変身ヒロインが守る世界にて十人の変身ヒーローは戦う   作:庫磨鳥

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今回めっちゃ長いです(分けた意味)。そして終わりませんでした()
そんな作品でよろしければ、どうぞ楽しんでください。

テンポを最優先にしているので展開が走り気味になっていると思われますがご了承ください。


【七色】相談に乗って欲しいっす!【緊急】 後編②

ブレイダー・セブンスは、名前の通りなら最終的に七つの色を持つことになる。

 

それは全部魔装少女が持つ色だ。

 

――俺に色は無い。

 

+++

 

「――俺は……比恵は!? ……なっ!?」

 

意識を取り戻した七色は、まずはと比恵の安否を確かめるためにがばりと顔を上げる。すると目の前に、いつもの灰色ではなく黒に染まった花嫁衣装のグレイ・プライドが、ボロボロの姿となって自分を守るように背中を見せて立っていた。

 

「……こう……た……」

「なんで……」

「よかった……めが……さめたんだね」

「比恵っ!? しっかりするっす!」

 

御法度である本名を叫びながら、倒れる彼女を咄嗟に抱きかかえる。魔装はズタズタに切り裂かれており、肌には幾つもの切り傷が付いていた。幸いと言えるものではないが体の傷は浅いものばかりで、命に直接関わるものはないものの満身創痍である事は変わりない。

 

「――自傷することで狂化を緩和するなんて、ほんと人間って頭おかしいね」

「お前は……フェアリー!」

「見たら分かるでしょ? バカだねー」

 

クツツを視認した七色は、続けて気絶する前と見た目が変わっているパンチャー・ノワールに気付く。人形のように立ったまま動かず、目元を隠しているバイザーからは水が滴り落ち続けている。この異常事態に七色は真っ先にクツツを睨み付けた。

 

「比恵たちになにをしたんっすか!?」

「そうやって、フェアリーだからって差別するのはよくないよね? まあクツツがやったんだけど! クツクツクツ! 説明してやるから感謝して死ね!」

 

クツツは先ほどグレイ・プライドに話したパンチャー・ノワールに付いて七色に教える。

 

パンチャー・ノワールという魔装少女は魔力を放出する事が出来ない。そのため本来であれば自分を対象にしか発動できないはずの『固有魔法』である〈ブラックサレナ〉を、とある方法によってパスを繋げてグレイ・プライドにも付与させたとクツツは雑に説明した。

 

「……俺を使ったのかっ!?」

 

七色はクツツの言うパスを繋げる方法は、ブレイダー・セブンスのスキルを利用したものだと言うことに気がついた。

 

「せっかく最初ぼかしたのに、しらける真似すんなよあほー。そうだよ。お前のそのなんなのか分からなくて気持ち悪い力を活用してみたんだ。そしたら大成功。お前を経由して他の魔装少女に〈ブラックサレナ〉を強制発動したんだ」

 

もったいぶって説明してやろうと思ったのに先に答えを言われたとつまらなそうにするクツツ。七色はうざそうに飛ぶフェアリーが行った所業に気付き叫んだ。

 

「その子になにをしたんっすか!?」

 

その計画に大事な要素。パスが繋がるためにはヤンデレと呼ばれるほどの異常なほどの好意をセブンスに向けさせなければならない。この計画が最初から仕組まれたことと言うならば、その好意でさえクツツが干渉していることになる。

 

「クツクツクツ。なにが良いのかちっとも分かんないけど、ブレイダー・セブンスが大好きだって言うからもっとのめり込むようにしたんだよ! 人間って反比例して嫌なことがあれば、好きなものがより好きになるって本当だったんだね! 黒稗天委を通してお前を見るたんびゲロ吐きそうだったけど、だんだんと君しか見なくなる様だけは無様で滑稽で飽きなかったよ!」

「孤立するように誘導したんっすか!? お前がそう仕組んだんっすか!?」

「クツツだけの所為にされてもねー。最終的に恐いだの、キモイだの言って拒絶したのは人間のほうだし? ちょっとクツツが悪いことを言えば、勝手に話を膨らませてお決りにひそひそ話を始めるんだもん! ああ、ほんっとクソみたいな生き物だな! 人間って!」

 

クツツは人間の思考を理解できない気持ち悪いものと思っているが、人間が持つ社会性を理解し、把握し、利用することが得意なフェアリーだった。

 

些細な噂話から真実、完全な嘘に至るまでを利用し、親身なふりして近づいた魔装少女の立場を操作する。そうやって人を蹴落とすものを何とも思っていない子を人望厚くカーストの頂上へと導いたり、逆に正義に満ち溢れて輝いている子や引っ込み思案で陰がある子を、事実が混じった悪い噂を混ぜて孤立させたりもした。

