変身ヒロインが守る世界にて十人の変身ヒーローは戦う   作:庫磨鳥

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誤字報告、いつも助かっています( ̄▽ ̄)ほんとありがとう。

謎ばかりだして回収することが少ないことが多くて申し訳ないですが、とりあえず今は
広がる世界観を楽しんで頂けたら幸いです( ̄▽ ̄;)

今回特殊タグ少ないです。



三回戦 本番

まず、混沌を襲ったのは混乱。延々とループしていた苦悩が吹き飛んだ。次に自前の武器である『影捻(えいねん)』と鬼美の手甲がガキンとぶつかり合う衝撃。身体が無意識に反応しており、鬼美の打撃を防御したのだと気付いたのは少し遅れてからだった。

 

≪――とりあえず桃ちゃんは無事なんだね!?≫

≪アンギル! 試合が始まってしまっていますわ!≫

≪ああもう、事情は後で聞くからね!――……あ、これミュートになって……はい三回戦が始まりました、引き続き『アーマードchannel』ではアンギルが実況していくよー≫

≪三回戦のアンギルと一緒に実況をやっていく、格闘ゲームやってそうと言われるアイビー・ゴールドですわ。短い間ですがどうぞよろしくてよ≫

≪さて、これまでの試合では最初しばらくはお互いに動かないって感じだったけど、三回戦は開始宣言と同時にバスター・クイーン改め謎の魔装少女、鬼美が先制をとったねー≫

≪格闘戦を得意とする魔装少女みたいですわね。ノワールと一緒なタイプかしら?≫

 

「まて!?」

「犬じゃないんで止まるわけないさね!!」

 

拳と剣の鍔迫り合いは、体格的にも小さな鬼美に軍配が上がる。弾かれたことで体勢が崩れた混沌の腹部に、鬼美は二本指を突き立てた拳を放った。ズブリっと混沌のアーマーを鬼美の腕が貫通する。観客がその光景を認識して悲鳴を上げる前に状況は動く。鬼美はそのまま蹴りを繰り出す。

 

ナイフの如く切れ味を持つ脚刀がカオスに触れる直前。カオスはドロリ黒い液体となって周辺に飛び散る。土に吸収されず大地にへばりつく黒い“ソレ”は一カ所に集まり人の形となっていく。シルエットが完全に人の形になると地面から剥がれ立ち平面から立体へと、そして気がつけばカオスが五体満足で『影捻』を握りしめて立っていた。

 

≪ブレイダー・カオスはいったい何をやったんですの!?≫

≪とっさに肉体を影にしたみたい≫

≪肉体を影に? それは一体どのような状況でして?≫

≪いや、言っておいてなんだけどカオスのスキル。ボクたちから見てもほんと意味分かんないから説明しようがないんだよね≫

 

――そもそもブレイダーの『スキル』自体、ボクたちでもよく分かっていない事が多いし、知っていることを公表するのはちょっとねとアンギルは内心で付け足す。

 

「頭は冷えたかい?」

「この貫くような突き、斬るような蹴り! ……覚えがある。ああ、覚えがある! その言い回しも不遜な態度も! お前は……鬼美か!」

「最初からそう言ってるさね! このおバカ!」

 

やっと理解が追いついてきた混沌に、鬼美は頭の回転が遅いと理不尽に怒鳴る。

 

「だが何故だ!? どうして――!」

「おっとまちな。舞台の上にプライベートを持ち込むきかい?」

「むっ……」

 

現在億単位の人間に見られている試合の中で感情のままに問いかける混沌であったが、鬼美に指摘されてギリギリの所で口を閉ざす。

 

≪……なんか知り合いみたいですわね?≫

≪だねー? まあカオスは結構、魔装少女とか知り合い多いから でも鬼美って魔装少女いたっけ?≫

 

姿形は違うが髪と瞳の色、そして言葉使いから戦い方から自分の対戦相手として立っている魔装少女は間違いなく鬼美だと確信したことで、混沌は多少なりとも気持ちに整理が付く。

 

――戸惑いと、わけわからなさと、嬉しさと、悲しさと、申し訳なさと様々な感情が混ざり合い、正しく頭の中が混沌(カオス)となっているが、彼女が鬼美だというのならば理解していることはひとつだけある。彼女は、まず戦うことから始める鬼だということだ。

