変身ヒロインが守る世界にて十人の変身ヒーローは戦う   作:庫磨鳥

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お気に入り登録、感想、評価、ここすき、誤字報告いつもありがとうございます!
台風や寒暖差などで体調が悪かったりしましたが、おかげ様でどうにか続きを投稿することが出来ました。目先の目標としては七色の章完結までしっかりと書いていきたいと思います。

自分は考えた。三部構成といいながら収まりそうにないなら、中編を分けてしまえばいいのではと……という訳でその1となってます。はい。この作品を書くに当たって封印していた悪いところが出ました。それでも楽しんで貰えたら幸いです。


【七色】相談に乗って欲しいっす!【緊急】 中編①

――あの人を見つけたのは、本当に偶然だった。

 

学校が休みだからと、仲良くなった後輩の魔装少女に誘われて足を運んだ公園で、たまたま男子トイレから出来てきた彼を見つけた。

 

素顔は知っていた。ずっと見ていたから。見間違うはずが無かった。

 

だから、その人が四人の魔装少女に捕まってどこかへと飛んでいったとき、私も変身して無我夢中で追いかけた。

 

「――どこいったのっ!」

 

しかしながらセブンスガール(魔装少女)たちにバレてしまい撒かれてしまった。

 

≪――変身魔法を検知したけど、なにかあったクツ?≫

 

このままじゃ彼に身の危険が及ぶと焦る中、自分を魔装少女へと選抜してくれたフェアリーから思念魔法による連絡が入った。

 

「クツツ! あのね、彼を見つけたの! でも魔装少女につれてかれて追いかけたんだけど見失って……!」

≪落ち着くクツ≫

「ご、ごめん」

≪まぁ、でも事情は分かったクツ。君の愛する彼に出会ったクツね。その彼が他の魔装少女に連れられていったと≫

「う、うん……」

≪だったら、クツツの方でどこに居るか調べてみるクツ≫

「出来るの!?」

≪任せろクツ。それで? そっちでなにがあったか詳しく説明してほしいクツ≫

「分かったよ」

 

自分が知っていることをクツツに話す。話を聞いている間に居場所を調べてくれたクツツに礼を言い。教えて貰った地点へと電柱よりも高く跳躍して向かう。

 

――クツ、クツクツクツクツクツ。

 

+++

 

 

 

107:七色

いま来られないって書いてあることに気付きました……。

十分もポーズとってた意味……。

 

 

108:天使

OTLになってるのが目に浮かぶよ……。

僕たちのためにやってくれたのはわかるから本当に申し訳ないんだけど、そこまでする必要無かったと思うよ……。

 

109:七色

それモググにも言われました……。

 

110:天使

モググ? 名前からして担当のフェアリーかな?

……いまフェアリーが近くにいるの?

 

111:七色

あ。はいモググはわたしを魔装少女にしてくれたフェアリーです。

モググが、自分は魔装少女塾に所属しているフェアリーだと伝えてほしいって。

 

 

112:天使

『塾』かー。魔装少女OGとその相方だったフェアリーたちのたまり場だって聞くし、確か混沌が知人もいるって言ってたから大丈夫かな?

 

113:七色

勝手に名前書き込まないでって怒られた……。

モググが自分は画面を見ないから警戒しないでほしい~とのことです。

 

114:天使

こういった掲示板で本名とか書き込むのはNGだから仕方ないネ。

そう言われてもね。まあ、こっそり見ようとしない時点でちょっとは信用してもいいかな?

 

あ、桃ちゃん。ちょっとなにか書き込んで。

 

115:七色(桃)

こうですか?

 

116:天使

よし。初めて使うから不安だったけど名前変更出来ているね。

とりあえず、いま僕の方で名前変えたから。『B.S.F(それ)』持っているうちはこの名前にしておくよ。

 

117:七色(桃)

あ、ほんとだ変わってる。すごい。

分かりました! とりあえず噴水近くで待っていればいいですか?

 

118:天使

そうだねー。僕はショーから抜け出せないし、代わりに誰か来てもらうように頼むから、近くの喫茶店とかでジュースでも飲んで待っていてよ。代金はこっちで払うから。

 

119:騎士

マジでごめん。

俺は行けそうにない。

 

120:天使

騎士。いま何してんの?