 

人間が苦痛に歪む様子を見る。それがクツツのお腹が満たされる感情であり、特に黒稗のような子を絶望させて落ちるところまで落として、苦痛を味わっている姿が大好物だった。

 

だからこそ、自分の“家畜小屋”に迷い込んだ黒稗天委をクツツは逃さなかった。心に思ってもいない暖かい言葉で信用を勝ち取り、魔装少女へと仕立て上げ、自分の管轄である区画と事務所へと導いて、いつものように孤立させていった。

 

その中で〈ブラックサレナ〉のこと、セブンスのファンであること、そしてなによりも元からセブンスだけを生き甲斐にして生きていることから、クツツは今回の計画を思いついた。

 

「ク、ヒヒヒヒ!! 憎くて憎くてたまらないやつに苦痛を与えて食べる感情()は美味いな! ブレイダー・セブンス!!」

 

心の底から憎悪している存在を時には褒めなければいけない環境は吐き気に見舞われる毎日であったが、その苦労が報われて、今までで最高に美味なる感情を“食べた”クツツは邪悪に笑う。

 

「俺が憎い?」

 

『アーマード』は、これまでに多くのフェアリーたちの行いを妨害、そして暴走するフェアリーを消滅させ(ころし)てきた。だから自由に生きたいフェアリーたちにとっては怨敵であり、平穏に人間と暮らすフェアリーたちからしてもブレイダーは恐怖の対象である。

 

しかし、そんなフェアリーとブレイダーとの関係性とは別にクツツは七色個人に恨みを抱いていた。

 

「せっかく仕込んできた魔装少女を、お前がことあるごとに奪っていったから、クツツは一時飢え死にしかけた!!」

「……おまえまさか!?」

「銀毘麻胡と朱福あずき。もう少しって所でクツツのごはんになるところだったのをお前が台無しにしたんだよ!!」

 

日常会話の中で銀毘と朱福は同じ『協会』の支部に加入していたとは七色は聞いていた。そのさい二人は自分と出会って救われたとは言ってくれたが、辛い思い出は心の奥底でこびり付いているらしく、苦しそうにしていた事を思い出し、冷静であろうとした感情を爆発させる。

 

「ふざけんなよ! マコもあずきもお前の玩具じゃねぇっすよ!」

「勘違いすんなよ。クツツがやっていたのは遊びじゃない畜産だ。むしろお前の方が犯罪だろ! 立派な家畜泥棒だ!」

「人間は家畜じゃねぇ!」

「クツツにとっては豚や牛とおんなじだよ。明日のご飯を食べるために管理するべき命だ。それにクツツたちフェアリーはね。美味しいもののためならなんでもするべきことを人間から学んだんだよ! この最低生物!」

 

他生物を虐げて最後には殺して食べる。人間が行う畜産はフェアリーにとってそう見えていると、七色はニュースの特番かなにかで見たことがあった。確かにクツツの言う人間の、この世界の生物の仕組みがフェアリーに悪い影響を与えたのは事実なのだろう。それはクツツという存在そのものが実証している。

 

「……どんなことを言っても! お前のやったことは許せるものじゃねぇっすよ!」

 

――いいか。悪い妖精の言うことなんざ詭弁でしかねぇ。所詮は違う世界から来た、まったく違う生き物だ。なにを言うにせよ。人間を食い物にしてるやつは、人間の敵である事を忘れるなよ?

 

なんにせよ。七色は比恵たちを傷つけたクツツを許すことなんて出来るはずもなく討ち滅ぼすべき邪悪な存在だと断言する。

 

「クツクツクツ! クツツが知らないとでも思ってるの? 確か『B.S.F』だっけ? 変身するのに大事な道具無いんでしょ? つまり今のお前はそこらの雑魚と一緒というわけだ!」

「どうしてそれをしってるんすか!?」

「この目で確認したのさ! 公園で落としたんでしょ? それを拾った魔装少女がいてね……いまその子どうなってるとおもう? ねぇ? どうなってると思う!?」

「……っ!」

「それに、まさかと思うけど狂化されたのが、そこの汚い灰色の魔装少女だけと思ってる? 今頃どこかで無差別に暴れてるのかな? それともグレムリンに殺されちゃってるかな? なんにせよ! 苦痛を受けていることは絶対だよね!? クッヒッ! クハハハハハハ!!」

 

