変身ヒロインが守る世界にて十人の変身ヒーローは戦う   作:庫磨鳥

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感想、お気に入り登録、評価、ここすき、誤字報告本当にありがとうございます。
総合評価が6000になっていました。二章の終わりにここまでこれたこと本当に感無量です。改めてありがとうございます。

これを機会に章タイトルを変更しました。よろしくお願いします。


今回はエピローグとなっており短いです。それでも楽しんでいただけたら幸いです。


おわり、そしてつづく

『戦争決闘五番勝負』による全ての戦いが終わった後、秋葉自警団本部、その屋上にて悪魔は転落防止用に設置された鉄柵によりかかり、想衣はそんな悪魔の隣に立っていた。

 

屋上へと来ていたのは妹のひとみが泣き疲れて眠ってしまった後。剣呑な空気をまき散らしている悪魔を想衣が誰もいないところへと行きたいから連れて行ってと誘ったからである。屋上に来てからしばらくはどちらも喋らない居心地の悪い時間が過ぎて、耐えかねた悪魔は煙草に火を点けた。それを待っていたかのように想衣は口を開いた。

 

「……今日出会ったばかりの、私のお願いを聞いてくれてありがとね」

「……結局、迎えに行ったぐらいしか出来なかったけどな」

「ううん、一番して欲しいことをしてくれたよ」

 

彼女はシスター・イースターによって蘇生された人間である。奈落の視点映像から全世界にへと暴露された。本物であれど非道な死者蘇生の真実。復活した人間は細切れにして殺されるという結末を迎える。それは想衣とて例外ではなく、彼女も奈落の母と同じように“何度も”『三途の川』へと還った。

 

「お前は何回……」

「うーん。途中から数えないようにしたから正確な数字はわからないけど、多分二十回以上かな?」

 

それは彼女が無惨な方法で殺された数字でもある。想衣は殺される時の苦痛をハッキリと覚えている。どこを切り裂かれても決して即死する事ができず、自分が段階的に消えていくような感覚と同時に、全身をナイフで切り裂かれるような最後まで終わりのない激痛。それが肉体から魂が剥がれるまで続くのだ。運が悪い時は二十秒は意識が残っていた事があった。

 

「どうしてそこまで?」

「実は私も重度なシスコンなんですよ……。ほんと私ってバカだよね。妹に会いたいからって苦しい思いさせちゃうんだからさ……」

 

狂気としかいいようのない目に会い続けても想衣は姉である事を辞めなかった。それが妹が身を削る理由になったとしても、尊敬される姉で居続けることを選んだ。だから、誰かを恨む事は無い。想衣にとって細切れにされて殺される事なんて、愛する妹と過ごすために必要な代償ぐらいでしかなかったのだ。

 

(いだ)く想いは、そんな自分のちっぽけなプライドのために、ひとみを苦しめてしまったという一点のみである。

 

「結局、私は自分勝手な姉でしかないんですよ」

「んなことねぇよ……お前は良い女だ」

「……おや? もしかしてこれは世界的なヒーローである悪魔さんのハートを射止めちゃいましたか?」

「ああ、そうだな」

「あらら……え、ほんと?」

 

最初こそ冗談でしかないと思ってわざとらしく返事したが、悪魔の雰囲気から本気であることに気づき想衣は目を見開くほど驚いた。

 

「嘘言ってどうする」

「あー」

 

悪魔はずっと噛んでいるだけだった煙草を吸う。想衣は気恥ずかしそうに頬を掻いた――掻いた部分の皮膚がボロボロと零れ落ちる。悪魔は正面を見続けたまま静かに煙を吐いた。

 

「うー……因みに妹と比べてどうですかね?」

「お前の方が好みだな」

「……おかあさんを思い出せたから?」

「マザコンなものでな」

 

最初の蘇りの時、再会を記念して妹から貰った服の間からぽろぽろと砂土が断続的に零れ落ちはじめる。

 

「そっかぁ。ひとみよりも私がね……ふふっ、初めて言われちゃったなぁ」

「……そうか」

「あ、別にひとみはめっちゃ可愛いので、選ばれなくても嬉しいんですよ?」

「だろうな」

 

