変身ヒロインが守る世界にて十人の変身ヒーローは戦う 作:庫磨鳥
なんとか中編終わりました、いつも中盤になるとスランプみたいになるので、変になりすぎてないか不安です……。
次回からは後編になりますがほぼ間違いなく分裂します()
作者投稿が終わったのでアリスギアアイギスのイベントやるんだ……。
※灰稲比恵の変身時の文字色を変更しました。
「さあ、みんな! 彼の名前を呼んで!」
「「「「――ブレイダー・デビルーー!!」」」
「変っ身!」
「「「「「さんじょーーーーー!!!」」」
ステージ用に先んじて録音編集を行った変身音がライブスピーカーから流れたことで。事前に変身した状態で袖幕に控えていたブレイダー・デビルがステージへと飛び出る。数百人分の子供達の声援がホールに響き渡る。その声に応えるためにデビルが教えられた通りキメポーズを取ると、先ほどよりも大きな声援がまた返ってくる。
人生ってのはなにが起こるか分からんなと、デビルは実際にショーで活躍しているプロの進行役のお姉さんがハキハキと喋っている中で過去を思い出す。
自分は素行が悪く、口も悪い。暴力も厭わない。口を開くよりも拳を握ることを優先することの方が多い。さらに人でもブレイダーでも見た目からして悪であるはずだ。事実、天使に出会うまではその通りであった。
――たとえ世界を敵に回しても勝てるんだろうけどさー。そんな生き方だと損ばっかりしちゃうよ?
その一言から、悪魔ひいては『アーマード』の環境はまったく違うものへと様変わりした。それこそはみ出し者で悪魔と怖れられていた自分が気がつけば子供達のヒーローになっている。これも全て、天使が計画したネット活動による印象操作のおかげだとデビルは考えてたのだが、天使曰く「悪魔の場合は元々根付いていたものが開花しただけ」と言われてむず痒くなったのは記憶に新しい。
ヒーローショーは滞りなく進行していく、話の展開は子供たちにも分かりやすいようにと簡単なものになっている。やたらフェアリー染みた喋るグレムリンが一般人を襲いながら暴れており、それをデビルが倒すと言ったものだ。
喋るグレムリンに関しては『アーマード』からすればあながちフィクションでもないのだが、大人たちの中には苦笑するものもいて、生配信のコメントは喋るんかいwと総ツッコミであった。
事態に気付いて登場したデビルが、実際にテレビでも活躍しているプロスーツアクターが中に入っているグレムリン(着ぐるみ)と戦闘を開始。勿論あくまでも戦っている振りである。
最初はデビルが優先だったが、途中デビルは一般人に扮したプロの劇団員所属のエキストラたちがステージのあらゆる所で倒れていることに気付いて、彼らを気にしてまともに動けず防戦一方になる。実際はS級グレムリンでもなければ、いつも瞬殺なためこのような事態になることは無かったりするが、ワンパンは流石にと天使から指摘が入って演出になった。
窮地に陥ったデビル。解説のお姉さんがプロのマイクパフォーマンスで緊張感を煽っていくなか観客席の中央。PS席に突如としてスポットライトが当たる。
「ここは僕に任せてよ!」
中性的な声がスピーカーから発せられると共にPS席に居たスタッフがテーブルの下に隠されていた小さな台座を取り出し、その上に立って帽子を脱ぐ。すると白髪と赤い瞳が露わとなり正体が露見する。
「天使さんだ!」
「キャーーー!! 天使ーー!」
「アンギルー!」
「変身!」
子供から保護者の方まで有名人である天使のサプライズ、そして見れることは決して多くは無い、ブレイダーの生変身に観客のボルテージはさらに上がる。
「みんなしっかり!! 『エンジェル・ライト』!」
ブレイダー・アンギルとなった天使が杖を掲げると、一般人エキストラへとスポットライトが当てられて、あたかも怪我が治ったかのように次々と立ち上がって袖幕へと引っ込んでいく。これにてデビルの障害が無くなった。
ふと、デビルは前回の『裏案件』で終始巻き込まれてしまうことになった小鳥遊蜜柑を強化された視覚によって見つける。両親と共に食い入るようにこちらを見ており、その顔には笑顔があった。
――やっぱり柄じゃないな。