心の底から嗤うクツツはまさに幸福絶頂の中にいた。七色の情報を常に集めていたクツツはセブンスに黒が発生したことを本人とほぼ同じタイミングで知った。それからセブンスガールに拉致られたことや、それを偶然見ていた黒稗が追っかけていったことも、その瞬間に把握しており、これはチャンスだと計画を前倒しにして実行したのだった。

 

結果は見事大成功。さらに言えば何人かのブレイダーに邪魔される事を想定していたのだが幸運にもショーによって凶悪な第一世代の面子は一手遅れている状態。残りの第二世代も未だに来る気配がないと、クツツは完全に流れをものにしたと狂喜乱舞する。その中で七色が『B.S.F』を落としたことはクツツにとっても想定外で、少しだけ残念だったと思う。

 

クツツはこれまでにない感覚に満たされていた。満腹感に包まれながらも甘美なるものをもっと得たい、言わば食欲の暴走である。こうなったらもっと食べたいとクツツはさらに考える。パンチャー・ノワールに七色を襲わせよう。そしてボコボコにした後、グレイを殺させて泣き叫ぶ七色の目の前で狂化を解除させて、耳元で囁こう、お前が全部悪いんだと。

 

――ああ、それによって生まれる苦痛はどれほどのものだろうか!

 

妄想(匂い)に浸り、クツツの我慢は勝手に現界を迎えた。

 

「嬲り殺しにしてやるよ。君の事を愛するパンチャー・ノワールがね! 〈魔法生成(クリエイト):テンプテーションコール〉」

「う――あ――があぁあああああああああああああ――!」

 

クツツは意識誘導の魔法を発動して七色を敵だと認識させる。しかし、パンチャー・ノワールは狂化に抗って動こうとしない。クツツは面倒くさと思いながらも、魔法の効果を強める。あんまりかけ過ぎると、魔法を解いても、動くものを全て敵と認識するようになるなど致命的な人間不信から戻れなくなるが、クツツにとってはどうでもよかった。

 

「……だめ……こうた、にげて……」

 

グレイ・プライドは七色に今のうちに逃げて欲しいと言う。満身創痍である故に狂化はなりを潜めているが解除されたわけではなく、クツツの思惑次第ではパンチャー・ノワールの様に七色を敵と認識して殺されてもおかしくない。

 

――自分がこんなことをしなければと後悔が募り、好きな人に抱きしめられていることが辛く罪深く、これこそ自分が抱いていた不安そのものじゃないかと涙を流す。

 

「ごめんね……わたしのせいで……ごめんね……」

 

こんなことになるならやっぱり自分はもっと早く彼の傍から離れるべきだったと灰稲は謝り続ける。

 

「――ごめん」

「こうた……?」

 

七色は懺悔する。もしかしたら気付かれているのかもしれない。それでも隠しとおしておきたかったものがあった。

 

「俺はひょっとして、比恵たちを自分を彩らせるための“色”としか見ていなんじゃないかって、ずっと怖かったっす。好きって言えなかったのも、本当にそうだったと気付くかもしれないからって思ってて……」

 

七草幸太もまたセブンスガールに依存している。こんな自分を好いてくれている彼女たちの事は大切に思っているのも本当の気持ちである。

 

ただ彼女たちと違うのは、それが彼女たちと同じ好意であるかどうか区別が付かなかった。だからと七色は考えてしまった。もしかして自分は彼女たちのことを単に“色”として見ているのではないのかと。好きと一言口にすれば、自分が彼女たちをどう思っているのかの答えは出てきただろう。だけど不安の通りに本当に見ていたらと考えると恐ろしかった。

 

だから七色は彼女たちから一歩離れるように努めた。そうすれば彼女たちはむしろその気になって一歩離れた距離を当たり前のように詰めてくる。その繰り返しを続ければ余計な事を考えず関係をズルズルと続けていられるだろうと、彼女たちの好意に甘えることにしたのだ。

 

「バカみたいっすね。そうやってうじうじ悩んでいたら比恵を傷つけて苦しませて……最低なことやらかしたっす……」

「……こうた……やめて」

 

グレイ・プライドは気付く、幸太は自分を守る為に素の体のままで戦うのだと、魔装少女の攻撃は人間を殺さないように出来ている。それはフェアリーでも弄ることの出来ない根底的なシステム。時間を稼げばブレイダーが来てくれると仲間を信じているからこそ、出来た判断でもあった。

 

「やめて……!」

「無理っすよ。だって俺は……比恵が好きなんっすから」

 

ヒーローとしても男としても、ここは踏ん張り時だと七色はグレイ・プライドを優しく寝かせて、前に立った。

 