 

121:騎士

銀と戦闘中なう。スレをマスク裏に表示させて、思念打ち込み機能を使って書き込んでる。

豚骨味噌ラーメン食べたい。

便利だけど余計な思考も打ち込んで使いづらいね。

 

122:天使

雑念が漏れてるねー。

戦ってるって、いまどんな状況? セブンスガールから事情聞き出せた?

 

123:騎士

彼女たちは本気で七色をエロゲ主人公にするつもりみたい。

フェイントを読み切るか冷静だね……。

一回でも昇天しちゃえば、俺たちも観念して邪魔しないだろうって銀が足止めにきた。

くっ、惜しい。右……いや幻!? 上だな!

そのことから灰を除いて、足止め要因として待機しているかもしれない。

ここで距離を取るか! 巧みだな!!

 

124:天使

めっちゃ実況挟んでくるやん……。

あと、いまは桃ちゃんいるんだから下ネタ禁止!

 

125:騎士

ごめん。戦いながらだと言葉選べないし、無意識に自分の動きを言語化してしまう。

 

126:天使

それはいいけどさー。ミスとかしないでよー?

 

127:騎士

スレ関係なく慣れない攻撃手の立ち回りしてる所為ですごいミスってる。これじわじわと追い詰められてる気がするね。

気がするねじゃないね。追い詰められてるわ。

 

128:天使

ありゃ? そうなんだ?

 

129:騎士

銀は下準備をすませて俺の盾を貫くこと、俺はその前に銀を無力化するか攻撃を完全防御することが勝利条件だから、俺が攻撃で彼女が守備になるのは必然なわけでして……。

 

130:天使

どっちにしても足止め成功させられてるよねー……それこそ逃げたら狙撃でドン! だろうし戦うしかないかー

 

131:騎士

ヤバイ。見失った。二発目絶対くるぞこれ。

ほら来るよ来るよ! 絶対来るよ!! ほらキタァ!!

 

132:天使

そんでピンチになってるし、負けないでよねー。

 

133:七色(桃)

えっと、もしかしていま魔装少女とブレイダーが戦ってるんですか?

 

134:天使

まあねー。でも身内の模擬戦みたいなものだから、気にしないでー。

それと、これオフレコでお願いねー。

 

135:七色(桃)

オフレコ?

 

136:天使

誰にも言わないでってことー。

そっかー。伝わんないのかー。

おふぅ、謎のダメージが天使を襲う。

 

137:七色(桃)

え!? 天使さんも戦ってるんですか!?

 

138:天使

うーん。桃ちゃんってば天然さんだー。

なんかごめんね。いつものノリで話しちゃって……。

僕は見た目は美少年だけど中身はネット中毒おじさんなんだ……。

 

139:七色(桃)

こちらこそごめんなさい。お姉ちゃんとかならネットに詳しいんだと思いますけど、わたし、そういったのあまり知らなくて。

 

140:天使

桃ちゃんが謝る必要ないって、インターネットは容量用法を守って使いましょー。

というかあんまりネットしないのに『アーマードchannel』のこと知ってくれてるんだね。嬉しいなー。

 

141:七色(桃)

はい! お姉ちゃん二人いるんですけど、お姉ちゃん二人ともファンなので、それで見るようになりました!

 

142:天使

ありがとねー。

なるほど、お姉さんがファンだったんだ。

……ちなみに誰が好きか聞いてもいい?

 

143:七色(桃)

一番上のお姉ちゃんは、悪魔さんと天使さんが好きみたいです。

よく悪天候最高とか言ってます。

2番目のお姉ちゃんは色染め天使最高って言ってました。

わたしは王様好きです! 王様格好いい!

 

144:天使

…………ああうん。べつにお姉さんの情報はよかったんだけど悪魔かける僕に、七色かける僕ね……。

 

お姉さんは漫画とか小説書いてる?

 

145:七色(桃)

はい、一番上のお姉ちゃんが漫画書いてるみたいです。夏と冬に出してお金稼いでるみたいです。どんなの書いてるかは、まだ早いって見せてくれないので知りません。

2番目の姉ちゃんがネットで小説投稿してるって聞きました。中学生になったから見ていいよって言ってくれたんですが、文字だけ見るのは苦手で、ちゃんと見てません。

 

146:天使

そっかー……ちょっとお姉ちゃんズに、僕がお姉さんの書いた漫画と小説見たいから教えてほしいって伝えておいてー。

 

147:七色(桃)

わかりました! 伝えておきますね!!

