変身ヒロインが守る世界にて十人の変身ヒーローは戦う 作:庫磨鳥
調整平均が8,6を越えしました異次元ですね!( ̄▽ ̄)異次元ですね?
これからも頑張っていきたいと思うので、楽しんで頂けたら幸いです。
自作は基本的に「十人ヒーロー」「変身十人」と呼称していたりします。だからなにかってわけじゃないんですが←。
……タイトルの(仮)2章終わったらどうにかしないとなぁ……。
というわけで(挨拶)三回戦も楽しんで頂けたら幸いです。
※:カオスの文字化け内容を、今後の展開と齟齬が発生する可能性があったため一新しました。事前に三話の方も内容のみを変更しますのでよろしくです。
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N_アーマード06:22 おはよう! N_アーマード06:27 みんな昨日はお疲れ様! もうダメだって何回も思っちゃったけど最後の最後まで諦めるなって私たちは支え合って、この日を迎えることができた! 世界は救われてヒーローになることが出来た。秘密裏の戦いだったから誰にも知られることはないだろうけど、私たちは間違いなくこの世界を守ったんだ! 結局、私たちの目的は達することが出来なかったけどポジティブに行こうよ! 逆に考えればいいんだ。失われたものは私たちみんなで再現しちゃえば良いんだって、完璧には無理かもだけどみんなで協力すれば凄いものが作れるよ! N_アーマード06:52 そりゃ無謀だろうけど無理を覆してきたのが私たちでしょ? 出来るよなんでも。 N_アーマード07:10 なにか反応してよ。 お願いだから。 N_アーマード07:14 居るんでしょ? 私ひとりの力じゃ絶対どうにもならなかったって N_アーマード07:21 ねぇお願い誰でもいいから反応して だっておかしいもん。最初から一人だったなら、なんでこんなに寂しいの? ここにみんな居たんでしょ? おねがいだよ ひとり生き残ったなんて言わないで返事して N_アーマード07:32 なにも思い出せないんだ |
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「……」
ブレイダー側に用意された楽屋にて渦巻き模様のトンビ服を着た男性――混沌がただじっと座って自分の出番を待っていた。
――『戦争決闘五番勝負』の準備期間。郵送代理受け取り業者から『アーマード』宛てに一通の手紙が送られてきた。差出人の名前や住所などは無く「元第8支部の魔装少女」とだけ書かれてあった。経験から恨み辛みが綴られているものではないと判断した天使はブレイダーたちに誰が最初に読むと問い掛け、混沌は真っ先に手を上げた。
その中身に手書きで綴られていたのは自分の過去と、そして感謝の言葉であった。
その魔装少女は憧れるままに努力を沢山して、夢を叶えて魔装少女になった。しかし『協会』に割り当てられるままに所属した第8支部で酷い虐めを受けて、心が折れたことにより二十三となった今でも家の外へ出られない生活を送っているという。苦しいだけの毎日の中で第8支部が閉鎖になったことをネットで知り、心がスッとしたという。それから悪夢を見なくなり、まだ家の周辺を散歩する程度だけど外に出られる様になったと言う。
――もしかしたら勘違いかもしれませんが、私が前を向いて生きていけるようになったのは、ブレイダーの皆様のおかげです。本当にありがとうございます。
そう締めくくられ手紙には一切の恨み言はなく、人生を狂わされてもなお他人を思いやれる暖かさを持っていた。
だからこそ混沌は後悔を強めた。彼女が第8支部に居たであろう時期にはすでにブレイダー・カオスとして活動していたからこそ余計に。
『魔装少女協会』は魔装少女を日常に溶け込まし、彼女たちの生活を安定させることに多大な貢献しており、世界を誰が守っていると問われれば間違いなく『協会』であるとカオスは答えられる。事実、現在進行形で無遠慮に現れているグレムリンに対応しているのは戦争決闘に関わっていない協会関係者や協会の魔装少女である。
