変身ヒロインが守る世界にて十人の変身ヒーローは戦う 作:庫磨鳥
短めにするつもりだったんですが、気がつけば二倍の量に……。
お気に入りが200件越え、ランキングもここ数日乗り続けているみたいで、ほんとうに嬉しいです。ありがとうございます!!
これからも応援よろしくおねがいします。
また脱字誤字が多い身ですので、誤字報告本当に助かっています。
※作者が早生まれの歳を素で間違えていましたので桃川暖子の年齢を変更しました。すいませんでした!
拙い文章ですが、気がついたらちょっとずつ加筆修正を加えていきたいとおもうので、よろしくおねがいします。
最近、念願の魔装少女になれた桃色髪の少女は、自分はもしかして不幸なのではないかとため息を吐いた。
「だんご~ ため息吐いてどうしちゃったの~ なにか悩み?」
「もう! だんごって呼ばないっでっていつも言ってるのでしょ!? わたしの名前は『
「だんごの方が美味しそうだよ~」
「そういうことじゃないってば!?」
「でも、そのお陰で夢が叶ったんだし、いいじゃん?」
「それが一番納得出来ないの!」
桃川は自分の相棒であるキングペンギンをディフォルメして、さらにぽっちゃりさせたフェアリー『モググ』に抗議する。
どうしてこうなったのかと桃川は魔装少女になった時のことを思い返す。
魔装少女になることを夢に見て親に頼み込み、『魔装少女塾』や『協会』にて魔装少女になるための勉強や特訓をしてきた。そして小学校を卒業した春休み。その願いは叶うことになる。
毎年春になるとフェアリーたちが少女たちの中から魔装少女になるものを選ぶのだが、そのさいモググは桃川を選んだ……のだが。喜びに浸れたのも束の間、モググが語った選んだ理由に桃川はいちど心をへし折られることになる。
「……名前が美味しそうだったからでフェアリーに選ばれたの、多分わたしが初めてなんだろうな……」
「やったね、史上初の快挙だよ!」
「嬉しくないよ! 例えば魔装少女が集まって、みんなはどうしてフェアリーに選ばれたのって話題になったら。心が綺麗だったからとか、戦う姿に惹かれたとかちゃんとした理由が出てくる中で わたしの場合名前が美味しそうだったから選ばれたんだよ……。って絶対言えないやつじゃん!」
「そう~? ボクは同僚のフェアリーに言っているけどな~。みんな君のことを可哀想って言ってたよ~。なんでだろうね~?」
「会ったことないフェアリーに同情されてるのわたし!?」
それにと、桃川はここ数日間で溜め込んでいた不満や疑問をモググにぶつける。
「……あのさ。なんでわたし、こんな高そうなマンションで一人暮らしすることになったの? エレベーターガラス張りとかヤバすぎたんだけど?」
「うーん。部屋が開いていたから? でもよかったじゃん。こんなにいいお部屋タダで独占出来たんだから~」
魔装少女は申請さえすれば、『協会』などの支援団体から活動地域に近しいところのマンション、時には一軒家などを家賃無料、光熱費水道水ガスなど一定額免除など受けて住む事が出来る。それはひとえに時には戦う少女たちのためにと心優しい人たちから送られる支援であり、それ自体は桃川もありがたいなと思っている。
……問題なのは今まで五人家族と狭いアパート暮らしだったところを、魔装少女になったからと流されるままに5LDKの高級マンションに一人で住むことになったということだった。
「わたし12歳! 今まで八畳間一部屋で姉二人と雑魚寝暮らし! 慣れるわけないじゃん!」
「姉妹が多い人間って一人暮らしに憧れるって聞いたけどなー。まあボクも一緒に暮らしてるけど」
「それはもうちょっと五年後とかに思うやつ! 普通に寂しいよ!」
桃川の最近の癒やしは元魔装少女だったらしい管理人さんとのご飯の時間だけであり、夜など寂しすぎてモググを力いっぱい抱きしめて寝ている。
「いや~。魔装少女に貸し出されている部屋が余ってるとは聞いていたけど誰も住んでいないなんてね~。さすがにボクも予想外。ここら辺の地域で活動している魔装少女ってみんな実家暮らしなんだって~」
「わたしもそれでよかったじゃん!」
「実家暮らしだと指定された