「ク、ヒヒヒなにしてんだか、やっぱり人間はバカだな!」

 

別に魔装少女が直接殺せなくても、ビルの屋上から突き落とせば死ぬのにと七色の選択は、クツツにとって笑えるギャグにしか見えなかった。七色もそんなことは百も承知である。それでも一秒でも長く生き残り、大切な人をこれ以上傷つけさせないためにと立ち上がったのだ。

 

「いくっすっで!? ……な、なんすかっ!?」

「格好付けているところ悪いけどね~。落とし物を持ってきたよ~。ブレイダー・セブンス」

「え? あ、俺の『B.S.F』!?」

 

突如、七色の後頭部になにか堅いものが激突した。反射的に落ちてきたものをキャッチするとそれは公園のトイレ付近で落としたはずの『B.S.F』だった。どうしてと頭の中身を疑問符で埋めている七色に、頭上から一体のフェアリーが声を掛ける。

 

そのぽっちゃりとしたキングペンギンの姿をしたフェアリーの正体に真っ先に気付いたのは、同じフェアリーであるクツツだった。

 

「あれー? どこのフェアリーかと思ったら、はみ出しものサークルに所属している甘党のモググさんじゃないですか? なにしに来たんだよ老害!」

「そういうお前は『魔装少女協会』に所属するクツツだったか? 随分とお行儀の悪いことをしてるんだね~」

「クツクツクツ! フェアリーの癖にファミニストの真似事ですか? 命は尊いものなんです、だから大切にしましょうって? そんなんだから人間増えすぎるんだ! だからちょっとぐらい消費したほうがいいじゃないか!」

「それはフェアリーが決めていいものじゃないよ~……君でしょ? 改造したグレムリンにモググたちを襲わせたのは?」

「なんのことかな? クツクツクツ」

「鳴き声がまんまそれだったよ~。自分の物には自分の特徴を植え付けるフェアリーにはよくある癖だね~……そうでなくても、グレムリンから感じた魔力の波長がお前と重なる。これは人間で言うところの指紋みたいなものだ。バレないわけがないでしょ?」

「流石は地球にきてから長いだけはあるね! 老害がはやく死ねばいいのに!」

 

現れたモググに、クツツは敵意を見せる。その様子を見た七色は少なくとも敵では無いのは理解した。

 

「ブレイダー・セブンス。固まってる前に変身して欲しいんだけど? それとブレイダー・ナイトからの伝言。シルバー・バレットは俺に任せてくれだって」

「マコは無事なんっすか!?」

「黒化して暴れたのを、ナイトが止めてくれるよ。そこのフェアリーを君がはやめにどうにかしてくれないとだんごも危ないんだ。だからモググはそれを持ってここに来たの」

「……分かったっす!」

 

詳しい事はあと最優先はクツツを倒して彼女たちを救うことだと、七色は『B.S.F』を構え……強く握りしめて粉々に砕いた。

 

「壊すの!?」

 

初見であるモググが七色の変身に驚きのあまり思わず叫んでしまう。元は『B.S.F』であった粉々の破片たちは五色に輝きだし、物理法則など完全に無視して落下せずに七色の腰に集まり回転、ブレイダー・ベルトへと形を変える。そのバックルは無色透明のクリスタルで出来ており、七つの宝玉が中心を円で囲うように埋め込まれている。

 

✴︎(Eins!)

✴︎(Zwei!)
✴︎(Drei!)

 

 

✴︎(Vier!)
✴︎(Fünf!)

 

《hier gehen wir 5 Braut!》

 

それぞれが独立しながらも見事に調和している五重奏が鳴り響き、どこか彼女たちに似ている機械音声がカウントを進めていくたびにバックルの宝玉に色が付き輝いていく。

 

七つの宝玉の内五つが輝きだすと、今はここまでだと男性の機械音声が〆るのを見計らって、七色はブレイダーになるためのお決りのあの言葉を叫んだ。

 

「変身!」

 

《Du ermutigst mich》

 

輝く破片が七色に纏わり付いていき、無色の結晶状のアーマーへと変貌させていく、最後に全身が音楽に合わせて灰→銀→金→朱→黒の順に輝いて無色へと戻り、ブレイダー・セブンスが現界する。

 

セブンスが現れたことで、クツツは震え出し耐えるように言葉を吐き出す。

 

「そんな、変身だなんて……新たな苦痛のはじまりじゃないか!」

 

その声は喜びと悦に溢れていた。

 

《Schwarze Lilie》

《✴︎》

《Umarmung》

 