魔装少女になれなくても、少しでも魔装少女の力になるために一生懸命に働く人たちを混沌は知っている。その自由奔放さから社会問題まで発展したフェアリーたちも、ルールを教えればそれをきちんと守ってくれるものが大半だと混沌は知ってる。
――だから信じられることができた。盲目的に信じすぎてしまうことができた。このさい“過去”の出来事は関係無く、言い訳にしかならない。
協会は巨大な組織である事には変わりなく、必ず悪い人間やフェアリーが潜むだろうという考えはたしかにあった。それでも混沌は“魔装少女が関わる組織なら自然と悪は啄まれるだろう”と、ならば自分の役割は漏れてしまった悪意を処理することだと決めつけた、中身がすでに虫に食われているとも知らないで。
「よう。随分と元気がないじゃないか? 混沌」
そんな風に混沌が自己嫌悪に陥っていると、ノックもせずに正義が入ってきた。
「……汝は番が来るまで会場には近寄るつもりはないと聞き及んでいたが? 正義」
「空気が悪くなってきたからな、喉を痛める前に避難してきたんだよ。希望は?」
「物珍しいのか秋葉中をずっと散歩しているようだ。なにかあるというのなら呼び戻すが?」
「いやいい。それで? お前は“メイソウ”でもしていたのか?」
「ああ……そうだな」
正義は無遠慮に座り、『落葉会』が用意した手つかずのジュースを飲み出す。
「……奈落はどうしている?」
「さてな。シスター・イースターと出会ったら連絡は寄越すように言ってある、それがまだってことは迷子になっているのかもな」
「無事であればいいが……。正義、シスター・イースターの『固有魔法』が本物だった場合……あまりにも酷ではないか?」
第一世代の面々は、奈落の過去を知っている。だから混沌はシスター・イースターの『固有魔法』がどうであれ、出会うことで奈落の心が傷を負うのは避けられないのではと懸念していた。
「アビスの対戦相手を指名制にしたのは俺だが、シスター・イースターを選んだのはアイツの意志だ。どうなろうが俺たちは奈落の夢に関する一切の行動を阻害しない。そう決まってるだろ?」
「それはそうだが……」
「まっ、あいつにとって本物であったほうが都合がいいんだろうがな」
「……なにを隠している?」
「べつに他愛ない妄想だぜ」
どうにも奇妙な不安を持った混沌は、ぼかす正義を問いただそうとするが部屋の扉がノックされて出番が来てしまう。奈落のことは気がかりであるが、まずは目先の戦いだと意識を切り替えて、ゆらりと立ち上がる。
「あんまり気負うなよ」
「……気楽にはできんよ」
それだけ言い残して混沌は部屋を出て行った。
「まっ。あれなら勝っちまいそうだな」
ああやって感情的になればなるほど、混沌という人物は冷酷に戦い勝つことを選ぶ。相手も地雷を踏むことに掛けては天才的とヴァイオレットから太鼓判を押されたバスター・クイーン。『固有魔法』は確かに強力だがカオスのスキル『混沌の渦』とは相性が悪すぎる。バスター・クイーンが無茶苦茶するまえには決着は付くと正義は確信していた。
「さて、問題は試合というよりもだな」
人は恐怖を払拭するためならば何でもやりだす生き物だ。一勝してしまった事がどう影響するのかは分からないが対策はある程度している。ヴァイオレットも頼む前から睨みを効かせてくれているようで、下手な動きはできないと思われる。そもそもこの『戦争決闘五番勝負』自体が『アーマード』が最大限譲歩して開催された
――緩みというものは無かった。真性のバカを計算内に入れろってのが酷というものだ。
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「心配かけちゃってごめんね」
「全然いいよ! もう辛くない? だいじょうぶ?」
「はい! もう元気もりもり超ベリグッドです!」
