変身ヒロインが守る世界にて十人の変身ヒーローは戦う 作:庫磨鳥
お気に入り、しおり、ここすき、感想。本当にありがとうございます!
執筆の励みになります。今後ともよろしくお願いします。
十五年前ほどから、日本は異世界から来る侵略者によって脅威にさらされていた。
その名は『グレムリン』。地球産の火力では歯が立たず。目に映るもの全てを無秩序に破壊する怪物。対抗出来るのは、魔法を扱える少女。通称『魔装少女』のみだった。
+++
「やああ!」
時間は深夜。人気の無い山の中、木々が不自然に存在しない平地にて、オレンジ色のドレスに着飾った小さな女の子が身の丈にあったメイスを振りかぶった。
十五年前ならともかく、現在では彼女を一目見れば誰もが魔装少女と正体を看破するだろう。そして、そんな魔装少女の目の前に立つのは人間の大人よりも大きな怪物。
――人類の敵『グレムリン』
「きゃあ!?」
『グレムリン』の見た目は、一言で言えば人の要素を足して二足歩行となったアルマジロだった。オレンジ色の魔装少女の攻撃を鱗甲板で弾き、無防備となった魔装少女に強烈なタックルを浴びせ吹き飛ばす。
「うっ! ~~~~っ!」
魔法によって編まれたドレスは肉体を完全に防御する無敵の鎧。しかしながら痛みは取り除けないため、オレンジ色の魔装少女は大型トラックに跳ねられたかのような衝撃に悶え苦しみ、地面に伏っしたまま起き上がれないでいる。
【アルルルルルルルルルルルルルルル】
アルマジロ型のグレムリンはとどめと言わんばかりに、体を丸めてボール状になり魔装少女を引き殺さんと高速回転し突進。鱗甲板表面には目に見えない無数の刃が生えており、通った後の地面を抉っていく。
肉体は無敵なれど、あのデスボールに巻き込まれたら全身でミキサーにかけられる苦痛を味わうことになるだろう。
「い、いや。やめて……!」
魔装少女は己の頑丈さを理解しておらず、単純に潰されて死ぬことに恐怖して逃げようとするが、痛みに悶える体は少女の命令を上手く体に伝達出来ず動く事がままならない。
「いや……誰かっ! だれか助けてっ!!」
死のボールに潰されるまであと僅か。少女はがむしゃらに星が輝く夜空にむかって叫んだ。
――夜空に雷光が迸り、流星よりも速く少女の傍へと落ちる。
荒々しく、そして獰猛な音声と共に魔装少女とグレムリンの間に影が割って入り、その影はグレムリンに向かって雷が迸る拳を振るった。
「シックスパンチ」
――“悪魔”の目で捉えられるはずのない高速の六連撃が、アルマジロ型グレムリンの肉体に
【アルルルルルルルルルゥ!?!?!?!?!?】
――ドゴーーーーーーーン!!
天高く空へと飛び上がったアルマジロ型グレムリンは爆発四散。汚い花火となって跡形も無く粉々となった。
(あの人は……)
聞き覚えのある“音声”に、オレンジ色の魔装少女はまさかと助けてくれた人の顔を見ようとする。しかしながら死の恐怖から解放されたことによって緊張が解け、意志とは関係無く急激に意識を落とした。
「どういう状況だ? どうしてこんな山奥に……あん? たくっ」
気絶してしまった魔装少女を見ながら金色の悪魔は少し悩んだ後、仕方ないなとマスクを掻いた。
+++
1:悪魔
魔装少女拾って家に連れてきた。どうすっかね?
2:天使
自首して
3:七色
悪魔先輩! ついにやっちまったっすか……っ!
4:騎士
いやまって、ロリに見えるだけでワンチャン成人女性って可能性もっ!
5:悪魔
ちげぇよ。三馬鹿。
いや、家に連れてきた時点で誘拐であることは間違いないんかね?
6:天使
ちょっとー。そこで冷静に考え込まないでよ。ほんと揶揄いがいが無いよね。七色と違って。
7:騎士
悪魔先輩はやっぱり大人だなぁ。七色と違って
軽率にノリに乗ってしまってすいません。
8:七色
なんでも自分を比較対象にするのって悪い文化だと思うっす!