「……現実的な理由! というかお母さんもこれも人生経験とか言って簡単に許可しないでよも~!!」
桃川は膝から崩れ落ちて、何かと自由過ぎるマイファミリーに向かって叫ぶ。訳も分からず引っ越しトラックに乗せられて連れて行かれる自分を、全員がめっちゃいい笑顔で手を振るって見送っている姿はしばらく忘れられそうに無かった。
「はぁ~。グレムリン現れないかなー」
「魔装少女あるまじき発言だよね」
「だって寂しいんだもん! グレムリンが現れたら他の魔装少女に会えるから、連絡先交換して、眠くなるまでお喋りとかしたい! そしてあわよくば一緒に暮らして欲しいな~」
「そんなこと言って怪我とかしないでよね~」
ふんすと意気込む桃川に、モググはやんわりと注意する。
「……あ。こういうのなんて言うんだっけ~?」
「どうしたのモググ?」
「そうだった~。噂をすれば影ってやつだね~。現れたよグレムリン~」
「……え゙!?」
あまりにもタイミングのよさに、桃川は本気で驚き――
「……ごめんなさい!」
――いたたまれなくなってモググに全力で謝罪し、とりあえず現場へ行こうと冷静に窘められた。
+++
「現場ってここ?」
「そうだよ~」
異世界からの侵略者であるグレムリンは、定期的に次元の壁を通り抜けて日本へと降り立つ。フェアリーはそんな次元の壁の異常を感知する魔法を有しており、先んじてグレムリンが現れる地点を把握する事ことが出来る。
桃川がモググに案内されてたのは町中の大きな公園であった。お昼過ぎほどの時間、数百人が各々好きなことをして過ごし観光客でも賑わっている。
「……だんごってさ~」
「暖子だってば……なに?」
「なんか、これぞ魔装少女って感じであざといよね~」
「いまそのそれ言う必要あった!?」
桃川は外へ出る前にすでに変身しており、髪と同じ色をした桃色のドレスに可愛らしいステッキと、実に正統派な“魔法を使う少女”な姿となっていた。魔装少女は己の心象に存在する理想の姿を元にして変身するのだが、こうも分かりやすい姿になる桃川は逆に珍しかった。
「逆に珍しいから、人気は取れそうだよね」
「そんな奇をてらった感じで人気になりたくないんだけど!? ……というかモググ、どうして現場に一緒に付いてきてくれたの?」
フェアリーは少女に魔法の力を与えた後の活動は個々によって大きく変わってくる。自分が担当する魔装少女の体調や生活環境などを管理するマネージャー型。あくまでも友達として接するフレンド型。完全な放任主義など。
そんな中には魔装少女と一緒に現場へと赴き戦うフェアリーもいるがかなり珍しい部類であり、それを知識として事前に知っていた桃川は素朴な疑問としてモググにぶつけた。
「モググは戦闘経験のない十二歳の魔装少女を一人で戦わせるほど鬼じゃないよ」
「十二歳に一人暮らしさせた妖精の言葉とは思えない……」
「ほら、あれが『次元の裂け目』だよ~」
「え? あ、ほんとだ。あれが『次元の裂け目』……すごい、本当に景色が裂けてる。へぇー、なんか現実じゃないみたーい」
桃川は映像で見たことはあるが、直接見ることは初めてであり、モググの不満を忘れて『次元の裂け目』をまじまじと見やる。
「だんご~。いつグレムリンが現れるかも分からないんだし、不用心に近づくのは危ないよ~」
「ぎゃああ! なんか腕はえてきたっ!」
「……だんごってほんと運が悪いよね~」
軽率に『次元の裂け目』の傍まで近づいてしまった桃川は、爬虫類の鱗を纏い鋭い爪を持った人間のような腕が『次元の裂け目』から出てきたことによって、驚きのあまり背中からでんぐり返し、傍目で見るとコント以外の何物でも無かった。
「……トカ、トカカカカカカ!!」
それからすぐに裂け目をこじ開けるように出てきたのは人型の蜥蜴。いわゆるリザードマン型のグレムリンだった。桃川は『次元の裂け目』と同じく、初めて間近でみる人類の敵グレムリンにゴクリと喉を鳴らす。テレビで聞いた時はちょっと可愛いと思っていたグレムリン特有のわざとらしい鳴き声が、ちょっと怖かった。
桃川はまず落ち着きを取り戻すためにも『魔装少女塾』で習った最初にやることを思い出していく。
「えっとえっと、まずは周囲に居る人の避難を呼びかける……ってもうだれもいないじゃん!」
