変身ヒロインが守る世界にて十人の変身ヒーローは戦う   作:庫磨鳥

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日付を間違えて遅れて投稿です( ; ̄▽ ̄)すいません。

3章は分け合って特殊タグなどは少なくなっていますが、それでも楽しんで頂けたら幸いです。




魔装少女北陸支部 前編<騎士>

 

――数日後、騎士は結局のところブレイダーの譲渡について、そして自分の代わりにブレイダーになりたいという殻雲について、『協会』に関わって本当に忙しい時期だからと自分に言い訳をして、ブレイダーたちに相談することができないでいた。

 

そのままズルズルと日が経ってしまい。今は言わないほうがいいのかもしれないと思い始めた騎士は、約束通り殻雲と再会していた。

 

「――やはり, 君は恵まれているな」

 

挨拶もそこそこ殻雲に連れて行かれるまま、ダンスから武道までマルチで活用できる練習場ビルへと連れて行かれて、そこでまずは初日だからと武術の手解きを受けた。

 

「……ゼェ……ゼェ……!」

 

――もっとも、その“手解き”でオリンピックでメダルを獲得できるほどの才能を持つ騎士は、息も絶え絶えに地面へと突っ伏していた。

 

「改めて, 肉体そのものが才能の塊だな, 頭もいい, 私の動きをすぐに模倣してトレーニングの無駄な負担を無くしたか, これなら今からほんの少し努力を継続させるだけでメダルの栄光を掴むこともできるだろう」

「あ、……ありがとうございます」

 

正直に褒めてくれているだろうというのは分かるが、考える余裕がないことも有って、素直に受け取れなかった。

 

殻雲に言われて、騎士が行なったのはテストを兼ねた基礎トレーニングだった。どこまで出来るのかチェックも兼ねていると聞いた騎士は、少しでもできる所を見て欲しいと張り切って行なった。

 

――騎士は体が温まる程度で終わらせるつもりだったのだが、その隣で人間が出すべきではない、自分の三倍速で同じメニューを熟す殻雲に度肝を抜かれてしまい。そのまま釣られて、速度を上げたのが今の惨状である。つまり最初の時点で死にかけているのは騎士の自業自得であった。

 

ちなみに殻雲は限界を見極めたいと、むしろ煽り目的でさらに速度を速めたりしたのだが、単純に騎士よりも三倍の運動量にも関わらず、汗は掻いているものの息は全く乱れていなかった。

 

「これなら数年, 達人の元で山ごもりを行なえば私と同等になるかもしれないな」

「……殻雲さんが言う達人って、どれほどのものなんですか?」

「強さという意味で問われているなら人によるとしか答えられない, だがそうだな, あくまで私の基準の話になるが, エベレストの登頂と下山を単身且つ一日で行なえる者だ」

「……え? こ、高山病とかどうするんですか?」

「登っている間に肉体が環境に適応する, 達人とはそういう人種なのだよ」

 

創作のような話に騎士はあまり信じられなかった。魔装少女やブレイダーならともかく、変身できないただの人間が到達していい領域なのかと、だけど同時に騎士は殻雲が呼称する達人と呼ばれる人たちを確かに知っている。

 

その筆頭となるのが、たった一つの事件が起きただけで見捨てられる事となった秋葉で生きてきた男――同じブレイダーでありながらあらゆる面で次元が違うと羨望を抱く悪魔のことである。

 

エベレストを一日で登って下れる話の真偽は置いといて、殻雲のいう達人は生身でグレムリンと戦えるほど強い人物ということで騎士はとりあえず納得した。

 

「さて, 回復してきたところで再開しよう」

 

騎士が立ち上がれるぐらいに体力が戻った事を正確に読み取った殻雲は割と無慈悲に修行の再開を告げる。

 

「……ちなみに今日のメニューはどうなっているんですか?」

「今日は初日だ――」

 

本当に立ち上がれるぐらいの体力“しか”戻っていない騎士は、顔を引きつらせて問うと、殻雲は即答した。

 

「――壊れるようなことはしない」

 

――それから夕方になるまで、この言葉は絶対嘘だと何回思ったか騎士は覚えてなかった。

 

 

+++

 

――それからさらに数日。騎士は東京を出ていた。

 

日本に存在する魔装少女を管理する支援団体『魔装少女協会』には東京の全21支部だけではなく、日本全国に数多くの地方支部が存在する。

 