 

148:天使

よろしくー。

でもそっかー。王様好きなんだー。

じゃあ王様ちょうど手が空いてるってきたから、王様そっちに向かわせるよ。

 

149:七色(桃)

本当ですか!?

 

150:天使

本当だよー。

じゃあ、もうちょっとだけ待っててね。

それと、ショーでの僕の出番が来るから返事出来なくなる。

なにか今のうちに聞きたいことがあったら言って。

 

151:七色(桃)

その、質問じゃないんですが、私の先輩友達お姉様の魔装少女が七色さんのことを追いかけていったんですけど、連絡が取れないんです。もしかしたら誘拐かなにかと思ってるかもしれません。

 

152:天使

誘拐なのは事実なんだよねー……。あとお友達の属性が多い……。

おけー。見つけたら声かけるようにメール出しとくよー。そのお友達の特徴とかここに書き込んどいてもらっていい?

 

出番来た。ショーが終わるまで返事が出来なくなるのでよろしくー。

 

153:七色(桃)

分かりました。

お友達はパンチャーノワールって言います。黒色の魔装少女です。

 

154:七色(桃)

お姉ちゃんから有り金全部お渡ししますので許してくださいって土下座の写真とともに連絡来ましたがどうしたらいいですか?

 

 

 

+++

 

「あんなに怒らなくてもいいじゃん! お姉ちゃんのばか!」

「いや~。あれはだんごが酷いと思うよ~」

「えー。でも本人に見て貰ったら嬉しいものじゃないの?」

「変な所でだんごって年相応だよね~? まあ元となってる人物に見せられないものを書いてる方にも問題はあるとは思うけど~」

 

桃川は魔装少女の姿のままで噴水近くのベンチに座っていた。

 

魔装少女が日常の風景となっている現代にて、桃川のようにグレムリンと戦う以外に魔装少女で活動するものは珍しくなく、通り過ぎる人々は魔装少女だと最初は気に掛けるもすぐに興味を失い視線を外していく。むしろ、フェアリーであるモググの方が珍しいと足を止めるものが多いぐらいだった。

 

桃川は自分のスマホを落ち着き無く弄る。

 

「アイ先輩から連絡が来ない……見かけたら事情を説明してくれるって言ってくれたけど心配だよ……」

 

桃川が言うアイ先輩とはパンチャー・ノワールの事である。この二週間で桃川側の猛プッシュにより、プライベートで一緒に遊びにいくほど仲良くなったことで『黒稗 天委(くろびえ あい)』と本名を教えて貰ってからは、魔装少女ではない時はアイ先輩とあだ名で呼んでいた。

 

ちなみにノワールの時と同じくお姉様呼びをしようと思っていたのだが、本名でそう呼ばれるのはちゃん付けの時と同じく嫌がられたという。

 

ぼんやりとした雰囲気とは裏腹に、自分の何千倍もしっかりとしてて、まともに戦えないことを知ると適材適所と嫌な顔一つせず戦闘中の立ち回りとか相性が良い支援系の魔法を教えてくれたり、魔装少女の先輩としても人生の先輩としても凄く面倒を見てくれる黒稗に、桃川は出会ってからほぼMAXだった尊敬度は限界突破して上がり続けており、いつか本当の意味で恩を返せたらいいなと考えていた。

 

そんな黒稗が魔装少女たちに連れて行かれる七色を見た時初めて見る顔をしていた。怒ってるとか悲しんでいるとかじゃなくて、あってはいけない事が目の前で起きてしまい、その衝撃によって感情の全てをどっかに落っことしてしまったような、そんな顔。

 

桃川が話しかける前に、黒稗はパンチャー・ノワールに変身して追いかけてしまった。桃川は焦りまくりモググを呼び、これからどうするかとトイレの前(犯行現場)で話し合っている最中、七色の『B.S.F』が落ちている事に気付いたのだった。

 