9:悪魔
話進めていいか?
10:天使
はいどーぞ。
って、話し始める前に魔装少女の詳細おせーて、知っている魔装少女かもしれないし。
11:悪魔
オレンジ色の十歳ぐらい。メイスっぽいステッキが武器かね。今は変身が解けて普通の姿になっているが……。ごっちゃっとしててなんて言えばいいか分からん。とにかく身元が分かりそうなものはなさそうだな。
12:騎士
十歳? おかしいですね? 魔装少女規約では確かに十才からとはありますが、それでも特例でなければ魔装少女になることが出来ません。そのため数は少なく公式サイトに記載されている十才の魔装少女は四人しかおらず、その中にオレンジ色の魔装少女はいなかったはず。
13:七色
もうこの時点で凄い嫌な予感がするっす。
14:天使
もうこの時点で、お察しだよねー?
まあ、まだ見た目は十才に見えるってだけかもしれないしー、セフセフ。
それで、どういった理由でお持ち帰りしたの?
15:悪魔
いつも通り、グレムリンぶっ○しに行ったら、こいつが倒れてた。
16:天使
伏せ字になること言うなよ! というか簡潔すぎ! もっとkwsk!
17:悪魔
すまん。
深夜、山の方が五月蠅いと思って見に行ったら、こいつがグレムリンと戦っていた。深夜の山の中でだ。外傷はないが攻撃は食らったようで、戦闘が終わってすぐに気を失ったんだよ。
それで流石に放置するわけにも行かないだろう? だから、とりあえず保護した。
18:七色
それって……
19:騎士
魔装少女公式サイトにある魔装少女名鑑を見てきました。
十才前後、オレンジカラー、そしてメイスを武器にした魔装少女は何人か居ましたが、この条件全てに当てはまる魔装少女はいませんでした。
つまり、悪魔先輩が保護した魔装少女は、協会に登録されていない魔装少女となります……。
20:天使
まだ予測の段階で言うのもなんだけどさー。
……これ「裏案件」だよね?
悪魔、いま家に居るんでしょ? ちょっとそっちに行くわ。
21:悪魔
だろうな。
助かる。俺だけだとどうにもな。
22:七色
……えっと。すいません「裏案件」って一体なんすか?
23:天使
>>悪魔 君だけだと話が拗れそうだからね。
>>七色 ごめん。移動しなきゃだから誰か代わりに説明よろで。
24:騎士
そういえば、七色が加入してから「裏案件」になるような事件ってまだ無かったんだよな。
25:混沌
「裏案件」は騎士君が加入してから七色くんが加入するまで三ヶ月。その間にあったもので最後だったからね(╹◡╹)
26:七色
あ、混沌先輩。お久しぶりっす。
でも名前が出てないのに現れるの珍しいっすね?
27:騎士
混沌先輩。お疲れ様です。
28:混沌
「裏案件」は私がメインで担当しているから( ̄^ ̄)
だから私が説明するよ(`・ω・´)キリ
29:七色
うっす
30:混沌
「裏案件」とは
魔装少女やフェアリー、グレムリン。言わば“こちら側”の存在が関与しており、創作でも現実でも裏社会で起きてそうな事件っぽいの、あるいはそれに該当するものに私たちがそう名付けたものなんだ(´·×·`)
31:七色
裏社会って……碌なことじゃなさそうっすね。
32:混沌
うん-_-b 七色くんは漫画とかアニメとかで見たことないかな?
