変身ヒロインが守る世界にて十人の変身ヒーローは戦う   作:庫磨鳥

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Q「日曜日に投稿する予定だったのにどうして月曜日になったんですか?」

A「ブラッ○ボーンに再度はまって全クリしていたから、DLCのラスボスは強敵じゃった」

作者:「それと雪かきな?」←ヒント福井在住

Q&A「「ごめんなさい」」

新年明けましておめでとうございます。
お気に入り登録、評価、感想、ここすき。いつも本当にありがとうございます。みなさまのお陰で去年は忘れられない年になりました。2021年になってからも出来る限り頑張って生きたいと思いますので、よろしければ見て頂けると幸いです。

元々「新米魔装少女の気苦労その2」この後の話になる予定だったので、少し時系列が戻りますことをご了承ください。

※魔装少女特別法あたりの内容を変更しました。


戦争決闘五番勝負編
【数字は】アーマード雑談スレ パート78ぐらい【感じるもの】


たとえ千年後、万年後になっても――。

 

+++

 

762:天使

それじゃあ、黒もセブンスガールにちゃんと馴染めたんだねー。

 

763:七色

うっす。最初は遠慮がちで周りに合わせるだけって感じだったっすけど、最近は結構自分からもやりたいこととか遠慮なく言ってくれるっす。

 

764:天使

それはなによりだよ。

ほんっと一時はどうなるかと思ったけど大団円で終わってよかったよかった。

 

765:七色

はいっす!

 

766:天使

二度と『B.S.F』落とさないでね(圧)

 

767:七色

ハイッス……。

 

768:天使

まぁ、クツツだっけ? そいつが言っていた計画通りなら何も知らずに変身していたらまずかったし、案外落としたのは不幸中の幸いだったかもねー。

 

769:七色

そう思うんならそろそろ弄るネタを変えてくださいっす……。

 

770:天使

えー。あと七回は使いたい。七色だけに。

 

771:七色

黒の友達も巻き込んだらしいので申し訳なさでいつも心臓が爆発しそうになるっす……。

あの時はみんなの怪我を治してくれて本当にありがとうございます天使さん(深々)

 

772:天使

それはヒーラーとして当然のことをしただけだよ。それで思い出したけどセブンスガールみんな精神が汚染されたんだよね? あれから後遺症とかない?

 

773:七色

後遺症かはわかんないっすけど……。

 

みんな以前より積極的になったっすね。

 

774:天使

書く5秒前ぐらいには自分で答えに行き着いちゃったよ()

それ後遺症じゃないと思うし、原因は君でしょ。

 

775:七色

やっぱりそうなっすかね?

みんなとちゃんと向き合うって決めたっすけど、まだ実感らしいものがなくて……。

 

776:天使

いやぁ。セブンスガールの変化はどう考えたって七色がちゃんと好意を伝えたからでしょ? ブレーキは元から壊れていたけど、さらにリミッターが七つぐらい外れたよねー、七色だけに。

 

777:七色

それはやってるんっすか!?

いやでも、最近大人しいといいますか寝込みを襲うとかしなくなったっすよ。

 

778:悪魔

獲物が逃げなくなったからな。わざわざ追い立てる必要もないだろ。

 

779:天使

悪魔おつー。

 

780:七色

悪魔先輩お疲れ様っす。そんで登場と同時に薄々気がついてることを必死で気づかないふりしているものをはっきりと言わないで欲しいっす。

 

781:悪魔

前に進むと決めたんだろ? 目を逸らさず受け入れろよ。

 

782:七色

下手に進みすぎると高校卒業する前にパパになるんっすけど?

 

783:悪魔

お前ならそれでも幸せになりそうだがな。

 

784:七色

なんてこと言うんすかこの悪魔は!?

 

785:悪魔

悪魔だからな。

 

786:天使

それで? ここしばらく用事があるって行方不明になっていたけど、どうしたのさ? ショーが終わってからあんまし元気なかったのとなんか関係あんの?

