変身ヒロインが守る世界にて十人の変身ヒーローは戦う   作:庫磨鳥

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お気に入り登録、評価、感想、誤字報告など本当にありがとうございます。

たまには朝に投稿でもと(間に合いませんでした)。

アーマードchannel流石に短すぎたと危惧していましたが、面白いと思ってくれたかたが居て安堵しました。毎回盛り込むなどは大変ですが、また機会があればやっていこうと思います。

※こちら側でもご報告を、桃川暖子の年齢ですが作者が脳死していた結果。中学校一年の早生まれならマイナス1で考えており、それが間違いだったと最近になって気付きました。というわけ桃川について何度か出ている年齢ですが十二歳へと変更されていますので、よろしくお願いします。ごめんなさい!

※魔法の説明を変更しました。


『番外』新米魔装少女の気苦労その2

――ブレイダーたちが関わる事件に巻き込まれた時、多分なにかしらで気絶したであろう自分は凄い夢を見た。黒く染まったシルバー・バレットとブレイダー・ナイトを圧倒する、そんな夢。

 

めっちゃ強い自分というのは気分がよかったが、途中で夢という事に気づき他人事に思えてくると羞恥心に襲われていき、すんごい楽しそうに高笑いする自分にやめてぇ、時々思い出して恥ずかしくなるやつじゃんっと自分に対して止まってくれるように拝み倒す。

 

シルバー・バレットを無力化したあたりで夢だし起きたら忘れるんじゃ? と桃川は自分の事を天才と開き直ると自分のような“誰か”が耐えられなくなったと吹き出した。

 

――――まったくお前さんは本当に見ていて飽きないね。

 

間違いなく自分の声ではあったが、桃川は不思議と自分とは違う別の誰かのものだとは理解した。

 

――――まっ、ここはあたしに任せるさね。悪いようにはしないからさ。

 

そう言われて安心した桃川は夢の中で眠りにつき、次に目が覚めたのは自分が寝ているベッドの上で全てが終わっていた後だった。そして――

 

――――暖子は本当にねぼすけさねぇ。もうお昼頃だよ。

 

心の中に夢でみた知らない誰かが居た。

 

+++

 

「グースピー……くかー」

 

それから二週間後、立夏をすぎたころ。桃川暖子は小さな体では広すぎるダブルベッドで幸せそうに寝ていた。

 

PIPIPIPIPIPIPIPIPIPIPI...

 

前日に設定してあった目覚まし機能が起動。スマホが振動しながら大きな電子音を鳴らす。

 

「ん~」

 

むくりと体を起こすのは寝癖で桃色の髪が酷いことになっている桃川暖子(もものかわだんこ)。目を瞑ったままスマホを探す。いつもは枕もとにあるのだが寝ている間に弾いてしまいベッドの下へと落ちていたため見つからず。音は聞こえるが寝ぼけた脳ではどこで鳴っているかを把握出来ない。

 

最終的に起こした体をベッドに預け、両腕両足を広げ動かす一人ローラー作戦にでるが無駄に終わる。音のテンポが変わる中、桃川は体を動かすのを止めて。

 

「――くかー」

 

諦めて二度寝に入った。

 

――起きんかぁあああああああああ!!

「ぎゃあ!?」

 

頭の中から聞こえてきた怒鳴り声に桃川は驚きのあまり飛び起きる。

 

――あっはっはっは! 毎日飛び跳ねかたが違ってほんと飽きないねぇ!

「う、うう……! もう! 叫んで起こさないっていつも言ってるじゃん!?」

――起きない暖子が悪いさね。

「いっつも起こされるたんびに寿命が縮んでるよ!?」

――して、そろそろ朝ご飯が出来るころだけど着替えなくていいのかい?