例えば魔装少女ならぬ魔法少女たちが生き残りをかけた⚫︎し合いをするとか(><)
あるいは魔法少女がミサイルのように使い捨ての兵器として利用されるとか(><)
……こういうことが本当にあったんだよ(ノω·`o)
33:七色
まじでいってんすか
34:騎士
マジだよ。なお先輩たちの必死の努力のおかげで、どの「裏案件」も未然に防がれている。詳しい事とかはまた別の機会に聞いてみるといいぜ。
ちなみに俺が関わった裏案件は、有名な魔装少女を奴隷として売り払う。そんなやつだった。
35:七色
まさか、船のやつの。ニュースになってたの
36:騎士
まあ知ってるよね。しつけーぐらい何日もニュースになっていたし。
あの時は、フェアリーのみならずたくさんの人間が関与していたから、公表せざるを得なくなってしまったんだよね。
37:混沌
あの時は、正義くん大活躍だったよ٩( 'ω' )و
おかげでクズどもをたくさん大掃除することができたんだから(*^◯^*)
あ、●してないよ? ちょっと地獄にお引っ越ししてもらっただけだからね(⌒▽⌒)
38:七色
ひえ
39:騎士
混沌先輩。顔文字が可愛くないです……。
まあ、そんなわけで協会に登録されていない魔装少女であることは「裏案件」に繋がる可能性が高いのよ。
といっても、まだ確定ってわけではないので先走り注意ね。
40:混沌
断定をするのは話を聞いてからだけど、ぼくが思うにはまず間違いなく裏案件だと思うけどねʅ(◞‿◟)ʃ
直感だけど(`・∀・´)
41:騎士
専門的に動いている混沌先輩が言うなら、そうなんでしょうね……
42:七色
どっちにしても胸糞悪い話になりそうっす……
43:悪魔
話を区切って悪いが、分かったことを書いていっていいか?
44:騎士
魔装少女が目を覚ましたんですか?
ていうか天使は合流したんです?
45:悪魔
ああ、魔装少女は一回起きたし、天使も家に来たんだが、あの野郎。
46:天使
wwwwwwwwwwwwwww
ひーお腹痛いww
47:混沌
とても楽しそう☆*:.。. o(≧▽≦)o .。.:*☆
48:悪魔
俺はちっとも楽しくねぇよ。
49:騎士
天使とりあえず状況を説明してくれ。
50:天使
オレンジちゃん(魔装少女)なんだけど、僕が来る前はまだ寝てたんだ。
そんでねー。起きてー、周囲を見渡してー、悪魔の顔を見てー
再気絶⭐︎
51:七色
草
52:七色
すいません。草
53:混沌
ァハハハハハハ( ゚∀゚)八八ノヽノヽノヽノ \ / \/ \
54:悪魔
混沌お前今度あったら殴る
55:混沌
なんでわたしだけ_:(´ཀ`」 ∠):
あ、ちょっと用事思い出しちゃったから聞き専になるね!ε=ε=ε=ε=ε=ε=┌(; ̄◇ ̄)┘
56:七色
逃げたっす。
57:天使
はー。ほんと笑った。これ動画に使っていい?
もちろん色々と伏せたりするから。
58:悪魔
好きにしろ。そういったことが全部お前の管轄だろうが。
ああもう知らん。あとはお前が聞け。
59:天使
と言いながら、悪魔はベランダに出て見えなくなりましたとさ。
やっさしー。
60:七色
え?
ああ、怖がらせないため隠れたんっすか
61:天使
いつもはタバコ臭い部屋が除菌スプレー特有のミントの香りするし、こういう言わないけど分かりやすいギャップは本当悪魔的だよねー。
よっ、人気一位!
62:騎士
こちらで会話してるのも魔装少女を起こさないようにするための配慮ですよね。流石です。
63:悪魔
茶化すな
64:天使
ちなみに七色は人気最下位。その理由が魔装少女はべらしてるからでー、男女共に同じぐらいすこぶる嫌われてるよー。
あ、オレンジちゃんが起きたから天使二等兵は情報収集作戦に入りたいと思うので、しばらく黙りまーす。ではではっ!
65:七色
その情報乗せる必要ありましたっすか!?
えー。最下位……結構ショックっす。
66:騎士
ほら、お前の場合、強く愛してくれている人が四人も居るからバランスは取れてるでしょ?
67:七色
バランスって、そういう話じゃない気がするっす……。
というか聞いてくださいよ。この間寝て起きたらっすね……。
68:騎士
合鍵作られて添い寝でもされてたの? それぐらいならいつもの事でしょ?
