原作女の子主人公(ミヅキ)がアニポケ世界のスクールに入学して自分の夢を探す話   作:きなかぼちゃん

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13.ここからだね、わたしたち

「「「「「イワンコが傷だらけで帰ってきた~?」」」」」

「そうなんだよ……なんかバトルでもしてきたみたいでさあ」

 

 朝、ポケモンスクール。

 朝礼がはじまる前に、サトシの机をクラスメイトみんなが囲んでいた。いわく、昨晩ククイ博士の家で飼われているイワンコが傷だらけで家に帰ってきたらしく、サトシにもさっぱり原因がわからないのでみんなに相談していたのだった。

 

「なあ、ミヅキはどう思う?」

「あ~~~~うん。そうだね……」

「こりゃダメだね」

「完全に筋肉痛だな」

 

 マーマネとカキが肩をすくめた。

 

 そのミヅキはというと、ぽつんと自分の席でつっ伏して軟体動物のように脱力している。テンカラットヒルからポケモンセンターまで走り回り、1日遅れの筋肉痛で全身がはちゃめちゃに痛いのだった。

 教室に入ってくる時もまるで壊れたロボットのようにぎこちない動きだったので、ついさっきもみんなに怪訝な視線を向けられたばかりである。

 

(グラジオ……あのやろう……)

 

 ミヅキは筋肉痛も全部グラジオのせいにすることにした。次に会った時にどんな文句を言ってやろうかとたった今も考えている。なにせ愚痴ろうとしてもグラジオとの約束で話すことができないのだから、このくらい安いものだろうとミヅキは思った。

 

 ミヅキはマオほど思いやりがあるわけではないし、リーリエほど優しくないけれどそれなりに律儀な女だった。

 

「ミヅキ……そんな筋肉痛になるほど運動してきたのですか? 体力をつけるのはいいことですけれど、いきなり体を動かしすぎるのも良くないと聞きますよ」

「ヒェェ仰せの通りで……ちょっとテンカラットヒルに散歩を……」

「テンカラットヒル?」

 

 ミヅキが答えると、サトシは首を傾げて復唱した。するとスイレンが意外そうな声をあげる。

 

「えっ、知らないの? サトシ……」

「うん、知らない!」

 

 サトシはいつも自身満々だ。知らないことをこうもはっきり言えるのはある意味才能かもしれない。とクラスのみんなは思っている。

 

「ククイ博士の家の裏にある山のことだよ。テンカラットヒルって。釣りの穴場があるから、わたしもたまに行ってる」

「え、そうだったのか?」

「アハハ、一番近くに住んでるのに知らないってのが、なんかサトシっぽいっていうかね……」

「なんならわたしん家より近いのにね~……あああ全身が痛いいい……やばたにえん……」

 

 ミヅキは延々と悶絶している。サトシとミヅキの家は近所だ。ミヅキは割とよく砂浜でバトルの練習をしているサトシとポケモンたちを見かけることがある。

 

「ミヅキ……あんまり痛いなら保健室連れていこうか?」

「うーん、たぶん、だいじょうぶ……」

 

 さすがに筋肉痛くらいで保健室に行くのははずかしい。マオの優しさが身に染みたが、ミヅキは気合いで今日は耐えることにした。子供らしいよくわからない意地の張り方だった。

 

「まあ、それならいいけど。でもあんまりひどいようならちゃんと言ってね?」

「りょーかい……」

 

 耐えると言っても、机に突っ伏しているのは相変わらずだ。みんなはそれを見て呆れ顔で苦笑いした。

 

「あはは……あ、そういえば。テンカラットヒルってスクールの周りの森にはいないポケモンがいるみたいですね。ほら……じめんタイプやいわタイプ!」

「いわタイプか……イワンコってもしかして、ククイ博士がテンカラットヒルで捕まえてきたポケモンだったりしてな」

 

 イワンコはいわタイプだ。リーリエが言うと、カキが合点がいったふうに呟く。しかしサトシはそれに首を振った。

 

「いや、イワンコは博士のポケモンじゃないんだ……ポケモンフーズをあげたら家まで付いてきたんだってさ」

「じゃあ、居候ってわけ……?」

「手持ちポケモンだとばっかり……」

「あいつククイ博士によく慣れてるからなあ」

「少し前のヤトウモリみたいですね」

 

 みんなが意外そうな顔をする中、マーマネが「あ!」と何かを思いついたふうに声を出した。

 