「「ぐー!」」
一回戦ブレイダー・デビルとアルテメット・アイドルの試合が終わったのと丁度、テンションの限界値を超えた小鳥遊蜜柑は軽度の目眩に襲われたため秋葉ドーム内に設置されている休憩室の畳の上で横になっていた。二回戦が終わったあたりで完全に回復した蜜柑は付き添いでそばにいた桃川暖子の親指を付き出し合う。
「でも、ごめんね。折角の自由時間なのに」
「それこそ気にしなくていいよ。後輩が困った時に助けるのが先輩の役目だしね!」
「……あ、暖子ちゃんってそういえば中学生だったね!」
「忘れてたの!?」
同年代のお友達にしか見えなくてとはっきり言われた桃川は分かりやすくショックを受ける。
――先輩風吹かすにはもうちょっと努力が必要さね。たとえば迷子にならなくなるとか。
「それ言われるとなにも言い返せないじゃん……」
「……?」
「な、なんでもないよ。とりあえず出よっか」
桃川は自分の中に居る謎の存在、鬼美にトドメをさされて項垂れる。桃川以外に鬼美の声は聞こえないため話が繋がらない独り言に首を傾げて、桃川はそれを誤魔化しながら休憩室の外に出た。
「こっちだよ~」
「モググー。蜜柑ちゃん起きたよー」
「ご心配おかけしました!」
桃川たちは太ったキングペンギンの姿をしたフェアリー、モググと合流する。三回戦がそろそろ始まるというアナウンスが流れた事もあって、大半の人が観客席に行くなり、フリースペースでスマホで配信を見るなりしており、店舗も何もないこの場所は殆ど人がおらず、時折スタッフたちが右往左往しているのが見えるぐらいである。広大でありながら静かな空間に桃川はどこか落ち着かなかった。
「もう平気?」
「はい、ちょっと横になったら楽になりました」
「ならよかったよ~。いやー、それにしても叫ぶだけ叫んだと思ったら膝から崩れ落ちた時はほんと心配したんだよ~?」
「あう……」
なにか切れてはいけない神経でも切れたのかと思ったと言うモググに、蜜柑は申し訳なさと恥ずかしさから顔を赤くする。
「もう! モググったらデリカシーを考えなよ!」
「えぇ~。普通に心配しているだけだよ~?」
「乙女心は複雑なの!」
「だんご見ていると、結構シンプルな気がするけどね~」
「普通にひどい!」
単純だと言われたことで頬を膨らませてお冠となった桃川にモググはまぁまぁと宥めに入る。
「それで自由時間はまだまだあるけど、どこか行きたいところあるの?」
『塾』が『アーマード』から貰ったチケットは一回戦分だけであり、二回戦が始まる前には観客席から退出していた。それからは塾長の方針で保護者と生徒数人で班分けを行い夕方まで秋葉内を各々で自由行動することとなった。
桃川たちも複数人で回る予定だったのだが、蜜柑がはしゃぎすぎて倒れた事で班を再編成。モググが保護者役となって二人一体で自由時間を過ごすこととなった。
「あ、それなんだけどモググ。アイちゃんに会いに行きたいんだけどダメかな?」
セブンスガールの魔装少女であり友達である黒稗天委が同じ秋葉ドームに居ることもあって、一度顔を合わせて起きたいと思っていた。すでにこの事は一回戦が始まる前から本人に連絡済みであり、『アーマード』側のスタッフエリアまで来てくれたら迎えに行くと返信が来ていた。
「ん~。それよりもご飯とか食べなくていいの?」
「さっきめっちゃ食べたから、あんまりお腹空いていないよ」
「暖子ちゃん試合始まるまですごいたくさん食べてたもんね」
「ドームフード、全部美味しかったよ!」
鬼美が表に出てくるようになってから暖子はよく食べるようになった。成長期と言うにはその量は日に日に増えており、気がつけば成人男性三人分は普通に平らげてしまうほどである。さすがにおかしいかなと思い鬼美に尋ねると、ちょっと事情があって大量のカロリーを消費しており、出来るなら太る勢いで食事をして欲しいと言われていた。
難しいことはまぁいいかで済ませる桃川は素直に従いたくさん食べるようになったのだが、お菓子の間食が増えたことにたいして健康に悪いと説教されたのは未だに納得していなかったりする。