「スキルが勝手にっ!? ……ぐっ!?」

「どうしたの!?」

「ス、スキルが勝手に発動したっすっ!?」

 

変身してすぐ、セブンスのスキルが勝手に発動。セブンスは形容しがたい痛みが胸を襲い、無色のアーマーが黒に染まっていく。

 

「う、グオオオオオアアアアア!」

「まさか君も!?」

「そりゃそうでしょ! だってコイツの力はパスが繋がった魔装少女の魔法を使えることだ! ボクが生成した魔法は〈ブラックサレナ〉の強制発動。その効果はいまでも生きている! 変身した時点で、こいつの〈ブラックサレナ〉も機動するんだ! クヒッ!? ヒャハハハハハハハハハ!! 新たな苦痛をもっと! もっと食べさせろ!!」

 

元々、クツツはそうやってセブンスも狂化させようとしていた。セブンスとセブンスガールたちが理性を失って暴れる好き合う同士が傷つけ合う様を食事にしようとしていた。しかし七色が『B.S.F』を落としたことにより、その計画がご破算となり、修正を余儀なくされたが、まさかここに来て当初の予定であった光景が見られるようになるなんてと、クツツは嗤う。

 

「お前も、クツツのご飯になれよ!」

 

黒に染まるセブンスは抗う手段を講じる余裕も無く意識を闇に沈めていく――その最中、苦しんでいるパンチャー・ノワールと目が合った気がした。

 

+++

 

小学校一年生。魔装少女ごっこでいつもグレムリン役だった黒稗は、我慢できなくて自分も魔装少女をやりたいと言った。そしたら当時よく遊んでいたクラスメイトの女子が私の髪を指さして悪気もなく言った言葉を今でもずっと覚えている。

 

――黒髪なのに魔装少女になれるわけないでしょ!

 

誰が決めたのか魔装少女には、好まれない色というものが幾つか存在する。その中で黒は筆頭で黒色の髪を持って生まれたら魔装少女になることはまず諦めた方がいいとネットでもテレビでも、言いたい放題にされる。

 

それが日常の格差というものにも影響が出ており、なにかして遊べばいつも悪役、イジメの対象にもなり、同性異性関わらずブスや不細工、髪を隠して生きたほうがいい。なんなら顔も隠して生きろと笑いながら言われるのが黒稗の日常だった。

 

だが、黒稗はこのときはまだ好きだったアニメの影響もあって、むしろ彼女は劣悪とも言える環境をバネにして必死に努力した。勉強も毎日ちゃんとして自ら上の学年の勉強も始めた。親に頼んで武術の習い事に欠かさず通い。そして、いくつかの武術の大会などで成績を残し中学校に進学したころには自信に満ちあふれ強い子になったと意気込み。自分を虐めてきたやつらを見返すために魔装少女になってやろうと黒稗は笑って『魔装少女協会』の門を叩いた。

 

頑張れば報われるから頑張る。好きだったアニメの主人公の決め台詞の通りに、黒稗は報われる時が来たんだとこのとき信じて疑わなかった。

 

魔装少女になる方法は、フェアリーから抽出した精神因子を、言わば魂と呼ばれる精神の核に注入することによって変身するための魔法〈チェンジリング〉を発現させるといったものだ。

 

フェアリーの生涯において抽出できる精神因子の数は個体ごとに定められている。だから、フェアリーは厳しく人間の少女達を選び抜く、回数制限が存在する自分の生涯に関わる“夢”と呼ぶべきものを少しでもよくするために、だから黒稗は選ばれなかった。

 

――黒はお断り! 怖い! きもい! 平気でフェアリーを殺しそう!!

――千歩譲って君を黒色の魔装少女にしたとしても魔力量は少なすぎるし、魔力を外に出せないのは将来性がなさすぎるね。

――諦めたら? 才能無いよ。

 

黒稗は特別魔装少女になりたいわけではなかった。でも、そうやって生まれながら持ち得ていたものによって、純粋な拒絶をされるというのは心を歪ませて、全てを投げ出す理由には十分だった。

 

どうして自分は黒なのだろうか? 黒髪黒目で生まれただけでこんな目に合わないと行けないのだろうか? なんで赤や青、黄の髪色ってだけで彼女たちは人気者なのだろう? 生まれで全てが決まるというなら……私はなんのために生まれてきたの?