69:七色
寝ている俺を中心に縛るもの持って四人が笑いながら囲むように立っていたっす。全員魔装少女の姿で
70:騎士
ホラーじゃん。
71:七色
変身して逃げなければ、俺はここにいなかったかもしれないっす……。
72:騎士
変身したんだ……。
73:七色
みんなが仲良くなったのは本当に嬉しいっす。でも協力して逃げ場所塞がないでほしいっす。
74:騎士
まだ慌てる時間じゃ無い。手袋だって五つ道があるじゃん?
75:七色
よくわかんないですし、それだと五つ全部行き止まりっすよね!?
76:悪魔
話が長くなりそうだから、天使と魔装少女の会話を書き込んでいこうと思うがいいか?
77:騎士
お願いします。
78:七色
うっす
79:悪魔
最初はやっぱり戸惑っていたんだが、天使のやつはそういうところ本当に上手くてな、すぐに落ち着きを取り戻して事情を聞くことが出来た。
まだ話の途中ではあるが、彼女は自らの意志で魔装少女になったわけじゃないみたいだ。
80:騎士
やっぱりですか……。
81:悪魔
説明が苦手で、変なところもあるかもしれんが出てきた情報を順番に書いていくぞ。
まず彼女の名前は「たかなし みかん」、小学三年の九才らしい。それを証明出来るものは無いが嘘は言ってないだろうよ。
んでだ、どうして九才の子が魔装少女をやっていて、そんで深夜でグレムリンと戦っていたかっていうと、本人も分からないみたいだな。
82:騎士
分からない?
というか九才って、協会が定める年齢基準を満たしていないじゃないですか!?
83:悪魔
ああ。気がついたら魔装少女になっていて、森の中にいたんだとよ。
そんで目の前にはグレムリンがいて、頭の中で戦えって何度も繰り返して聞こえてきたらしいぜ。
だから訳が分からないが、とりあえずグレムリンと戦うことにしたらしい。もっとも、すぐにやられてしまい。寸前の所で俺が間に合ったようだ。
84:七色
ひどい話っすね。本当にひどいっす。
85:騎士
これは……もう確定では?
86:混沌
純真で優しき少女を拐かし、深夜の森に招待して孤独に追いやる。
その目の前には容易く己を殺す怪物が。少女にも力を与えられるが、それは絶望という味を増させるためだけの希望のエッセンス。
ああ、いけないな。いけないね。私が這い寄る刻が来たようだ。
87:騎士
混沌先輩が本気ポエムを書き込んだ。
まあ、ここまで話を聞けば当然ですよね。
これは間違いなく「裏案件」です。
88:七色
――ごめん。シリアスなのは分かってるっすけど、本気ポエムってなんすか?
89:悪魔
今回のは闘技場型っぽいな。小さな魔装少女を戦わせて、それを観戦して大いに楽しむ。
くそったれのフェアリーが考えそうなことだ。
90:七色
本気ポエム……
91:騎士
人が関わっていると思いますか?