デビルが手をかざしてスキル『悪魔の手』を発動。コンクリートなら容易く切り裂ける爪先から電気が放出され、天井や壁などに設置した避雷針に向かって飛んでいく、不安がる客もいたがデビルが意のままに電気を操れることを知っていたものたちから落ち着きを取り戻していき、全員がすぐに慣れて、電気が会場を迸るといった幻想的な光景に目を奪われる。
そして、戦いはクライマックスとなりデビルは拳を握って構えた。待ってましたと言わんばかりにフライング気味に観客から声が上がる。
「さあ、みんなもせーの!」
「――シックスパンチ」「「「「シックスパンチ!!」」」」
スピーカーから録音した必殺技の音声が爆音で流れ、グレムリンに向かって拳を突き出すと、ワイヤーに引っ張られグレムリンが斜め上空へと吹き飛んで場外へと消えていった。あくまで全て振りではあるが、デビルの体は放電したままであり派手でな演出も合わさって、かなり満足の
行く出来となっており、自然と盛大な拍手が生まれ、第一部が終了となる。
……ちなみにステージといい、機材といい、役者やスタッフといい。どれも一流が集っており、この一日限定のヒーローショーのためだけに軽く八桁万円の予算が使われていたりするのだが、ネット配信に備わっている
――はぁ、さて第二部どうなるか。
第一部が悪魔のヒーローショーなら。第二幕は第一世代のブレイダーたちが失楽園を除き総出演をする十分程度のおまけみたいなもので、悪魔と正義のバトルが最大の見せ場となる。
発端は一人でショーに出たくないと言った自分にあるが、準備が進んでいくうちにスタッフや役者と交流を深めていき別に一人で舞台に立つ訳じゃねぇんだなと気付き冷静になると普通に言わなきゃよかったかもしれないとちょっと後悔していた。
正義という人物は空気が読めないわけではないが遊びすぎるところがある。得物をぶっ放して機材やショーをぶち壊すなんてことは絶対にしない事は分かっているのだが、碌でもないアドリブを100%してくる確信があった。
そして悪魔は割かし他人事と思って気にしていないが、天使が正義の出演に頭を抱えている。その理由はなにかしらに姿が映るだけで大炎上。マイナス票があったのならば事実上の最下位とまで言われた正真正銘の社会的嫌われっぷりにある。この会場では良いかもしれないが、姿を現した時点でネットのあらゆるSNSにて大炎上祭りが開催する。
――彼は“正義の味方”ではなく“正義”である。だからこそ誰も理解してはいけない生物なのだ。
「ではみなさん! 世界の平和を守るブレイダー・デビルに向かって大きな拍手をーー!!」
進行役のお姉さんの掛け声により、先ほどよりも大きな拍手喝采がホールを包み込む。これが第二部の始まりの合図でもあった。
話の展開としては、正義が「随分と楽しそうなことしてるなぁ?」と、いつもの調子で揶揄いに来て、それを悪魔が窘めて戦いに発展するというものだった。その程度で戦いになるかと疑問を持たれればブレイダーたちはYESと首を縦に振る。悪魔と正義は割とくだらない理由で定期的に殴り合ったりしていた。
悪魔はこうなったら仕方ながない、もしなにかしでかすようなら本気で一発当てるかと決意して意識をショーに戻した。
「――邪魔するようで恐縮なんだけどね」
「…………ん?」
スピーカーから聞こえてきたのは礼儀正しさが言葉だけで分かる明らかに正義ではない声。だけど1000%思い当たる声に悪魔は一瞬状況を忘れて素の声を出してしまう。
「ちょっとボクの話を聞いてくれないか?」
「……あんの馬鹿野郎っ!」
間違いなく、すでにここにはいないであろう正義に、一瞬ステージの上であることを忘れて悪態を吐き捨てる。
本来では最後に一分ほどの出番しか予定されてなかったはずのブレイダー・アビスが正義の代役として登場したのである。
+++
155:正義
奈落。どうせ見てるんだろ?
ちょっと頼みたいことがあるだが、YESと言ってくれ。
156:奈落
状況は把握しているよ。
行くのかい?
157:正義
すまんとは思うがな。まぁ、俺が欠席した方が天使も楽になるんじゃないかね?
真面目なお前のことだ。渡された台本暗記してるだろ?