「あー! ほんとうじゃん!! もうなんで早く起こしてくれなかったの!?」

――昨日起こすの早すぎるって文句言われたからだねぇ。

「ごめんなさい!」

 

目覚まし早く設定していたのにと桃川は慌ててパジャマから着替えはじめる。白を主体とした気品を感じられるシャツとスカート。空想上の制服が現実に出てきたようなデザイン製。明らかに現代からは浮いているが、それが良いと評価されている『聖ジャンヌ女子学院』の制服に着替えていく。

 

――馬子にも衣装とはまさにこのことさね。

「それって褒めてないでしょ」

――意外と似合うって言ってるのさ。

「やっぱ褒めて無いじゃん」

 

自分にしか聞こえない声と会話をしながら着替えを終えた桃川は外へと出る。

 

「よし! じゃあ管理人さんのところ行こうか!」

――元気があってよろしい。でも暖子。鍵をかけるの忘れてるよ。

「忘れてた!? ありがとう鬼美(きび)

 

桃川はブレイダーの事件に関わってから、自分の心の中に居着いた“誰か”――鬼美に礼を言い、しっかりと扉に鍵をかけてエレベーターに乗り込んだ。

 

+++

 

一階まで降りた桃川は遠慮無く管理人室の中に入っていく。

 

桃川が住むマンションの管理人室は普通とは言い難いものだった。ひとりが仕事できるスペースで十分のはずの室内は五人が居座ったとしても余裕がある広さであり、キッチンにオーブンなど料理に関わるものが完備されており、ここで作った料理をすぐに食べられるようにと四人用のテーブルが置かれている。

 

そんな台所なのか管理人室なのか分からない室内には、赤系長髪を括ったローポニーテールの女性。エプロン姿が様になっておりその手にはしゃもじと茶碗が握られている。

 

「管理人さん! おはよう!」

「暖子ちゃんおはよー! 今日も朝から元気がいいね! ごはんはどれくらい食べる?」

「おおもりー!」

「いえーす! サービスたくさんしちゃうよー! お代わりもあるからね!」

 

このマンションを管理する赤髪の女性こと『鈴鹿 姫咲(すずか きさき)』は、小さなお茶碗に米を盛りに盛っていき席についた桃川に手渡す。彼女はこのマンションの管理業をする最中、未成年の魔装少女のためにご飯の支度や家事の手伝いなど生活の手助けをしてくれている。といっても現在、このマンションに住んでいる魔装少女は桃川しかいないのだが。

 

「本日は鈴鹿特製卵焼きとホウレンソウのお味噌汁に焼き鯖! そして主食のピッカピカの白米!」

「すっごい和食! 大好き!」

「いえーす!」

 

満面の笑みで親指を突き立て合う二人。その様子を桃川の中で見ている鬼美は毎日騒騒しいねぇと微笑ましく思っていた。

 

「いただきます!」

「召し上がれ!」

 

見て分かるほどの美味しそうなご飯を目の前にして胃が空腹感を強めて急かしてくる。それに抗う理由はないと桃川は箸を動かし始めた。

 

「今日もとっても美味しいです!」

 

――それには同意するが、もうちょっとゆっくり食べるさね。

「美味しすぎてむりー」

――しかたないねぇ。

 

桃川の感じるものは鬼美も感じることが出来るため鈴鹿の料理に舌鼓を打つ。箸を止めることなく食べ続ける桃川に鈴鹿は嬉しそうにする。ちなみに鬼美の声は桃川にしか聞こえておらず、鈴鹿には独り言を話しているように聞こえる。

 

「暖子ちゃん最近よく食べるから、とても嬉しいよ」

「ひょうへふか?」

――口にものいれて喋らない。

「うん! 魔装少女はなにより体が大事! だから一にご飯、二のお風呂、三、四が無いならご飯にして三食しっかりたべてお風呂に入って最後に睡眠! 健康な体で世界を救っちゃおう!」

「なるほど! おかわり!」

「はいよ! おかわり一丁!」

――間違ってはいないんだけどねぇ。

 

鈴鹿はすでに引退した身ではあるが魔装少女時代から大切にしている持論を語り、桃川はそれに深く同意しながら茶碗を差し出す。鬼美は楽しくあるも、もう少し静かに食べるように注意するべきか悩み、体があったら苦笑していたんだろうなと思う。

 

「そういえば、先輩のあの子とは上手くやっていけてる?」

「アイ“ちゃん”ですか? はい! この間も一緒に魔法の練習をしましたし、そのあと一緒にクレープ食べました!」

 