「大丈夫かな?」

「まあ、どこ行ったかも分かんないし、いまは連絡を待つしかないよ~」

「うん……そうだよね」

「そういえば、だんごってブレイダーのこと好きだったんだね。動画も見てるんだって~?」

「あ、そうだ! ここに王様が来るんだって!」

 

落ち込んでいる桃川にモググがわざとらしく話題を振る。すると桃川は気分をコロッと表情を緩めた。黒稗の事が心配なのは変わりないが、まだ12歳の少女は感情の切り替わりが早かった。

 

「最近の魔装少女は、本当にブレイダー好きだね~」

「だって男の人なのにグレムリンと戦えるし格好いいんだよ! わたしもああやって変身してみたいな~。こう、サンシャイーンハートフルッチェーンジ! とか叫んでキラキラに包まれるとか!」

「それ日曜の朝にやってるやつそのまんまだよね~。変身なんて効率的にしたほうが安全なんだよ~。とくにだんごの場合なんて変身している間に危ない目にあうとか絶対ありそう~」

「否定出来ないのがすごく悲しい」

「そもそもブレイダーと魔装少女は変身形態が違うんだから真似するだけ無駄だよ~」

「そうなの?」

「魔装少女がフェアリーによっての覚醒された個人が保有する力なら、あっちは完全に外部から得ている力な上に魔法じゃないからね~」

「へー……。モググって、ブレイダーのこと詳しいの?」

 

なにか難しいことを語ってると、桃川は浮かび上がった素朴な疑問を口にする。

 

「まあね。見た目は物質生命体と違って変わらないけど、こう見えても地球歴二十年だよ~」

「へ~……ん? 二十年?」

「――ごめん。言い間違えた~。十年だよ~」

「だよね! びっくりした!」

 

グレムリンとフェアリーが異世界から来たのは“十五年”前じゃんと、桃川は言い間違えたモググにしっかりしてよねーと笑う。

 

――桃川は、なぜブレイダーの知識とモググが地球に来た年数が関わってるかという疑問に気づかなかった。

 

「ていうか、モググって幾つなの?」

「どうだろ~。精神生命体に年齢の概念はないし、そもそもフェアリーの世界と地球の時間って違うんだよね~。あえて言うなら200歳くらいになるのかな?」

「予想以上におじいちゃんだった!」

「適当に出した数字だから、本当はどうなのか分かんないけどね~」

「モググおじいちゃん。甘いもの食べ過ぎだよ」

「いきなり老人扱いしないの。というか精神生命体は美味いという感情が大事であって、食材事態に含まれている栄養素は無意味――」

「モググ?」

「『次元の裂け目』? でも反応が無かった……? それに形が……」

 

モググの視線の先を追うと、そこには『次元の裂け目』が現れていた。

 

「グレムリン!? うわぁ、タイミング悪すぎるよ!」

 

単独ではグレムリンを倒せる力が無い桃川は、どうしたものかとベンチの上に転がしておいた『ピーチ・ステッキ(モググ命名)』を手に取って立ち上がる。

 

「って言っても、最初の時みたいに他の魔装少女が来るまで……あ、そうだもう少しで王様か来るんだった! じゃあそれまで時間稼ぎすればいいんだよねモググ! ……モググ?」

「…………だんご」

「いや、そんな真剣にだんごって呼ばないで……」

「ここから、すぐに遠くへ移動して、早くっ……逃げてっ!」

「モ、モググ?」

 

モググの様子に、ただごとじゃないと桃川は感じ取り、そういえば『次元の裂け目』がいつもと違うことに気付いた。

 

『次元の裂け目』の見た目は基本的に割れたガラスのように歪な形をしている。しかし、いま桃川たちの目の前に現れた『次元の裂け目』は綺麗な楕円形をしており明らかに違うものだった。

 

「分かんないけど、本気でやばそう」

 

人の言うことを素直に聞き入れられることに定評がある桃川は、とりあえず離れたほうがいいだろうと判断する……だが一足遅く、異形のグレムリンが地球へと現れた。

 

「ろ、ロボット?」

「違う。あれもグレムリンだよ。害獣じゃなくて兵器のほうだけどね」

 

金属の装甲に身を包んだフクロウ顔のグレムリン。それも三体。人工的で無機質な見た目からして自分の今まで見てきたグレムリンとは異なる存在に桃川は脅えて体を震わせる。

 

