変身ヒロインが守る世界にて十人の変身ヒーローは戦う   作:庫磨鳥

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お気に入りが2000件を超えたということで、これからも頑張って行きたいと思います。

失楽園を楽しみにしてくれている方が多いと思われますが、今回はメインとなる奈落視点となっておりますので、楽しんで頂けたら幸いです。

今回、アビスの必殺技演出を「めど(激熱西方歌詞姉貴)」さんに作って頂きました。作者の腕では到底実現不可能だったもので、本当に凄いので見てください。

※間違って投稿してしまったので、そのまま出すことにしました。


奈落

 

 奈落:つまりボクは対戦相手を指名できるんだね?

 正義:ああ、最終戦、お前は自分で相手を選べるようにしておいたぜ。

 奈落:でも三勝しても、されても試合は終わっちゃうんでしょ?

 正義:その帳尻合わせはしている。

 正義:もっとも、本番やってみんとわからんがな。

 正義:理想は悪魔が負けることだが、どうなるかね。

 奈落:彼が黒星になるのは非現実的な気がするよ。

 正義:案外あるかもしれんぞ?

 正義:目の前の事を優先しすぎるって評価したのはお前だぜ?

 正義:まっ、お相手さん次第だろうがな。

 正義:二回戦の黒星はほぼ確定。

 正義:混沌の勝ち負けで、俺が白黒付ければ晴れてリレーは繋がれるってな。

 奈落:怖い話だね。

 正義:戦争だからな。それでどうする?

 奈落:甘えさせて貰うよ。

 奈落:当日、ボクは五番勝負が開始される直前に第3支部に行く

 奈落:いちど見てみないとだけど、もしも間違いでないのなら

 奈落:聖女を燃やそう

 

 

+++

 

『魔装少女協会第3支部』を一言で表すならば“宗教団体”。属する魔装少女を聖女として扱い、奉仕する。ネットの海を中心に布教活動を行っており、全世界に信者が数百万人いるとされている。ただ魔装少女協会の支部であるため宗教法人として認められておらず、非公式な呼び名として、信者たちは『魔装少女教』或いは『第3支部』と呼んでいる。

 

第3支部は観光目的とした商売も行っているため、敷地内の出入りは基本的に自由となっている。奈落は無料で配付されているパンフレット。その中にある第3支部敷地内の地図を見て悩んでいた。

 

「分かってはいたけどね……」

 

大学並の広さと施設数を誇る第3支部に、奈落はどうしたもんかと悩ませる。別段迷子になったわけではない。目的の人物がいる場所はおおよそ把握できているのだが、そこまでのルートがパンフレットに記載されていないのだ。

 

ゴールが見える迷路であるから、時間を掛ければ何れはたどり付けはするだろうが。今回は戦争決闘五番勝負にて自分の番が来るまでに目的の人物――第三支部のリーダーである魔装少女に出会わないと行けなかった。

 

「与えられた機会を逃すわけには行かない……ひとりでどうにかしたかったけど仕方ないか」

 

奈落はできれば頼りたくなかった“協力者”との待ち合わせ場所へと向かう。

 

第3支部内部を一言で表すなら、西洋の宗教施設が敷き詰められた土地である。

 

ゴシック式からロマネスク式まで、第3支部の建物は数百年前の西洋宗教建築を意識してデザインされている、ただ勿論のこと使用されている建築技術は日本のものであり、国の建築法にきちんと遵守している作りとなっているためか、外見だけでも古き造形の中に時代錯誤差を感じる所は少なくなく、地球のものではない異世界の建築物感が出ている。

 

「ここかな?」

 

まるでイギリスにある寺院風の施設。観光客や信者たち向けに建てられた食事処。壁際に設置されている幾つもの企業店舗から料理を買って、数百席はある飲食コーナーにて食べるフードコート形式となっている。

 