158:奈落
一応は。でも出番直前で欠席の方がもの凄く困ると思うけどね。
そもそも、君が向かうほどの問題が起きているのかい? ボクの瞳には異常に思える炎は見えなかったけど。
159:正義
さてな。
だが俺の正義が囁くのさ。敵がすぐそこまで来てるってな。
160:奈落
君の勘か、なら気のせいではなさそうだね。
……分かったよ。自信はないけど代役引き受けるよ。一緒に天使に怒られようね。
161:正義
代役だけでいいぜ。ナハハ。
それにお前の話で、行く場所も当てがついた。あんがとよ。これは借しにしておいてくれ。
162:奈落
覚えておくよ。
さて、代役とは言っても正義のハイテンション、ボクに出来るかどうか……。
163:正義
いや。別に俺の真似しなくていいからな? 見てみたいも気がするが。
じゃあな。グッドラックだ。
164:奈落
君もね。正義。
165:悪魔
正義てめぇ!! お前これ終わったら絶対殴るからな!
166:天使
もーーー! ほんとにもーーーーー!!!
167:混沌
ごめん、いまなにが起きてるか気付いた_:(´ཀ`」 ∠):_
168:天使
混沌ずっと台本見て動かなかったもんね……。
167:混沌
だ、誰か私の代役してくれないかな?(>_<#)キリキリ
168:天使
だめです。
+++
セブンスガールズの金と呼ばれている高価な装飾が目立つドレス姿の魔装少女『アイビー・ゴールド』こと『
そしておなじく朱と呼ばれている『クリムゾン・スピアー』こと『
しかし、先にやってきたのは公園で現れたような金属の装甲を纏ったグレムリンの大軍だった。およそ百はいようネズミ機械型グレムリン。単体での強さはそれほどではないが数の暴力に徐々に追い詰められていき、ビルの建設現場にて囲まれてしまっていた。
「な、なんなんですの、こいつらは!?」
「あ、あぶな……いっ!」
「あずき!?」
クリムゾン・スピアーは咄嗟に粟財を狙って振るわれた爪による攻撃を庇って血を流す。抱きかかえて攻撃を受けたところ見ると血を流していた。魔装少女は怪我をしない。そんな常識外の事態にアイビー・ゴールドは覚えがあった。
「これは『裏案件』の時の!? ならば、これはフェアリーによる襲撃!?」
七色から話を聞いて力を貸した『アーマード』が秘密裏に解決していた『裏案件』。その時に戦ったフェアリーによって改造されたグレムリンも、同じように魔装少女の肉体に怪我を負わせる力を持っていた。ならば他の魔装少女による助けは見込めないと粟財は自分の置かれた状況が、かなり深刻なものだと唇を噛みしめる。
「ううっ……」
「ちょっと! しっかりしなさいな!」
「あ、アイビー……逃げ……てくださ……い」
「あなたを置いては行けませんわ!」
「と、ともだ……ちを守って……死ね……るなら……本望で……す。うへへ」
「心配がどこかへ飛んでいきそうな笑いをしないでくださいませ! 本当にあなたって人は!」
朱福は強がりではなく本気でそう思っていた。自分と同じ人を好きな友達を守れて死ぬなんてとても幸せなことだと、朱福は痛みを快楽にかえて顔をにやけさせる。
生まれもっての不器用でコミュ障であった彼女は自分の意志というものを伝えられずに生きてきた。それが全てでは無かったが学校では虐められて、大人や家族には理解を得られず、ネットにも逃げられず。そんな彼女が縋ったものが常に突き刺さっていた“痛み”であったのは、仕方の無いことだったのかも知れない。
もっと痛みをと魔装少女にもなったが。その趣向故に他の魔装少女から距離を置かれてしまい。社会的評価も需要の域を超えているとしてさらに孤立していった。
グレムリンと戦って痛い思いをすると、生きてていいって見えない誰かに言ってもらっている気がする。
そんな風に狂っていた彼女に転機が訪れたのは、いつものように一人で戦いグレムリンの攻撃を受けた時だった。
――大丈夫っすか!?