92:悪魔
そこまでは分からん。調べるのはそれこそ混沌の領分だ。
久しぶりに大人数で動くことになるかもしれん。覚悟だけはしておいてくれ。
93:騎士
はい
94:悪魔
時間も遅い。今日はここまでにしよう。
相談に乗ってくれてありがとな。
95:騎士
いえ。仲間として当然です。また何かあれば書き込みのほうよろしくお願いします。
96:七色
本気ポエム……。
+++
『
いつものようにパジャマに着替えて布団に潜ったと思ったら知らない森にいた。
そして自分の姿が憧れの魔装少女に変身しており、目の前には自分たちに酷いことをする異世界の怪物。アルマジロ型のグレムリンが立っていて、頭の中に響く『戦え……戦え……』という言葉に従い、メイスを振るった。
彼女が尻込みすることなく戦うことを選べたのは、ひとえに魔装少女の憧れが起因していた。しかし現実は非情であり、訓練すらまともに受けた事のない蜜柑の一撃は無駄に終わり、むしろ反撃の一撃を食らう。
怪我はせずとも人生で受けたことのない強烈な痛みに悶え、九才の女の子に戻った彼女は助けを呼んだ。
その結果、蜜柑は助かったのだが、助けてくれた人物を一目見る前に気絶してしまう。
そして次に目を覚ましたら知らない部屋にいた。よくママがシュッシュとする霧吹きの匂いが充満した室内は、蜜柑にとって見たことのない異世界に見えた。
まず自分が寝ていた高そうなソファにガラスのテーブル。自分の家に置かれているのと比べて二倍以上のテレビが壁に取り付けられており、別方向の壁には高そうな額縁に可愛らしいアニメキャラの絵が飾られていた。
窓から見える夜の景色は高層ビルの上半分のみであることから、蜜柑は漠然とここが地上何十階かに存在する部屋だと理解する。
「――起きたか」
「あ――」
蜜柑は、はいと返事をしようとしたのだが、先に振り向いて人物を見たのが悪かった。
自分を見下ろしている男性は、ここに蜜柑と同じ年の少女が十人いたとして九人は怖いと思うような見た目をしていた。
黒いズボンとシャツと服装自体は地味だが、そんな評価を強引に打ち消すように金の指輪やアクセサリーなど多数装着している。現代において殆ど見ないであろう男らしい顎髭、右頬から顎下にかけて深いナイフ痕が残っており、サングラスをしているものの身長差で下から見上げる蜜柑の目には、しっかりと猛禽類のような鋭い瞳をこちらに向けてくるのが見えた。
彼こそ、蜜柑を助けた張本人であり、仲間から悪魔と呼ばれている男性だった。
「痛いところは……っておい!?」
「え? 嘘でしょ!?」
そんな悪魔そのものみたいな怖さを持つ男性を目にした蜜柑は、おめめをぐるぐるにして再び意識を失う。
視界が暗くなりきる寸前に聞いたのはどこかで聞き覚えのある“女性にしては”低めの声による爆笑だった。
「やあ、おはようございまーす」
――次に目を覚ましたとき蜜柑は“男性にしては高め”の声に挨拶された。
目の前でソファに体を起こした蜜柑と同じ目線になるようにしゃがんでいたのは、女性と見間違うほどの細身でアルビノを患っているため白髪と赤目の中性的な容姿の男性であり、蜜柑がよく知る人物だった。
「ア、アンギルさん……?」
「あれ? ボクの事知ってくれてるんだ! 嬉しいな!」
「は、はい。『アーマードchannel』のアンギルさんですよね! 動画見てます!」
「動画見てくれてありがとねー」
「うわぁ! 本物のアーマードジャージだ!」
「物販で配っているものと一緒だから、本物もなにもないよー」
まさかの有名人の登場に蜜柑は自分の状況を一時忘れてはしゃぐ。その様子を見た天使はこれなら大丈夫そうだと安堵すると同時に、気まずくベランダに一瞬だけ視線をやった。
落ち着きを取り戻した蜜柑は天使の問いに正直に答えていく、それが終わると今度は天使が蜜柑の身に起きたことを説明していく。
天使が、色々とぼかしながら説明したこともあって、蜜柑が理解出来たのは自分は何かしらの事件に巻き込まれていて、いまも危険な状態だということだった。
「とりあえず今日はここに泊まって行きなよ。親御さんにはボクの方から連絡するからゆっくり休んで」
「は、はい……あの」