――アビス=アウターライトによってシスター・イースターは完全に焼失した。この事で彼女の『固有魔法』〈フロムバース〉も存在そのものが焼失した。それはつまり惹彼琉想衣という“死人”を現世に留まらせる魔法()が無くなった事を意味する。

 

「……妹の元に戻らなくていいのか?」

「うん。お別れはさっきしたし、もう死ぬところを見せたくないから」

 

最後の時間を、ひとみと過ごす事に使いたい気持ちはあったが、死に目をもう一度見せるほうが辛かった。それにようやく安眠できたひとみに、想衣は姉として今はただゆっくりと眠って欲しかった。

 

「――想衣。これは提案なんだが」

「うーん。それには同意しかねますねー」

「まだなんにも言ってねぇよ」

「これ以上誰かに迷惑を掛けるのは嫌だから、できたとしても惹彼琉想衣として生きたいとは思わないかな? といっても未練が無いって言ったら嘘になるんだけど」

 

――アビス≒アウターライトのスキルならばモニカの時と同様に彼女を人間として完全なる蘇生を行なうことは可能である。ただしアビスが己の命を材料としたように、誰かの犠牲に成り立つ復活となる。

 

想衣はそんな誰かを犠牲にした罪を背負ってまで生きたいとは思わなかった。ただもうひとみの姉は今日で本当にお終いになるんだと考えて、ちょっと嫌になった。

 

「怖くないのか?」

「死に慣れちゃったからあんまり? それに安心はしたから」

「……安心ってなんだよ」

 

悪魔は耐えきれず声を固くしてしまう。怒っているようにも聞こえるが、それは気遣いから色んな感情を我慢しているからだと想衣はちゃんと分かっていた。

 

「私に会えなくなった後の、ひとみがどうなるのか不安だったんだけど、もう大丈夫かなって思えたんだ」

「わかんねえな」

「んー。言葉で説明するよりも私を見てくれたほうが分かりやすいかも」

 

――悪魔は少し躊躇いながら想衣の方へと顔を向けた。彼女は顎を上げて瞳を閉じていた。悪魔は頭を乱暴に掻いたあと、ゆっくりと背中を丸めた。

 

「「――――」」

 

――死んだ時から成長していない少女と平均よりも遙かに高い男性の影が重なり合う。

 

「……煙草、私には合わないかも」

「そうか……残念だ」

 

そう言いながらも幸せそうにする想衣。劣化は止まることなく進行しており、顔には幾つもの罅があった。服で見えないが全身も似たようなもので、いつ崩れ落ちてもおかしくない状況だった。

 

「そういえば初めてだった。悪魔さんは?」

「……二人目」

「実は社会ではおかあさんはノーカンってルールなんだよ? あとほっぺとかだよね?」

「なんで分かるんだよ……」

「悪魔さんはマザコンだって知ってるので……ん」

 

想衣はもう立っているのも難しいと鉄柵を背中に預けて座る。その隣に悪魔が座ると肩にもたれ掛かった。もう煙草の匂いが分からない。

 

「……嫌な役押しつけてごめんね」

「べつにいい」

「ふふっ……正直そう言ってくれると思った……2回目の一生のお願いしていい? ひとみをこれからも助けてください」

「……ああ」

「えへへ、やっぱり……安心だ」

 

――ひとみも彼には心を開いている。自分以外に甘えられる存在ができたのだ。その彼が妹のことを見守ってくれると了承してくれたのだ。ちなみにそんな彼は世界で一番強いヒーロー。不安になる方が失礼と言うものだ。

 

「悪……魔さん……」

「なんだ?」

「……ううん……。呼んで……みた……だけ」

「……そうか」

 

忘れてくれればいいよ。あと数年したら妹は自分より絶対に美人になるよなどと言おうとしたが、想衣は寸前でやめた。悪魔は自分を決して忘れない。過去にしても思い出には絶対にしない。それを理解している想衣は、最後だからいっかと彼に素直に甘えることにした。

 

――ああでも、やっぱりお姉ちゃんは。

 

「悪……魔さん……」

「ああ、ここに居る」

「――――おやすみなさい」

 

――妹のことがちょっと心配だな。

 

 

 

 

 

 

「…………()げぇ」

 

隣にはもう誰も居ない。妹からのプレゼントである衣服だけが残された。好きなはずの煙の味が、このひと吸いに限ってはひどく不味かった。

 

 

+++

 

 

 

――第3支部の地下。そこには飼われる事を選んだフェアリーたちの巣が存在する。

 

 

だれ?

daredaredaredaredaredaredaredareまたきたの?

daededaredaredareごめんなさい!