「そういえばみかんってブレイダー・デビルのこと好きなんだよね? グッズとか見に行かなくていいの~?」
「あ、えっとすでにお小遣いギリギリまで買って家に送ったのでだいじょうぶです。なので見に行ったら辛くなるというか……ううっ、なんで小学生ってバイト出来ないんだろう……」
「法律で決まっているからかな~」
「モググってこういう時ほんと人間っぽいこと言うよね?」
蜜柑はコツコツ貯めていたお年玉と、親から貰った追加のお小遣いを全部デビルを模したグッズにブッパしていた。だが小学生の財力では全部には届かず、泣く泣く諦めたものをもう一度見に行くのは辛すぎると言う。
「ていうか、モググ的にはアイちゃんに会いに行くのはダメな感じなの?」
「ん~、いまブレイダーの傍に近づくとなんかトラブルに巻き込まれそうで嫌なんだよね~」
「あー。それ言われたらなにも言い返せないやつじゃん」
桃川は七色を中心とした騒動に、蜜柑は運悪く巻き込まれてしまい魔装少女となった実績があるため。反論できる余地がなく桃川はモググの言葉に納得する。
「でも、アイちゃんと遊びたいなぁ」
「こっちに呼ぶことってできないの?」
「どうだろう。聞くだけ聞いてみようかな?」
『アーマードchannel』の試合配信ではアンギルとセブンスガールが交代制で実況する。だけど黒稗は本人の希望と順番的な理由で行わないらしく、もしかしたら誘ったら来てくれるかもと桃川はメッセージを送る。
「そういえばアイちゃんって魔装少女なの?」
「あ、ごめん。蜜柑ちゃんは知らなかったよね。そうだよー。それになんとアイちゃんは、あのセブンスガールの一人で、ほんとに強くてほんとに凄いひとなのだ!」
――人を褒めるにしても語彙力が必要なことを思い知らされるね。
「だんご~。愛称とは言え本人を特定出来そうなことを大声で言わないの~」
桃川はそうだった、ごめんと言おうとしたが口が動かなかった。なぜなら怖い笑顔を浮かべた知らない女性が傍に立っていることに気付いたからだ。
「――へぇ。君たちってブレイダーの関係者なんだ」
「だ、誰ですか?」
「名前ってまず自分から言うもんじゃなかったっけ?」
「えっと、私は小鳥遊蜜柑って言います」
「あっそ、で?」
「あぅ…………」
大柄な態度に蜜柑は萎縮してしまう。桃川がムッとして注意しようとした寸前。
――暖子。
聞いたことのない声色で名前を呼ばれ、寸前の所で止まることができた。
――今から話すことに返事をするんじゃないよ? 指示を出すからそいつにバレないように動きな。
「……もうすぐ試合が始まるのに、どうしてここにいるの? バスター・クイーン」
「私のこと調べたの? ストーカーじゃん、キモいなぁ」
「三回戦に出てくるんだから嫌でも聞いちゃうよ~」
――スマホを背中に隠して、音を小さくして誰でもいいから『アーマード』の関係者に繋げるさね
桃川は言われた通りにバスター・クイーンに見えないようにスマホを操作していく、毎日触っているだけあってミスすることなく五十音順で一番上になっている“アイちゃん”に電話が繋がる。
≪もしもし? どうしたの?≫
「ん?」
「は、はい! どうしてバスター・クイーンさんはここにいるんですか!」
音量が小さくしきれなかったらしく、僅かに聞こえた黒稗の声にバスター・クイーンが反応したことで咄嗟に大声を上げて誤魔化す。さらに桃川は意図したものではなかったが自分たちが置かれている状況を簡潔にであるが電話先に伝えることが出来た。
「……恩返しをしようとおもってね」
「お、恩返し?」
「そっ、『アーマード』ってほんと酷い奴らなんだよ。私がお世話になってる人たちのこと脅しているみたいでさ。見世物にするつもりみたいなんだ。それを回避するためには魔装少女が三勝しないと行けなくってね。理不尽だと思わない?」
「君たちが、そうされることをしたからじゃないの~?」