 

787:悪魔

ちょっとな。もう少ししたら詳しい話を混沌がする。それまでは待ってくれ。

 

788:天使

混沌ってことはまた『裏案件』? 最近多いんじゃないの? 小鳥遊蜜柑ちゃんの事件からまだ一ヶ月ぐらいしか経ってないよね?

 

789:七色

俺この間のが初めてだからよくわかんないっすけど、普通はどれぐらいなんすか?

 

790:天使

僕が知る限りだと、それこそ季節ごとって感覚かなぁ。魔装少女売買事件の時はそうしなきゃいけないから表沙汰にしたけど、基本的に『裏案件』として扱うのは、これ絶対表に出せないよね? って内容だからだし、そこまでってなると逆に中々ねー。

 

791:七色

なるほどっす。

 

792:天使

ていうか悪魔、質問を重ねて悪いんだけど第8支部の件どうすんのさ?

七色の事件なんて『裏案件』扱いにするしかないでしょ? あんなに派手にしちゃったら隠すの無理じゃない?

まだ僕たちは関わってるって情報は出てないけどさー。表沙汰になるのは時間の問題だと思うよー。

 

793:悪魔

悪いな。その辺も今は言えん。

 

794:天使

……ねぇ。ほんと何考えてるの? 嫌な予感しかしないんだけどー?

 

795:奈落

話の途中にごめん。ちょっと知恵を貸して欲しいんだ。

 

796:七色

奈落さん。お疲れ様っす!!

 

797:天使

奈落お疲れー。

別にいいよ。ここに書き込むってことは本気で困ってるんでしょ?

僕のは後で直接混沌に聞くよ。

 

798:奈落

ありがとう。

実は出かけた先のカフェテラスでコーヒーを飲んでいたんだけど、運悪く『次元の裂け目』が現れてね。幸い魔装少女が近くにいたみたいだからグレムリンが現れる前に現場に到着したんだけど、そこでトラブルがね。

 

799:天使

なんだろう、今日の僕は超能力にでも目覚めたのかな? 予知できるよ?

 

800:悪魔

奇遇だな。俺もだよ。

 

801:奈落

アビス姿のままでコーヒー飲んでいたから、魔装少女たちがすごく驚いちゃってね……。

 

802:七色

何やってるんっすか!?

 

803:天使

本当何やってるんですかねー。ていうかよく気がつかなかったよね?

 

804:奈落

夢見が悪くてね。気分が優れないからと気晴らしに外に出たのがいけなかったらしい。魔装少女がこちらを二度見するまで気がつかなかったよ。

 

805:七色

変身したまま寝ちゃったってことっすか?

 

806:悪魔

そういや七色は知らなかったな。こいつは逆なんだよ。必要な時しか生身に戻らんから、こいつにとってアビスのほうが素みたいなもんなんだよ。

 

807:七色

ええ!?

 

808:天使

それ僕も初めて聞いたんだけど!?

 

809:悪魔

そうだったのか? まあこいつは自分のことそんなに話さないからな。

 

810:奈落

いやぁ、うっかりしちゃったね。いつもは出かけるまえに鏡を見るんだけど、今日は忘れてたよ。

 

811:天使

まって鏡みないと分かんないの? やばない??

 

812:奈落

その……ごめんだけど、現状の解決策を早急に提案してほしんだ。

魔装少女たちが戦いに集中出来ていなくてね。脅えた視線をなんども向けてるよ。

それでグレムリン相手に劣勢になってる。困った。

 

813:悪魔

困ったじゃねぇよ! お前がどっか行けばいい話だろ!

 

814:奈落

それが腕を少し動かすだけで、みんな体を硬直させてしまって、さらに状況が悪化するんだ。怪我とかはしないとは思うけど心配で身動きが取れない、カップを持った考える人みたいになっている。

 

815:天使

ネットで現場の実況配信上がってるや。奈落ほんとにカップ持った考える人になってんじゃん。

 

816:奈落

こういう時、思考するだけで文字が打てる機能って便利だよね。

 

817:悪魔

とにかく詳しい情報をくれ。

 

818:奈落

グレムリンは防御能力だけで言えば高ランクみたいでね。魔装少女たちがまだまだ戦闘慣れしてないこともあって牽制して被害を食い留めているだけで収まっているよ。

 

819:天使

奈落がグレムリン倒せばいいんじゃない? 動けなくても出来るでしょ?