痛みに浸っている朱福は自分を本気で心配し、手を差し伸べたヒーローに、そして自分にしっかりと向き合ってくれた七色に恋して依存する。そして恋敵であるはずの自分を受け入れてくれたセブンスガールを友達として、自分の命を賭けて守る。ひとえにひとりぼっちのあの頃に戻りたくないために。
「わた……し……ともだ……ちのために……しね……るんですね……」
「バカな事を言っているあなたには、あとで厳しいお説教ですわ」
「と、ともだ……ちからのキ……ツいたいば……つ……た、たのし……み」
「そんなこと微塵も言っておりませんことよ!?」
ちなみにクリムゾン・スピアーはいつもこんな感じの喋り方だったりする。しかし余裕があるというわけではなく、このままでは危険なのは事実だ。そんな二人の様子を見て楽しんでいるかのように合計百のネズミ機械型グレムリンが一斉に鳴き出す。
クツチュークツチュークツチュークツチュークツチュークツチュークツチュークツチュークツチュークツチュー
クチュクチュクチュクチュクチュクチュクチュクチュクチュクチュクチュクチュクチュクチュクチュクチュクチュクチュクチュクチュクチュクチュクチュクチュクチュクチュクチュクチュクチュクチュクチュクチュクチュクチュクチュクチュクチュクチュクチュクチュクチュクチュクチュクチュクチュクチュクチュクチュクチュクチュクチュ
ネズミ機械型グレムリンが複数。アイビー・ゴールドに襲いかかる。
「気持ち悪いですわ! 〈
複数の魔方陣が展開され、そこから黄金色に輝くリボンがネズミ機械型グレムリンに絡みつき動きを止める。
魔装少女が必ず保有する己だけが使える『
「キャッ!?」
反撃した罰だと言わんばかりに、一体のネズミ機械型グレムリンは爪を射出。アイビー・ゴールドの頬を掠める。
「……バカなことをした。その罰とでも? ふざけないでくださいませ……」
黒色が出現したことによって、不安になったみんなに七色と本番をするのを提案したのは粟財だった。危機感は確かにあったが、粟財がまず始めに浮かんだのはチャンスという言葉だった。
彼女の恋の形は束縛系。好きな人が自分の手の平にいることに幸せを感じる。一生監禁して飼いたいという欲もあるが別に独占しなくてもいいのだ、ただ思い通りに生きててくれれば自分は何番目でもいい。
故に粟財は七色と自分たちが全員関係を持つようにする計画を口にした。そうなれば関係を破綻させないためにスケジュール管理が必要になってくる。それを自分が担当することで話が付いていた。今日はこの子と一緒にいる、明日は休みで、この日はみんなと一緒に海が見えるホテルに行こう。突然のトラブルやセブンスの活動で予定が狂うのを日々のスパイスとして楽しむのも一興、自分のシフトを気まぐれに誰かに譲って余裕を見せても良い。優しい彼女たちの事だ必ず恩返しをしてくれるだろうし。
そんな幸せな未来を求めて、粟財はセブンスガールたちの不安を利用して計画を実行した。だから、この狙われた襲撃されたことも、朱福が怪我したことも自分の所為なのだろうと悔やむ。
「……だって、仕方ないじゃない」
――申し訳ないっすけど、まずは友達からでいいっすか?
出会いこそよくある危ないところを助けられてハートを射貫かれてしまったというものだった。でも、初恋に浮かれて暴走を起こした彼女は七色を自分のものにするために本気で腕や足の一本を切り落とそうとした。それが失敗に終わった後、七色は怒るわけでもなく、怖がるわけでもなく、少し困った様に笑って手を差し伸べてくれた。だから束縛して……“みんな”のようにどこにも行かないようにしたかった。
「わたくしだって不安になりましたの!」
粟財は奇跡を祈りながらも、自分たちが閉じ込めたヒーローが来ないことを確信していた。だからこそせめて朱福だけでも助けるために震える足に力を込める。
その時であった。バイクがエンジン音を吹かしながらネズミ機械型グレムリンの群れに突っ込んできたのは。
「え? な、なにごとですの?」
「あ、あ……れは……」
乱入者のバイクによって次々と轢かれていくネズミ機械型グレムリン。あまりの唐突な事態の変化にアイビー・ゴールドは理解が追いつかず頭を真っ白にしてしまう。クリムゾン・スピアーはバイクに見覚えがあり、どうして彼がここにと驚く。