「ここら辺グレムリンの多発地帯だから、みんな慣れたものだよ~」
「いや良いことだけど……なんか、想像してたのと違う」
まず第一に周囲の人に避難勧告すること、しかし桃川とグレムリンの周辺にはすでに人っ子一人いない。野次馬根性を発揮して桃川たちにカメラを向けているものもいるが、それも大声を張り上げても届かないほど遠くにいた。
中学生になりたての桃川、なんか色々と最悪を妄想していた彼女は気まずそうに遠くで見守る人々をちらりと見て、恥ずかしげに手を振るう。
「トカカカカカ!!」
「だんご~。グレムリンが動き出したよ~。はやく注意を引かないと公園が破壊されちゃう~」
「え!? あ、うん!!」
グレムリンの破壊活動は無差別である。人間だけではなくとにかく目に映るもの全てを壊す動きをするため、魔装少女はまず声を張り上げるなり、攻撃を当てるなりして注意を引きつける必要がある。
「すぅーはぁー」
そのために生まれたのが空想上の似て非なる存在、“魔法少女”が行うような名乗りの文化である。桃川は深呼吸して、魔装少女になる前から考えていたオリジナルの名乗りを高らかに叫ぶ。
「そこまでだよ! 悪に支配され! 人様にめいわ……くをかけ……るぐ、ぐれ……む、むりぃん………………………」
「……だんご~。途中で心折れちゃだめだよ~」
「よくかんがえたらめっちゃはずかしいじゃん」
「こういうのは勢いだよ~。ほら、グレムリンがどっか行こうとしてるよ~」
「やばい! えっとこうなったら! わたしの魔法で攻撃だ!」
桃川はステッキを掲げると、桃色の光がハート型の先端に集まっていく。
「よし練習通り上手くいった! これをーえーい!」
桃川がステッキを勢いよく振るうと、集まった光が球体となりリザードマン型グレムリンへと向かって飛んでいった。
ぶっちゃけ地味ではあるものの、この光の球体こそが物理攻撃を無力化するグレムリンに通用する唯一の手段、『魔法』そのものであった。
「いけー!」
かけ声と共に光の球体は加速、そこそこな速度でグレムリンへと向かっていき、そして直撃――。
ぺしっ。
「トカ?」
――ゴムボールみたいに弾かれて、空中で霧散してしまった。リザードマン型グレムリンは当たったところをちょっと掻いた。
「……あ、あれ?」
「あ、そういえば最近のグレムリンってめっちゃ魔法耐性強くなってて、魔力放出型の攻撃魔法とか効きづらくなってたんだった~」
「それもっと早く言ってくれないと困るやつじゃん!?」
「どっちにしても、だんごの魔力放出型の魔法適正
「ひえっ」
ギロリと蜥蜴の瞳で睨まれて、元から爬虫類が苦手な桃川は顔を真っ青にしてぶるりと震える。
「……このステッキで叩いたら倒せるかな?」
「ダメージは与えられるかもだけど無理だと思うよ~」
「ですよね! じゃあ、当初の予定通り……」
「トカカカカカカカカカカカカカァ!!」
「他の魔法少女来るまで逃げにてっするぶへ!」
「なんでそこで転ぶの!?」
逃げようと動き出そうとしたとき、少しの窪みに足をとられて転んでしまう桃川。あまりの不幸さにおっとりとしたモググも思わず声を張り上げてしまう。その間にリザードマン型グレムリンに距離を詰められて逃げられなくなった。
「あわわ……モ、モググ!? なにかこう逆転出来るものとかないっ!?」
「そんなものはないよ~。うーん。まあ、めっちゃ痛いけど死にはしないと思うから、頑張って~」
「がんばってって……あ、ちょっと!?」
モググは桃川から離れて、フェアリー特有の飛行能力で上空へ待避する。
「あ、魔装少女だからわたしも空飛べるとか!?」
「だんごに飛行魔法の適正ないよ~。逃げるなら走って逃げてねー」
「じゃあ魔法かなんかで援護してくれるとか!?」
「モググ、戦闘に役立ちそうな魔法使えないんだよね~」
「ガチの見捨てられじゃん!? あ、ちょっとまってまってまって!?」
リザードマン型のグレムリンが迫り、パニックになってその場から動けない桃川。覚悟を決めてバリアの魔法ってどうやって出すんだっけと脳内検索するが間に合いそうに無かった。
「あ、むり。しんだ」
「――伏せて」
「はい!」