 

820:奈落

いや、僕のはほら、戦い方が世間に見せられるような様をしていないというか……。

 

821:悪魔

なにをしても火炙りだからな。

 

822:奈落

ボクのスキルは心を燃やす炎。魔法ならともかく物質は燃えにくいんだよね。フェアリーだと小さいから肉体を粉々に砕いたりできるけど、グレムリンは基本的に巨体だから中々ね。

 

823:天使

あー、たしかに見るだけでトラウマになるよね。

 

824:悪魔

ったく。仕方ねえか。要するにとっとと戦闘終わらせればいいんだろ?

 

825:天使

出撃ですかい悪魔さん?

 

826:悪魔

このまま放っておいて事故が起こってもあれだ。とっとと終わらせていく。

 

827:天使

行ってらっしゃーい。

 

828:奈落

ごめんね。じゃあボクもこの辺で失礼させて貰うよ。突然書き込んで申し訳なかったね。相談に乗ってくれてありがとう。

 

829:天使

全然だいじょうぶだよー。むしろ奈落はもう少し書き込んでもいいと思うよ。

 

830:七色

考えているうちに解決しちまったっす……。

 

831:天使

解決はしてないけどねー。なにかいい案でもあったの?

 

832:七色

まったくっす。でも、奈落さんって想像以上に怖がられてるんっすね……。俺からしたらブレイダーなりたての頃めっちゃ世話してくれて、めっちゃ頼れて優しい先輩って感じっすからちょっと不思議というか……変な気分っす。

 

833:天使

仕方ないよ。はっきり言っちゃえば魔装少女たちにとっては悪いことをすれば自分たちを狩りに来る処罰者なんだし、ほら、交番を通り過ぎると思わず顔ふせちゃう時みたいな気分になるんだと思うよー。

 

834:七色

分かるっすけど、その例えでいいんっすかね?

 

835:天使

さらに言えば、アビスが魔装少女の前に現れるのは大体そういう時だから、今日不運にも出会っちゃった魔装少女たちにとったら、自分なにかやったっけって罪を数えていてもおかしくないよねー。

 

836:七色

そういえばみんなと話していて話題になったんっすけど、奈落さんに狙われる条件って明確に決まっていたりするっす? 

 

837:天使

そこら辺は個人の判断なんだよねー。だから本人も私刑行為でしかないって言ってる。

 

838:七色

いや、それは……まあ……。

 

839:天使

まっ、そんなこと言っちゃえばブレイダーそのものが社会ルールガン無視の個人なんだけどね。ブレイダーになった時点で、ボクたちはやること違えど正義と大差ないよ。だからボクたちは自分で“選んで”他人を“選ぶ”、そんな風に考えないとやってけないよー。七色もそこは覚えておいてね。

 

840:七色

選んで選ぶ?

 

841:天使

簡単に言っちゃえばもしもの時は知らない他人より、君を好いてくれている子たちを優先しなってことだよ。

 

842:七色

…………うっす。

 

843:天使

話を脱線させちゃったね。個人の裁量といっても、奈落の裁定に関しては僕は見る感じ狙われて当然とは思ったよ。

裁判記録で見られる範囲だけど、気分悪いものが多いよほんと。だから調べるのはあんまりおすすめはしない。

 

844:七色

でも知らないと、もしものために知らないままじゃ何もできないっすから。

 

845:天使

そっか、七色は特にそうだよね。

わかったよ。といってもまずは僕と同じくネットで裁判記録を見なよ。魔装少女特別法によって行われた裁判の記録は、裁判所のホームページで特別事件って押してからじゃないと検索しても出ないから注意ね。

 

846:七色

ありがとうっす! みんなと相談してみてみるっす。

 

847:天使

はいよー。

 

848:天使

ってアビス何してんの!!?

 

849:七色

何かあったんっすか!?

 

850:天使

どうなったか実況配信に目向けたらアビスが魔装少女と戦ってる!?