モググはいつもの飄々とした態度で、だけど棘々しい声色で返す。まさか反論されるとは思わなかったのかバスター・クイーンは分かりやすく顔を顰めた。
「うっざ。フェアリーって喰うことしか頭にない虫みたいなのばっかかと思ってたけど、お前みたいな生意気なのもいるんだね?」
「“あれら”の生き方も否定はしないけど一緒にはされたくないかな~」
――蜜柑の横に寄りな。そう、それでいいさね。
「だ、暖子ちゃん……?」
蜜柑は戸惑いこそあるものの、状況について行けておらずバスター・クイーンが放つ怖い雰囲気を捉えきれないでいた。
「それで? 恩返しって言うけど具体的にはなにをするつもりなのかな~?」
「私が勝ってもあと一勝しないといけないよね? でもフスティシアは頼りないし、五回戦の魔装少女もはた迷惑な事にまだ決まってないんだって、そうなるとやっぱ不安だよね?」
桃川たちを見下すバスター・クイーン。その瞳には決して身長差が理由だけではない威圧があった。
「だからさ――君たち私と一緒に来てよ」
バスター・クイーンが浮かべる歪んだ笑みに桃川は反射的に全力で首を横に振るった。
「なんでよ? 君たちぐらいの子供が好きそうなお菓子もジュースも置いてあるからさ。この茶番が終わるまで教会の方でさ? 大人しくしているだけでいいからさ? 来なよ?」
「君の行いは誘拐という名の犯罪って、フェアリーのモググでも知ってるよ!」
バスター・クイーンが桃川たちを連れて行こうとする理由、それは『アーマード』に対する人質にするためであることは明白だった。桃川は早く誰か来てと祈り続けながら、モググとバスター・クイーンの様子を見守る。
「関係ないよ。だって“私がなにかしてもお母さんたちが全部どうにかしてくれる”から、むしろ親孝行してるんだからさ、喜んでくれるよ」
自分の発言がどれだけ破綻しているか気付かないバスター・クイーンに、モググは彼女が、最悪の部類に入る人間だということに気付き、最悪を想定しだす。
――バスター・クイーンという人間は自我が芽生えた時から優しくされまくり、甘やかされまくり、そして全てを与えられまくりだった。親は欲しいと言った玩具の全てを買い与え、壊したら叱ることすらせず、すぐに新しい玩具を買って与えた。人に危害を加えれば、被害者の方が悪いと責任を擦り付け、飽きたものをすぐに放り投げることを褒めた。魔装少女になりたいと言えば本部に所属する母親がコネを使ってフェアリーたちとの顔合わせなどをすっ飛ばして魔装少女となった。
本人にとっては幸運にも魔装少女として類い希な才能を持っており、また機嫌を損ねない頼みならば大人たちに従順だったことが彼女の価値を高める事となり、彼女の問題行動は全て協会上層部にてもみ消しや、買収、強引な法的処置などで消されることとなる。
――嗚呼、お前は鬼か
桃川の目の前に居る魔装少女は、思考性に道徳も倫理はもちろん、社会性が著しく欠けた人間性の怪物だと理解した鬼美はそう言った。
「……ひ、卑怯者共ってもしかしてブレイダーの人たちの事言ってるんですか!?」
「蜜柑ちゃんっ!」
『アーマード』の中傷に、蜜柑はどうしても我慢できずに脅えながらも否定的な態度で問いただす。バスター・クイーンの機嫌を損ねるにはそれだけで充分だった。
「ま、ぶへ!?」
「モググ!?」
止めようとしたモググをはたき落して、バスター・クイーンは蜜柑の前に立ち凝視する。
「なに? お前あいつらのファンなの?」
「え……あぅ……」
「あんなキモオタやオカマたちのなにがいいんだか理解できないね? ゲテモノ好みなの?」
「う、うう……ブ、ブレイダーはみなさんいい人たちです!」
不機嫌さを全力で乗せたバスター・クイーンの批判に勇気を振り絞って蜜柑は反論する。
「……はぁ~~」
バスター・クイーンは深い深いため息を吐いた。溜めた空気を吐き出しきった後、蜜柑を覗く瞳は狂った光を灯す。