 

親に相談したら諦めて別の道に進めばいいと優しく言ってくれた。でもその違う道もまた黒色によって辛い目に合うのが怖くて怖くて溜まらなく、新たな不安と恐怖を植え付けられただけで終わった。

 

――死にたいな。

 

数ヶ月前ついに耐えられなくなった黒稗は、どこか手頃に屋上へに行けそうな高いビルを探して都会の中を歩いていた。

 

全てに諦めが付くとむしろ視界が広がることを知る。恐らく生存本能かなにかが生きがいを見つけるためにそうするのかもしれない。足取りは軽く、スキップを踏む。らんらん気分となりこのまま帰ってもいいかもしれないと一瞬だけ思ったが、家に戻ったら最後、二度と天国も地獄も行けず苦痛しかない現実から一生逃げだせない気がした。

 

グレムリンの警報が鳴り響く、これは運がいいと避難を開始する人たちとは反対方向に進んでいった。グレムリンに殺されたら、国から家族に見舞金が出ると何かしらで知識を得ていた黒稗はせめてここまで育ててくれたお礼がしたいなと考えて皆とは反対方向へと進んでいく。その足取りはどこまでも軽かった。

 

――本当に偶々だった。グレムリンが現れて、私と同じ不人気な色であるはずの灰色の魔装少女がピンチになっていて、そうして次に現れた無色のヒーローに黒稗は全てを奪われた。

 

変身したてのブレイダー・セブンスは弱かった。透明なままの彼は普通の人間と大差無く、グレムリンにいいようにやられてしまい結局最後は助けたはずの灰色の魔装少女によって助け返されていた。

 

――大丈夫っすか?

 

それでも、灰色の魔装少女を守る為に何度も起き上がって、戦いが終わった後、ボロボロになった自分よりも魔装少女を心配する姿は間違いなくヒーローで黒稗は一目惚れも合わさって完全な虜となった。

 

だから、彼の手を握る魔装少女を羨んだ、妬んだ。そして望んだ。――ああ、私もそこに、また頑張ればあの灰色の魔装少女のように……。

 

「……それからセブンスをずっと追っかけながら、必死に魔装少女になるために行動を再開したの。その中でクツツと出会って、私は魔装少女になることが出来た。クツツが管理する拠点でも黒色であることが原因で散々な目にあったけど、セブンスを見ているだけで全部どうでもよくなって頑張る事が出来たの」

 

気がつけば黒稗は高い所へと立っていた。ビルか崖か分からないが先に道が無くて、地上は遠く、空に近い。そんな場所。黒稗は背後にいる人物に話しかける。正体は分からないが、何故だから後ろに居てくれるというだけで心が安らいだ。

 

「セブンスが魔装少女と仲良くしているところをみると幸せになれた。彼女たちのようにセブンスなら私を当然の様に受け入れてくれて私のヒーローになってくれるって信じられたから。だから終わらないラブコメ漫画のようにセブンスの傍には魔装少女が増えていって、頑張りながら順番さえ待っていればセブンスの傍に寄って笑える日が来るって考えるだけで幸せだった」

「……」

「別に夢のままでよかった。たとえずっとひとりぼっちだったとしても、セブンスを見るだけで頑張れば報われるって信じられることが出来たから……だから、終わって欲しくなかったの」

「……それが俺たちに会いに来た理由なんすね」

「……このまま放っておいたら最終回になる気がして、生き甲斐が終わってしまうかもってなったら我武者羅だった。自分でもどうしてあそこまで理性を失ったのか分からないけど、あのままただ眺めているだけは出来なかった」

 

そう理由を口にした黒稗だったが、すぐさま首を横に振って自分の言葉を否定する。

 

「……ううん、違う、本当は分かってるの。あのとき私が抱いたのは、もっとずるいもので……私は……ただ死にたくないと思っただけなんだ」

 

もしもの話。今日からセブンスたちのあり方が変わってしまい。自分が受け入れられずに日々が過ぎたら、今度こそ黒稗は死を選ぶだろう。

 

「愛する人に置いてかれたら、今度こそ生きていけないよ……」

 

黒稗天委にとってセブンスは愛する存在であり夢であり目標であり生きる理由、つまり全てなのだ。好きだった魔法少女アニメも殆ど忘れてしまい興味すら持てなく、友達も居なければ、家族も頼ることはおろか、自分を好いてくれる他人を信用しきる事が出来なかった。

 

自分を慕ってくれている“らしい”桃川暖子。彼女に自分を頼ってくれと口にしたのはひとえにロールプレイのようなものだった。セブンスガールの一人になるなら、優しくて強くて頼れる魔装少女じゃないと、そういった考えがあって弱い彼女を面倒を見ることで満たされようとしていた。そんな風に接していく日々を重ねると桃川は黒稗のことを心から尊敬するようになるが、黒稗は日に日に心の中では黒の魔装少女だって馬鹿にしているかもしれないと猜疑心を強めていった。

