しくとの事です」




やっとここまで来れましたけど話はこれからですね。
心配です、書きたいのいっぱいなのによく書けない(泣)
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