「ん? なにかな?」
「えっと……あの、さっき、もう一回寝ちゃう前に目の前にいたえっと……き、金ぴかのおじさんって今どこにいますか!?」
「ぶふっ! ふっ! くぅ~……っ! 金ぴかおじさんは卑怯――っ!」
「あ。あの?」
天使は思わず吹き出してしまい、お腹を押さえる。落ち着きを取り戻すのに結構な時間を要した。
「ごめんごめん。金ぴかのおじさんね。なにか用事なの?」
「えっと、その……ありがとうって言いたくって、ミカンを助けてくれたのあの人なんですよね! それにあの人って――」
「――天使」
「お、金ぴかおじさん登場って、どしたの?」
ベランダから室内に入ってきた
その黄金色に輝くバックルは、蜜柑にとっては初めて見るものではなく目を輝かせた。
「来るぞ」
「まじで? なんで?」
「大方、どこに逃げても見つけられる発信器みたいなの取り付けていたんだろうよ」
「あー。なるほどね。まじ胸くそ案件ってわけね……これ引っ越し考えないといけないかなぁ?」
「別に良いだろ……こっちに来る前に片付ければよ」
「あの、いったいなにが来るんです?」
「んー。敵」
「え?」
顔を青くする蜜柑に、天使は怖がらなくていいと『
「なにせ、うちには怖い怖い金ぴかの悪魔がいるからね!」
「金ぴか言うな」
天使は『B.S.F』を頭上に掲げる。
空気そのものに透き通るような女性型の機会音声が天使のベルトから発せられ、神聖なあるいは電波的な全てを虜にさせるように鳴り響く。
続いて、悪魔が『B.S.F.』を斜め下に構えると、全てが“6”のテンキーが現れて、真ん中三つを左から押していく。
暴虐的な男性型の機械音声が悪魔のベルトから発せられ。ギターやドラムを中心とした肩にのし掛かるような重い低音が、全てをかき乱すように鳴り響く。
まったく違うタイプの二つの音楽ではあるが、蜜柑は不快に思わず、むしろ同時に聞くからこそ丁度良い音楽に思えた。
「変身!」
天使は頭上に掲げていた『B.S.F』を真下へと落とし、両手を広げるポーズをとった。重力に従い落下する『B.S.F』の画面とバックルの表面が重なり、変化が訪れる。
『B.S.F』が無数の白羽を模したエネルギー物質に変化して天使を包み込む。体に触れた白羽たちは次々と戦闘スーツへと変化していき、慈悲なる純白の戦士『ブレイダー・アンギル』が現界する。
「変っ身!」
そして悪魔は『B.S.F』をバックルの真横に差し込むと、バックルの表面に『666』が表示された。
『ブレイダー・ベルト』が叫んだと同時に悪魔の身につけている金装飾が輝きだし全身を包み込む。そして光が収束すると輝く禍々しい金色の戦士『ブレイダー・デビル』が現界する。
「ブレイダー・デビルにブレイダー・アンギルだ! すごい!!」
変身してグレムリンという脅威に立ち向かえるのは少女だけ、そんな、この世に突如として現れた十人しか存在しない。変身ヒーローの登場に蜜柑はここ一番の輝く瞳となる。
「というわけで蜜柑ちゃん」
「あ、はっはい!」
「これから、悪いやつを金ぴかおじさんが倒しに行くんだけど、もしかしたらここに来るかもしれない。だからちょっと怖い目に合うかも知れないけど安心して欲しい」
「悪いやつって、あの時みたいなグレムリンですか?」
「ん。まあそんな感じだねー」
天使の言い回しに少しだけ違和感を感じた蜜柑であったが、気にする前にアンギルとは違うもう一人のブレイダーに視線を釘付けにされた。
「ブレイダー・デビル……」
「ん、ああ。そうだな」
「あ、あの。わたしを助けてくれたのデビルさんですよね!?」
「ぶふっ。デビルさん……あだっ!」
「まあな。間に合ってよかった」
吹き出したアンギルを小突きながらデビルは肯定する。まさに雷を自在に操る鋼の悪魔。その恐ろしい見た目とは裏腹にその声は優しさが含まれており、蜜柑は彼が動画で見た人となりそのままの人物であることを把握する。
「本当にありがとうございました! そ、それと」
「ん?」
「ファンです! 後でサインください!」
「お、モテモテだねぇ……さっきの気絶ってもしかして、怖かったからじゃなかったのかな? これは七色のこと言えなくなるかもねー」