奈落は人混みのなかを見回す。奈落の眼には確実に百人は居るであろう施設内は火の海に見えており、覚えのある“炎”の方へと向かう。その途中で相手側も奈落に気付き立ち上がった。

 

「――奈落様。こちらでございます」

 

黒ローブを着て両目を黒いアイマスクで隠す、見て明らかな魔装少女こそ奈落の協力者であった。多様性にとんだ都会と言えど、魔装少女らしい格好、それも黒系となれば目立つことこの上ないのだが、周囲の人々は彼女を認識してないかのように振るまっている。

 

「こうやって直接会うのはハニー・ネイルの一件以来だね。変わりない?」

「はい。私たちは平和で充実した生活を送らせて貰っています。これも全て奈落様のおかげです」

「いつも言っているけど、もうちょっと楽にしてもいいんだよ?」

「いいえ。それはできません。私たちは見えざるモノ、聞かざるモノ、言わざるモノ。『元懲罰部隊』は奈落様に忠誠を誓った魔装少女です。(こうべ)を垂れるべき忠誠の主には、それなりの態度を」

「オルクスは変わらないね」

 

アビスが現れてから魔装少女は普通の人間へと戻り、幾人も犯罪者として裁かれてきた。その影響下で協会側の不正行為も明るみとなり、スポンサーや支援者からの批判の声もあがりはじめたことに上層部は危機感を抱き、幾つかの対策案が実行された。

 

その中にあったのが『懲罰部隊設立計画』。

 

「二人は元気かい?」

「はい、お変わりないです。ドゥーエは嵌っているゲームで最高ランクになれたと喜んでいました。トーレは現実に飽き足らず、ゲームでも農業を行っています」

「それなら良かったよ」

 

魔装少女は魔装少女を殺せる仕様を利用し、アビスの標的になりえそうな且つ協会の指示に従わない魔装少女を秘密裏に暗殺する部隊の設立。フードの少女――サイレント・オルクスはそんな計画によって育成された『元懲罰部隊』の魔装少女の一人である。

 

『懲罰部隊設立計画』は『裏案件』として扱われ、『アーマード』の介入によって殺人が行われる前に阻止、この計画によって暗殺技術を教育された魔装少女の三人を奈落が保護することになる。彼女たちは元から天涯孤独の身ということもあって事件後に山奥の一軒家に住むことになり、主に情報面で奈落の活動に協力している。

 

もっとも、奈落本人はできれば自分のことなんて忘れて、普通に暮らして欲しいと常日頃願っているが三人の過去を考えれば、下手に自立を促進させると不幸になることは明白で、助けた責任を取れと仲間内から言われたこともあって、歪んではいるものの保護者に向ける情のようなものという解釈で彼女たちの忠誠を受け取っている状況である。

 

「…………」

「どうかしたのかい?」

「はい。奈落様がこうして頼ってくれることが嬉しいです。もしかしたら一人でやろうと来ない可能性を憂いていました」

「……あはは」

 

時間があったら、ひとりで目的の人物を探そうと思っていただけに奈落は渇いた笑いで誤魔化すことしかできなかった。

 

「……さて、時間が無いからね。そろそろ移動しようか」

「はい。どこまでも付いていきます」

 

+++

 

フードコートを出た奈落たちは歩きながら話を続ける。近年、忌避感が強くて着るものが少なくなった黒系の衣装に身を包んでいる二人、オルクスに至っては見てすぐに魔装少女と分かるローブ姿なのだが、行き交う人々誰しも二人に視線を向けることは無かった。

 

「ひとつ、質問することをお許しください」

「そう畏まらなくてもなんでも聞いて」

「はい、今回の対象は、この第3支部のリーダー。『シスター・イースター』とお聞きしています。その理由は?」

 

奈落の行いは、なんであれ付き従うオルクスが理由を尋ねるのは珍しいことであった。それも仕方ないかと質問をされた奈落は思う。なにせ今回の魔装少女は、あまりにも異質なのだから。

