優希-Yūki-、再び全国へ   作:瑞華

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今回から最初のオリキャラが一人登場します。


第5話、救われた者と

 龍門渕高校との合同練習は日が暮れる時間が迫って来る頃に終えた。それぞれ自分の成績と内容について話たり空いた卓を使って闘牌を検討していたけど、一向聴地獄と治水で最後まで完全に抑えられた状態で打ち続けた優希だけは完全にバテていた。

 電池切れの優希を置いたソファの向こう側では午後から久と智紀が各自分担して記録した牌譜をまとめている。

 

「この配牌観てたら急に大星さんを使いたくなったわ」

「同感」

 

 優希の配牌から算出したデータは今後練習量の基礎となる貴重な資料だ。もうすぐ敵となる龍門渕に与えなければ良かったけど、この協力が無かったら優希と数絵のチューニングは遅くなる。代わりに龍門渕は新らしく加わって実力が未知数だった南浦数絵との対局経験を得てお互い等価交換に成る。

 完成となった牌譜の入力を済ませてノートパソコンの電源を切った久は打ち上げの為に注目を集める

 

「それでは皆、今日の感想とか言いたい事、有るかしら?」

「衣はさぞ楽しかったぞ、一緒に打って楽しい者たちばかりだ!そこの南風娘よ、衣がお前の友達になってあげようか?」

 

 卓の前とは真逆で可愛い子供のように喜ぶ顔を観て拒む者が居ろうか、数絵は同然二つ返事だ。

 

「先輩がたの友ならありがたく受け入れます」

「やったー!そうだ、衣先輩に敬意を払え」

「私からも一言、よろしいでしょうか?」

「どうぞ」

 

 透華は先ず咳払いをした後、清澄の一人ひとりの面々と視線を当てた。

 

「昨年度と違って清澄には竹井久も宮永咲も原村和も無い、去年より強い選手が無いと私は原村和無い清澄には興味を失うかも知れません」

 

 透華の悪意地に誰もが黙り込む。久と無言で目線を交わして最後には数絵の方に向いた透華は真剣そうに数絵を睨みつける。

 

「私が竹井久なら貴方を副将に立てるでしょう」

 

 既に監督の久から自分のポジションについて聴いている数絵は彼女の洞察力に驚いた、透華の察しは当りだった。理由までは敢えて聞か無かったが透華は自分の打ち筋を観て把握した事になる。

 

「貴女、自分が原村和の代わりに成れるとお思い?」

「自分が原村に器量で劣るとは思ってません、誰かの代わりにここへ居るのでもない、何時も私を貫徹するだけです」

 

 自分と同じく誰が相手でも真剣で折れても曲げない数絵の答えに、透華は自分に集まった視線を楽しむように起き上がって話を続けた。

 

「貴女がどれほどの器量の持ち主でも貴女は一名に過ぎない、去年も今年も変わらぬ完全な五人である私達を相手にするには同じく五人で無いと何の意味も持ちませんの、だからもっと自分を強めるだけでなく周りとの関係を築くべきですよ」

「それは……」

「その為に経験者を探してるじゃけど、大抵は決勝戦進出の実績が有るチームの先発になるのが怖いと言っとる」

「だけど流石に誰でもいいではいけないから」

 

 答えに困りそうだった数絵の代わりに、まこと久は大した事じゃ無い様に笑いながらそう言う。けどそれはまた透華の地雷を踏んだ様だ。

 

「そうですわ……県大会とは言え、何も知らない初心者を出すなんて言語道断、決して有ってはならぬ失態ですのに……!」

「透華は昨年の個人戦での悪い経験をまだ引きずってるから敏感になってるんだ」

「ハハッ、妹尾さんの事か、まこもそうだったよね?」

「なんでワシまで引きずり込むのじゃ!もう忘れとった!」

 

 まこにボケを押し付けた久は先から完全に眠ってしまった優希の膝枕にされてる智紀を救ってあげる為に起き上がった。

 

「じゃぁHR見たいな物も終わったし帰るとしますか」

「そうでしら私はこれから個人的な用事が有ってお先に失礼しますわ、清澄の皆さんへのお見送りは一にお任せします、ハギヨシは衣をお屋敷に」

「畏まりました、衣様はこちらへ」

「そんじゃ、今日はお互い良い経験となったろう」

 

 まこの言葉に後ろを向いたまま軽く頷いた透華は扉を通る前に一言を追加した。

 

「貴女達も団体戦に出るつもりだと信じてます、でないと今年はあまりにもつまらぬ試合に成りそうですから、大会でお会いしましょう」

「また会う時は魑魅魍魎の群れが見られると、期待しよう」

 