……クツクツポー……クツクツポー……クツクツポー……

 

「なにこれ……鳴き声……なの?」

 

わざとらしいグレムリンの鳴き声とは違う、機械の駆動音染みた不気味な音を響かせるフクロウ機械型グレムリンは、目に付くものを破壊する訳でもなく三体とも桃川をじっと見ていた。

 

「ひっ」

 

フクロウの一種であるウラルアウルのような漆黒の瞳で見詰められる桃川は恐怖のあまり引きつった声を出して、数歩後ろに下がる。

 

「モググ、ど、どうしよう?」

「速力強化の魔法覚えていたよね?」

「う、うん」

 

黒稗が愛用する速力強化の魔法〈キャットウォーク〉。桃川は黒稗に習って会得しており、黒稗に比べれば荒削りも良いところであるが実戦で使える程度にはものになっていた。

 

「魔法で一瞬だけあいつらの視界を塞ぐから、どこか見つからない所に隠れて」

「え、で、でもグレムリンを放って隠れるのは流石にまずいんじゃ……」

「命には代えられないよ」

「命って……それじゃあまるで死ぬみたいじゃん……」

 

魔装少女はダメージを受けた場合痛みこそ発生するものの肉体は傷つかない、そんな魔法によって守られている。そのため魔装少女に変身している限り、どれだけ絶体絶命に陥っても死ぬことはないのが桃川が知る常識だった。

 

だけど、いつもふるゆわっとしているモググが真剣になっているのを見て否が応でも、いまその常識が覆っているのだと察してしまう。

 

「それと、追いつかれるようなら、ブレイダーの落とし物を放り投げて、多分、狙いはそれだから」

「え? で、でもこれは……」

「説明している時間はもう無いよ! 魔法発動して!」

「う、うん! 〈魔法展開(スペル):キャットウォーク〉!」

 

有無を言わさせないモググの迫力に桃川は大人しく従い魔法を展開する。桃川は自分の体重が完全に消え去ったような感覚を得る。

 

「走って! 〈魔法生成(クリエイト):ダークホール〉!」

 

モググが魔法を発動するとクロウ機械型グレムリン三体がギリギリ収まるように黒掛かった半透明のドームが出現する。それと同時に桃川はフクロウ機械型グレムリンに背中を向けて走りだす。目指すのは七色が誘拐されたトイレ。

 

フクロウ機械型グレムリンを覆うこの魔法は内部に存在する生物の“五感(感じる)”機能を封じるものである。しかし特別な拘束力は無く範囲も狭く少し動くだけで抜け出せてしまうため使い勝手のいい魔法では無かった。それでも、ほんの僅かに自分たちを見失ってくれれば、最低でも桃川は身を隠す事ができ、時間を稼ぐ事が出来ると、モググはそう判断して使用した。

 

しかし、その判断がミスだったことに気付かされるのは早かった。フクロウ機械型グレムリンの一体がドームの中で翼となっている自分の腕を振るうと、数枚の金属の羽が勢いよく射出され、ボウガンから放たれた矢の如く桃川に向かって飛ぶ。

 

「だんご! 避けて!!」

「え? きゃっ!?」

 

モググの声に反応して振り向くと、自分のほうに飛来してくる金属の羽に気付き寸前の所で横に倒れ込んで回避する。ただし無傷とは行かず、金属の羽は桃川の肩を掠めた。

 

「い、痛い! ……え? うそ、これって……血?」

 

強い痛みに桃川は反射的に羽が掠った肩を手で押さえる。すると生暖かい液体が手に付着して、なんだと確認すると白手袋に血が付着していた。

 

「ど、どうして」

「しまった! 魔法無効化能力は魔装少女だけじゃなくてもボクたちのにも……だんご逃げて、だんご!!」

 

決して傷つくことは無いと教えられた魔装少女。それなのにいま自分は怪我をしている。自分が信じてきた常識外の事が起きて、桃川はパニックのあまりへたり込んだまま動けない。

 

……クツクツポー……クツクツポー……クツクツポー……

 

フクロウ機械型グレムリン一体が鳴きながら腰を低くして足に力を入れた。

 

「だんご! 起きて! 『B.S.F』(それ)を捨てて早く逃げて!」

 