 

なにかが違う気がすると頭の片隅でナニカが訴えていたが、それを拾い上げる方法を黒稗は知らず。クツツなどを含む周辺の環境が違和感を解消することを許さなかった。そしてグレイ・プライドを守る為に割り込んだセブンスに、己の拳が当たった瞬間気付いてしまう。自分がどれほど愚かで救いようのない人間だったかを。

 

「知らないうちに私は心まで真っ黒になっちゃったよ」

 

黒稗は、その場で蹲って啜り泣く。

 

「……どうすれば……よかったの?」

「どうして欲しかったんすか?」

 

その問いに黒稗は涙を流しながら、全ての根本となった願いを初めて吐き出す。

 

「私は……助けて欲しかった。助けて欲しかったの! 誰かに! 私のヒーローに!! こんな辛い日々から手を握って引っ張って欲しかったの!」

 

でも、もう無理だ。取り返しの付かないことをしてしまった。泣きだす黒稗に背後の人物は、そっと近づいて後ろから抱きしめた。

 

「……言ってくれっす」

「…………いいの?」

 

返事はせず代わりに抱きしめながら、そっと頭に手を置いた。黒稗は振り向く、そして自分が愛するヒーローに求めた。

 

「――――――たすけて」

 

+++

 

「――幸太!」

 

――名前を呼ばれたと、悲痛の叫びを聞いたと、そして助けてと言われたと、ならやるべきことはひとつだと! バックルの宝玉が輝きだす。

 

《Graue Ehe》

 

セブンスに初めて変身してから色が付いていた灰色の宝玉が輝き出す。それはグレイ・プライドとの繋がりを示すものであり、彼女の〈固有魔法〉である〈マリッジマジック〉を使用する事が出来る証である。

 

《Silber kugel》

《Goldenes Band》

《Zinnoberroter Speer》

《Umarmung》《Umarmung》《Umarmung》《Umarmung》

 

《Sei vorbereitet!》

《Eid Schwägerin!》

《Nimm die Bräute in die Hand!》

 

《✴︎》《✴︎》《✴︎》《✴︎》《✴︎》

 

《Fluchen!》

 

セブンスの全身に金色の(リボン)が駆け巡り。黒のアーマーに同化する。続いて左腕に銀と黒が混じり合った腕と同じぐらいの機械的な筒が設置され、その中に黒と朱色の槍が装填されパイルバンカーと呼ばれる武器となる。またアーマーも追加されていき、ひとまわり大きくなる。

 

「ウォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!」

 

セブンスは雄叫びをあげる。それは先ほどとは違う苦痛によるものではなく理性があるゆえの活を入れるものであった。

 

「……俺は本当に果報者っすね」

「は? なに……は?」

 

理性を失わず、明らかに強化された姿となって堂々と立つセブンスに、クツツは頭の中を疑問符で埋め尽くされる。

 

「おまえ……狂化はどうしたんだよ!? 答えろよ!?」

「俺はどうしようもねぇ男っす! でも比恵が、マコが、弁金が、あずきが、そして黒稗天委が、俺の事を好きだって言ってくれる人が五人もいるっす! みんなが居るから俺はお前の思い通りにならない!」

「答えになってないんだよ。ばかやろう!! もう良いよ! ほらはやく殺し合えよほら!! 動けってああもう!! なんで動かないんだよ!!」

「……せぶん……す……」

 

クツツはパンチャー・ノワールと戦わせようとするが、涙を流しながらずっと立ち止まったままに動かなくなり、さらには理性が戻り始めているとクツツは苛立ちのあまり翼で頭をかきむり深いため息を吐いた。

 

「――もういいや。よく考えたらお腹いっぱいだし? もうお前達なんてしらないね! さっさと死ねよ! 〈魔法生成(クリエイト):チェンジコール〉」

「あ、逃げるなっす!?」

 

クツツは魔法を発動し、その場から一瞬で居なくなる。そして入れ替わるように改造されたグレムリンが一体現れた。以前桃色の前に現れたリザードマン型グレムリン。それを改造し全身を機械の体に作り替えられて、巨大化させたその姿はもはや人型の恐竜である。

 

「……比恵、それに天委。待っててくれっす。すぐに終わらせるっす!」

 

――GYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!

――ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!

 

互いに雄叫びをあげながら突進していき、相手に向かって拳を前に出した。

 

+++

 

238:天使

ああもう! 状況どうなってるのさ!?

僕はどこへ向かえばいいの!?