ちがう?

だれ?daredaredaredaredare

daredarededdaredareareあれ?

 

 

外で生きることを止めて、巣の中でしか生きることが出来なくなったフェアリーたちは、巣の中にまた誰かが入ってきたとざわつきだす。物質世界で生きることを諦め、元居た世界と同じく光の玉の状態で生きていく事を選んだ彼らに、物質生命体のような五感は存在しない。

 

そんなフェアリーの中で、来客の“魔力波長”に覚えがあるものたちが複数居た。落魄れた思考を回し、誰だったかと思い出す。

 

――そうだ。彼女は自分たちにこの巣を提供してくれた魔装少女――――――。

 

 

「――屠殺の時間だよ。家畜共」

 

 

――それから数十分後。空っぽになった巣を後にして魔装少女は外を歩いていた。継ぎ接ぎだらけのポンチョで全身を隠しており、その手には機械的な筒が握られている。

 

「ちっ」

 

魔装少女は不機嫌そうにスマホを取り出して、あるところに通話を掛けた。

 

≪は、はい……≫

「ねぇ聞いてよ“カーペンター”! 一番でかく作った第3支部の巣! そこのフェアリー皆殺しにして『因子』を回収したんだけど、めっちゃ少なかったの! 他の全部合わせても千もないって予想外すぎる! あのババアどんだけ使ったんだよ!」

≪ひうっ!? と、突然大声で話さないでよ……≫

「イライラしてるから当然でしょ! まあもういいけど、はぁやっぱりストレスって相手にぶつけるのが一番の解消になるよね~」

≪えぇ……≫

 

そのストレスを押しつけられた通話先の相手――カーペンターは理不尽だと不満の声を漏らす。

 

「ンーアー。というかさ。“予言”外れたじゃん。なにもしなくてもアビス死すって聞いたのに、なんだあれ? 復活したの? 混ざったの? 気持ち悪すぎて理解の範囲超えるんだけど?」

≪で、でも元々、クリアちゃん50%ぐらいで、なんか違う事が起きるって言ってたよ?≫

「ほんと役に立たないなぁ。おかげでシスター・イースター殺されたじゃん! まあでも仕方ない。失敗は誰にもあるから今までの溜まった功績ポイント帳消しにして許してやんよ」

≪マ、マイナスが大きすぎる……≫

「せっかく無限コンテニューが出来るって思ってたのに、一回も使うことなく殺されちゃうのあんまりすぎ。それに『懲罰部隊』が絡んでるなんて、ほーら私の言った通り失敗作なんだし、さっさと処分しとけばよかったでしょ?」

≪……言ってないし、なんなら面倒だから忘れるって言ってたような……≫

「そんなこと忘れたね。私は今に生きてるんだ」

≪えぇ……≫

 

なにか裏があったわけではない。この魔装少女は『懲罰部隊』を結成するために集めたオルクスたちの育成に携わった時、途中で失敗作だなと計画そのものを見限って、嵌まらなかったゲームのように飽きたからと放り投げたのだ。それからは巻き込んだ奴らがどうなろうと知った事ではなく、忘れてはその場の思いつきで別の何かを初めての同じ事を繰り返していた。この魔法少女はそういう人間なのだ。

 

オルクスたちに関しては先ほどまで完全に忘れていたのだが、シスター・イースターは大当たりのガチャとして、しっかりと覚えており、管理こそ第3支部代表に放り投げたが、しっかりと覚えていた。

 

――死んだ人間が蘇って生活しているという噂を聞きつけて、とある家へと赴いた魔装少女が目にしたのは、あらゆる調理器具と二人分ほどの土塊で散乱した空間の中、心が壊れていた後にシスター・イースターになる彼女。