 

「――〈死者蘇生〉の『固有魔法』を持つ魔装少女。ただ表で魔法を披露したことはなく、信者の方々から零される情報に誰しもが疑惑的ではあります。私たちも正直、信じることができていません。奈落様は語られる彼女の力が詐欺だとお考えです?」

「……ボクの瞳は、人の心を炎として捉えることができる。その“心”っていうのはボクも確定してこれっては言えないんだけどね。言葉を換えれば“魂”だと思うんだ」

 

奈落は立ち止まって空を見上げる。天気予報では雲一つない晴天あって、今日は綺麗な青空が広がっている。

 

――だが、奈落はブレイダーとなってから、そんな空の色を忘れてしまっていた。

 

「このスキル()を得てからボクは人が死んだ後どうなるかを知った」

 

――空に見えるのは何万何億の色が重なり合った炎。ぽつぽつと地上から火の玉が上へと昇っていき、混ざっていく。そんな空を埋め尽くす炎を奈落は『三途の川』と呼んでいた

 

「長い時間を掛けて培ってきた炎は天に昇り時間を掛けて鎮火していく。そして、まっさらとなった核はまた地上へと降り、物質生命体の生の息吹を与える。それがこの世界で定められた“魂”と呼ぶべきもののシステム。ボクだけしか見えないから証明なんてできないけどね」

「はい、私たちは信じています……。シスター・イースターの魔法は本物だと?」

「炎を鎮火しきれなかった核が地上へと降るのは、そう珍しいことじゃないけど、ここ第3支部に定期的に、まるで天昇るときと同じぐらい燃え盛る炎が『三途の川』から離れて降るのを何度も確認しているんだ」

 

見える奈落だけが分かる異常事態が、この『第3支部』で何度も確認された。

 

「だから、それを確かめに行くから協力して欲しい」

「はい。わかりました」

 

――嘘を付く、炎が降る原因を確かめるのも理由のひとつであるが、奈落にとって本命はその後。降った炎が再度天に昇っていく時に見えた異常事態の究明であった。しかし、口にすることはない。

 

――もしも自分が考えている通りなら、人に聞かせられるものではないからだ。

 

出入り口からもっとも遠い場所に配置されている施設。パンフレットには“拝殿”と書かれているゴシック式の建築物である。元となった大聖堂と比べて小さめではあるが、窓全てが魔装少女が描かれているステンドグラス製と圧巻の光景である。それを目的に来る観光客も少なくなく、立ち止まって拝殿の写真を撮っている人が、とにかく多い。

 

「やりたいほうだいです」

 

オルクスの率直な感想に奈落は苦笑する。実際、この建物だけではなくモチーフとなった建築物がある国から抗議の声が何度も上がっていたりする。

 

「この建物にシスター・イースターが?」

「いいえ。私たちが調べた結果、ここにはシスター・イースターは居ません。ここは“入り口”です」

 

現在はオルクスしか同伴していないが、この数週間『元懲罰部隊』は三人総出で第3支部のことを調査しており、シスター・イースターが居る場所、そしてそこへと繋がるルートを探っていた。そして『元懲罰部隊』が、もっとも可能性が高いと結論付けた建物こそ、この“拝殿”だった。

 

拝殿内に入ると電子機器が目立つ受付所があり、その両隣に奥へと進める扉があった、そこに立ち塞がるスーツ姿の警備員を“素通り”して中へと入る。

 

拝殿内部は中央に円形の祭壇があり、それを囲うようにしてチャペルベンチが均等に並んでいる。柱や壁には芸術的な造形が施されている一方で、至る所に祭壇を映すためのカメラや照明があり、奈落は巨大なセットみたいだと感想を抱いた。

 

「この拝殿は、第3支部に属する魔装少女と信者たちの交流を行っている施設みたいです」

「聖女たちと直接出会う聖域と言ったところかな?」

「はい、そしてシスター・イースターの元へと至る道が、ここです」

 