モググが叫ぶなかフクロウ機械型グレムリンの一体が翼手を広げ、背中に装着されているランドセル型ジェットパックを起動。足に溜めた力を一気に解放した。

 

フクロウ機械型グレムリンによる時速100を超える急加速低飛行突撃が桃川を襲う。

 

「――あ」

「だんご!?」

 

認識した時には目前に迫り、蹴りの姿勢に入っていたフクロウ機械型グレムリン。刹那の中で桃川は自分の頭がボールのように転がるのだと理解し、短い走馬灯を見る。

 

――安心すればいいさね。お前さんはまだ死なないよ。

 

――――――ターン。

 

魔装少女の命が散る。そんな未来を変えた一発の“銀弾”だった。フクロウ機械型グレムリンのこめかみに目がけて見事命中。バランスを崩し桃川を通り過ぎて行く。そして己が生み出した速度を殺しきれず何度も地面にぶつかり、最後には記念樹に打ち付けられて絶命。粒子となって消え去った。

 

「え? え? ええ?」

「――ごめん、遅くなった」

 

ガキーーーーーーーン!!

 

桃川はなにが起きたか訳も分からずキョロキョロと視線を動かしていると、背後から巨大な十字架が自分を隠す様に前に出てきて、後追いで襲いかかってきた二体目のフクロウ機械型グレムリンの攻撃を防いだ。

 

「ブレイダーナイト!」

 

自分を助けてくれた者の正体を知り、桃川は喜びを叫ぶ。

 

「騎士の誓いに賭けて俺が全て守り通すっ!『カウンタークロス』!」

[カウンタークロースッ!!]

 

『クロスベル』の蓄積されているダメージを相手に返す『スキル』を発動。フクロウ機械型グレムリンが元いた場所まで吹き飛ばされる。

 

……クツクツポー……クツクツポー……

 

フクロウ機械型グレムリンはしばらく考え込むように首を動かした後、羽を広げて、ジェットパックによる最大出力にて地上から豆粒ほどにしか見えなくなるほど上空まで飛翔する。

 

ナイトは射程範囲外、ここから見えない場所で狙いを付けている銀は次弾装填までまだ時間が掛かる。負けることは無いが、不利を悟られ別の場所へと移動する“命令でも出されたら”厄介だ。だからこそナイトは天使の采配に感謝する。

 

「見た目からして、やっぱり君の獲物だったようだ――王様」

「――であるか、ならば親征せし我に、活躍の場を寄越して貰おう」

 

――――――――

† 天涯孤独 †

† 雪上加霜 †

† 天変地異 †

† 阿爺下頷 †

† 唯唯諾諾 †

† 無我夢中 †

† 鰥寡孤独 †

† 尊尚親愛 †

――――――――

 

悠々自適にこちらへと歩いてくる『王様のお好み焼き』と刺繍されたエプロンにタオルで髪を結んでいる青年――王様の『B.S.F』の画面には八つの四文字熟語が均等に並んで表示されていた。

 

\ハイヤ!/\ソイヤ!/\ハイヤ!/\ソイヤ!/\ハイヤ!/\ソイヤ!/

 

野太い男性のかけ声と共にド派手な和楽器ロックが奏でられる中、王様はベルトのバックルに『B.S.F』画面を表にして填め込んだ。フクロウ機械型グレムリンたちが金属の羽を飛ばすも、男性の包み込む強風によって無力化されてどこかへと飛ばされる。

 

「変身」
   

 天 

 上 

 天 

 下 

 唯 

 我 

 独 

 尊 

 

スライドカバーを左右から押し込むと画面に表示された漢字も動き出し最後には八つの文字が残り、それを歌舞伎の口上の如く読み上げられるたびに王様にブレイダースーツが装着されていき、そしてマントを靡かせる武士甲冑風の『ブレイダー・キング』が現界した。

 

「――喝采せよ! 王たる我が来たぞ!」

「王! 王!! 我らが王あいたたたたっ!?」

「怪我してるんだから、大人しくしてて!」

 

桃川が、王様ファンの中で使われている掛け声を叫び、怪我してることを忘れて腕を振るって痛みに悶える。

 

「征くぞ!」

 