 

 

+++

 

――時間は少し戻り、まさに雷の速度でアビスの元へと来たデビルは、グレムリンを一瞬で葬り、デビルの姿のまま対面の席へと座った。

 

「……天使と七色には悪いことしちゃったね」

「悪かったな。やっぱり隠し事は苦手だ」

 

アビスは冷めたコーヒーが入った杯をW状の口元部分に傾ける。穴が開いているわけではないのに、しっかりとコーヒーが喉を通り、カップの中から消えていく。

 

「いいよ。天使は皆のことちゃんと見てくれているから時間の問題だとは正義も考えてた……第二世代のみんなには迷惑を掛けることになるね」

「……あいつらだってブレイダーだ。静観するにしろ敵になるにしろ覚悟は決めるだろ」

「そうだったらいいんだけどね。僕は協力的になるほうがむしろ不安だよ。辛い思いはしてほしくないからね」

 

アビスは幾つかの嘘を付いた。ブレイダーの姿でカフェテラスへと来たのは故意であり、スレに書き込みをしたのはデビルがボロを出す前に話題を変えて、なおかつこうやって合流するためだった。

 

「…………」

「聞きたい事は分かっているつもりだよ。でも今はなにも聞かないでくれると助かる」

「だけどよ。本当にいいのか? もしもあの野郎の計画が始まってしまえば、それこそお前の“夢”に……悪い」

 

デビルは少なくとも、こんな何十人がこっちを見ている場所で聞く事じゃなかったと謝罪する。アビスは構わないとコーヒーを減らしていく、その姿はデビルが見る限りいつも通りであるからこそ気に掛かってしまう。

 

「あ。あの。助けて頂いてありがとうございました!」

「っと、こっちこそ悪かったな。獲物をとっちまって」

 

アビスを視界に収めてしまったことで混乱状態となり、戦いに集中出来ていなかった三人の魔装少女がデビルたちに声を掛けてきた。全員がおよそ思春期ほどの女の子。魔装少女としてもまだまだ新米で、ようやく慣れだしたぐらいである。

 

「ボクも謝りたい。君たちを怖がらせるつもりは無かったんだ。ごめんね」

「あ、いえ。私の方こそ変に怖がっちゃってすいません」

 

リーダー格の魔装少女が頭を下げると、同じチームであろう二人も続けて謝罪する。

 

アビスの瞳は心を炎として見る事が出来る。いま目の前にたつ魔装少女たちは色や揺らめく形は違えど、そのどれもが若々しく燃え盛り、晴々しく燦めいていた。

 

ほどよい正義感を持ち、普通の人間の域を超えず。さりとて優しく強くそれでいてまっすぐな思いで人々を守る為に戦う魔装少女。アビスはそう三人を評価した。

 

「……あの……それでアビスさんはどうして私たちの前に?」

「全くの偶然なんだ。だからボクが言うのもなんだけど君たちに何かするつもりはないから安心してほしい」

「そうなんですか!? よ、よかったぁ。私知らないうちに何かしちゃったのかと思って怖かったんです!」

「ちょっと、そういう風に言ったらアビスさんに失礼でしょ!?」

「あ、ごめんなさい!!」

「ほんとリーダードジ。そんなんだから私たちも焦る」

「あれ? もしかして二人は私の心配をして集中出来ていなかったの?」

「「七割ほど」」

「ほぼ!?」

 

緊張感から解放されたとあってか三人組の魔装少女は騒ぎ出す。

 

「……君がトゥルー・サファイア。そっちの子がトゥルー・トパーズ。そしてリーダーの君がトゥルー・ルビーだったかな?」

「私たちの事を知ってるんですか!?」

「うん。幼馴染み三人組で活動している魔装少女。確かチーム名は『宝石戦隊トゥルーズ』であっている? いい名前だね」

「リーダーが付けた上半分のやつも知られてる……」

「やっぱり止めとけばよかった恥ずかしいっ!」

「ええっ!? 格好良いのに!?」

 