「もしかしてイワンコ、自分の住んでた場所に帰ったりとかしてたんじゃない?」

「まさかのホームシック……!」

「うーんどうだろ。イワンコ、昨日も特に寂しそうな雰囲気もなかったんだよなあ……ちゃんと家にも帰ってきたしさ」

「そうですね。たしかに論理的結論として、家にちゃんと戻ってくるのであれば家出だとも思えません……」

『サトシとリーリエが言う通り、それはボクも考えづらいロト。イワンコは人によくなつくポケモンとしても知られているロト』

 

 すると説明したがりのロトムがイワンコとルガルガンの図鑑説明を読み上げ始めた。

 

 ミヅキはその説明を流し聞いていた。

 イワンコは鍛えるのが好きなポケモン。進化先は「まひるのすがた」と「まよなかのすがた」の2種類に分かれる。進化に近づくと攻撃的になる。ある日いなくなったと思うと、突然進化した姿で帰ってくる……。

 

 それからは「もしかして進化が近いのかも」とか「怪我の原因は特訓」とか「なんか道で転んだ」とか、色々な説が飛び交い始めたけれど、ホームルームの時間になってククイ博士が教室に入ってきたので、その議論は終わりを告げることになった。

 

 

 

 

「それじゃ今日の授業は終わりだ! みんな、気をつけて帰れよ!」

 

 ククイ博士のいつもの挨拶に、はーい、と元気なみんなの声が重なる。

 

「みんな、また明日なー!!」

「おいサトシ! そんな急いで帰らなくても」

「ククイ博士! オレ先に帰ってイワンコの様子見ておくよ! 行こうぜピカチュウ!」

『ピカピッカァ!』

「まったくあいつは……」

 

 サトシとピカチュウがみんなの挨拶を置き去りにして、あっという間に教室から出て行くと、ククイ博士はこめかみを抑えながらため息をついた。まさか先生が教室を出る前に出ていくとは……。

 

(まあ、思い立ったら10まんばりきなのもサトシらしいといえばそうだな)

 

「アシマリ、わたしたちも帰ろっか」

『アオッ!』

 

 ミヅキが伸びをして立ち上がると、ちょうどスイレンが帰ろうと荷物をしまっているところだった。

 

「あ、スイレンも帰る?」

「うん。ミヅキも用事ないなら一緒に帰ろ! 筋肉痛は大丈夫?」

「おっけーおっけー! 朝はヤバかったけど、だいぶ慣れて痛みも減ってきたよ。ええとサトシは……そうだ、もういないか」

「うん、まさにでんこうせっか。サトシ」

 

 筋肉痛の痛みもそれなりに引いてきて、ミヅキはなんとか普通通りに動けるようになっている。せっかくなのでミヅキは帰り道が同じ3人で帰ろうと思ったけれど、サトシが神速の勢いで先に帰ってしまったので苦笑いした。

 

 

 

 

 ミヅキとスイレン、ヤトウモリとアシマリは見慣れた通学路を歩いている。小さな崖の下に広がる海は、太陽の光を反射していつも通りキラキラと輝いていた。

 

 いつもならヤトウモリはミヅキの肩に乗ってくるのだけれど、今日は筋肉痛もあり気を遣っているらしい。

 

 リリィタウンへつながる脇道を通り過ぎると、あとはミヅキとスイレンの家のようなぽつんと建つ家しかないので、昼間でも人通りはほぼない。先に帰ったであろうサトシの姿も見えない。

 

「サトシ走って帰ったのかなあ。同じ道のはずなのに全然見えないね」

「たぶんそう! トレーニングっていいながら、ピカチュウと一緒に走ってそう」

「だよね~。で、カバンの中でモクローは寝てると」

 

 想像して、ふふ、と2人して笑う。そのシーンがありありと頭の中で想像できる。

 

「サトシってポケモンのことになると行動力すごいよね。今日だってイワンコが気になりすぎて帰っちゃったでしょ」

「うんうん、でもいつもスクールに来るのはギリギリ」

「それがさあ、毎日バトルの朝練してるからみたい。わたしよく見るよ。朝練しない日もよくアシマリのバルーン作りの練習手伝ってるんだよね? ほんと体力すごいわ……」

 

 ミヅキから見てサトシは完全に体力おばけだ。スポーツでもやればものすごい選手になれるかもしれない。

 

「うん。わたし、いつかぜったいにバルーンで海底を散歩できるようになるんだ。それには練習だけじゃなくて、これからはバトルも頑張ろうって。ね、アシマリ!」

『アオッ!』

 

 バトルを頑張る。スイレンの意外な一言にミヅキは思わず声をあげる。

 

「えっ、スイレンもバトルするの?」

「うん。ポケモンとの絆を深めるには、ポケモンバトルも必要なんだって思った。そう思わせてくれたのはミヅキとサトシのおかげ」

「えっ?」

 

 スイレンは微笑みながらミヅキとヤトウモリを交互に見た。

 