キングは体を浮き上がらせ自在に空を飛び始める。フクロウ機械型グレムリンと同じ高さまで達したキングは、そのまま速度を殺さず先制攻撃をしかける。

 

「我が(つるぎ)たちよ!」

 

日本太古の武器、銅剣の形をしたキングの固有武装である『空我剣』を生成。それも握りしめた一本だけではなく、自身を取り囲むように二十本ほど生成し、フクロウ機械型グレムリンに向かって射出する。

 

フクロウ機械型グレムリン二体は回避行動を取るが『空我剣』が追尾してくるのを確認すると、即座に金属の羽を射出して応戦。全て打ち落とす。

 

「遅い!」

 

キングは『空我剣』が打ち落とされている隙に死角外から一体に接近。翼手を切り飛ばし、さらに背中のジェットパックを突き刺して破壊し墜落させる。新たに生成した『空我剣』を両手に持ち、もう一体の方へと急加速。フクロウ機械型グレムリンはそんなキングにタイミングを合わせて蹴りを放つ。

 

「甘いな!」

 

まともに食らえば致命傷にもなり得る鉤爪による蹴りをキングは冷静に剣で打ち払い、体勢が崩れた瞬間を逃さずもう一本で胴体を貫いた。

 

「凱旋の時間へと参ろう!」

 

 天 

 羽 

 々 

 斬 

 

剣を突き刺さったままのフクロウ機械型グレムリンを墜落している最中のもう一体と射線が重なるように投げ捨てる。キングは一列一文字が見えるほど開いていたバックルのカバーを完全に閉じる。するとカバー表面に刻まれていた漢字が空色に光り輝き、三尺はあろう空色の刀身を持った日本刀『天羽々斬』が、天空からキング目がけて落ちてきて難なくキャッチする。

 

「はああああああああああああああ!!」

 

 一 

 刀 

 両 

 断 

 

時速300キロを超えるとされる猛禽類に匹敵する急降下にて、墜落中の二体のフクロウ機械型グレムリンに追いつき音速の一振り。キングが通過した後に残ったのは、胴体が切り離された二体のフクロウ機械型グレムリン。

 

キングが着地、地面を擦ることで速度を落としきり『天羽々斬』で空を斬ると同時に絶命したフクロウ機械型グレムリンが粒子となって空に溶けていった。

 

「す、すごーい!」

 

まさに無双と評価しても過言では無いキングの戦いぶりに、桃川はさっきまで本気で死にかけていたのなんて忘れてはしゃぎだす。

 

「ふむ。追加の戦力はなさそうだな」

「お疲れさま。来てくれて本当に助かったよ。グレムリンのことを知らせてくれた希望にも後でお礼を言わないとね」

「なに、ブレイダー()としての責務を果たしたに過ぎない。騎士よ。お主もご苦労であった。銀もな」

「……ありがとう」

 

ブレイダー・ナイトにブレイダー・キング、そしてセブンスガールの一人であるシルバー・バレットの三人が合流する。

 

「う、うわぁ……有名人がたくさん」

「あれだけの事があって、出てくる感想がそれなの~?」

「あ、モググ! 無事だったんだ。よかった! あいてっ!」

「モググのことよりも、だんごが無事じゃないよ~……。シルバー・バレット」

「……なにかしら?」

「治癒魔法使えるかな? 生憎フェアリーは物質生命体の身体を治す魔法は使えなくて、応急処置でもいいからだんごの傷を塞いで欲しいんだ」

「一応使えるけど得意じゃないのよね。ちょっと見せて……よかった。これぐらいの傷なら塞げるわ。〈魔法展開(スペル):アクアボール〉」

「冷たい!? 染みる!?」

「すぐに終わるから我慢して」

 

傷を塞ぐ前に、洗浄をするべく手の平ほどの水の玉を生成し傷口に被せる。すると回転している水の玉は傷口の血や汚れを取り除いていき中心へと集めていく。

 

「この使い方は初めてみるね~」

「自分で怪我した時にちょっと思いついてやってみたのよ」

 

単なる生活の知恵と語るシルバー・バレットだが、繊細な魔法操作を簡単に熟す様子に、モググは話に聞いていた通り天才なんだな~と思う。

 

「〈魔法展開(スペル):ボディヒール〉」

 