「――ナハハ。ベストタイミング過ぎて謝りたくなっちまうぜ。なぁ?」
適当にネズミ機械型グレムリンを散らかした後、二人の前に止まりバイクから降りた乱入者はヘルメットを取る。ちょい悪染みた中年顔を粟財は二週間前のパーティで見ており、彼女も正体に気付く。
「あ、あなたは……!?」
「ようクソガキども、お前たちのヒーローが絶賛お楽しみの中。代わりに俺が代役で来てやったぜ。投げるのは空き缶か弁当箱ぐらいにしておきな」
「ブ、ブレイダー・ジャスティス!」
「生身の時は正義って呼びな。アイビー・ゴールド。まっ、俺はどっちでもいいんだがな」
アイビー・ゴールドは世界一の危険人物とまで言われている、正義が自分たちを助けに来てくれたことに、ひたすら戸惑うことしかできない。
「正義……ど、どうしてあなたが……」
「さてな。なんだか嫌な予感がしてショーをドタキャンしてきてみたらこのざまだ……はっ! しゃらくせぇんだよ!」
問答無用で襲いかかってきたネズミ機械型グレムリンにカウンター気味にムエタイ式の肘打ちを食らわせて、『B.S.F』を取り出す。
「ナハハ。お喋りしている暇はなさそうだな。空気読めないドブネズミ共だ。下水路育ちが長かったのかね?」
正義が『B.S.F』に表示されたSTARTボタンを押すと、昔ながらのシューティングゲームBGMのようなチップチューン音楽が鳴り響き紫色のベルトが腰に巻かれる。
ネズミ機械型グレムリンが遊びを邪魔されたことに怒るように正義を八つ裂きにせんと一斉に群がり始める。
「腕とか足だけ狙ってみろ」
「っ! 〈
正義の言葉の意図を瞬時に理解したアイビー・ゴールドは、ネズミ機械型グレムリンの腕や足に的を絞って拘束する。魔法が効力を発するのは一瞬だけであったが、突如手足が動かなくなったことで速度が乗っていたネズミ機械型グレムリンたちはバランスを崩して地面に転がる。さらに言えば一体に対して巻き付けるリボンが少なく済んだこともあり、先ほどは十体が限界だったのに、今回は三十体の足止めに成功した。
「ぜ、全部は無理ですわ!?」
「十分だ。ありがとよ」
百体一斉に動き出した分、前の方の足を止めたことで渋滞状態になり動きが止まる。ほんの少しの停滞であったがそれで充分だった。
正義はバックルを取り外し、畳まれているグリップを回して展開。上半分を開いて『B.S.F』を中へと装填、ふたたび閉めると上半分がほんの少し前へと突き出て、拳銃のような形になる。
『バックルピストル』と呼ばれる正義専用のアイテムの
何者であるかという問い掛けに、正義はこれが答えだと言わんばかりに引き金を引いた。
踊りたくなるような軽快な音楽を銃撃音が轟きぶち壊す。正義の肉体表面に電子回路のようなのが浮かび上がっていき、次々と『ブレイダー・スーツ』が装着されていく。
電子回路が所狭しと刻まれた紫色のブレイダー・アーマー。まるでSFに登場するようなメカメカしいデザインのブレイダー・ジャスティスが現界し、迫り来るネズミ機械型グレムリンに向かって『バックルピストル』のトリガーを引く。
正義のスキル『正義の力』で生成された弾丸が発射されて、グレムリンの金属で守られている眉間に綺麗な穴を開けて絶命させる。
「見た目の割には柔い奴らだな、量産品ども!」
それからジャスティスは高速で引き金を何度も引き、的確に人間で言うところの心臓や肺などに命中させていく。パンパンと渇いた発砲音が鳴るたびに数を減らしていくネズミ機械型グレムリンも、やられっぱなしは心外だと言わんばかりにジャスティスに襲いかかる。
「ナハハ!」
ジャスティスは攻撃をいなしてはトリガーを引き続ける。丁寧に冷酷に機械のように、まるで作業のように淡々と命を消していく、その姿に助けられているはずのアイビー・ゴールドは恐怖を感じてしまう。
「おい」
「な、なんですの?」
「そこに座りっぱだったら、俺が来た意味ねぇだろ。はやく逃げてくれないか?」
「で、ですが……」
「なんだ? 人々を守る変身ヒロインってのは怪我してるやつを無視してもOKって教えられたのか?」
「っ! あ、あなたって人は言い方が酷すぎますわ!」
「ナハハ。よく言われるよ」