「やかましい。サインとかやってないんだが……分かったよ」
デビルは困った様にマスクを頭で掻いて、少女の身に起きた不幸を思い、それで幸運な日だったと言ってくれるならやぶさかではないかと頷いた。
「とりあえずサインでもなんでも敵を倒してきてからだ、だからここでアンギルと一緒に待っていて欲しい」
「わ、わかりました……やった!」
危ないことが迫っているという怖さよりも、デビルのサインが貰えるという喜びが勝ってガッツポーズを取ってしまう。
その様子にデビルもアンギルも、マスクの裏でよかったと温かい視線を送る。
「念のために変身したけど、出番なさそうなんだよねー」
「それが一番良いだろうよ。アンギル気を抜くなよ」
「分かってるよ。デビルもね」
「あ、あの! ……頑張ってください」
悪魔は親指を立てて任せろと伝えた後、ベランダから外へと出て行った。
「大丈夫かな?」
「蜜柑ちゃんは僕の動画を見てくれてるよね?」
「は、はい!」
「じゃあ、これは内緒の話なんだけどね。僕の動画でたまにデビルのつよつよ検証とかしてるじゃん」
「はい! あのシリーズ私一番好きで、全部見てます! 特にサンドバッグのやつなんて本当に最高でした!」
「ああうん。あれ一番好きっていうのはなんていうか……将来有望だね」
『アーマードchannel』では、他のブレイダーたちも時折登場しており、様々な企画を動画にしている。その中でも蜜柑はファンと言うだけあって、デビルが主体の企画である『デビルつよつよ検証シリーズ』は全動画平均して五回ほど見ていた。
その動画の内容は至ってシンプルなもので、デビルの実力を様々な方法で検証するものだ。特に蜜柑のお気に入りは【サンドバッグを殴ったら破裂するのか!?】というドッキリ企画である。
アンギルが特注で頼んだサンドバッグは中身を小麦粉に変えており、破裂したら金色の悪魔が粉で真っ白になるというのが当初予定されていた内容だった。そして悪魔は天使の望み通りにサンドバッグを殴って破裂させたのだが、雷の『スキル』を持つ悪魔が殴ったさいに条件反射的に放電してしまい空気中に舞う小麦粉に引火して粉塵爆破が発生。念のために待機していた『ブレイダー・ナイト』の『スキル』のおかげで撮影場所の窓ガラスが全部割れる程度で済んだのだが、危険すぎるとバッド評価がグッドを上回ってしまった伝説の事故回。
それを大好きと言う蜜柑に、この子本物だぁとマスクの中で苦笑する。
「ま、まあ、そんな訳でデビルの強さを見てきたと思うけどさ。実際の彼はね……そんな動画で見せてきた姿よりも何倍も強いよ」
「そうなんですか?」
「そっ。ボクたちの中で誰よりも強くって……誰よりも空想上のヒーローらしい悪魔なんだ――」
「きゃっ!?」
――バチバチバチバチバチバチバチィィッ!
天使が言い切ると同時に、数キロ先の夜空に強烈な雷光が出現、数秒間世界を昼にし遅れて大きな静電気音が都会に響き渡った。
「あの威力、『ダブルシックス』使った? ……うわぁ、てことはS級以上が来てたんだあぶねー、ほんと事前に気づけてよかったよ」
「えっと、なにがどうなって?」
「うんとね。終わったー」
「……え?」
変身を解除して元の姿に戻る天使は呆然とする蜜柑に親指を突き立てた。
「言ったでしょ? あの金ぴかおじさんはね。超強いんだ」
「――おい」
「あ、はい」
帰ってきたデビルは、理解が追いついておらず呆然としている蜜柑に優しく声を掛ける。
「サイン……どこに書けばいいんだ?」
――この後、着ているシャツに書いて欲しいとせがまれてしまい、悪魔は聞くんじゃ無かったと後悔するはめになる。
天使は、そんな悪魔を見て爆笑。蜜柑曰く「花火の音がした」デコピンを喰らい沈んだ。
先んじて今後について話しますと、この作品はあくまでも書き込みのやりとりがメインとなりますので、それ以外はサブとして書いていきたいです。
なので『裏案件』での彼らがどう動いたかは、解決後の書き込みによって、少しだけ触れる形にしたく、どうかよろしくおねがいします。
仕事があるので更新は不定期になりますが、書きたいもの全部書けるまで頑張りたい。