 

『固有魔法』がどんなものか知った魔装少女は、彼女がいれば例え死んでも無限に復活してやり直せると本気で思い。育てられそうな第3支部代表にマッチングしたのだ。その自分が考えたことがきちんと成立するかなんて、魔装少女からすればどうでもいいことだった。

 

「ンーアー。それにしても協会はもうオワコンだね。よし! ここは軽快に本部とか支部とか全部爆破しようか! カーペンター!」

 

明日から『アーマード』は本格的に『魔装少女協会』に深く関わってくる。こうなってしまったら協会はあるだけ邪魔になると、自分が積み上げてきた地位や立場など元から無かったかのように跡形もなく消し去ることを即断する。

 

≪……え?≫

「え?……もしかして爆弾設置してないの? ダイナマイトとかでもいいけど? ……まさか協会本部とか地下施設とかにもなんもしてない感じ?」

≪だ、だって聞いてなかったから≫

「お前は本当に馬鹿だなぁ! そういえば今まで『アーマード』に襲撃されて爆破しないなって思ったことあるけど、まさか用意すらしてないとは思わなかった! ロマン欠け過ぎてまじドン引きものだよ!」

≪ご、ごめんなさい……?≫

 

勢いに押されて謝ったが、なんで怒られてるんだろうとカーペンターは彼女の言うことをちっとも理解できなかった。

 

「んで。秋葉に沢山の『次元の狭間』を作ってしっちゃかめっちゃかにするって計画はどうなってるの? どこ見に行っても、大惨事のだの字もないんだけど?」

 

魔装少女は『戦争決闘五番勝負』で沢山の人間が来訪するということで、秋葉の『次元の狭間』を人為的に開いて、大混乱に陥れる計画を立てており、それが出来るカーペンターは現在、秋葉にてその作業を行なっていたのだが、結果を言ってしまえば計画が遂行される前に全て失敗に終わっていた。

 

≪そ、それが、狭間を開けたと思ったらいつの間にか閉じてるんだよ……≫

「はぁ? なんで?」

≪わ、わかんない……あ、で、でも……なんだか珍しい毛色をしたわんちゃんに何度も出会ったんだけど、可愛かったなぁ≫

「それなにか関係ある? 絶対ないよね? はーつっかえな。お前って本当に作ることしかできないよね」

≪あうぅ……≫

 

その“創作する”という一点においては、正に神技の技術を持つカーペンターであっても、この魔装少女にとっては、自分のやって欲しいこと“すら”出来ない時点で駄目な奴である。

 

≪あ、あの、アルメガはこれからどうするの?≫

「ンーアー。『協会』役にもクソにも立たなくなった以上、これからは私たちで独立して動かないと行けないよね。まっ、想定よりも少ないけど沢山の『フェアリーの因子』も手に入ったことだし? なんとかなるでしょ。方針はこのまま変えるつもりはないよ」

 

魔装少女――アルメガは笑う。最後に勝つのは自分だと信じて疑わない。そんな態度だ。

 

「経過なんて要らない。でも始まり(アルファ)終わり(オメガ)は全て私のものだよ……カーペンター。みんなを集めて」

≪う、うん。わかった≫

 

 

 

――敵が、今日をもって表舞台にあがった。

 

 

 

+++

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【奈落】言われた通り事情を語るスレ【1000】

 

 

1:奈落

 

ただいま

 

 

 

 

 

 

 

 

 




※このあとまずはじめにボコボコに責められたもよう。


これにて2章は完結です。ここまでお読みくださった皆様、本当にありがとうございます。最後まで書き切ることができて本当によかったです。

よろしければ感想や評価などよろしくお願いします。
( ̄ ▽ ̄)kykyuukyuukuukyuukyuukyuu
ほしいほしいほしいほしいほしいほしいほしいほしいほしいほしいほしい





――――


三章。『北陸支部告白編(騎士編)』&『北陸支部友愛編(天使編)


どっちも百合メインです。ブレイダーは添えるだけ(多分嘘です)



↓活動報告で余談や裏話、3章の予定などを書きました。よろしければ見てください。
十人ヒーロー2章完結。――余談――


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