 

「とりあえず戦う素振りぐらい見せてほしいものさねぇ。なよなよしている男は嫌いだよ」

「――ああ、ならば這い寄れ! 混沌の足下に!!」

 

混沌は『影捻』を地面に突き刺した。すると刀身から影が伸び、立体となり地面を這いつくばるように、上空から弧を描くように、直線湾曲軌道で世界を塗り潰す数十本の影の帯となって鬼美に襲いかかる。それに対して鬼美は反転、後ろの壁に向かって走り出した。

 

壁の端に到達した時点で影の帯は途中で枝分かれを繰り返し、広がりながらゴール目標である鬼美に向かって行く、それに対して鬼美はニヤリと獰猛に笑い、身体の調子を確認するために二回跳ねたあと、姿勢を低くして地面を手に付ける。

 

「よーい……」

 

視線を左右に何度も動かして影の帯の位置を把握。そして自分に到達する二秒前が最善であることを導き、腰を浮かした。

 

「――ドン!」

 

完璧なクラウチングスタートをきった鬼美は、尋常ではない速力で小さな身体を最大限活用して影の帯の隙間を縫うように進み続ける。影の帯は鬼美を捉えようとするが追いつかず、カオスとの距離が間近に迫った瞬間、試合を見ていた億超えの瞳は鬼美の姿を見失った。

 

≪鬼美! 背中から奇襲だ―!≫

≪まったく見えませんでしたわ!?≫

「……真っ向勝負が好きな鬼子と思えば、勝つためなら相手を騙すことを厭わない人の子でもある。お前はそういう奴だったな」

「勝たないと吠えられないのさ! なにごとも!!」

 

――背後に回った鬼美にカオスは振り向きざまに『影捻』で斬り掛かる。袈裟状に来る刃を鬼美は右手甲で弾き、脇腹目がけて左拳で殴りかかる。カオスは体勢を立て直すために後ろに一歩下がった。それにより鬼美は空振ると判断し、振り切る前に体勢を元に戻す。仕切り直しとなった二人は間を置かず行動を再開。今度は鬼美が先手を取って二本指を突き立てた左ジャブを繰り出すと、カウンターを狙っていたカオスは伸ばされた左小手に狙いを付けて『影捻』を振るう。しかし、鬼美は咄嗟に右脚を浮かせて前に出し、腰を捻ることで伸びていた左腕の位置を変えることで回避する。そして、そのまま右脚を振るって遠心力を溜めてから軸足を交代、左跳び蹴りを混沌の顔面に叩き付けた。

 

「ちっ、浅い」

「――やはり、普通に戦っては勝つのは難しいか」

 

蹴りの方向と反対に自分から移動することでダメージを緩和したカオスは、両脇から影の腕を生やし、またその数だけ『影捻』を生成。四刀流となる。

 

≪こ、これは中々、扁桃体(へんとうたい)を刺激する見た目ですわね……≫

≪素直に気持ち悪いでいいと思うよ。というかあんなこと出来たんだねー≫

 

元からホラーチックな風貌と言われてきたカオスであるが、腕が四本となったことで異形度が増しており、アイビーを初めとした、数多くの人間に恐怖を植え付ける。

 

「元からその渦顔は好みだったけど、随分とイケメンになったじゃないかい」

「怪物好きも変わらずか」

「強そうな見た目が好きってだけさね!」

()がさんよ!」

 

鬼美とカオスによる逆鬼ごっこが始まる。

 

「はっ! 影はもう伸ばさないのかい!?」

「そこまで器用ではなくてな!」

 

腕を四本にしたのはある種の苦し紛れではあった。鬼美の言うとおりカオスは動きながら影の帯などを操作するのを苦手としている。鬼美を相手に足を止めることは愚行以外の何物でも無いとさっきの応戦で思い出したカオスは影による遠距離攻撃を選択肢から除外した結果が四刀流による単純な手数の増加である。

 

≪カオスは鬼美を追って追撃するけど、まったく当たらない! そして暇さえあればポーズを繰り出す鬼美に会場も沸き始めてるねー! そういうボクもちょっと楽しい≫

 