オルクスは舞台へと上がる。奈落もそれに続き、すぐにオルクスが言う“道”に気がついた。

 

「この舞台、(せり)が付いてるんだ」

「はい。ここから床下へと行く事ができます。ネットにてメンバー限定の魔装少女と信者たちによる交流会を確認し、舞台の構造に気付きました。その後、拝殿の外周を数日間監視を行った所、魔装少女たちの外での出入りが無かったため、恐らく床下から外へと往き来する道があると予想されます」

 

オルクスは、ここで一旦話を切って、顔を俯かせる。

 

「しかし、調査不足が原因で確証には至らず、シスター・イースターが本当に居るのかどうかさえも不明です……申し訳ありません」

「そんなことはないよ。時間が無い中で沢山のことを調べてくれた。それに、これ以上踏み込んだら君たちに危険が及ぶ可能性があったからね。引き際も含めて完璧だよ」

「はい……褒めて貰えて嬉しいです」

 

落ち込んでいたオルクスであったが、奈落に褒められたことですぐに回復する。オルクスが表に出した反応は唇を小さく緩ませるぐらいだったが、奈落の眼には振るわれる犬の尻尾並みに揺らめく炎が見えた。

 

『元懲罰部隊』は、魔装少女の暗殺を目的として用意された魔装少女である故に、真正面からの戦闘はそもそも苦手であり、不殺を意識すると途端にほとんど戦う事ができなくなる。なので彼女たちが魔装少女と戦う危険性を考えて、無茶をしなかった事が奈落は純粋に嬉しかった。

 

 

「奈落様」

「うん、よろしく」

 

差し出された手を奈落は掴む。しかし、舞台の床下――“奈落”へ自分(奈落)が行く事になるなんてと、奈落は陳腐な駄洒落みたいだと、笑みを零した。

 

――今度、この事をスレに書き込もうかな?

 

「ふっ」

 

そう考えてしまった自分に気がついて、ついには頬を緩ませた。

 

「はい。〈魔法展開(スペル):新月遊泳〉」

 

オルクスが暗殺目的で秘密裏に開発された魔法を唱えると、二人は床をすり抜けていき、床下(奈落)へと移動する。役者が転げ落ちれば大怪我をするほどの高さがあるも、なんなく着地。

 

「まさに舞台裏って感じだね」

「はい。先導します。付いてきてください」

「頼むよ」

 

オルクスを先頭に移動を開始する。床下(奈落)を抜けると、そこは絨毯が敷き詰められた長い廊下へとなっていた。

 

「私たちが調査できたのはここまでです、これから先は未知となりますのでご注意ください」

「わかったよ」

 

廊下は完全な一本道であり、二人はとにかく奥へと進み続ける。

 

「――声がするね」

「はい。どうします?」

「ちょっとだけ聞こう」

 

廊下の半分ほど進むと、壁側にスタッフと書かれた扉があった。その中から二人が世間話をする声が聞こえており、情報収集も兼ねて、聞き耳をたてる。

 

「――なにもしてない本部に稼いだ金を渡さなきゃならんのはやっぱ納得できねぇよな。いい加減、この第3支部は独立して宗教法人にでもするべきだと思うんだがね」

「それには賛成だけど、日本で居場所がなくなるぞ? ただでさえ本部と折り合いが悪くて空気が最悪だって言うのに」

「つっても、協会ももう終わりだろ? 忌々しいとしか思っていなかったがブレイダーもこういう時に役に立つ。なんならとっととミサイルでも撃って本部の連中を皆殺しにしてほしいものだ」

「まっ、そうだな……魔装少女ってなんで人を殺せないんだろうな。できたらもっとやりようはあったのに」

 