洗浄が終わり、汚れた水の玉をそこらへんに捨てて地面へ吸収させると、肉体の治癒能力を促進させる魔法を発動。桃川の傷口に向かって手の平から緑色の光が降り注ぐ。

 

「傷跡は残らないと思うから安心して」

「は、はい」

 

傷口を治して貰っている中、桃川はというとシルバー・バレットの顔に見惚れていた。魔装少女同士なら認識阻害は働かず、そのままの素顔を見る事が出来るのだが銀色の髪を持つ彼女の顔は美人以外の何物でも無かった。ずっと見ていられる、なんならおかずにしてご飯食べられそうなどとモググが聞いたら、姉に負けず劣らないよねとツッコミが返ってきたであろう感想を抱く。

 

「……ずっと私の顔を見ているようだけど、どうしたの?」

「え゙っ!? えっと……その、あの時わたしを助けてくれたのって、シルバー・バレットさんなんですか!?」

 

綺麗すぎてガン見していたと正直に言うには恥ずかしく、咄嗟に気になっていた事を口にする。桃川のいうあの時とは、フクロウ機械型グレムリンにあわや頭をサッカーボールにされかけた時である。

 

「そうだけど、あなたもしかして見えてたの?」

「いえ! まったく!」

「そんな自信満々に言うことじゃないよね~」

「でも本当にそうだったんですね! 助けてくれて本当にありがとうございます! お礼と言ったらなんですけどリラインなどやっていないでしょうか? お友達になりませんか!?」

「だんご。タイミングも聞き方もひどいよ~」

「……一緒にいると毎日が楽しくなりそうな子ね」

「それについては全面的に同意だね~」

 

苦笑するシルバー・バレットにモググは完全に同意する。傷が完全に治ったとのことで、桃川は自分の肩の傷を確認すると綺麗さっぱり無くなっていた。魔法って本当に凄いなーと感動しているとブレイダーたちが傍に寄ってくる。

 

「もう大事ないか?」

「は、はい!」

 

和式甲冑風のブレイダー・キングを初めて生で見た桃川はやっぱりめっちゃ格好いいと興奮する。

 

「王様、わたしファンなんです!」

「そうか! 我自ら感謝を送ろう!」

「握手してください!」

「うむ! よかろう!」

「スマホのカバーにサインしてください!」

「うむ!」

「リライン教えてください!」

「だんごって、リラインを必ず聞く病気でも患ってるの~?」

 

なお、要求されるままに応じてくれていたキングだったが、リラインはやっておらずID交換は出来なかった。

 

「元気そうで本当によかったよ」

「あ、ブレイダーナイト」

「ごめん。僕が予定通り君に会いに行ってさえすれば、怪我をすることは無かったのに……」

「い、いえ! わたしがドジだっただけなのでお気になさらず……なんなら、ナイトさんのサインも頂ければ……」

「だんごって、想像以上にメンタルおばけだよね~」

 

なんやかんやで友達が出来たこともあり、一人暮らしも慣れてきて、お姫様のご就寝であるーとか言ってふかふかベッドで熟睡している桃川。濃い家族に育てられたためかメンタル面においてはかなりタフだった。

 

「そもそも狙われた理由は俺たちにあるから、巻き込んじゃって本当にごめん……」

「やっぱり、狙いは君たちの落とし物だったの~?」

「その可能性は高いとは思うんだけど、いったいなにが理由で襲われたかってなると分からないんだ」

「えっと……もしかして、さっきのグレムリンって何者かが命を狙って送り込んできた刺客とかそんなかんじのやつなんです?」

「正直に言っちゃうと概ねその通りかな」

「めっちゃ怖いやつじゃん!?」

 

顔を真っ青するする桃川に、ナイトは安心して欲しいと優しく声を掛ける。

 

「とにかく、犯人をどうにかするまで一緒に行動してほしんだけど、大丈夫かな?」

「よろしくお願いします!」

 

桃川はナイトの提案に即決しながら、わたしこれからどうなるんだろうと空を見つめる。――自分の不幸は、まだピークに達していなかったと知るのは、そう遠くない未来だった。

 

 

 

 

 

 




メインの七色や残りのセブンスガールたちを出せぬ不甲斐なさ……。
王様の変身シーンはなんやかんやで20テイクぐらいしました。
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