鬼美は猿のように身軽な動きで四本の斬撃を避けながらグランドを時計回りに逃げる。その間、鬼美は無駄に洗礼された無駄のない無駄な動きにてカオスを挑発する。デビルの時とは違って人の動体視力の範囲内で戦いが行われているため、見ているものにちゃんとした戦いの楽しみを与えていた。

 

≪凄いですわね……鬼美って本当になにものなのかしら?≫

≪というと?≫

≪直感染みた意見になるのですが、まるで人と戦い慣れてるみたい≫

 

魔装少女はグレムリンと戦うことでのみ力を行使することを許されている。そのため対人経験が乏しいのは当たり前である。しかしアイビーから見た鬼美の戦闘技術は人を相手取るのを前提としたものに思えた。

 

「あっはっは! 鬼さんこっちだよ! ほら手のなる方にはやくきな! 這い寄られるまえに逃げちまうよ!」

「鬼が逃げてるばかりでは、ページが増えるばかりだがいいのか?」

「そん時は一行で纏めるさね。追いかけっこは鬼が勝ちましたってね」

「詭弁を論ずる……賢い鬼の子よ、問おう、その身体は汝のものか?」

「違う、だから傷ひとつ付けてみな、殺してやるよ」

「……り、理不尽( ゚д゚)(道理が合わん)

 

カオスが追って鬼美が逃げる。それがしばらく続いたことでお互いの思考に余裕が生まれる。そのことで口が緩み出す。

 

「懐かしいね。昔を思い出すよ」

「抜かせ。昔であるならばお前と戦うことすらままならなかった」

「お前“たち”だろう? それともあたしが知らないだけであの四人に勝ったのかい?」

 

カオスの足が止まる。鬼美も合わせて止まり、様子を伺う。

 

「――ああ、そうか。五人だったんだな」

「……バカが」

 

今にも泣きそうな声で言うカオス。そんな彼に向けてではなく記憶の中で笑う少女たちに向かって鬼美は悪態を付いた。

 

「なあ、鬼美よ。答えてくれ“私は何人”居たんだ?」

「……現在(いま)と変わりないよ」

「そうか……そうか……」

 

耐えきれなくなったカオスは鬼美にだけ伝わるであろう暗号めいた問いかけをする。鬼美は仕方ないねと思いながら同じように答える。カオスはその答えをゆっくりと噛みしめるも、うまく飲み込めない。

 

「……ああ、ダメだな聞きたいことがたくさんある、話したいことがたくさんある。鬼美よこの激情を私はどうすればいい?」

「……アタシはすでに地獄の鬼さね。あんたの顔を間近で見たらおさらばしようと思っていたが気が変わったよ。見事に鬼退治ができたら褒美を上げよう」

「ならば全身全霊を持って勝とう」

 

蠢く影がカオスに纏わり付いて形を作る。楕円状に膨れ上がる影に見たものは卵を連想させた。いったい何が産まれるのだろうか? 不安と恐怖に誰もが言葉を詰らせるなか現れたのは“災害”の象徴。八つ目に八本足、背中には仮面と同じ渦が描いているそれは正しく、4tトラック並みの巨大な大蜘蛛。

 

譏斐?繧医≧縺ォ縺ッ縺?°縺ェ縺?◇(昔のようにはいかんぞ)!!』

「はっ、妖怪大戦争でもしようってかい? どこまでもあたし好みだね!!」

 

もはや言語化できていないカオスの鳴き声に、鬼美はどこまでも愉快そうに吠えた。

 

≪な、なんなんですのあれ!? わたくし虫駄目なんですの!?≫

≪カオスのフォームチェンジになるのかな? 僕たちは適当に『影蜘蛛』とか呼んでるよ。表に出るのは初めてかなー?≫

≪どうしてですの!?≫

≪見てくれがキモいから≫

≪なっとくのキモさですわ!≫

 

「――悪いね、ちょっと無茶をするよ」

 

――つくづく自分は鬼だと己を嗤う。この身体は大切な大切な暖子の身体だ、無茶をすることはあってはならない。彼女の今後の人生を考えればブレイダーから距離を置かせた方がいいに決まっている。自分とカオスの“過去の因縁”がまだ生きていると言うのならば、そもそも戦わない道を選ぶべきだっただろう。

 

だが()められない、()められない。なにせ“戦闘狂”である自分にとって久しぶりの戦闘なのだから! そうだ! けっきょくは戦いたいから戦うのだ!!