二週間前。セブンスに関わる事件から桃川の先輩にあたる魔装少女。パンチャー・ノワールこと黒稗天委との関係は少しだけ変化した。

 

黒稗はセブンスに救われた後桃川に自分がどういう気持ちで接していたのかを語った。

 

その内容を纏めれば純粋に好意を向けてくれるのに、それを信用せず夢を実現するための糧としか見ていなかったといったものだった。黒稗は嫌われる覚悟で話した。それこそ桃川が許してくれないというのならば、それ相応の罰を自分に与えるつもりだった。

 

そんな黒稗の意志とは裏腹に桃川はその場ですぐに黒稗の笑って許した。というかは――。

 

――???

 

よく分かっていなかった。なので話を聞いた桃川は騙されたとか欠片も思わず、天委先輩なんか難しいこと考えていたほえーぐらいである。

 

黒稗の考えを半分も理解出来なかったというのもあるがそもそも桃川にとって黒稗は尊敬できるし頼りになる魔装少女であることは間違いなく、だめだめな自分の面倒を見てくれた事実は変わりない。

 

さらに言えばめんどくさい思考に関してだいたい姉二人の所為で本人が知ること無く耐性が付いており、桃川にとって黒稗の告白した内容は“いつもの”で済ましてしまうものでしかなかった。ポカンとする天委を見て話は終わったと言わんばかりに遊びに誘ったことで、モググと鬼美の二人から空気を読めだの、他人の悩みにもうちょっと真剣に取り扱えだの内外から説教を受けることになる。

 

そんな桃川だからこそ黒稗はまた一つ救われる事となり、関係性は良好のままで話は終わり、変わったことといえば本人の希望でフランクな呼び方になったぐらいである。

 

「今日も学校が終わってから、いっしょに『塾』へ行くんだー」

「そうなの?」

「うん。モググが最近忙しいみたいだし、様子を見に行くの」

 

暖子の魔装少女にしたフェアリー、モググとは桃川が一人は寂しすぎるということで一緒に暮らしていた。しかし、ここ最近は何かしらの用事で、ずっと『塾』の方におり、帰ってきていなかった。

 

「そういえば最近忙しいみたいで帰ってきてないんだよね?」

「うん。モググだけじゃなくて何だか『塾』自体が慌ただしいみたいで、先生とかも最近残業詰めなんだって」

 

モググのほうから掛かってくる心配の連絡で、どこか声色に元気がないと思った桃川は一度彼の様子を見に行くことに決めていた。それを黒稗に話した所、興味があるとのことで一緒に『塾』へ行くこととなった。

 

――暖子。しつこいようだけどあたしの事はモググに言うんじゃないよ?

 

鬼美はいつものようにモググに自分の存在を隠す様に言う。理由を聞いても時がきたら話すの一点張りで、桃川は理由を聞かされないでいるも、その願いは真剣味を帯びていて、桃川はそこまで言うんならと鬼美の事をモググに伝えていなかった。

 

「ごちそうさまでした! 今日もとても美味しかったです!!」

「いえーす! そんなこと言われたら夜も頑張っちゃうから門限には帰ってきてね!」

「ちなみに夜はなにー?」

「サーモンシチュー!」

「ぜったい美味しいやつじゃん!」

――暖子、もうそろそろ出ないと遅刻するよ。

「あ!? ほんとだ! 行ってきまーす!」

「行ってらっしゃーい。車とか気を付けてねー!」

「はーい!」

 

マンションから出て学校へと歩き出す、そんななかで桃川は抱いていた不安をぽつりと呟く。

 

「電話はともかく、直接あったら隠せるかなぁ?」

 

嘘とか誤魔化すのが苦手なことを自覚している桃川は、そもそも鬼美のことを隠せる自信が無い。鬼美も否定できないのか返事は沈黙のみだった。

 

+++

 

