優希-Yūki-、再び全国へ   作:瑞華

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第8話、高鴨と高い山の街

(吉野山から見渡す吉野はもう何年も何回も数えられないくらい見て来た景色だけど、私じゃなく人に伝える為に観たらまた違う、見て欲しい部分がありすぎてドキドキしてします、喜んでもらえるのを期待してしまう、同時に不安で緊張もする、けど、私はここが好きだよ)

 

 短めの部活を終えて学校帰りの一本道を走り抜くとすぐ家が見えてきた。だけと自分の部屋に入ってかばんをほったらかしにしては、着換えもせずにすぐ家を出ていく。そして今の行き先はご近所で部活の先輩の家である旅館だった。

 後ろの入口で先輩の携帯に電話をかけるとすぐ出てきてくれた。

 

「穏乃ちゃん、珍しく制服だね」

 

 いつもジャージだけと言う珍しいパションをトレードマークとする穏乃を見て玄さん如く松実玄は笑う。

 

「カメラだけとってすぐ来ましたから、はい、貸してもらったカメラ持って来ました」

「じゃ、早速やりますか」

 

 部屋に入りパソコンの前に座った玄は穏乃から渡してもらったカメラの電源を切ってから中のメモリーカードを出した。リーダーにカードを入れてからパソコンを何回操作してデータを転送する。いつも抜けてる部分が多少有りげな印象だけど、デジタル機器やネットに関しては周囲の誰よりも器用だった。

 モニターの中に穏乃が撮って来た写真を大きく映した玄は写真ファイルが正常なのかひとつひとつ確認しながら『なるほど、なるほど』と独り言を言った。

 

「相当にいろんな構図で多く撮ったね、操作にはもう馴れた?」

「いや、自信が無かったから保険用にとりあえず数で勝負してみますた!」

「この写真、家の旅館ブログに上げても良いかな?」

「勿論です!」

 

 玄のカメラは1年前のに誕生日で麻雀部の皆からもらった大切な物だ。同然、玄は穏乃に貸してあげる自体を嬉しく思ったけど、穏乃からは何度も感謝をもらった。操作方法に色々教えてもらい手伝ってもらう事を含めての感謝だけど、玄は教えてあげるのも同然だと思うから恥ずかしかった。

 

「ラインで送るなら穏乃ちゃんの携帯に入れて上げるのが良いよね?私がして上げるから携帯貸してみて」

「ありがとうございます、玄さん!」

「いやいや、毎回ありがとうはもうしなくて良いよ、私におまかせあれだよ」

 

 穏乃から携帯を受け取った玄は機種と合うケーブルを取ってパソコンと連結した、多分自分のものだけどあんまり知らない筈の穏乃に代わって写真の転送を行う。自分には難しそうな一連の作業を観ていた穏乃は今日の目的を思い浮かべてちょっと表情が固まった。

 

「和から喜んでもらえたら良いんですけど、ちょっと心配ですね」

「なんで?初めてだけど、凄くいい写真だと思うよ?」

 

 何時も元気で根拠の無い自信家の穏乃にしては思えない弱ごとに玄は首を傾げる。

 

「それもあるけど、結局また転校が決まって忙しくなってから遊びに来るのもままならなかったから」

「まぁ、和ちゃんも寂しいだろうね、ここでもそうだったけど2度も2年間積んだ思い出を背負ってるから尚さら辛いよ、私なんか新学期からお姉ちゃんが居ないくらいで寂しいのになかなかなものだと思う、でもだから私達も尚さらだよ穏乃ちゃん、いつも私たちはここに居るから安心してって事で!」

 

 そう言った玄は穏乃の携帯からケーブルを外して渡した。

 いつもだけど根拠よりそう有りたいと願う方の玄なりの元気いっぱいな励ましに緊張がほぐれた穏乃はその手から受け取った。

 

「解りました、玄さんの分まで伝えます!」

 

 

「それで?返信来た?」

「いや、まだだけど」

「和っていつも返信とか遅いんだよね、器用そうでも案外マイペースな所も有るし、まぁ同然か」

 

 プロ麻雀の中継をつけておいたテレビに時々目をやりながら冷たい床の感触を全身で吸う様に寝転んでる穏乃は鳴らない携帯を握っていた。

 憧も憧で自分のベッドで一番楽な姿勢を求めてウズウズ体の中心を変えながらタブレットを操作する。画面で選手たちの牌譜と同時に闘牌を見るという、麻雀部員としては誠実だけど、他人からだと絶賛怠けてる様にしか見えない。

 

「これは恐いね」

「……宮永さんの事?」

「それもあるけど」

 

 テレビの中に交差して映し出される宮永プロと宇野沢プロの顔をに憧は放送局への嫌味を感じた。前の副将戦では宮永プロは高校の先輩で一緒にインターハイ2連覇の大記録を残した宇野沢プロをボコボコにしてダントツだったハートビーツ大宮にあと一歩って所まで追撃した。

 今、大将戦が終わろうとしているオーラスにわざとチームのベンチに戻ってる二人を映すのから明らかな意図を感じる。

 だが、顔に笑が咲いたのは宇野沢プロの方だった。

 

「あ、和了だ」

 

 瑞原プロはこの危機をご自慢の速度で逃げ切る事に成功した。

 

「これで今日は大宮の勝ちで決まりだね、宮永さんには悪いけど全然参考にならないからこれで良いかな、瑞原プロって技巧派で速いし調子良いと門前でも追いかけないし、いつも参考になるよ」

「へぇ、憧はああ言うスタイルが気に入ってるんだ?」

 

 穏乃は意味有りげに笑いながら憧の私服姿を見上げた、そして『なるほど、なるほど』と玄のマネをする。

 

「何考えてるのよ、しず」

「憧が大宮のユニフォーム着たらどんな感じかなってね、きっと似合うよね!」

「冗談でも大宮でプロになる話聞いたら嬉しいだろうに、今は違うな……」

 

 冬が過ぎたら何時もジャージだけの穏乃から服で冗談を受けるとは思わなかった憧は少しキレた。

 

「しずこそ、牌のお姉さんになれたら?色気の欠片も無いし、きっと出来るよ」

「なんかごめん……」

 

 長い付き合いの親友同士ではディスっても中悪くならないけど、得られる事も無いって知った二人は急に静かになった。無論、今の会話で一番ディスられたのは危機的状況からチームを勝利で飾した瑞原はやりさんだ。

 

「……じゃ、試合も終わったし別の番組に換えるよ」

 

 憧がリモコンを手にした瞬間、ピリリと穏乃の携帯が鳴る。

 

「何?和なの?」

「えぇっと……いや和じゃなくて、淡だよ」

「なんだ、淡って本当にあんたのこと好きだよね」

 

 淡からのラインを確認してみると写真が数枚送れれていた。ほぼが暗い夜景、知らない駅前とかビルとかで照明の光で眩しい東京タワーの写真もひとつあった。送られた全ての写真の中央か済にはVサインをしている淡の姿が見える。

 

「何これ?」

「東京現物の写真集なの?」

 

 穏乃の肩越しに画面を覗いた憧も訳の分からない写真だらけに驚くだけだった。これらをいちいち見てる間にもう一のメッセージが届いた。美味しそうに断面のクリームが充実してるショートケーキとミルクティーの写真とやっと文字が来ている。

『ノドカとデート中だよ♥』とのことだそうだ。

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