話の内容は『第3支部』の現状、そして協会側の愚痴を含めた好き勝手な雑談だった。その内容は暴力的なもので宗教独特の規律感が薄く俗物的な印象を受ける。信仰か金、どちらが大切かと問われれば間違いなく後者を選ぶ者たちの会話といっても過言では無かった。

 

「表で働く人たちは宗教家に相応しい揺らめきを持つ炎だったけど、裏に潜む彼らはどうなんだろうね」

「奈落様、情報収集の許可を」

「ボクは気にしていないよ。だから行こうか」

 

炎が荒ぶり始めたオルクスを宥め、奈落は先に進むことにする。長い一本道を終えた先は地上へと続く階段があり、登りきった後にある扉の中に入る。

 

「ここは……塔?」

「いいえ、展望台の内部だと思われます」

 

奈落たちが出た場所は、第3支部内に建てられている展望台の内部だった。地上からエレベーターで最上階まであがると第3支部全体を見渡せる観光客用に作られた建物であり、本来は内部に入る事はできない。

 

「この道で正解だったみたいだね」

「はい。そして進む先はあちらです」

 

展望台の中には、奈落たちが昇ってきたものとは別の降りの階段があった。吹き抜けた空間を見上げると、数メートルは及ぶステンドグラスには祈るシスター服の少女が描かれている。この人物こそ自分たちが目的の魔装少女であるシスター・イースターであろう

 

「それで? 君はただの監視役なのかい?」

 

――奈落はステンドグラスを見上げて問い掛ける。

 

「うっわ最悪。ここにずっと居るだけの簡単なお仕事だったのに侵入者だなんて」

 

ステンドグラスに背中を預けて、スマホを弄りながら奈落たちを見下ろすのは、全体的にメカニカルなアーマーで身を包み背中に両翼を持つ魔装少女。

 

彼女の魔装に貼られているエンブレムを見て、奈落は正体を把握する。

 

「――『北陸支部』の魔装少女」

 

『協会』の一部でありながら、事実上の独立組織として活動を行っている地方支部が存在する。それこそが『北陸支部』、魔装少女が不足している地域を中心に依頼を請け負い、魔装少女たちを派遣する事を生業としており、そんな『北陸支部』に属する魔装少女たちは個々専用のエンブレムを持っているのが特徴である。

 

「そっちの女は、このわたしと同じ魔装少女? なんの魔法を使ってるか知らないけど、このわたし、『アルバトロス』の索敵能力からはノーエスケープだ!」

 

 

――怠け者の阿呆鳥――

ランカー10 アルバトロス

 

 

【挿絵表示】

 

 

「『北陸支部』の魔装少女が、どうして第3支部に?」

「そんなの依頼に決まってるでしょ! 何もなければ、ここを見張っているだけで日給三万円なんて他じゃ考えられない。でも、そういう時に限って侵入者だなんてほんとノーラッキー!」

「そういうんじゃなくて、『北陸支部』は『協会』関係の依頼を受けるのは規則違反になるよね?」

「ギクッ! な、なんで侵入者が知ってるのよ! 表だって言っていないやつなのに!?」

 

図星を突かれたアルバトロスは焦りのあまり罪を認める。『北陸支部』は幾つかの理由で『協会』に関連するあらゆる依頼を受けてはいけないという規則が存在する。もしも破ってしまった場合、さらに故意的であればなおさら、重いペナルティを受けることになる。

 

「……見逃してくれたら、この事は黙っててもいいよ?」

「よろしいのです?」

「あくまで『北陸支部』の事情だからね。彼女を燃やす理由にはならないよ」

「そ、そうは行かないの! もしも素通りさせたのがバレたらノーマネーになるだけじゃすまないんだから! 死にはしないけどもの凄く痛い思いしたくなかったら大人しくお縄につけ!」

「ちゃんと仕事をすることは偉いと思うけど、ごめんね。今は急いでいるから褒めてあげることはできないよ」

 

奈落は、こうなったら生身でいる意味はないと『B.S.F』を取り出した。

 