「――ぶっちゃけさ二人運ぶのは面倒だと思ってたんだよね。だからお前はいいや。見ているだけでキモいし」
「っ!? チェ、≪チェンジリング≫!」
「変身するなっ!」
モググがそう叫ぶが時すでに遅く、蜜柑は身の危険を感じて魔装少女となってしまう。
「〈
バスター・クイーンは無感情に魔法を唱えて、親指に中指を引っかけた右手を蜜柑の額に置いた。彼女が今から行うのはなんの変哲もないデコピンだ。
バスター・クイーンの『固有魔法』、〈トリリオン・インパクト〉は己の発生させた運動エネルギーを“自由”に加算する魔法。つまりちょっと痛いだけのデコピンが彼女が望めばミサイル並みの衝撃力を持たせることもできる。
「死ねば?」
「――――え?」
――魔装少女は魔装少女を殺せる。『
「鬼美!」/暖子
桃色の髪と瞳に白が上塗りされて綺麗な桜色へと変わる。
「
桃川の身体が光に包まれて、魔装が装着されていく――ここに一人の魔装少女が返り咲いた。
「――は?」
力が込められた中指を放とうとしたバスター・クイーンだったが、指がまったく動かなくなり力が抜けていく、次に右腕そのものがうんともすんとも動かなくなったことに気づき、じくじくと痛みが発生し始めたことで、ようやく自分の右腕になにが起きたのかを知った。
「――いっ、がああああああああああああああああああああ!!?」
右前腕の内側に“小さな二本指”が突き刺さっていた。筋肉の繊維に直接触れているそれはバスター・クイーンに激痛を与える。咄嗟に腕を振るって二本指を無理矢理振り払い後ろに転げるように後ろに下がり、穴をもう片方の手で抑えるが血がぽたりぽたりと地面に落ちる。
「でぇ! ふざけ……っ!? くそっ血がっ!? ふざけんな傷害罪だぞ!?」
「――生憎様、“鬼”同士の喧嘩に人の法なんて無意味さね。それよりもいいのかい? 魔装少女が魔装少女に加えた傷は生身の傷そのものさね。放っておくと出血多量で死んじまうかもねぇ」
「だ、暖子ちゃん……?」
「まったく、魔装少女の血の気が多いのは昔も今も変わらないねぇ。危ないから隅っこに寄っときな!」
サンシャイン・ピーチの正統派魔装少女と呼ばれる魔装の面影はなく、二本角の額当てから始まり、裾が短い和服をベースに手甲と具足を装着している。そんな姿形も性格、髪や瞳の色に至るまでまったくの別人となった桃川に、蜜柑は戸惑うことしか出来なかった。
「はっ、ははは! やっぱり『アーマード』は邪悪な集団じゃんか! 他人に怪我をさせておいてさ! 謝ることもできねぇのかよ!」
「あんたに会話はちと贅沢品過ぎるみたいだねぇ――さて、バスター・クイーンと言ったか若造? 噎び泣いて謝るか、窮鼠の如くなけなしの抵抗をするか、どちらでも好きなの選びな」
「死んじまえ!」
もうどうでもいい。ただ目の前のいけ好かない魔装少女を砕いてやると、このドームごと粉砕してやると立ち上がり魔力を込めた。
――なんとまぁ、欠伸が出ることだろうか。
「お、おまっ!?」
「魔方陣無くても肉体の強化ぐらいできるって、最近の若い子は知らないみたいさね!?」
まあ、魔方陣を通したほうが事故の確率や負担が低く安全であるため、そう啖呵を切りながらも新しいものだと苦手意識を持たず、こうなるんだったなら覚えていけばよかったと鬼美はちょっと後悔する。
「そらよ!」
「ぎぃ!?」
バスター・クイーンの膝部分を横から蹴り、強引に宙へ浮かしたバスター・クイーンの足首を掴み上げて回転、回転、回転回転回転回転回転回転回転回転回転回転回転回転回転回転回転回転回転回転回転回転回転回転回転回転回転回転回転回転回転回転回転回転回転回転!!
「あはっ! あははははは!! 天地逆転の真理に酔って
回転し続けている
「〈
超高速に回り続ける視界、強烈なGに狂いそうになる中、これから自分はどうなるのか嫌でも理解させられたバスター・クイーンは止めろ人殺しと言おうとしたが、時すでに遅く――呆気なく足を掴んでいた手が離された。
――――ズドーーーーーーーーーン!!