 

「さっきも言ったが、この身体に怪我させたらぶっ殺すさね!!」

菫晁ィシ縺ッ縺ァ縺阪s繧(保証はできんよ)!」

「なら、後悔するさね! あたしも本気でいくよ!!」

 

魔装少女の肉体そのもののステータスは元の身体を鍛えれば鍛えるほど上がっていく。逆に言えば元の身体が貧弱であれば、たとえ魔装少女になったとしても素の人間よりも弱いということも珍しくはない。もっともそこから魔法による強化を行うため、素のステータスを気にする魔装少女は格闘や近接系を含めても少数だったりする。

 

桃川の肉体的才能は同年代の子と比べても平均よりちょっと下である。スポーツのプロを目指さなければ、十分ではあるが、もしもの自分が表に出て戦うのなら大が付くほどのステータス不足だと、鬼美は桃川の肉体を改造することにした。

 

鬼美はまずは中身の強化を行った。肉体が同じなため心に直接触れられるという裏技を使いプラシーボ効果と様々な魔法の応用にて内臓機能の向上、筋肉繊維の強化と変化、骨を頑丈にして、栄養素の吸収率操作などを行い基礎となる健康的な肉体を作っていく。また、ながら運動のように日常生活の中で必要な部分に負荷をかけて筋トレを施し、魔装少女の姿での訓練時には余分に魔力を消費させて魔力量を増幅促進。その代償に必要カロリーが日に日に増しているが成果は出ており、僅か数ヶ月たらずで鬼美の動きに付いてこれる魔装少女(身体)へと変貌していた。

 

――どうしてここまでしたのか、それは並みの魔装少女の肉体では鬼美の本気に耐えられないからだ。鬼美は確かに現代の“安全”な強化魔法を使えないが――それを勝る“危険”なものを持っていった。

 

「我らが愛し憎しみ慈悲憤怒を抱く神よ。お前は何れまで寄り添うものか。相容れぬからこそ怖れ合うと言うのならば、今こそ混じり合わん」

≪――なっ!?≫

 

鬼美の足下に重なった六つの魔方陣が展開される。灰色の魔装少女の絶句する声をマイクが拾う。

 

「これは太古から続く寄り添いながらも、触れられぬ(モノ)同士が一蓮托生となる軌跡の物語」

 

魔方陣たちが鬼美に収束していく。その最中、本気となった『土蜘蛛(カオス)』が足を動かし蜘蛛の巣を揺らすと、巣の糸から影の帯が地面に向かって延びていき、それらが数十本、鞭のようにしなりながら大地に襲いかかる。

 

≪巨大な姿でどうするかと思ったら真っ先に制空権とって安全な所で無差別攻撃って容赦ねー≫

≪というかやり過ぎですわ!?≫

≪いや、むしろまだ足りないのかな……ほんと、今まで聞いたことが無いのが不思議なぐらいの強さだよ≫

 

触れた地面を抉りとるほどの威力。掠めただけでも無事ですまない踊り狂う不規則の影の鞭に鬼美は付き合わない。気がつけば彼女もまた蜘蛛の巣の上に立っていた。

 

「〈魔法多重展開(その名は――)献炎乗仲(けんえいのなか)〉」

 

――鬼美の魔装は変化していた。着物をベースに手甲具足の最低限の鎧を着ていた風貌が、赤と黄色の炎を象った平安時代あたりの全身甲冑姿となっている。その背後には全長よりも大きな六重魔方陣が浮かび上がっており、個々が違う速度且つ偶数は右に、奇数は左に回転していた。鬼美の挙動に合わせて桜の花びらを模した火の粉が周辺に飛び散る幻想的な光景が彼女をより人から外れてる印象を持たせる。

 

≪――な、なんなんですかあれ!?≫

≪ちょ、ちょっとグレイ!? いまわたくしの番ですわよ!? スケジュールは守ってくださいまし!≫

≪グレイが思わず声上げちゃうほどの魔法かー。なにか普通のと違うの?≫

≪なにもかもです!≫

 