――――≪The abyss gate is opened≫――――

 

「変身」

 

――――≪Reach out!≫――――

 

 

「……な、な、ななんんでアビスがここに!?」

 

アルバトロスは侵入者の正体が、魔装少女絶対燃やすマンことブレイダー・アビスである事を知って盛大に動揺する。

 

「くそっ! ガチノーラッキー!!」

 

仲間内から“そのままの意味で阿呆鳥”と散々な評価を受けているアルバトロスは、もう倒すしかないじゃないと謎の即決。空を自在に飛行できる装備型の『固有魔法』、〈ジェットバード〉を起動、両翼から空気を噴射させて飛行を開始する。

 

「あんたが空中戦苦手なのは、このわたしでも知ってるんだ! ずるいと言わないでよね!」

 

身体を傾けて、へそを壁際へと向けたアルバトロスは円形の展望台を周回するように飛ぶ。彼女の得意攻撃は、上空からの魔力弾による爆撃。安全な上空からアビスが参ったと言わせる、あるいは『第3支部』からの増援が来るまで持久戦に持ち込むつもりで攻撃を開始……しようとした。

 

「――か、か、火事だあああああああああ!?」

 

――地上は黒い炎に包まれており、アルバトロスは思わず叫んだ。彼女の不幸は、アビスには自分の番までにシスター・イースターに会わなければいけないというタイムリミットがあったこと。

 

「……神話として謳われる。世界樹の天辺に住まう雄鶏を殺すためだけの炎の杖。それにあやかり即席の技にこの名を付けよう」

 

 

 

 

.Θ  Θ  Θ

. ──THE END──

. ──THE END──

. ──THE END──

.◎ ◎ ◎

.◎ ◎ ◎

.◎ ◎ ◎

 

 

 

右腕三つの眼が開眼すると周辺の炎が右手に吸い寄せられて収束する。

 

「レヴァーテイン・アビス」

[copy]

 

――――≪LAEVATEINN ABYSS≫――――

 

「――適当すぎたかもしれないね」

 

アビスは右腕を勢いよく振るった。

 

「え? ちょっ!?」

 

――アビスの右手がチカッとしたのが見えたと思ったら、円錐状の炎が己の頭の横を掠めるように伸びてきた。そしてバランスを失い落下したところで片翼が炎の杖で焼かれたことに気付いた。

 

「やっ!? まってまってとまっ!? ぶぎゃ!? ごへ!? ぶで!?」

 

翼を斬られて渦を巻きながら墜落するアルバトロス。そのまま体勢を立て直す事ができず。地面へと顔面から激突。何回か跳ねて柱にキスをしたところで止まった。

 

「……なんかごめんね」

 

命に別状はないとしても、中々に悲惨な結果となったことでアビスは思わず謝ってしまう。

 

「い、痛い……生きてる、魔装少女ってすご……」

「うん、元気そうで安心したよ。……さて」

「ギク!」

 

痛みが走る鼻を撫でながらアルバトロスは後ろを振り向くと、傍まで寄っていたアビスが見下ろしていた。適当にペンキで塗られたような右目がヤケに怖い。

 

「……流石に事を構えちゃったからね。このまま無視って言うわけにも」

「い、いや~。ほら! けっきょく、このわたしは飛んでいただけだしノーカウントでお願い!」

「でも第3支部にボクたちのこと連絡しちゃったよね?」

「…………」

 

アルバトロスは耐えられなくて、そっと視線を逸らす。規則はバレなければ破った事にならないと(のたま)う彼女であるが、仕事はちゃんとするほうである。アビスたちを確認してすぐ『第3支部』に侵入者が現れた事を連絡入れており、アビスたちは慈悲が発生しないほどの不利益を受けてしまったこととなる。

 

「な、なにとぞご慈悲を……」

「……まあいいよ。ボクは許そう」

「ほんと!?」

「だけど『北陸支部』が許してくれるかな?」

「……え?」

 