それは福井、石川、富山からなる北陸三県も例外ではなく、福井支部、石川第一支部、石川第二支部、金沢支部、富山支部の計五つ存在する。

 

――そう、北陸三県に存在する『協会』の支部は五つだけである。しかしながら関係者ですら時折、北陸三県にある協会支部は全部で六つと勘違いすることがある。

 

その理由となっているのが『魔装少女北陸支部』と言う名の、世界で唯一魔装少女の力を行使して事業を行なうことが許された協会とはなんら関わりの無い“会社”なのである。

 

「――予想通り冴えない顔しているわね」

 

新幹線で長時間移動。そこからさらに数時間タクシーを使って、田んぼ道を通り抜けた先にある山の中へと進み、半日以上の時間を掛けてようやくアスファルトで平らに舗装された敷地内に存在する、何かの工場用建物をむりやり改築した『魔装少女北陸支部』へと辿り着いた。

 

そして、インターホンを鳴らして素性を明かした後、事務所から出てきた小柄で金髪碧眼の赤黒いフード付きコートの魔装少女に早々罵倒染みたイメージを言われた騎士は、移動疲れも相まって思わず、着替えが入ったポストンバックを地面に落とした。

 

「……『アーマード』から交換出張で来ましたブレイダー・ナイトです。騎士と呼んでください」

「あら、パワハラで訴えるとか言わないの? まあしたらしたで私が先にセクハラされましたって訴えるけどね。示談金三百万は固いかしら?」

「詐欺だ!?」

「冗談よ。緊張は解けたかしら?」

 

そういって笑う魔装少女に、騎士はげんなりと肩を落とす。

 

「……社会人が口にする冗談とは思えませんね」

「そうね。でもこれがこの会社で毎日飛び交っている日常会話よ。だからこれからココでしばらく働くなら、それぐらい乱暴な気持ちでいなさい」

 

そういって作法もへったくれもなく片手で名刺を騎士に差し出す。

 

「知っているかもしれないけど、あなたのお世話役を任された、RANK4のデッド・キティよ。みんなからはキティと呼ばれているから、あなたもそう呼んで」

 

名刺は北陸支部の会社名、RANK 4という表記と魔装少女名であるデッド・キティの名前だけが印刷されただけの、とても質素なもので、彼女たちにとって形式的なものでしかないのが見て取れる。

 

「――北陸支部へようこそ、盛大に歓迎するわ」

 

+++

 

「うちの事務所は社長室と作業室、そして暇なときに使う待機所があるだけよ。無駄に広いからエアコンは効きにくいし、冬の時はストーブ焚いても中々暖かくならない。素の体では居るだけで辛い地獄みたいな場所だけど、まあ仕事がないときは寛いで頂戴」

 

事務所に入ってすぐに、三つほどの長方形のテーブルに二十ほどの椅子が置かれているだけで、スペースをかなり余らせており、キティの言うとおり魔装少女たちの待機所のぐらいしか使われていないように見えた。

 

――ふと、入り口からもっとも離れている場所に、見たことのない魔装少女らしき人物が座っていることに気付く。こちらを一切視ることなく、スマホを操作しているため、騎士は距離も離れていることだし、挨拶は後のほうがいいだろうと視線をキティに戻す。

 

適当に座って頂戴と言われて、ほぼ同時に簡素な作りの丸椅子に座る。騎士は元々高身長であるため人を見下ろすのに慣れている。なので立っている時はそこまで違和感を持たなかったのだが、座ったことにより全体像が見え、小学生でも通じそうな彼女の小柄さを実感する。

 

「こう見えてもお酒が飲める年齢よー。というかあなたと同じ歳(タメ)よ」

「……なんで分かったんですか?」

「子供扱いしてくるやつらと同じ視線を向ければ分かるわ」

「……すいません」

 

内心を当てられたあげく、失礼な態度をとってしまったと騎士は謝ることしかできなかった。

 

「別にいいわよ。というかこの程度で謝っていると、ここじゃやっていけないわよ。一日二日でどうにかしろとは言わないけど、うるせークソチビ! ぐらいは言えるようになるのをオススメするわ」

「それは普通に人として駄目では!?」

「ここの連中は何かしら人間失格だからいいのよ」

 

同僚に厳しすぎる発言に、天使たちが口を揃えて言う治安が悪い場所というのがどういったものか騎士は初めて実感した。

 

「さて、事前に聞いているとは思うけど、あなたがこれから二週間、『北陸支部』で何をしていくのか説明するわ」

 