グレイが興奮するのも仕方が無く、鬼美の魔法は魔装少女たちが現在使っている魔法とは逸脱していた。アンギルの問いに、グレイは状況を忘れて説明しはじめる。

 

魔方陣の同時多重展開。それは言わば魔法の同時発動を意味する。幾人の魔装少女や『魔法職人』が目指している“現在の技術で実行不可能とされていた”頂きである。魔法の発動に必要な工程はまず記憶した魔方陣を頭に思い浮かべて、次に詠唱を行い、そして必要分の魔力を消費する。そうやってはじめて魔法の効果が発動されるのが基本原則である。

 

その中で魔方陣を同時に四つ別々に思い浮かべられたとしても、それは“四つの魔方陣に見えるひとつの魔方陣”というまったく別ものとして処理される。その四つのいずれかの詠唱を行ったとしても魔法は発動することは無い。さらに当たり前のことであるが詠唱を発声できる口は一つしか無く、“鍵”を明ける作業はなにをしたって一個ずつしかできないのだ。それを鬼美はやってのけていた。内容こそ把握できないが、刻印が違う魔方陣を六つ同時に展開して、それを同時に発動したのを確かにグレイは見た。

 

――だが、それだけだったのならば『固有魔法』あるいは単なる曲芸技術ではないのかと考えて、グレイもそこまで驚かなかったかもしれない。魔法そのものに干渉する自分と同じ『固有魔法』を疑うが、魔法というものに頭ひとつ飛び抜けて理解がある彼女だからこそ気がついた。

 

鬼美がいま使った魔法は、私たちが使う魔法とは文字通り“なにもかも”違うのだと。

 

諛舌°縺励>(なつかしい)

「なに言ってんのか分からないけど、大体察せられるさね。こいつはバリバリ現役だよ……古いからと言って嘗めたら承知しないさね」

縺ァ縺阪k縺(できるか)

 

鬼美は身体の調子を確認する。魔装追加による支障は問題なし、魔法の出力操作も行える。問題があるとすればまだまだ鍛え不足なため魔力量も考慮すれば、この姿で無茶をできるのは動き出してから一分ほどであろう、それを過ぎれば魔法が解除され戦う余力すら無くなることを把握する。

 

「――(しめ)の時間がやってきた。さっさと語りきってやるから寝ちまいな」

鬯シ鄒弱ぅ繧」繧」繧」繧」繧」繧」繧」(鬼美ィィィィィィィィ)!!」

 

――結末を締めくくる怪物(大蜘蛛)妖怪()の戦いの火蓋が切って落とされた。

 

≪ごめん! 魔法のことは試合終わってから解説してね! さあ戦闘が再開されたね!≫

≪恐らくこれが最終ラウンドになりますわね。果たしてどっちに軍配が上がるか……≫

 

鬼美が一歩を踏みしめると魔方陣が勢いよく回り始めて魔力が大量に消費されはじめる。すると“ロケットエンジン化”している魔装は甲冑の繋ぎ目から円錐形の炎が噴出されて鬼美は加速する。カオスは迫り来る鬼美に向かって口から糸の影を排出する。それに対して鬼美は炎を真下に向けることで急激な軌道変更を行い上空へと鳥の如く飛翔。カオスもすかさず糸の影を吐き出しながら、それを足場に鬼美を人を超えたスピードで追いかける。そもそも逃げる気が無い鬼美はUターンして、自分の真下に位置付いたカオスに向かってさらに加速、突撃せん勢いで向かう。カオスはタイミングを見計らって、その場をグラウンド端に向かって跳躍、見えないバリア()を利用して三角跳びの要領で、ちょうど鬼美が通り過ぎるであろう位置に向かって弾丸の如く跳び出した。鬼美は咄嗟に炎を逆噴射し急ブレーキを掛ける。身体に強いGがかかるが魔装少女の身体は便利で苦しみや痛みは感じるが肉体がおシャカになることもブラックアウトする心配もない。4tトラック並の巨大砲弾と化したカオスがギリギリの所で止まった鬼美を通り過ぎる。鬼美は背中からまるで鳥の骨翼のような炎を放出、一瞬にして最大速度へと持っていき巣に着地して伸縮性を利用し速度を殺しているため動きが止まっているカオスへと急接近、そして胴体に音速の拳を食らわせた。

