「さぁ、準備は全て整った!いざ出発だぁ!」
意気揚々と今旅立ちを迎えたこの少年の名は、
岳は、現在15才であるが、まわりの同年代と比べて、格段に肉付きが良い!
肉付きと言っても、太っているわけではなく、筋肉がすごい。
一目見れば、鍛えられた肉体であることは、誰でも分かる。
ただ、10年前の岳は病弱で、月に2、3回は高熱を発症して、寝込んでしまう程であった。
そんな病弱な岳に、少しでも楽しい体験をさせたいと思う両親は、
岳の体調が良いタイミングを見計らって、よく近くの公園に連れて行った。
その公園は小高い丘の上にあり、美しい景色をみる事ができる場所であった。
景色を見渡せる場所には可愛らしい木製のベンチが並んでおり、
周りには詩季織々の綺麗な花が咲植えられている。
岳はこの場所が好きだった。
景色を見ながら、両親とたわいもないお話をすることがとても好きだった。
ただ、この場合に来るまでの道沿いに墓地は嫌いだった。
錆びれた門、誰もお参りに来ていないのではないかと思うくらい、雑草が生い茂っている。
その上、この道を通る時はいつもカラスが2羽、鳴いている。
そんな雰囲気が怖くて怖くて、この道を通る時は、いつも両親の手をギュッと握っていた。
「この怖さを乗り越えれば、あの好きな場所にいけるんだ」
自分にそう言い聞かせて、なるべく墓地を見ないようにして歩いていた。
そして、ようやくたどり着いた場所は、本当に幸せな場所だった。
忘れもしない11月15日、この日はいつもより少し遅い時間にあの景色が見える場所に向かっていた。
家族皆で綺麗な夕日を見に行く......はずであった。
いつものように、岳が怖い墓地に差し掛かると、なんだかいつもと違う雰囲気を感じた。
錆びれた門が崩れ落ち、雑草も色んな箇所が踏まれている。
その崩れ落ちた門の傍に、血の跡が残っていた。
岳はなるべく見ないようにして歩いていたが、鳥肌が立っていた。
そして、その時がやってくるのである。
「ドンッ、ドンッ.....」
何かが近付いてる!
耳をすますと、木陰の方から聞こえてきた。
と、思った瞬間に、父親に急に襲いかかってきた。
「おとう...............さん....」
呼ぶまもなく、お父さんは首元を噛まれている。
怖いと思った次の瞬間には、母親に向かっていた。
「おかぁさーん」
「ガブっ」
あっと言う間に、お母さんも噛みつかれてしまった。
ちょうどその時、街灯が襲って来たやつを照らし、顔があらわになった。
その顔は、まぎれもないキョンシーであった。
幸いなことにキョンシーは、岳を襲わなかった。
岳は両親が襲われている間、恐怖のあまり、動くことができず、ただただ震えていた。
岳はその時に襲ったキョンシーの顔を今でも鮮明に覚えている。
5才の岳には残酷だが、両親は岳の目の前でキョンシーに噛まれて死んでしまった。
毎日を楽しく過ごしていた岳一家が一瞬にして地獄に落ちた日になってしまった。
岳は、5才の時に両親が亡くなってから、祖母に育てられていた。
岳は、祖母に会うとすぐに、
「強くなるんだ!絶対にあのキョンシーを倒すんだ」
と泣きながらそう言っていた。
そんな事情を全て知っている祖母は、岳の思いを汲み、
一緒に住み始めてすぐに、霊倒道場に通わせることにした。
霊倒道場とは、世の中の人を恐怖に陥れているキョンシーを封印させる同士を作る場所で、
各地にあり、約100年以上前から続いている道場である。
キョンシーに親を殺されたり、子供を殺されたりした家族が打倒キョンシーという志を持ち、
全国から多くの人が集まる場所である。
その様な道場に、岳は5才の頃から通っていた。
岳が通う道場は、幽々道場と言い、全国に名を轟かしている有名な道場であった。
つまり、幽々道場の師範はかなりの猛者であり、キョンシーを何体も封印させた実力者である。
そんな師範に5才もの小さい頃から、15才の10年間も習っていたから、
今では幽々道場一番の実力者になり、すでに師範の上をいくまでに成長していた。
その10年間の毎日の稽古はすごい大変であったが、師範は岳の思いを知っていたので、
手を抜くことがなく、自分の知っている技を全て岳に教えたのだった。
技の中でも一番マスターしにくいと言われている「キョン封波」も岳は、3年掛かって
マスターしている。このキョン封波は10年かけてもマスターできない人もいるから、
岳は能力は卓越している。
キョン封波はさることながら、全ての技をマスターした岳の実力は、
どのキョンシーが現れても恐るるに足らない。
そして、道場の誰もが岳がキョンシーを封じて、世の中に平和が戻ってくる事を願っている。
このレベルに達した岳は、これで10年間の間、1日たりとも忘れたことがないあのキョンシーを
倒す旅立ちをする決意をしたのであった。