ここでようやく騎士は、キティが『北陸支部』での生活や仕事について話すつもりだったことに気付く。

 

「生活については同じ敷地内にある寮で暮らしてくれればいいわ。女の園だけど、そこは我慢して頂戴ね」

「事前には聞いていましたが、女性だけの寮に男が住んでいいんですか?」

「あなたが嫌じゃなければね」

 

べつに男が住むこと自体はどうでもいいというキティの態度に、そちらが大丈夫ならと騎士は躊躇いがちに承諾する。

 

「キッチンとリビングは共同、風呂は時間割を事前に決めといたから入るさいには内側から絶対に鍵を掛けてね」

「はい……ん?」

 

確かに事故を防ぐという意味では施錠するのがいちばん効果的であるけど、それにしたって物々しいのではと騎士は思った。

 

「もしかして、うっかり入ってくる人が居るんですか?」

「むしろ貴方が入っているのを狙って突撃しそうな馬鹿がいるのよ」

「…………」

「あと、他の魔装少女の私室に入るのはやめたほうがいいわ――逃げられないから」

「……逃げ?」

「あ、どうしてもっていうなら、ブレイダーに変身するのをオススメするわよ」

「そんな魔窟に今日から二週間住めと言うんですか!?」

 

騎士が思わず立ち上がって叫ぶと、冗談よとカラカラとキティは笑う。

 

「だから社会人が言う冗談じゃないですよ!」

「北陸ジョークよ。北陸関係あるかは知らないけどね……まあ嘘でもないけど」

「いまなんて言いました!?」

「近くのコンビニ行くのに40分ぐらい掛かるから、基本的にはドローン配達で買い物するのをオススメするわ。日用品なら会社の経費で落としてもいいから、髭剃りとか欲しいなら私に頼んでくれてもいいわよ」

 

完全に無視されたと騎士は北陸支部での生活に、かなりの不安を抱きながらがくりと椅子に座り直した。

 

「仕事に関しては、難しい注文をするつもりはないわ。私たちが戦っている間。ブレイダー・ナイトの力を全力で使って街や人を絶対に守って」

「……絶対ですか?」

「ええ、私たちの稼ぎはグレムリンをどれだけ倒したかでプラス。そしてどれだけ周囲に被害を与えたかでマイナスになるわ。だからナイト。私たちが求めるのはたったひとつ。給料分、みんなを守って頂戴」

 

ここ最近、苦悩する日々を送っている騎士として“絶対”という単語はタブーに近く過敏に反応してしまう。明らかに調子が変わった騎士に、キティは目を細める。

 

「……変身姿と同じく堅物みたいね」

「え?」

「絶対なんて言って悪かったわ。仕事なんてミスするものだし、私たちもそれが理由であなたが来てくれることを強く希望したんだしね。まあ、いつも通りやってくれればいいから。よろしくね騎士様」

「よ、よろしくおねがいします」

 

立ち上がったキティは騎士に手を差し出した。座ったままでようやく同じぐらいの視線になる彼女が、どこか他のブレイダーたちを連想させた。

 

――彼女もまた“狼”だ。そういう風に考えながら騎士はキティの手を取って握手する。

 

「……あなたと身長差だと、親子でおてて繋いでるようにしか見えないわね」

「それ自分で言うんですか……」

「――ただいまッ! お腹空いたッ! あ、キティ! っと知らない人がいるッ!」

 

――小さな女の子が事務所にやってきた。キティよりも身長が低くギリギリ130センチ台といった所か、アホ毛のプラチナヘアー。見た目どおり小学生らしく学生服姿に学校鞄を担いでいる。

 

あーっと人差し指を騎士に向ける少女。ニカッと笑うと鋭く尖った前歯が見えた。

 

「おかえり。冷蔵庫におやつがあるけど手を洗う前に、この知らない人に挨拶しなさい」

「わかったッ! ヤエバは小学六年生のヤエバ! よろしくねお兄ちゃん!」

「今日からお世話になるブレイダー・ナイトです。騎士って呼んでください」

「きし? キシ!」

「完璧です」

 

舌っ足らずで発音が若干違うとは思ったが、指摘する必要性は無いと騎士は褒めた。

 

「というかキシお兄ちゃんがブレイダー・ナイトなんだッ! ヤエバ知ってるよッ! 世界をー照らすために~輝いて~イカーナイトー!」

 