 

――半分に抉れた胴体から“数十本の黒い人の腕”が伸びて鬼美を掴んで捉える。

 

謐輔∪縺医◆」(捕まえた)

「馬鹿が! 鬼相手に捕まえるだけじゃあねぇ! 首を斬らなきゃダメだろうが!! あっはっは!!」

 

六つのうち五つの魔方陣が尋常ではない速度で回転しはじめる。魔装から危険な輝きは発せられる。鬼美が行っているのは残存魔力の99%を消費させながら、排出率を最小にするといったものだった。排出と延焼のバランスが崩れたことで追加魔装に炎と熱が蓄積され続けて“自壊”が始まり、甲冑たちがひび割れていく。

 

「――結末さね!」

 

罅から光が漏れ出す甲冑がパージされ、そして――

 

 

 

 

 

 

スーパーノヴァ!!!

 

 

 

 

 

 

 

――大爆発が起こった。

 

≪うるせっ!? ノイズキャンセルしてもこれっていうか自爆したよね!? いま自爆したよね!?≫

≪わ、分かりませんが鬼美の魔装が光って大爆発しましたですわ!?≫

≪ああもう、土埃がまって全然見えない! どうなったのさ!?≫

 

轟音とグラウンドの土とカオスの影と思われる黒い液体が飛び散りそこら中から悲鳴が上がる。

 

「――はっ、あっはっはっはっは! あっはっはっはっはっはっはっはっは!!」

 

土煙の中から痛快な大笑いが聞こえてきて不自然な影が土埃を払う。クレーターの中心には半分土に埋もれながら倒れている変身が解けた混沌が居て、手甲具足も無い着物姿だけとなった鬼美がとびっきりの笑顔で立っていた。

 

「いやぁ、やっぱ戦いは楽しいね。さらに勝つともっと楽しいねぇ? ブレイダー・カオス」

「……ああ、私の負けだ鬼美」

 

ブレイダー・スーツの耐久値を超えたダメージを受けたため変身が解除されて『B.S.F』の電源が落ちた。再起動するまで24時間、混沌は変身する事ができなくなり、もはや戦うことは出来ない。

 

――聞きたいことが山ほどあった。聞いて欲しいことが山ほどあった。だが負けたためにその願いは叶わない。そう思ったら年甲斐もなく瞼から忘れていた“なにか”が零れそうになる。

 

「ああ……やっとあんたの正体が分かったよ。泣き虫は相変わらずかい?」

「……分からない」

「仕方ないね。正直言うとあの爆発で魔力の99%を使っちまってね。あんたが負けを認めてなかったら最悪引き分けになるところだったさね。――強くなったじゃないか、坊や」

 

――強くなるさね、坊や。

 

髪と瞳の色以外、まったく違う魔装少女の幻影と被り、混沌は堪えることができず一粒の涙を流した。

 

「あんたの成長に免じて、この子が起きる少しだけの時間、話を聞いてやるさね」

 

カオスにだけ聞こえるような小声でそう伝えたあと、鬼美はご機嫌な様子で自分が出てきた入場口から帰っていった。そして少しだけ時間をおいた混沌がふらつきながら立ち上がり、覚束ない足取りで同じように会場を後にする。

 

≪――お、終わりましたわね……?≫

≪そうだねー。……あんなカオス初めて見たよ≫

 

――『戦争決闘五番勝負、第三回戦勝者。鬼美』

 

一勝二敗、『アーマード』側が負け越す結果となった。




鬼美が使った魔法は『炎属性付与(魔装追加)』『ロケットエンジン原理付与(魔装追加)』『耐久力極大強化(本体付与)』『炎操作(方向)』『熱操作(放出)』『火力変換(STR)』となってはいます。細かい所はぶん投げたので、本編に記載する勇気はありませんでした(  ̄▽ ̄)終わらなかったんだ……。

次回は二人のやりとり&スレ回となっていますので、お待ちになって頂けたら幸いです。それでは。
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