桃川の通う『聖ジャンヌ女子学園』は小中高一貫にして定時制を採用している極めて異例の私立高校である。その設立には魔装少女の事情が大きく関わっている。おおよそ学校に通う年頃の少女がほとんどであるため、彼女たちは一日の大半を学校に居る。しかしグレムリンは都合良く現れてはくれず朝昼晩、いつでも現れる。そのため魔装少女たちの生活や成績に多大な影響が出てしまい、時には“グレムリンが現れるタイミングでいつも授業を抜け出す女生徒”がいると身バレにも繋がったりした。

 

そういった魔装少女のために設立された『聖ジャンヌ女子学園』は、朝の部と昼の部を分けることによって生徒の学校外での自由時間を増やし、制服を着ていれば外出での活動を許可していることによって魔装少女の活動をしやすくし、また木を隠すなら森の中と言わんばかりに一般生徒も同じ時間帯に下校することで身バレ防止にも繋がっている。

 

桃川は流されるままに入学したため色々と不安はあったが、豪邸みたいな外見とは違い校風は結構無法(自由)であり桃川はすぐに馴染む事が出来た。給食も美味しく、友達も出来て、ついでに言えば授業も少なく宿題も少ないので知らない土地での学校生活は桃川にとって楽しく充実しているものだった。

 

「中学校の勉強って途端に難しくなるって聞いたけど、なんか小学校で習ったものばかりだね」

――成績ごとにクラスを分けているのかもしれないねー。

「なるほどー……ん? それだとわたし小学校レベルの学力しかないってこと?」

――実際そうさね。

「ぐぬぬ……」

 

今日も何気ない授業を終えて、給食を食べて下校した桃川は黒稗の待ち合わせ場所に徒歩で向かう。その最中、もはや当たり前となった鬼美と小声で話をする。

 

桃川はどう見たって独り言を話しているようにしか見えないことを自覚しており、他人に聞かれると恥ずかしいじゃんと一度念話のように話せないかと打診したが、鬼美は桃川の思考に壁を作っている状態であり、その壁を外せば思考を読み取って会話することは可能であるが、そうすると桃川が考えていることが全部鬼美に筒抜けになってしまうこと聞いて、即答で断った。

 

「それにしても、まだ学校で他の魔装少女に会ったこと無いんだけど本当にいるのかな?」

――さてね。あそこはそれっぽい子が多すぎて分からんさね

「せっかく同じ学校に居るんだ、もし居るんならお友達になりたいよねー。鬼美なにか良い方法知らない?」

――そういえば魔装少女を索敵する魔法があったはず。覚えてみるかい?

「おお!」

――もっとも、故意な正体を探る行為は退学にもなりえる規則違反だから、使ったのばれたらお友達になる話じゃなくなると思うさね。それでも使ってみるかい? 

「それ聞いたらできないよ!?」

 

桃川がそういえば正体探るのは普通にダメだよねと落ち込む様子に鬼美はカラカラと笑う。それに桃川がプンプン顔となり、話題が変われば機嫌を直して話を盛り上げはじめる。

 

――……ねぇ。暖子。

 

そんな風に自分しか聞こえない声と当たり前のように会話を続ける桃川に鬼美が問い掛ける。

 

「え? なにー?」

――いまさらな気がするけど、あたしの事を受け入れすぎじゃないさね? 

「それ自分から言っちゃうんだ。んー。でも鬼美ってなに聞いても適当にはぐらかすから、なに聞いても無駄じゃん」

――否定出来ないねぇ。

 

この二週間、桃川はなんどか鬼美の正体について尋ねたことがある。そのたびにはぐらかされており、結局正体の分からずじまいのままでいる。普通であれば自分の中に現れた謎の意志に不安や恐怖を覚えるものだが、桃川は最初こそお化けに乗り移られたと騒いだが、二日したらそういうものだと言わんばかりに受け入れていた。

 

「なんかよく分かんないものをずっと気にしてるのも仕方ないかなって、それに鬼美が居て助かってるし、今の生活も寂しくないし!」

 

桃川にとっては結局それである。わからないものは難しく考えない。桃川にとって鬼美は悪い人ではなく、色々と自分を助けてくれる同居人的存在でしかなかった。そのため気になることは沢山あるけど自分から話してくれるまで下手な勘ぐりはしない。

 

人の話を聞くのは大好きであるが深く追求して面倒なことになるのは姉二人によって経験済みなため、そこらへん桃川は弁えているからこその関係性でもあった。

 