またもや騒ぎ出す魔装少女たち、全員が仲が良く力を合わせて人々を脅威から守る。傷つくことはあるだろう、悩むことあるだろう。理由があれば魔装少女を止めて違う道を歩むだろう。それでも正しい道を歩める平和のもとで戦うのが似合う子たちだとアビスは評価する。

 

だからこそ、アビスはもっと早く動けばよかったと後悔する。

 

「え? あ?」

「「リーダー!?」」

 

――突然、きょとんとするトゥルー・ルビーがアビスに向かって突き飛ばされた。アビスが椅子から立ち上がり優しく受け止め、彼女を突き飛ばした“四人目”の魔装少女に目を向ける。

 

「――死ねぇええええええええええ!」

 

これ以上ないシンプルな殺意を叫びながら四人目の魔装少女はアビスに向かって『魔道具』である鈍器を振るう。事前に幾つかの魔法によって強化された凶悪な一撃。直撃を受ければ人を肉の塊にするだろう。

 

「――巻き込んじゃってごめんね」

 

アビスはトゥルー・ルビーを守るように前に出て、迫り来る鈍器に対して腕を前に出す。その指先が『魔道具』に触れる。すると『魔道具』に火が灯り綿毛の如くあっという間に燃え尽きてしまった。

 

「……は? ぐえ!?」

「『魔道具』も魔法の一種だからね。ボクにとっては可燃物質の塊でしかないよ」

 

四人目の魔装少女が呆けている最中、アビスは慈悲無く腹部に強烈な掌底を繰り出して吹き飛ばした。

 

「怪我はない?」

「は、はい……なにが起きて?」

「出来れば、このままこの場から離れてほしい」

「リーダー平気!?」

「へ、平気だけど、な、なにがあったの?」

「あいつが、あの魔装少女がリーダーを背中から押したっ……!」

 

トゥルー・トパーズが指を差す先には、突き飛ばされた魔装少女が体を起こし憎々しい表情でアビスを睨み付けていた。

 

「アビスぅっ!!」

「君はもう少し狡猾で慎重だと思っていたよ。ハニー・ネイル」

「私だって、私だって! こんなことはしたくなかったのよ!! だけどお前がいるから! 怖くて怖くて怖くて怖くて! 平穏に暮らせないのっ!?」

「だから殺しに来たのかい? 手段を選ばずに」

 

もはや錯乱状態と言っても過言では無いハニー・ネイルに、トゥルーズたちは恐怖を抱く。

 

「出来れば、君たちにはこの場から離れてほしい。ここに居ると傷つくことになるから」

 

アビスの願いに反応の差はあれど誰もが足を動かすことはなかった。これから始まるのはとても怖いものだと、自分たちが今まで見たことのない世界の出来事が起こるのだと理解出来るからこそ立ち止まる。何故なら魔装少女だからこそ、今から起こることを眼に焼き付けるべきだと勇気が語るから。

 

「……やっぱり無理か。君たちは素敵な魔装少女だ。だからこそ見ない振りをしてほしかったんだけどね」

「おい」

「遅かれ早かれだよデビル。こうなった以上、彼女たちは何れ知ることになる。画面越しの方がいいのかもしれないけど、“これから”の事を考えれば直接見せた方がいいとボクは判断する」

「……どっちにしろ俺たちはお前のやることに口を出さない。そう決まっている」

「ごめんね。ありがとう」

「あの……。あの魔装少女は……」

 

もう分かっている。だけどいざ目の前に現れるとなると現実感が無くて、トゥルー・ルビーは思わず尋ねてしまう。

 

「――烏滸がましいボクが燃やす“もの”さ」

「ふざけないでよ! なんで私が狙われなきゃ行けないのよ!? 他にも第8支部の魔装少女はたくさんいるでしょ!?」

「別に第8支部出身者だから狙っているわけじゃないよ。ハニー・ネイル。君はたくさんの魔装少女を騙し嘲り奈落に突き落とした」

 

『魔装少女協会』の第8支部。その地下にはフェアリーたちによるグレムリンを改造する施設が存在した。セブンスの事件を切っ掛けに、カオスとアビス両名によって、施設は完全に破壊。第8支部に属していたフェアリーは全てアビスの手によって焼き殺されることとなる。