怒鳴り声を上げるアイビー・ゴールドだが、一秒でも早くクリムゾン・スピアーの怪我を処置しなければいけないのは事実であり、反論できないことに情けなくなる。
「そんな顔してるんだ! 雑食だろぅ!?」
腕に噛みついてきたネズミ機械型グレムリンの突き出ている鼻を掴み、『バックルピストル』を口内ににねじ込み弾丸をごちそうする。ジャスティスは『バックルピストル』の左側面に露出している『B.S.F』の画面に表示されている番号をタッチした。
『バックルピストル』をベルトにグリップが上にくる逆さまに取り付け直し、起動レバーともなっているグリップを押し倒す。
ジャスティスの右手に『バックルピストル』と同じデザイン性のショットガン、左手にアサルトライフルが握られた。
「守るのは苦手なんだよ。お前だってそこに居るだけで巻き込まれたくないだろう?」
「……分かりましたわ」
役立たずと、はっきり言われたような悔しさを感じるが、魔力がほとんど無い自分がここに居たところで迷惑であること、クリムゾンをいち早く治療しないと行けないこともあり、アイビー・ゴールドは不満を飲み込んでジャスティスの言い分に大人しく従う。
「アイ……ビー……お……ねがい……七色のと……ころにつれて……って」
「こんな時になに言ってますの!?」
「おねが……い……」
魔法によっての応急処置をしたあとは、すぐにでも病院へと連れて行くつもりだった。しかし、クリムゾンは自分たちが襲われているなら七色たちだって危険が迫っている可能性が高い。そんな時に自分だけ安静にしてて、最悪な結末になったら生きる意味を見いだせなくなってしまうと、アイビー・ゴールドに懇願する。
その気持ちを察してしまったアイビー・ゴールドは、少しだけ悩んで結論を出す。
「……応急処置したあと無理そうなら病院へ直行しますわよ! それとなにが起きたとしても、あなたを嫌う人はわたくしたちの中におりません! それだけは覚えておきなさいですわ!」
「ありが……とう……弁金ちゃ……んはやっぱ……りやさし……い……すき……」
「ああもう、それは七色にだけ言いなさいですわ!」
「仲良しなのは良いことだがな、ほら道作るぞ」
「……ブレイダー・ジャスティス。助けて頂いて感謝しますわ」
嫌悪と恐怖を飲み込んでアイビー・ゴールドは礼を言い、ジャスティスは愉快そうに笑う。
「あいつの前でも、それぐらい素直に可愛げだせよな」
「やかましいですわ! 〈
ジャスティスは回転しながらアサルトライフルを乱射。その隙にアイビー・ゴールドはクリムゾン・スピアーを抱きかかえて飛行魔法を使用。光の翼を広げて空へと飛び立つ。それを撃ち落とそうとするネズミ機械型グレムリンに対して、正義はショットガンによる散弾の雨をぶつける。
「まったくよ。餓鬼の恋沙汰なんて端から見てるだけで充分だってのに、よくもまあ出張らせてくれたもんだ。おかげで28歳は後で天使のお説教を聞かなきゃならねぇ」
体を穴だらけにしながらも、まだ僅かに息が有ったネズミ機械型グレムリンの頭を踏み抜いてトドメを刺す。
「――数だけの正義が、どれほど価値があるか見せてみろよ」
――すべてが終わった後、建設現場は壊滅状態となり、正義の悪名はさらに増えることとなる。
+++
七色は盛大に焦る。生まれたままの姿である灰稲に迫られている現状もそうだが、『B.S.F』をどこかに落としたことがマジで不味いと。
「比恵! 本当に申し訳ないっすけど! 『B.S.F』どっかに落っことしちゃった見たいっす! もしも悪いやつに拾われたら色々とシャレにならないので、ここは一旦穏便に――」
「終わってから一緒に探しますよ」
「終わってからってなにをっす!?」
「セッ○ス」
「言っちゃったっすよ!? はっきり言っちゃったっすよ!!?」
いままではやんわりと言葉を濁してきたのにと、七色は今までとはノリが違う、今回ばかりは
「待ってくれっす。俺たちまだ高校生っすよ!? なにもかも譲っても……いや譲れないっすけど! 避妊無しはヤバいっす!」
「最近は中学生でもするって言いますよ?」
「なんてこと言うっすか!?」
「病院や住む所の手配は弁金がなんとかしてくれるそうですよ? それに、何かあったら遠慮無く頼ってくれって天使さんが言ってくれました」