――……そうかい。

 

鬼美はぶっきらぼうに答えるが、その声色は暖かさを隠しきれていなかった。

 

「あ、でも漫画見てて思ったんだけど昔人の体に封印された鬼とか? 名前にはっきり鬼ってあるし!」

――さあ、なんだろうねぇ。

「ほら、やっぱりはぐらかすじゃん」

 

それから待ち合わせ場所にて黒稗と合流するまで鬼美との会話は止むことは無かった。

 

+++

 

「それで魔法の方はどう?」

「アイちゃんに教えてもらった強化系魔法は普通に使えるようになったよ! でもアイちゃんが使うのと比べると効果が微妙なんだよね、ラグもあるし……」

「相性もあるけど、覚えた魔法の魔方陣は定期的に見直してる?」

「うっ……してないです」

「魔法はどれだけ魔方陣を正確に思い浮かべるかで決まるから、とりあえずは気が向いたら魔方陣を見直す習慣は付けた方がいいよ」

「はい……努力します……」

 

二週間前、悪いフェアリーに利用され、最後にはセブンスガールの一人となった魔装少女。パンチャー・ノワールこと黒稗天委と合流した桃川は目的地に向かう道中、黒稗に買ってもらったタピオカドリンクを片手にずっと口を動かし続けていた。その内容は自分は魔装少女としてどう戦えばいいかというもので、黒稗の真剣な指摘に桃川は怠けているのをバレてしまったような申し訳なさに縮こまることしか出来ない。

 

「でも、暗記って苦手です……」

「こればかりは、コツコツ積み上げていくしかないから、がんばって」

「はい……頑張ります……」

 

魔装少女が『魔法』を使うのに必要なのは“魔方陣の記憶”である。使いたい魔法の魔方陣を覚え、使用する際にその魔方陣を正確に頭の中で思い浮かべて、詠唱を発言、必要分の魔力を消費して魔法が発動される。そしてその魔方陣を、どれだけ正確に思い浮かべるかで効果が変わっていく。

 

「覚えた魔法はともかく、新しい魔法もどんどん覚えていきたいな。なにかオススメのとかある?」

「うーん。暖子の戦闘適正もまだ分からないことが多いし、とりあえずは簡単な魔法をとにかく覚えて、しっくりくるのを探してもいいかも。『イージースクエア』シリーズは知ってる?」

「知らない」

「魔法自体の威力や効果は低いけど簡易的な魔方陣だから覚えやすいよ」

「おお、たしかにこれなら覚えやすいかも!」 

「他にも――」

 

『魔装少女協会』は魔装少女に関する幾つものサイトを運営している。その中で『魔法職人』と呼ばれる魔法を製作する事が出来る専門家たちが、自分の作った魔法を無料公開しているサイトも存在する。そこには万を超える魔方陣が投稿されており、黒稗はスマホを操作してオススメの魔法を桃川に幾つか見せる。

 

使いやすいと人気の魔法でも、その魔方陣は六芒星の中に更に幾つもの六芒星や図形が散りばめられており、時には別の図形や家紋に近しいものや数字やら文字が描かれているものが多い。その中で黒稗は出来るだけ魔方陣が簡易化されているものや、細かな造形が無いもの、逆に特殊な形で覚えやすいものなどを知る限り桃川に見せていく。

 

――暖子。塾に行かなくていいのかい?

「忘れてた! モググの様子見に行くんだった!」

 

鬼美の指摘に、本来の目的を忘れていつの間にか歩道端で魔方陣の観賞会になっていた事に気付く。

 

「ご、ごめん。私も夢中になっちゃった……」

「謝ることないよ! 質問したのわたしだし、すごく勉強になった!」

「そ、そう? それならよかった」

 

二人は再び歩き出す。桃川がタピオカドリンクを飲んだため会話が止まったのを見計らって、今度は黒稗が話題を振った。

 

「暖子は魔装少女グレイ・プライドって知ってる?」

「うん。アイちゃんと同じセブンスガールの人だよね?」

「うん、そうだよ……っふふ」

「アイちゃんめっちゃ嬉しそう」

「んんっ!」

 