 

その後に第8支部は閉鎖に追いやったが、アビスのやるべきことはまだ終わっていなかった。それこそが悪い魔装少女の“焼却”活動である。

 

ハニー・ネイルという魔装少女は苦痛などを糧とするフェアリーたちによって作為的に作られたカースト制度で常に上位に君臨していた魔装少女である。

 

――クツツは言った。人を蹴落とすことをなんとも思っていない子を上位に仕立て上げたと、まあつまりそういうことである。

 

「な、なによ!? もしかしてあの子のこと言ってるの!? 別にそれぐらい良いじゃない。ただ揶揄っただけでしょ!? あいつが朱色の英語知らなかったのが悪いんだから!!」

「それだけじゃないとボクは知っている」

 

特にハニー・ネイルは第8支部の空気に最初から順応していた。フェアリーたちに誘導されることなく、むしろ染めるほうであった彼女は、まさしくつい最近まで人生を謳歌していた。だからこそどれだけ取り繕うと、否定しようと彼女はアビスに脅える。

 

アビスが自分の近くに現れたと知った彼女は恐怖に耐えきれなくて、ずっとアビスに脅えていく人生を送るぐらいならと、逃げ続けていた日々を終えて、きょうハニー・ネイルは現れたのだった。

 

「あんたも! なんで間抜けた顔でそっちにいるのよ! そいつは私たちを殺す異常者じゃないの!」

「はぁ!? なに勝手なことを言ってるのよ!! 関係の無い私たちに話を振らないで!」

 

二人を守るように前に出たのは勝ち気なトゥルー・サファイア。

 

「本気で言ってるの!? どうせ貴方たちだってそいつに燃やされるの! そうよ魔装少女の行き着く先はこいつに全部燃やされて殺されるのよ!! だから今のうちに殺るしかないじゃない!!」

「そんなはずないじゃない! 引退してちゃんとしたセカンドライフを過ごしている先輩だって知ってるんだから! あなたは狙われるそれ相応の悪いことをしたって話だけでしょ!」

「そう。リーダーを突き飛ばした所を見るに完全にあなたの自業自得」

「えっと……そうだそうだ!!」

 

トゥルーズたちの反論にハニー・ネイルは唇を噛みしめ、アビスは静かに驚愕する。

 

悪いことをすればアビスが燃やしにくる、そんな寝物語みたいなのを現代の魔装少女たちは、法を犯せば警察が捕まえにくるように常識として捉えられていた。ほんの少し前までは魔装少女限定の殺人鬼や放火魔と脅えられていたのが、気がつけば正反対の法の番人扱いされている。

 

ふと、アビスは天使の顔を思い浮かべる。本当に彼が入ってから第一世代(自分たち)の環境は変わった事が多いと感謝すると同時に自分がより烏滸がましい存在になってしまったなと自虐する。

 

「うるさいのよ!」

「だめだよ」

 

言い負かされたハニー・ネイルはトゥルーズに向かって乱暴に魔力弾を放つも、即座にアビスがトゥルーズたちの前に割って入り焼失させる。

 

「さっきからウザいのよ! 〈固有魔法展開(エクストラスペル):スラッシュネイル〉!!」

 

その隙にハニー・ネイルは鉄すら容易く切り裂ける爪を伸ばし、正面からアビスに飛びかかった。錯乱状態、それに戦闘経験が乏しい彼女に爪を振り回してアビスを細切れにする以外の思考はなく、その様子をアビスはハニー・ネイルの淀んだ揺らめきをする炎から正確に把握していた。

 

「ああああああああああああああああああああああ!!」

「――外道であることを許容できない乙女よ」

 

――――≪THE END≫――――

 

アビスが一歩後ろへと下がる。ハニー・ネイルは地に足を付け爪を空振りする。外したと認識した時にはもはや手遅れであり、右腕にある三つのΘが開眼し、◎へとなり体を伝って踵を上げている右足の裏へと移動する。

 

「モーニング・トゥ・ジ・アビス」

 

