原作女の子主人公(ミヅキ)がアニポケ世界のスクールに入学して自分の夢を探す話   作:きなかぼちゃん

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【前回のあらすじ】
1.サトシとイワンコがいわおとしの練習をする
2.ミヅキがスイレンにからかわれていじける
3.ハラサンによくわからない話をされて、謎のポケモンを釣りあげる


15.影の王国

 ミヅキとスイレンはつり上げた謎のポケモン(どうみても魚ではない)を見ながら目を丸くしていた。

 

「なにこのポケモン」

「もしかして、フワンテ……?」

 

 スイレンが首をかしげながら呟く。心当たりがあるらしい。

 

「知ってるの?」

「うん、みたことある。スクールで他のクラスの子が連れてたの。でも、おどろき……水の中からゴーストタイプ」

「え、ゴーストタイプなの!?」

「うん、ゴースト・ひこうタイプだったはず。でも、なんで水の中から……?」

『ふーわー』

 

 疑問をよそにフワンテはルアーをぺっとはき出すと、その場で浮かびながらくるくると回転して身体の水分を落としている。とくにバトルを挑んでくる様子もなく、人前なのにのんきにリラックスしていた。

 

「野生のポケモン……だよね?」

「たぶん? でも、野生なのにすごいのんきなポケモンだね……」

『ふわわ?』

 

 フワンテが何か気づいたようにミヅキを見た。正確にはその頭にあるニットキャップを。

 

『ふわ! ふわっふわ!』

「え、ちょっとなに!?」

 

 フワンテは機嫌良さそうに浮かび上がりミヅキの頭に着地した。そしてニット帽を奪い取ると、細長い腕でそれを持ってふわふわ飛び去ってしまう。

 

「アー! 私の帽子! まってよー! ああもうヤトウモリ、ひの……」

『シュウウ!』

「待ってミヅキ! ひのこじゃ帽子が燃えちゃうよ!」

「あっそうだった! どうしよう!?」

 

 するとスイレンの瞳がきらりと光った。

 

「わたしにまかせて! アシマリ! フワンテにバブルこうせん!」

『アウ!』

「あーそうだ! ほのおタイプじゃなきゃいいんだから……ヤトウモリもスモッグ!」

 

 アシマリとヤトウモリの攻撃がゆっくり飛び去っていくフワンテに向かい、直撃すると思われた。そのとき、強い風が吹いた。フワンテが勢いよく回転して風を起こし、ふたりの攻撃をそらしたのだ。

 

『ふーわー!!』

「か、かぜおこしで防がれちゃった!」

 

 ミヅキはびっくりした。煙幕攻撃のスモッグはともかく、バブルこうせんまでかぜおこしで防がれるとは思わない。

 

「アシマリ、もう一度バブルこうせん!」 

『アウッ!』

 

 スイレンはめげなかった。再びバブルこうせんがフワンテに迫る。するとフワンテはまがまがしい闇色の球体をつくり出した。それはバブルこうせんを貫きなおも迫り、みんなはそれをすんでの所で避けた。

 

「うわああ! シャドーボール!?」

「の、のんきなくせにつよい……」

『アオォ……』

 

 このままだと帽子を取られたまま逃げられてしまう。ミヅキはだめ元で聞くことにした。

 

「ねえヤトウモリ、ほのおタイプとノーマルタイプ以外にフワンテに通じそうなワザってある……?」

『シュウウ』

 

 ヤトウモリは普通に頷いた。マジかよ。ヤトウモリにはまさかの4つ目のワザが存在したらしい。

 

「あるんかい! じゃあそれで攻撃!」

『シュウッ!』

 

 ヤトウモリの口から紫色の液体が飛び出す。それはさながらどくタイプのみずでっぽうのようにも見えた。しかし体力がありあまっているフワンテはそれをひらりと避ける。

 

「うぐぐ……ゆっくりなのに避けるのうまいわけ? わたしの帽子……」

「ミヅキ、まず状態異常にして動き止めよう! アシマリがおとりになる!」

「わかったっ」

 

 ミヅキとスイレンは頷き合った。そして行動を開始する。

 

「おねがいアシマリ、ゼンリョクでバブルこうせん!」

『アウ!』

『ふわわんわ』

 

 バブルこうせんとシャドーボールがぶつかりあって爆発する。その隙に、フワンテの背後に音もなくヤトウモリが迫った。

 

「今ならかぜおこしはできないでしょ! ヤトウモリ、スモッグ!」

『シュアッ!』

『ふわ!?』

 

 フワンテにスモッグが直撃した。みるみるうちにフワンテの表情が青くなり、動きが悪くなる。狙い通りどく状態にすることができた。

 

「ヤトウモリそのままたたみかけて! えーと、例のあの攻撃!」

 

 わざ名がわからなかったのでミヅキは適当に命令した。それでもヤトウモリはしっかり紫色のみずでっぽうらしきわざを放ち、フワンテに直撃した。

 

 そのまま吹き飛んだフワンテと帽子は力なく湖に落下していく。

 

「あ、やば」

「だいじょうぶ! アシマリ! フワンテと帽子にバルーン!」

『アウッ!』

 

 アシマリがバルーンを射出してしっかりフワンテと帽子を捕獲した。まだ人や大きなポケモンをバルーンの中に入れることはできないけれど、短時間のあいだなら小さなポケモンを封じ込めることはできる。