黒稗はセブンスガールの一員になったことがもの凄く嬉しく、二週間経っていてもそれを想うたんびに顔がにやけるのを止められなく、桃川に指摘されてわざとらしく咳き込む。

 

「魔法のことなら、多分あの人が頭一つ飛び抜けて詳しいと思うから暖子が望むなら都合の良い日に話してもらうように頼むけど、どうする?」

「ほんとっ!? ぜひお願いします!」

「分かった。それなら後で連絡しておくね」

「アイちゃんありがとう!! わー! グレイ・プライドさん、サインとか書いてくれるかな? リラインやっていたら連絡先交換してくれるかな!?」 

「ちゃんと魔法のことも聞いてね?」

 

グレイ・プライドこと灰稲比恵とは本気でバトルした中であり、事件後はセブンスガールの中で誰よりも交流するのが気まずかったのだが、灰稲は結果的に七色との関係が進歩したのは、あの事件があったからとポジティブに考えており、さらに言えば同じ不人気の色と扱われている者同士と黒稗にセブンスガールの中では誰よりも早く親身に寄り添ったことで、黒稗もまた一番に心を開いた。

 

そのため、まだまだ関係は短いが桃川とは正反対のタイプだというのは理解しており会わせたことで何かトラブルが起きないか、はしゃぐ桃川を見て提案してよかったと思うと同時に少し不安になる。

 

「あんまり騒がしいの得意じゃない人だから、気を付けてね」

「そうなの? わかったよ!」

――暖子にとっちゃ、中々難易度の高い話だねぇ。

「そこまで苦手じゃないよ!?」

「ど、どうしたの? 急に大声出して……」

「あ、いえ。なんでもないじゃん!? あ、そういえば七色さんとはどんな感じなの!?」

――……おばか。

 

桃川がとっさに誤魔化すために禁句を言ったことに気付いたのは黒稗がキラキラした瞳を、ぎゅいんとか音を出しながら自分に向けてきてからだった。

 

「――聞いてくれる?」

「あ、うん……うん」

 

黒稗天委という女の子は、元々セブンスの病的なほど熱烈なファンである。そんな子にセブンスの話を振ればどうなるか想像難くない。話自体は面白いから好きだけど黒稗にセブンスの話題を振るときはしっかり時間を空けている時にしようと人生で初めて見るデジタル時計の午前0時に誓っていたのを桃川はすっかり忘れてた。

 

――どうすんだい?

「たぶん、塾についたら終わるかも……たぶん」

 

――終わらなかったので残念そうにする黒稗に申し訳ない気持ちになりながらも桃川が責任もって中断させました。

 

+++

 

『魔装少女塾』の施設は都会と呼ばれるビル街から少し離れた場所にある小学校の廃校を再利用しているものだ。むしろ現代の同年代の少女にとって珍しい大型の電波時計が設置されている校舎。魔法の訓練に最適なグラウンドや体育館など、一世代前の風景がそのまま残されていた。

 

到着早々、黒稗は申し訳なさそうに桃川に謝る。

 

「ごめんね。私ばっかり話しちゃった」

「ぜんぜん大丈夫ですよ! パンケーキ食べにいった時の話とかまた今度聞かせてください!」

「うん! また今度ね」

――次連絡するときは昼時にしときなよ。

「……あ、いいこと思いついた! セブンスガールのみんなとお泊まり会すればいいじゃん!」

――なぜ自ら地獄へ歩んで行くのかねこの子は?

「魔装少女でお泊まり会するの憧れだったんだー」

――慣しにまずは学校のお友達から始めてみないかい?