喜んだのも束の間、アルバトロスは奈落へとたたき落とされる。

 

「『北陸支部』の事務所と繋がっています。どうぞ」

 

オルクスはそう言ってアルバトロスにスマホを渡す。震えた手でスマホを耳に当てる、背中を丸める姿は、まるで捌かれる寸前の鳥そのものである。

 

「……も、もしもし? あ、はいアルバトロスです。はい……いや、このわたしは何時もこんな感じですよ? ……えっとですね。はい……はい……いや、たいした事じゃないんですけど……はい……え? リーダーとコロちゃんがいる? よりによってなんでその二人! ……いえ、なんでもないです……はい、じゃあコロちゃんに一度代わって頂けたら……すぅはぁ!!」

 

待機メロディが流れだすと呼吸を思い出して精一杯吸う。

 

「……あ、はい。アルバトロスです。コロちゃんさんお忙しいところ質問したいことがありまして……いや、このわたしって常にこんな感じでしたよ? ……そ、それでですね。もしもの、本当にもしもの話なんですけど、いや、このわたしの事じゃなくて、あくまでもしもの話なんですけど……北陸支部の魔装少女が協会関係の依頼を受けて、さらにブレイダーと戦闘になった場合、その魔装少女の処遇ってどうなりますか?」

≪ころします≫

「ですよねー! やっぱりそうですよねー! ありがとうございます参考になりましたお疲れ様!!」

 

アルバトロスは通話を切って、持ち主のオルクスにスマホを返す。そしてアビスに涙目で助けを求める。

 

「自首の方が罪は軽くなるよ」

「ノーホープ!! ……ひえっ!」

 

自分のスマホの着信音が鳴り、盛大にびびりながら画面を確認し、己の死を悟る。それでもここで逃げ出したほうが酷くなるという知識があるために、アルバトロスは泣く泣く通話を始める。

 

「オルクス。ここから先は君の『固有魔法』は通用しなくなる、いつでも戦うか逃げられるように意識を切り替えておいてね」

「はい、どこまでも付いていきます」

 

アビスとオルクスは階段を降り、先へと進む。残された時間は少なく、第3支部にも潜入がバレた以上、急ぐ必要が出てきた。

 

「――えっとですね。ちょっっっとした偶然というか事故でブレイダー・アビスとあわや交戦になりそうになりまして……場所!? 場所はですねー。室内の広い場所で……ま、まさかそんなことアルハズナイヨー! ……リーダー! このわたしを信じてほしいなって……はい、いえ違いません、すいません――」

 

一羽残った“阿呆鳥”が、しばらく鳴き続けた。この後、違反行為は即座にバレて多大なペナルティを食らうのだが、仲間内からの反応は“いつかやるとは思っていた”と酷く冷めたものだったらしい。

 

+++

 

使われなくなった焼却炉があるゴミ捨て場。ボクはいつもそこに隠れていた。

 

そんなボクを見つけた人が居た。それから彼女は毎日のように会いに来て、色んな知識を適当に見せては、ボクに感想を求める毎日が始まった。

 

彼女は物静かで、不思議で、けっきょく最後まで何を考えているか分からない人だったけど、人として足りないものを全部くれた。

 

だからボクは、自然と彼女を愛した。こんな日がずっと続けばいいなと思ったある日、彼女はふと自分の事を話した。

 

 

「魔装少女になりたいの」

 

 

――誰にも、夢の邪魔はさせないのさ。

 

 




※画像に関して問題が出てきた場合、また別の方法を考えたいと思います( ̄▽ ̄)←絵が描けない。

では、また二回戦分を書けたら投稿したいと思うので、時間は掛かると思います。よろしければそれまでお待ち頂けると幸いです。

2章は長期に渡っての執筆が必要不可欠ということもあり感想や評価など頂けると幸いです。
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