「この前、ミヅキとサトシがバトルしたでしょ? あのバトル、ほんとうにすごかった! 初めてのバトルで、ヤトウモリもゲットしてないのに、それでも2人は息ぴったりだったもん」

「うーん、どうかなあ……あの時はわたしもただ必死だったから」

 

 あのバトルは、今考えてもどこか熱に浮かされていたような気がしていた。ヤトウモリのパートナーになりたい。ヤトウモリの考えていることを理解して、一緒に暮らしていきたい。ミヅキはそれだけを思っていた。今ではヤトウモリと気持ちが通じ合っていると思うけれど、バトルでの息が合っていたかどうかは、自分ではよくわかっていない。

 

「バトルもあまりしなかったから知らなかった。こんな風にポケモンと繋がる方法があるんだって。一生懸命やるバトルって、こんなに楽しいんだって。見てるだけでそう思わせてくれたの。ミヅキとサトシが。だから……わたしも、バトル頑張る! それでアシマリともっと色んな経験をして、夢を叶える!」

 

 スイレンのやる気はみなぎっていた。それを自分のおかげと言われると、ミヅキはなんとも照れくさい気持ちになった。それでも、ほんの少しだけ誇らしい気分になるのは許されるだろうか?

 

「だから、わたしもミヅキとバトルしたい。一緒に強くなろ!」

「……うん。わたしも! これから一緒にたくさんバトルしようね!」

 

 スイレンとミヅキがそう言って笑いあうと、勢いよくその間にヤトウモリが飛び出してきた。ミヅキはもしやと思った。ヤトウモリの顔は待ってましたと言わんばかりだ。

 

『シュウウ!』

「ええ、今からやる気なのあんた……ここ道端だし、明日スクールでバトルするとかでもいいんじゃない? ねえスイレン」

「ううん、ミヅキ。わたしはいいよ! 今日は予定ないから。いいよねアシマリ!」

『アオッ!』

 

 スイレンとアシマリもやる気だった。ミヅキは普通に家に帰るつもりだったので、展開の速さにややたじろぎながら答える。

 

「そ、そお? じゃあバトルしよっか」

『シュウッ!』

 

 ヤトウモリは嬉しそうだった。ミヅキは何となく思う。パートナーのこういう顔を見られるなら突然のバトルも楽しくなれる。どうせこんな道でバトルしていたって、誰も通ることはないだろうし。

 

 

 

 

 ヤトウモリとアシマリのバトルは持久戦になった。相性の悪いヤトウモリがスモッグでどく状態を狙いつつひっかくで攪乱しながら、アシマリがはたくでそれを受け流してはバブルこうせんで攻撃するという削り合いである。最終的にどく状態になったアシマリと、弱点を突かれたヤトウモリは共にギリギリの体力で耐えていた。

 

 

 

 

「ヤトウモリ! ひっかく!」

「アシマリ! はたく!」

 

 ミヅキとスイレンは集中しすぎてもう汗だくだ。お互いの最後の指示が響く。

 

『シュウウゥ!!』

『アオオオッ!!』

 

 ガンッ! と炸裂音。正面から突撃し、お互いのわざがぶつかりあう。数秒の鍔迫り合いの後、その衝撃で2匹は吹き飛ばされた。

 

 勝敗付かず、お互いに目を回してのダブルノックダウンだった。ミヅキとスイレンは2匹のもとへ駆けよる。

 

「ありゃー、ヤトウモリ、アシマリ、大丈夫……?」

「ふたりともお疲れ様。頑張ったね……!」

『シュウ……』

『アオ……』

 

 ヤトウモリとアシマリも完全にのびていた。ミヅキはカバンの中からモモンのみとオボンのみを取り出すと、スイレンに渡した。

 

「スイレン、これ食べさせてあげて」

「ありがとうミヅキ! いつもきのみまで準備してるの?」

「ああ、ヤトウモリがきのみ好きっていうのもあるんだけど……どくタイプだからね。バトルで相手をどく状態にしちゃったときとか考えると、持ってた方がいいかなって。オボンのみはヤトウモリのおやつだけど」

「優しいね、ミヅキは」

「そうかなあ」

 

 モモンのみにはどく状態を回復させる効果がある。

 

 どくタイプは人によってはあまり印象の良いタイプではない。それはどく状態がポケモンに大きな負担を強いる状態異常だからだ。ミヅキはヤトウモリをバトルさせる中でなんとなくそれを察していたので、常にどくを回復させる手段を持ち歩くことにしている。

 

『シュ! シュウゥ!』

 

 アシマリが横で勢いよくモモンのみを食べているのを見てヤトウモリはご立腹だった。自分にもないのかよと拗ねている。

 