「セブンスガールのお泊まり会するの? もしやるなら私もいっていい?」

「もちろんだよ!!」

――…………。

 

鬼美は自分が耐えられる自信がないため静止を試みるが話が進んでしまい。もうどうにでもなれと諦める。

 

「『魔装少女塾』、来たこと無かったからちょっとドキドキしてる」

「アイちゃんは来たこと無いんだよね?」

「うん、存在を知ったのは魔装少女になってからだったから……」

「あー。たしかにわたしもお母さんに聞くまで知らなかったんだよね」

 

『魔装少女塾』は元魔装少女たちの教師や、その相棒と呼べるフェアリーから高度な授業を受ける事が出来る。しかし率先して宣伝などはしておらず。最近では活躍している魔装少女が口コミで広げているも、まだまだ世間一般的の知名度は知る人ぞ知るぐらいになっている。

 

「ここの授業ってどんな感じなの?」

「すごく面白いよ! 『協会』の授業って教科書に書いてあること、そのまま言っているだけだけど……」

「『協会』のほうは授業というか研修だからね」

「こっちでは塾講師(先生)たちも凄い面白い人たちばかりだし授業も色んなことを教えてくれるから全然飽きない!」

――まあ結構、内容は偏っちまっているけどね。

 

桃川が言う面白い塾講師(先生)たちは、実際に魔装少女として活動するにあたって役に立つものを教えてくれることが多いが、その内容は先生の好みによってかなり偏っていた。一方『協会』が定期的に開催する研修などは基礎を平均的に教えてくれるので、ひたすらつまらない事を除けば、どちらもちゃんと桃川の糧になっていた。

 

 

「それで、暖子のフェアリーってどこに居るの?」

「なにもしてなければ職員室で甘い物食べていると思うよ」

「塾講師なの?」

「違うと思うけど……そういえば、モググってなんの用事でいま『塾』に居るんだろう」

 

モググとは、小学校を卒業してすぐ『塾』によって開催されたフェアリーとの交流会で初めて出会い、“名前が美味しそう”という理由で選ばれた。それから、なんやかんやの付き合いになるが桃川は、結構モググのことをよく知らなかったりする。

 

「モググがおじいちゃんってのも最近知ったし、今度いろいろ聞いてみようかな?」

――ぶふっ! モググを老人扱いするのかい!? こりゃ傑作さね。

「めっちゃ笑うじゃん」

 

ツボに入ったのか鬼美はしばらく笑い続ける。その反応に絶対モググと鬼美なんか関係あるじゃんと思うが職員室についたこともあり、追求することなく話を終わらせる。

 

「モググいるー!?」

「あの、暖子、入るときの挨拶とか……」

 

『塾』では職員室に入り浸る生徒や元生徒などが多く、桃川のように友達の家に上がり込んだような気軽さで入ったとしても特に問題はなく、それを知らない黒稗がいいのかなと桃川に続き遠慮がちに入る。

 

「あ、モググいたーってどうしたのみんな?」

 

職員室に入ってすぐテレビの前でモググを見つけたが、そこには先生やフェアリー、そして生徒や現役で活躍している魔装少女たちがテレビをかじりつくように見ており、桃川たちに気付いていない様子だった。

 

「なにみてる……の? ってええ!?」

「ブレイダーカオス? どうしてテレビに?」

 

画面に映っていたのはブレイダーカオスであり、白い壁をバックに教壇に立ち何か話し込んでいた。それを聞く皆の顔はとても真剣で――恐怖や不安などに染められていた。

 

いったいなにを話しているんだろうと桃川たちもテレビに耳を傾けて、カオスが話している内容に驚き、ここにいる全員と同じような反応をする。

 

 

≪――故に私たち、第一世代ブレイダー。カオス、デビル、ジャスティス、エデン、アビスの五人は――『魔装少女協会』に宣戦布告を行うこととする≫

 

 

「……なにこれ?」

「うそ……」

――ああ、やっぱりあんたは……

 

――何気ない平和な昼下がりにて、こうして来るべきではなかった変化が訪れることになる。

 




設定の説明するとき、いつもちゃんと伝えられているだろうかと不安とです。活動報告にも載せましたが、思いつく文章をなんとか書いているようなものなので、誤字脱字も多く地の文は特に見づらいとは思いますが、それでも楽しんで貰えたら幸いです。

設定の矛盾がまじで怖い()

これにて番外編は終わりとなって本編を始めたいと思います。次回の更新は来年に成ると思うので、よいお年を!

次回:奈落の章。
プロットの段階でも七色の時の二倍ありそうでやばいですが頑張ります!
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