魔法によって極限まで増幅された遠心力によってバスター・クイーンは声にすらならない叫び声を上げながら会場の頑丈な壁をぶち破り、空へと飛んでいった。
「――こうして鬼は退治されましたとさ、おしまい」
鬼美の使った
――まったく性質が違う魔法を四つ互いが干渉することなく同時に発動した鬼美。魔法に詳しいものならば、そんな彼女のことを揃ってこう評価するだろう――怪物と。
「だ、暖子ちゃんなの?」
「いまは違うさね。というか小鳥遊蜜柑!」
「は、はい!」
「譲れないものがあるのは分かるけど、無茶が過ぎるさね!! これに懲りてもうちょっと落ち着きな!」
「ご、ごめんなさい!!」
鬼美のしかり声に背筋を伸ばす蜜柑。自分が死にかけたという実感があまり無いためか心に傷を負った様子は無く、鬼美は安心する。
「――き、鬼美なの?」
感情がごちゃ混ぜになったような震えた声でモググは静かに問い掛ける。
「……なにもかも違うのに君の面影を感じたんだ。だからどうしでぶ!?」
「昔っから判断が遅いフェアリーさね!! とっとと魔法の一つでも使っていればあたしの出番はなくてすんだんだよ!」
「まってなかみでるなかみでるなかみでるなかみでるなかみでるなかみでるって!」
「ちっ!」
「あわわ……」
センチになっているモググに対して鬼美は容赦なくアイアンクローをかます。ペチペチと手を叩きギブするモググに、仕方ないと言わんばかりに鬼美は解放するが、その顔は鬼のような怒りに満ちあふれており蜜柑はドン引きした。
「し、死ぬかと……鬼美、きみはだんごのなんなんだい?」
「モググ。あたしはあんたに対して本気で怒っている」
「……えっと~?」
「だから、この怒りが収まるまであんたの質問にはなにも答えてやんないさね」
「……その変に頑固なところ変わらないね~」
「とろくてドジなあんたが悪い」
この身勝手さは本物の鬼美だと確信したことで、モググは幾らか冷静になる。
「鬼美、ところでだんごは無事なの~?」
「…………」
「……ごめん、蜜柑、いまモググがした質問と同じことこの面倒なのに聞いてくれない?」
「あ、はい。えっと、暖子ちゃんは無事ですか……?」
「刺激が強いからちょっと寝かしつけたよ。二時間ぐらいすれば起きると思うさね」
自分の戦いが血生臭いのを自覚している鬼美は、入れ替わるついでに桃川を眠らせた。突然の眠気に抵抗なく受け入れたものだから気が許され過ぎるってのも困りものだねと、先ほどからもう食べられないとか寝言を伝えてくる桃川に内心で苦笑する。
「それで、これからどうするの~?」
「そうさね……あたしには聞きたいことが山ほどあるやつが居る。だがそいつは主役で忙しいと来てる」
「……え? まじどゆこと?」
「さてな。だが最悪は無かったみたいだぜ?」
鬼美は、こちらに近づいてくる複数の気配を察知していた。現れたのはすみれ色の魔装少女に、その両脇を固める。特徴的なヘッドフォンをした魔装少女と口元をマスクで隠す魔装少女。そして紫色のブレイダーを見た鬼美は、ニヤリと笑った。
「だから、あたしも祭りの主役になって暴れようと思うさね。良い考えだろ?」
「変わらないね~」
鬼美は桃川の顔で悪戯を思いついたように悪い笑みを浮かべた。
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――ブレイダー・カオスの世間的評価はよく分からないである。最初のブレイダーであることと、影と剣を使って戦う。怒らせたら怖い。見た目からして怖い、喋り方が中二病染みている。文章はなんか古くさいけど可愛い。どうにも魔装少女のために戦っているらしい。周知されている情報は言えばこれぐらいしかないのである。
ジャスティスのプライベートも秘匿はされているが、性格や行動理念は結構ハッキリしている一方で、カオスはそれすらも曖昧である。またカオスを関係とした奇妙な体験がネットでよく書き込まれる事から都市伝説などが多く囁かれており、謎をさらに深めている。
考察勢が最も話題にするブレイダー。そう言われるだけあってか第3回戦を第1候補に選んだ観客たちは、カオスをもっと知りたいと思うものが多く、スマホ片手に好奇心混じり合う熱気が静かに渦巻いていた。