――――≪MORNING TO THE ABYSS!≫――――

 

「ぐふっ!?」

「――烏滸がましい死者が全てを終わらせよう」

 

アビスによる容赦無き突き蹴りが放たれて、足裏がハニー・ネイルの胴体をヒットする。

 

「げほっごほっ……さ、最低よあなたっ!」

 

胴体に◎の焼痕を入れられたハニー・ネイルではあったが、ダメージ自体は軽微であり吐きそうになりながらも台詞を残して逃げてしまう。

 

「いいのか?」

「いいよ。もう終わった」

 

ハニー・ネイルはすぐに見えなくなり、沈黙を貫いていたデビルが問い掛けるとアビスは淡々と答える。

 

「あの技は時限式なんだ」

 

――ビル風に運ばれてきた断末魔がやけに鼓膜に響く、熱い助けてと何度も何度も救いを求める声が聞こえてきてトゥルーズ、野次馬たち全てが口を閉ざして耳を傾けてしまう。

 

「あの……どうなったんですか?」

「命に別状はないよ。魔装少女の力だけを燃やし尽くした……これから彼女は普通の人間として裁かれるんだ」

「魔装少女特別法?」

「ちゃんと勉強しているんだね。彼女は未成年だけど魔装少女の力で行われた違法行為は、大人と同じ処罰を受けることになる。気を付けてね」

 

悲鳴が止んだあと、同じ方向からパトカーのサイレンが聞こえてきた。

 

今頃、ハニー・ネイルは罪状を読み上げられて、手錠を掛けられているころだろうと、アビスはサイレンの音が聞こえなくなるまで静かに耳を傾ける。

 

魔装少女が犯罪を行った場合、プライバシー保護を除いた少年法の適応外となり、審議および判決には成人と同等に扱われる。

 

懲役判決を受けた際には未成年魔装少女のためだけに専用に作られた刑務所での生活することとなり経歴に前科が付けられる。少年法が残されている中、魔装少女だけ成人と同じように裁かれるのは不平等だと言う意見も少なくないが、グレムリンという災害を唯一解決できる存在に対する法治国家の限界である。

 

「かなり目立っちまったな」

 

サイレンが聞こえなくなったのを見計らってデビルがアビスに声を掛ける。

 

「今度、天使に菓子折のひとつでも持っていかないとね。天使のことだからアニメのグッズとかの方がいいのかな?」

「そういったの他人に聞かれると恥ずかしいみたいだぜ」

 

野次馬の何人かはスマホのカメラをこちらに向けており、先ほどまでのやり取りは全てネットにて拡散されてしまっている。これからしばらくSNS上では様々な意見が書き込まれており、しばらく天使はその対応に目を回すことになるだろう。それこそ計画が始まるまで。

 

アビスはそっとトゥルーズの方へと視線を向ける。

 

「わたし、ぜったい、わるいことしない」

「うん、私も魔装少女としてもっと力に責任を持つことを考えないと」

「怖かったけどいい勉強になった」

 

彼女たちはハニー・ネイルの末路を見て、自分たちはああならないようにしようとより気を引き締めて活動していこうと頷きあっていた。きっと彼女たちは魔装少女を長くやっていけるだろうとアビスは思い、だからこそ、これから自分たちが起こす騒動によって、どうか不幸にならないで欲しいと願った。

 

「どうした?」

「ちょっとね。これからの事を考えていた」

「……しつこいようだが。本当にいいのか?」

「うん。ボクの答えはブレイダーになってから決まっているよ」

 

ふとトゥルー・ルビーもまたアビスを見る。静かに佇む彼はあまりにも儚げで、無機質で……なぜか恐ろしいと感じてしまった。

 

「――誰にも夢の邪魔はさせないのさ」

 

――これは、ブレイダー・カオスによる『魔装少女協会』への宣戦布告がテレビ放送された三日前の話である。




今回は割と疲れながら書いたので、色々と不安です……。

この2章から、ちょい役からメインまで登場人物がかなり増えることになりますが、多分、あんまり覚える必要ないです(身も蓋もない発言)。

さあ、今年も頑張るぞー。
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