「だいじょーぶだって! あんたにもあげるから。ほら、オボンのみ」

『シュッ』

 

 ミヅキの手からオボンの実を引ったくると、ヤトウモリはもりもりと食べ始めた。あまり機嫌がよろしくない。

 

「ヤトウモリ、機嫌悪い……?」

『アオ?』

 

 スイレンとアシマリは首をかしげている。ただミヅキにはその原因はおおよそわかっていたので肩をすくめた。

 

「あー……たぶん勝てなかったのが悔しいんだと思う。ヤトウモリ、バトル好きだから。ほーらー、そんな機嫌悪くしてないでさ。これからずーっとバトルする仲なんだから、仲良くしなよ。アシマリと」

 

 言われて、ヤトウモリは同じくきのみを食べているアシマリをちらりと見た。アシマリは澄んだ目でヤトウモリを見返した。ヤトウモリは何かを言おうとしてはもじもじとしている。

 

「バトルが終わったら健闘をたたえ合う、でしょ?」

「うんうん」

 

 ミヅキとスイレンが優しいまなざしで見つめていると、やがて2匹は小さな手で握手をした。そこには、確かにバトルした同士にしか生まれない友情のようなものがあった。

 

「ミヅキ」

「えっ?」

「わたしたちも! 握手!」

 

 スイレンが満足そうな笑みを浮かべて、ミヅキに手を伸ばしていた。ミヅキもそれに答えて、トレーナー同士も健闘をたたえ合う。

 

「ここからだね、わたしたち!」

「うん!」

 

 ミヅキは思った。これから何十回、何百回とスイレンとバトルすることになるのかもしれない。そんな未来を思い描くと、胸が高鳴る。こんな日常が、これからもずっと続いていけばいいと……。

 

 

 

 

 バトルを終えて少し休憩したあと、ミヅキとスイレンは再び帰路についた。そしてちょうどスイレンの家の前にさしかかった時だった。

 

 スイレンは何かを思い出したかのようにミヅキに向き直った。

 

「あ、そういえばミヅキ。テンカラットヒル行ったなら見たでしょ? あれ!」

「あれ……? あー! うん、中腹からでもハウオリの景色が全部見えてすごかったよ!」

 

 あれ、がよくわからなかったのでミヅキはそう答えたけれど、スイレンはしまったという風な顔をする。お互い違うものを想像していたらしい。

 

「あー……それもたしかに、なんだけど……。テンカラットヒルの頂上にすごい綺麗な湖があるんだ。わたしが言いたかったのはそれ」

「へえ〜、わたしまだ頂上まで行ったことないからそれは知らなかったかも……あ、それがさっき言ってた釣りの穴場!」

 

 ミヅキはピンときて両手をぱんっと叩いた。するとスイレンはいたずらっぽい笑みを浮かべる。

 

「うん! ルギアだって釣れちゃうよ!」

「えっ!?」

「えへへ、ウソです☆」

「ズコー」

『シュウー』

 

 ミヅキはこけた。ヤトウモリもこけた。ノリがよかった。スイレンはわりと人をからかうのが好きだ。

 

「テンカラットヒルの湖はね、ブルーホールっていうものすごく澄んでて深い湖なの。だから空の色を反射して青くなってるんだって! 見たらミヅキも絶対好きになる!」

「空色の湖かあ……見てみたいかも!」

 

 スイレンの熱の入った説明にミヅキはときめいた。都会じゃ絶対に見られない景色なのだろうと思う。

 

「それじゃあ次のお休み、一緒に行こうよ! 釣り竿も貸すから」

「え、いいの?」

「うん! ミヅキが見たことないポケモンもたくさんいるからきっと楽しいよ。ミヅキ、アローラには慣れてきたけど、まだ知らない場所もたくさんあるでしょ? だからアローラの綺麗なところ、もっと案内したいと思ってた」

「スイレン……」

 

 ミヅキはスイレンの笑顔を見てはっとした。自分が思うより、わたしはクラスのみんなから想われているのかもしれない。スイレンは普段はどことなくつかみ所のない性格をしているけれど、時には人をぐいぐい引っ張っていく面倒見の良さがある。マオ、リーリエ、カキ、マーマネ、サトシ……みんなそれぞれ、自分にはない優しさを持っている。

 

「……ありがとう! 楽しみにしてるね」

「うん! どーんと楽しみにしてて!」

 

 スイレンは胸を張ってそういった。スケッチブックを忘れないようにしよう。ミヅキは週末の予定にわくわくしながらそう思った。

 




【後書き】
我スイレン大好き侍と申す……。
というかサンムーンに出てくる人みんな好き!友情!努力!勝利!
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