諦めかけたそのとき、桃川は後ろから聞こえてきた声に従い頭を守るようにしゃがんだ。
「はぁ!」
「トカァ!?!?」
――インナーシャツに短パン、見て明らかに動きやすい格好をした黒い魔装少女が、桃川を飛び越えながらリザードマン型グレムリンの顔を殴り吹き飛ばした。
「あなたは!?」
「ごめん、逃げられる前に倒すから後で! 〈
「トカぁ!?」
黒の魔装少女が魔法を発動すると、桃川の目には見えないほど素早くなり一瞬にしてリザードマン型グレムリンの懐へと潜り込み、強烈なボディブローを繰り出し、くの字に折れ曲がったグレムリンに怒濤の連撃を繰り広げていく。
「〈
頭を揺らして動かないグレムリンを前にして、身体強化の魔法を自身にかけた黒の魔装少女は全身を捻り力を溜める。
「終わらせるよ。『ノワール・クラッシュ』!」
「トカアアアアアアアアアアアアアア!?!?」
肉体が強化されて、魔力が籠った拳による強烈な右ストレートがリザードマン型グレムリンに直撃。胴体を消失させリザードマン型グレムリンは致命的なダメージを負った。
「トカカカカ……カ……」
膝を付き地に伏せるリザードマン型グレムリンは絶命、最後には肉体が粒子となって跡形も無く消失した。その様子を見守ったあと、黒い魔装少女は桃川の方へと振り返った。
「あの……え?」
桃川は、なんて声を掛ければと悩んでいる黒い魔装少女の手を握る。
「あなたは……魔装少女!」
「えっとはい……応援にきたよ?」
「本当にありがとう! 来てくれてほんっっとーにありがとう!!」
「えっと、よかったね?」
まるで助けられた一般人みたいに喜び、握った自分の手を振るうご同業の姿に黒い魔装少女は戸惑い苦笑する。
「私は『パンチャー・ノワール』。あなたは?」
「は、はい。わたしの名前は『サンシャイン・ピーチ』……であってたよね?」
「なんで、モググに聞くの~ まあそうだけど~」
「です!」
桃川は浮かれるあまり自分で一日費やして考えた魔装少女名を忘れてしまい、いつのまにか傍まで戻ってきていたモググに小声で尋ねる。
「ノワールちゃんって呼んでいい?」
「ちゃん付けはちょっと苦手かな」
「じゃあ、ノワールお姉様!」
「うーん、いいよ」
「それでいいんだー」
桃川も冗談半分だったのだが、明らかに自分よりも年上で強くて格好いいノワールがお姉様ならいいなと、許可が出たので正式にそう呼ぶことにした。
「あ、妖精同伴って珍しいね……そういえば、最近新しくここ担当になった魔装少女が配属されたって聞いたけどピーチがそうなの?」
「はい! 多分それです。三日前になったばかりで右も左も分からない新米ですがよろしくお願いします!」
「そっか、ピーチがあの本名が美味しそうだからで選ばれた魔装少女だったんだね……」
「めっちゃ知らてれる!?」
ノワールは、ピーチに向かって同情した眼差しを向ける。
「……なにか困った事があったら相談してね。私が出来ることなら何でもするよ」
「え? じゃあどこに住んでるか教えて貰ってもいいです? というかリラインやってます? お友達になって今度一緒に遊びに行きましょう!」
「だんご~。聞きかたがひどいよ~」
――こうして桃川暖子の初めての魔装少女活動は終わることとなる。経過的には散々なものであったが、結果としては目的であった魔装少女であるノワールと連絡先が交換出来たことで、今日は良い日だったなーと鼻歌を歌いながら家に帰っていった。
――この出会いが、本当の意味で自分の気苦労の始まりとも知らずに。
+++
自宅へと帰宅したパンチャー・ノワールは自室のベッドに倒れこむように横になる。
「……面白い子だったね」
ノワールは桃川を思い出して笑いが零れてしまう。
「新人さんだし戦闘には向かなそうだったから、私がしっかり守ってあげないとね」
ぎゅっと手作りのぬいぐるみを抱きしめて――天井や壁一面にびっしりと貼り付けられた写真を恍惚とした表情で見やる――。
「――がんばるから応援してね。セブンス」
七色「ぶぇっくしょん!」
彼のネタが多いのは、1章の主軸となる物語が彼だからです。
次回は、かなり長めとなるので執筆に時間がかかるかと思われます。気長にお待ちください。