ナイトの変身音を歌って、した覚えのないポーズを決めるヤイバに騎士は気恥ずかしさを覚えながら、そうそれと肯定する。

 

ブレイダー・ナイトの変身音は、テンポがよく揚々とした歌だからか子供の人気が高かった。そのため子供のごっこ遊びでも根強い人気を誇っており、騎士本人が使えないパンチやキック技がよく使われるほどである。

 

「……もしかしてブレイダー・ナイト好きなの?」

「好きー! ヤエバは魔装少女だけどブレイダーカッコいいから好きッ!」

 

面と向かってストレートに好きと言われた騎士は恥ずかしくなって頬を掻いた。

 

「ちなみに一番好きなブレイダーは?」

「デビル! ちょーカッコいい!」

「…………」

「悪かったから、首だけ回してこっちをガン見しないで」

 

――人気投票で好きだけど一番じゃないという理由で票が獲得できず下から三番目となった騎士の心は大きく傷ついた。

 

「どうしたッ? もしかしてお腹痛いのかッ!?」

「ああいや。こほん。自分もヤエバちゃんのことはちょっとだけだけど知っているよ。すごく強い魔装少女なんだよね?」

 

騎士は『北陸支部』の魔装少女の情報を頭に入れており、ヤエバ本人のことはともかく、『北陸支部』でもっとも若い魔装少女でありながら、その戦績を見た時驚いたのは記憶に新しい。

 

「そうだよッ! ヤエバはキティたちが居れば無敵なんだからッ!」

「キティたちが?」

「うん! ヤエバ、ひとりだとあんまり強くないッ!」

「ちゃんと自分の実力を把握できていて偉いわねー」

「ほんとッ!? えらいッ!?」

「偉い偉い。そんな偉いヤイバはおやつ食べる前に手洗いうがいできるよね?」

「もちろんッ! できるよッ!」

 

――じゃあ後でねーと、ヤエバはおやつを食べるために寮へと走って行った。

 

「……教育が行き届いていますね」

「そうねぇ。まだ子供だからってのもあるけど、素直で可愛い後輩だからね。さっき会社の連中全員ロクデナシのクズって言ったの訂正するわ。あの子だけは別よ」

「あの子以外の評価がさらに酷いことになっていますが?」

「ヤエバと比較しちゃうと仕方ないね」

 

同僚に対して、あんまりな言い草に騎士は流石に冗談かと考える。東京でいわゆるお行儀よく育った自分には慣れない環境なだけで、アニメや映画で見る戦士や兵士が憎まれ口を叩くのは、よくあるらしい。これも気心が知れた仲からこその、そういった類いの発言だと。

 

――そんな風に考えてなんとか環境に適応しようとする騎士。寮に案内すると移動しようとしたキティのポケットから着信音が鳴った。

 

キティは画面を確認することもなく、ワンコールで通話を取った。

 

「はい、『魔装少女北陸支部』所属のRANK4、デット・キティです。はい、お久しぶりです。先日はどうも……はい、そうですか。そちらの魔装少女は今? ……はい、分かりました。それでは今すぐ向かいます」

「仕事ですか?」

「ええ、香川県でグレムリン発生、二カ所同時に発生したものだから魔装少女が足りなくて、私たちはその片方の討伐依頼が入ったわ――あ、ヤエバ。おやつタイムは一旦中止。仕事よ。急いでこっちに来て。それじゃあね」

 

騎士に仕事を簡潔に説明しながら、ヤエバを呼び戻したあと、キティは端っこのほうで携帯ゲーム機で遊んでいる魔装少女らしき人物の元へと向かう。

 

「ロッカー! 仕事よ」

「……あ、キティ。帰っていたの?」

「ずっとそこに居て話していたわよ! いつも言っているけど画面の外にも多少は興味を持ちなさい!」

「はいはい、分かってるよキティママ」

「仕事って言ってるでしょ! ゲームを止めて話を聞け!」

 

ロッカーと呼ばれた魔装少女は仕方ないなと渋りながら、ゲームをスリープモードにする。フードをとって煤色の髪、ダウナー系と呼ばれる風貌を露わにする。

 

「あれ? キティの彼氏?」

「違うわよ。ブレイダー・ナイトの中身よ」

「ああ、ずっと社長に来て欲しいって強請ってた。キティの未来の彼氏か」

「ふざけたこと言って怠けるつもりならいい加減ぶっ飛ばすわよ!」

 