天使ぃいいいい!! と内心で絶叫する七色。天使がそう言ったのは冗談の類いではあったが、いつマジになっても可笑しくねぇなと何時でも動けるように準備はしていたりする。
外堀埋められすぎて、もはや壁が出来ている七色だったが諦められるかと頭を張り巡らせる。
「本当に素敵な友達がたくさん出来ました。自分はひとりじゃないんですね」
「すんごい素敵な事だけど、せめて服着て言って欲しいっす!」
「みんなで幸せになろうよ」
「笑顔が怖いっす!」
七色はいつもの事ではあるが、これは灰稲、銀毘、粟財、朱福の四人で計画したものであることを知り。つまり、灰稲の独断行動でもなく四人全員が
「……ど、どうしてそこまで?」
「幸太が悪いんですよ。比恵たちを不安にさせるから……」
「黒色に関しては、まじで俺もわかんないっす! だからせめて理由とか原因を突き止めてからでも!」
「そうやっていつも逃げるから」
「それは、学生の身だし四人同時とかは流石にっていつも……」
「そういうことじゃないよ……」
七色は今まで見たことのない灰稲の悲しそうな顔に言葉を詰らせる。
「――分かってますよ。比恵が周りからどんな風に呼ばれるものだって」
「……比恵」
「男から見たら怖くて逃げ出したい“もの”だって……だから幸太は優しいからずっと無理してるんじゃないかって……分かってますよ。だから答えて、幸太は」
七色がまず初めに思ったのはずるいだった。小学校のころからずっと一緒に居たから察してしまう。ここでもし正直な気持ち以外で彼女に向かえば、このまま自分になにもしないでどこかへと行ってしまうと、そして色だけを残したまま、一生自分の前に姿を現さないつもりだと。
「幸太は――私のこと好きですか?」
――灰稲は気付いていた。七色は自分たちのことを大切にはしてくれているが、好意を意味する言葉を口にしたことがないと。だからここ最近常に不安だった。私たちの傍に居てくれるのは単に優しいからだと……昔聞いたおじいちゃんの言葉を実演しているだけじゃないかと。
そんな優しい彼に甘えている自分が、あまりにも恐ろしくて、考えるだけで泣きそうになるほど辛くて灰稲は強い罪悪感を抱きながら粟財の計画に乗った。七色と一緒になる幸せな生活を送るのではなく、自分の罪を知って。もしもの時は終わらせるために。
「それはっ……! 灰稲!?」
――ドゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオン!!
七色が苦悩の末、なにかを言いかけた時、外側の壁が爆発。七色は咄嗟に灰稲を庇うために抱きしめる。
「な、ななんっすか!? ってちょごめんっす! せめて毛布着るっす……って比恵!?」
土埃が舞いなにも見えなくなった中、そういえば灰稲全裸だったと、毛布を被せようとするが、そのまえにゆらりと立ち上がり爆発して出来た穴の方へと歩いて行く。
「……〈チェンジリング〉」
灰稲は魔装少女へと変身する。灰色のウェディングドレス姿、その手にはウェディングケーキナイフを持つ。
――比恵は覚悟を誰にも邪魔されたく無かったと怒りに支配される。
「……邪魔をしないでくださいよ」
「……ブレイダー・セブンスはヒーロー」
土煙が収まると、穴の外からこちらを見る人物がいることに気付き、七色はギョッと目を見開く。
「く、黒色の……魔装少女」
「比恵は知らないといけないんですよ……だから」
「セブンスとセブンスガールたちのやりとりは見ていると幸せな気分になる。楽しくなる……でも」
灰色の魔装少女『グレイ・プライド』。黒色の魔装少女『パンチャー・ノワール』は、光が消失した
「これは解釈違いだっ!」
「どこかへ消えて!」
分裂したんだし予定にないもの書いちゃえ←
テストも兼ねてアンケート機能を使ってみたいとおもうのでよろしくです。
※やらかしました、↓「友泉亭」→「優先的」にです。すいませんでした!
七色の章が終わった後に友泉亭に書いて欲しいもの
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ブレイダーいずれかの短編
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