 衣の挨拶に、三人は各自違う意味で黙り込んで部屋を出る二人の背中を観た。

 

 

 その日の夜、龍門渕の屋敷ではかけた月の光の下で衣と透華、一の三人で紅茶の香りを楽しんでいた。

 

「今日は長かったね、衣より私の方が先に眠気に包まれる気分だよ」

 

 まだ元気に人形とぬいぐるみ達と遊んでいる衣に比べ、一はヘトヘトに見えた。夜でも満月でもないけど衣を含めた怪物三人がぶつかり合う強烈な対戦は一からいろんな物を奪っていた。

 

「それで一は清澄に伝えましたか?」

「昨日の夜、純くんと智紀にに怒られたよ」

「ちょっと国広くん、あいつらに黙っておくつもりか?」

「やはりボクが口出しをするのは駄目だよ、あの娘の為にもそうだし」

「俺は違うと言い切れる」

「私も同感、私達はある意味同じで似たもの同士だから解る」

「智紀まで……なんで?」

「結局さ、お前だけが透華に救われては不公平だからだよ」

 

 二人からどんな話を聞いたかまでは言わなかったけど、一がどんな気持ちで後ろを振り向いたか透華にも解っていた。

 

「そうでしたか、私はやればデキる子の一だから好きですわ、良く出来ました〜よしよし」

「これって衣扱いだよね……」

「衣じゃない!子供だっ!」

 

 

「あの手錠メイドが言ったのは確か……ここか?」

 

 月曜日のお昼休み時間、優希は何度も行き来した一年生の教室が並んだ廊下を歩いていた。そして目当ての教室の扉をがんと押し開けて勢いよく自分より背の高い下級生達の群れに向けて叫ぶ。

 

「オーイ、このクラスに『うえはら みすず』が居ると聴いて来たじょ、誰なんだ?」

「片岡先輩だ〜!また合っちゃったよ、どうしよう!?」

「おいおい、片岡先輩また来たぞ」

「本当カワイイです、先輩!」

 

 昨年の夏から有名人の例に加わった片岡優希が現れると一年C組の教室は一気に騒がしくなる。男女の温度差は有るがまぁ女の子達の熱烈な反応がそれまでも飲み込む。もう何回も訪ねて片っ端から麻雀経験者でもこれからやり始めたい人に関わらず新入部員を募集したが、今のところ優希の指名度しか得られなかった。

 先の質問に誰も答えなかったから、優希はもう一度自分の信者達に命令を告げる。

 

 

「おいお前ら!このちょー格好いい私を拝ませる変わり、うえはらって娘をだして貰うか!」

「上原さん?彼女に何か用ですか?」

「今度は目当ての人を決めてスカウトに来たじぇ、うちの全国制覇の道のりにな!」

「そうだってさ、上原さん麻雀出来たの?」

 

 わざと優希には興味が無いフリをしながら済の席で目を逸らし黙り込でいた少女はまさかのご指名に顔を赤くした。

 

「い、いいや全然出来ないよ、いきなりな.な.何ですか……?」

 

 近寄る優希に怯えたように肩を竦める『うえはら みすず』はちょっとおどおど気味の小さな少女だった。勿論、優希よりは背丈も足も手も腕も胸さえもずっと大きい。遠くから見れば怯えるには相応しくない光景だ。

 ストレートの長い髪で顔と表情を隠そうとするが、行動力の高い優希に捕捉されれば無駄な足掻きだ。

 

「お前かうえはらみすずだな?一緒に来てほしいじょ!」

「片岡先輩ですよね?部活の勧誘ならいいです、お断りします」

「あぁー思い出したじょ、確か前には麻雀知らないから無理って言ったな」

「そうですよ、昨年度全国ベスト4まで行った先輩の手伝いなんかできません……」

「6年前、小学生麻雀大会に出てたのは聴いてるじょ?」

 

 その言葉を聴いたど単に上原美篶の顔が青ざめてしまう。




今日の一押しセリフは 「衣じゃない!子供だっ!」です。

今回から最初のオリキャラが登場します。
オリ主とか嫌な方々には申し訳ないです。
どう考えても、年齢が原作での一年生以下に成るとオリジナルが必要でした。南補数絵も私の解釈が入ってますが……
私にちょっとあやふやなのが主人公とは何かです。
一応主人公は優希ですが助演として出るとオリ主か、いなか、良く分からなくて。

上原美篶という名前は長野県の地名からです。
そしてアニメ一期で国広一の回想に出てた三人の仲間のうち、ロングヘアーで国広一に抱きついていたキャラクタをモチーフに取りました。

これからもよろしくお願いします。
読んで頂きありがとうございます。
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