傍まで来た騎士を見て、冗談かどうか分からない事を言うロッカーに、騎士はここに来てから先ほどまでのキティの発言に、確かにコレは真面目に対応していたら心が持たないなとひどく納得していた。

 

「ほら、目的地はここよ……。サクッと紹介するわ。この子はトンネル・ロッカー。移動系の『固有魔法』持ちの魔装少女よ」

「適度によろしくね、見た目パリピ系リア充さん」

「……はい。よろしくおねがいします」

 

なんかもうツッコムだけ無駄そうな人だなと騎士は適当に流した。

 

 

 

――どこでもロッカー――

RANK9 トンネル・ロッカー

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

「――キティ~! お待たせッ! 待ったッ!?」

「待ってないわよ。むしろ待たせてるのはロッカーよ。なんで『固有魔法』唱えるのに、こんなに時間食っているんでしょうね、この引き籠もり」

「仕方ない仕方ない。だって場所をしっかり見ないと分からないんだから」

「その前に明らかに無駄なプロセスがあったのよ! ……はぁ、さてヤエバ。私たちもさっさと変身しましょうか」

「わかったッ! 〈チェンジリング〉ッ!」

 

 

 

――小さな捕食者――

RANK11 ヤエバ

 

 

【挿絵表示】

 

 

ヤエバの魔装少女姿は、青、赤、黄色の三原色で構成された袖や裾が短いチャックパーカー。その内側には黒タイツを着込んでいるのか、首から下の肌の露出が両手だけとなっている。そして肩の部分には青色で体にチャックがあるネズミのエンブレムが貼られていた。

 

「〈チェンジリング〉」

 

 

 

――異常なる者たちの指揮者――

RANK4 デッド・キティ

 

 

【挿絵表示】

 

 

 

魔装少女に変身したデッド・キティだが、魔装の見た目は先ほどまでの素体時に着用していた服そのままだった。というか騎士は服のデザインからてっきり魔装少女状態かと勘違いしていたため、凄く驚いた。

 

「魔装と同じ服を着ていただけで、変身していなかったんですね」

「同じ格好のほうが何かと便利なのよ。実は色々と細かいところは違ったりするわよ。エンブレムの有無とかね」

 

北陸の魔装少女は、わざわざ特殊な技術を用いて魔装のどこかにエンブレムを貼り付けている。騎士がデッド・キティの魔装を見ると肩に、赤い“D”文字と可愛らしい三角耳が映えた饅頭系のマスコットのエンブレムがあった。

 

「……認識できた。出すよ――〈魔法展開(スペル):トンネル・ロッカー〉。

 

己の『固有魔法』を、そのまま魔装少女名にしている魔装少女は多く、トンネル・ロッカーもそういったタイプだった。『固有魔法』を唱えると、トンネル・ロッカーの背後に、数十年は使われたような痕跡がある長方形のロッカーが現われた。

 

「これって……?」

「さっきも言ったけど、移動系の『固有魔法』よ。このロッカーはこの子が思い浮かべた場所へ直接繋がっているわ。ただし、一方通行だから帰りは別の手段で帰ることだけは頭に入れておいて」

「あと、ロッカーより大きなものは無理。デブだと使えないよ」

「……ナイトに変身したら入れなさそうですね」

「そうね。だから騎士はロッカー移動の時は移動してからになるわ。身バレの可能性はあるから、それが嫌なら別の方法を考えるけどどうする?」

「いえ、大丈夫です」

 

身バレはしたくないが、自分だけ違う移動法で現地合流というのは明らかに非効率だと、騎士はロッカーを使用することにした。

 

「そう。ならグレムリンが暴れるまえに行くわよ」

「ヤエバ出発ッ!」

「いってらー」

 

キティ、ヤエバに続き、騎士もロッカーの中にはいる。自分の方が身長が高く身をかがまないとぶつかるが、元から締まった体をしているため、問題無くロッカーを潜り抜けることができた。

 

――来て早々の初仕事。吐きそうなほどの緊張感が湧き上がるが、同時に殻雲との数日間の修行の成果を見せられるかもしれないと意気込んだ。

 

――のだが、特に出番もなくグレムリンは倒されて、あまりの来た意味の無さに肩を落とした。

 

「こういう日もあるわよ」

 

キティの適当な励ましに、トドメをさされて社会って厳しいなと地面を見続ける。

 

 





戦闘がどういったのか後編で描写したいとおもいます。
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