 

239:騎士

すまん天使。心配かけた。

銀が黒くなったとおもえば理性を失って襲ってきて対処してた。

 

240:天使

騎士! 無事でよかったよ!

ていうかそれマ!?

 

241:騎士

マ。

といっても落ち着き始めて理性が戻ってきているかな? 黒のままだから異常はまだ続いているみたいだけど。

それと桃ちゃんが……は無事で、モググに七色の『B.S.F』を届けてくれるように頼んだ。

 

242:天使

なんか立て続けに色々と起こりすぎじゃない?

黒になるってガチの精神汚染だよねー……。

 

243:騎士

確かセブンスに新しく追加された色って黒だったじゃん?

絶対関係してるだろ。

天使。とにかく合流して七色のところに向かおう。

 

244:天使

そのために今自動車追い抜く速さでチャリ漕いでるよ!!

ちなみにこれは音声入力だよ!!

こうやって肉体労働するとわかるけどブレイダーってほんっと凄いね!

疲れてはいるけど!! 後衛回復役に肉体労働はしんどいよ!!!

 

245:正義

叫んでるせいか「!」がいつもより多いな。ナハハ

しかし、やっぱりそっちでも同じ現象が起きてんのか。

 

246:騎士

正義先輩!?

 

247:天使

こんちくしょー正義!! 勝手にいなくなってこのやろー!!

同じ現象ってどういうことだよべらぼうめい!!

 

248:騎士

天使落ち着いて?

 

249:正義

ナハハ。悪かったよ。

んでだ。金と朱が黒色になってた。そんでまさか見送った矢先近くで縛られて転がってるとは思わなかったぜ。ナハハ

 

250:天使

金と朱も黒になってたの!?

 

251:騎士

縛られて転がってるって何ですかね?

 

252:天使

ちょっとー! ひどいことしたんじゃないでしょうねー!

 

253:正義

俺がどうこうする前に、自分でやったみたいだぜ?

話を聞けば突然魔装が黒に染まりはじめ、理性が失っていく感覚に襲われたらしく、これはまずいなと金が自分の魔法で自分と朱を縛り上げたらしい。色の汚染は止められなかったが、おかげで理性は失わずに済んだみたいだな。

賢く決断が早いのは金持ちの特徴なんかね?

 

254:天使

縛り上げたって『ゴールデン・リボン』を使ったってこと?

 

255:正義

ああ。しっかし亀見てえな縛り方して随分と変態だなぁ? いったい誰に使うのを想定して練習したのかね? ナハハ

 

256:騎士

やめてあげてください。

と、とにかくこの黒化現象は金の『固有魔法』で封じられるって事ですね。

 

257:正義

魔法自体は発動し続けているみたいだな。リボンが解かれるとバーサーカーになるみてぇだ。もっともその感覚が少し薄まってきたみたいだが。

 

258:騎士

銀の方もそう感じられますが効力が弱まっている? 

 

259:正義

まっ。七色が何かやったのかね?

どうも俺たちは手遅れになったみたいだぜ? ナハハ

 

260:天使

何が悔しいって、言い方悪いのがいつものことすぎて、いい意味で手遅れって言ったのがわかるってことだよねっ!

七色の方で解決したのかな!?

 

261:騎士

いや黒化はそのままだから、まだ何かが起きている最中だとは思うよ。

急いで七色の元へ向かおう。

 

262:天使

わかったよ……持ってくれよ僕のあしぃ!

坂道なんてなんのそのー! 明日ベッドから起き上がれないなこれぇ!

 

263:正義

まっ、いい運動ってやつだな。

 

それとだ金と朱のやつが七色のところ行きてぇってうるせぇから。俺もそっちに合流するぜ。

もっとも目的地に付く頃には全部終わってそうな気がするがな。

 

264:騎士

銀もそう言ってます。本当なら安静にして欲しいところですけど、流石に無理とはいえませんね。

というか、正義先輩の方は二人居ますよね? どうやって移動を?

 

265:正義

こいつらが無理言ってるんだ。米俵扱いしても文句はねぇだろう、ナハハ。

朱の奴動かすたびに締め付けが強くなるって喜んでるぜ。ナハハ。

 

266:騎士

ほんとやめてあげてください

 

 

 




初登場から、数ページ分で新フォームとはたまげたなぁ←

次話で七色の章は完結の予定です。

終わったらですが活動報告にて少しだけ作品の事や、今後の執筆活動、そしてちょっとだけ作者について語らせていただきたいと思うので、よろしければその時は、そちらも見て頂けたら幸いです。

↓活動報告
https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=250874&uid=109810
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