――スピーカーから流れていた適当な音楽が止まり、それに合わせて観客も一瞬にして静かになる。
ブレイダー側の入場口から静かな歩みで現れたのは渦巻き模様のトンビ服を着た男性。初めて世に出るカオスの素顔だと気付くと観客はこぞってSNSに書き込みを行い始める。
スピーカーに通さずとも、その悲痛なる叫びの如く機械音声は観客だけではなく配信を聞いていた人類全ての鼓膜に届いた。
『世界は混沌から生まれたと言う。それは偶然か? それとも運命か? 女性のみが変身して戦えるこの世界に、お前が最初に現れた』
テンポの速い悲愴的で狂気的なクラッシックがスピーカーを通して奏でられる。それに合わせるように前口上もまた低く圧がある声で語られる。
『悪に這い寄り、全てを飲み込め! 原初のブレイダー……カオス!』
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謎の文章がスマホの画面に映し出されて、それが流れ終わると全ての音が死に絶えた世界で、混沌は静かに宣言する。
「――変身」
バックルの渦にスマホが吸い込まれ、懇願の声が世界に発信されると混沌の影が八つに分かたれて、それらが渦巻くように肉体に纏わり付きはじめアンダースーツと変化する。最後に人の形から外れた影が背後に現れて体に覆い被りアーマーへと変化していき、『ブレイダー・カオス』が現界した。
カオスから醸し出される怖気に影響されてか会場の沈黙は続く、それでも進行は続き、今度は魔装少女が登場する番となった。
バスター・クイーンという名の魔装少女を知るものは、そこまで多くはない。だがネットでの評判はすこぶる悪く、魔装少女を中心とした鍵アンチスレでは常連で、その親が協会上層部の人間である事が露見しており、噂が噂を呼ぶにしても彼女の評価は最悪そのものであった。
そんな噂は本当なのか興味津々の様子で登場を待つが、観客たちがバスター・クイーンを直接、見ることは二度と無かった。
≪――お知らせします。三回戦を出場する予定でしたバスター・クイーンが急遽出場する事が出来なくなったため、代わりに別の魔装少女が出ることになりました≫
「……なに?」
対戦相手であるカオスも寝耳に水なお知らせに、会場が音を発することを思い出してざわつきだす。そんな中を悠々自適に会場入りする桜色の魔装少女。
≪――気まぐれ女王は尻尾を巻いて逃げ出した。大変だと家臣たちが騒ぐなか、一人の魔装少女が手を上げる≫
前口上を担当する司会者は、突然の変更もそうだが、見たことも聞いたこともないため情報がなにもない事に勘弁して欲しいと想いながらもプロの意地を見せて思い浮かんだ言葉を並べていく。
≪季節外れに返り咲く、桜花爛漫の花道を優雅に歩く羅刹の名は――≫
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鬼 サンシャイン・ピーチ 美
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「――鬼美、鬼美……だ、と? まさか、そんな馬鹿な!?」
「ことがあっちまうのが現実らしいさね。さて見知った誰かさん。久しぶりに一手付き合いな」
≪ブレイダー・カオス
仕事の環境が変わったストレスを燃料に、鬼美の登場板(造語)がかなり自分好みに仕上がったので、一日でも早く見せたいと頑張りました←。
鬼美のは二時間ぐらい触って、出来なさそうあるいは出来たとしても手間が凄すぎると判断するも、一時間ほど粘って諦めて、素材はそのままにもう最初からくみ上げたものです。まあ登場板(造語)もブレイダーの変身シーンも大体そんな感じでやっていますので、お気に入りがあったら幸いです。ちなみに作者は全部好きです。
次回は恐らくちょっと時間がかかるかもしれませんがお待ちになって頂けると幸いです。それでは
↓おまけに三時間の試行錯誤。やりなおす直前を残してしまっていたので記念にはります。今回だけにします( ̄▽ ̄)←。
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改めて、それでは。