 

「スイレン、さっすが! もう小さなポケモンならバルーンに入れられるね」

「えへへ……練習した。ね、アシマリ」

『アゥ!』

 

 スイレンは照れくさそうに笑った。つられてミヅキも笑った。

 

 

 

 

 こうしてミヅキは帽子を取り戻した。

 

 フワンテにモモンのみを食べさせて解毒すると、いつの間にかミヅキの頭の上で寝ていた。もしかすると、ニット帽のふわふわした感触が好きで持って行こうとしたのかもしれない。

 

「うーん、頭の上で寝られるとこそばゆい……」

 

 ミヅキは釣りを再開している。でも頭の上の違和感のおかげでなんとも落ち着かない気分だった。そんなミヅキにスイレンが耳打ちする。

 

「ねえミヅキ、ゲットしてみようよ。その子」

「えっ?」

「ミヅキの帽子気に入ってるみたいだし、また取られる前に逆にゲットしちゃお。先手必勝!」

 

 スイレンがいたずらっぽく言う。今は眠っているけれど、目覚めたらまたさっきみたいにバトルしなきゃいけないかもしれない。一理あった。

 

「うーん……たぶん目が覚めたらまた帽子欲しがるもんね……試しにやってみようか」

 

 ミヅキはカバンからモンスターボールを取り出すと、おっかなびっくりしながらフワンテに押し当てた。すると寝ていたフワンテはするりとボールに入った。

 

 キュインキュインキュイン、カチッ。

 

 ボールからそんな音がした。ゲットの合図だった。

 

「えっ……ほんとにゲットしちゃった……」

「あっさり……」

 

 2人して目を丸くする。ミヅキはもちろん、スイレンもここまで簡単にゲットできるとは思っていなかった。アシマリとヤトウモリもびっくりしていた。

 

 こうして、よくわからないうちにミヅキの仲間にフワンテが加わることになった。

 

 

 

 

「それはたぶんベノムショックね」

「ベノムショック?」

 

 夜、スイレンと一日中遊び倒し、家に帰ったミヅキは母親のミキと一緒に夕食を食べていた。今日新しく使ったヤトウモリのわざの名前がなんなのか聞くと、思いのほかすぐに答えが返ってきて手が止まる。

 

「そ、ベノムショックは相手がどく状態の時に使うと威力が上がるわざ! たぶん倒したとき、フワンテはどく状態だったんでしょ?」

「あ! うん、たしかそうだった。つまりベノムショックを使うときは、相手をスモッグでどく状態にしてからのほうがいいってことかあ」

「そういうこと! ミヅキもポケモントレーナーっぽくなってきたわね」

 

 ミキは嬉しそうにはにかんだ。ポケモントレーナーとして娘が成長していることが楽しいのだ。

 

『ふわわんわ』

『シュ! シュウウ!』

 

 リビングではヤトウモリとフワンテが一緒に遊んでいた。空中でふわふわ浮かんでいるフワンテを捕まえようとヤトウモリは頑張っているけれど、フワンテはひらりひらりと避けながらなかなか捕まってくれない。

 

「ヤトウモリがからかわれてる……」

 

 ミヅキは物珍しそうに目を丸くした。いつも肩に乗られてヤトウモリの乗り物扱いなので、こうしてパートナーがやられる側にいるのが新鮮だった。

 

「ウェヒヒ、あんたも来たか……こっち側へ」

『シャアッ!』

 

 茶化されたヤトウモリが不服そうな顔でミヅキを見た。ミヅキはニヤケながら生暖かい視線を送っていて、ニャースは相変わらず定位置のクッションの上で寝ていた。

 

「それにしてもうちも賑やかになったわね〜。お母さん嬉しいわ」

 

 ミキはそんなやり取りを見ながら機嫌良さそうに笑う。ミヅキはふと思い出した。

 

「そういえばママ。この前、夜にテンカラットヒルに行った時、なんで普通に行くの許してくれたの?」

「いつもなら許してくれないのに、って?」

「うん、危ないって言って反対してた気がして。そうでしょ?」

「それはね……ミヅキ、あんたがポケモントレーナーになったからよ」

「あっ……」

 

 ミヅキはなんとなく察した。ポケモンがいれば、色んな所に行けると思っていたのは自分自身だ。

 

「ポケモンが一緒にいるから安全っていうのもあるけど、人とポケモンは一緒に暮らして、冒険をして……そして絆を深め合うもの。あたしもミヅキくらいの歳のころは、毎日色んなところに行ってポケモンバトルばかりしてたわ」

「えっ、ニャースといっしょに?」

「もちろん! あたしも昔はニャースと旅をしてたんだから」

 

 えっ、とミヅキは目を丸くした。ミキが旅をしていたなんて聞いたこともなかった。そして視線を移して寝ているニャースを見た。

 

 自由気ままで、家にもいたりいなかったり。それでも「そのうち帰ってくるわよ」とミキは慌てることもない。そして言う通り、いつの間にか家に帰ってきて寝ている。ニャースはそんなポケモンだった。

 

(ママとニャースもパートナー同士、それだけ信頼しあってるってことかな)

 

「ママも旅してたなんて、しらなかった……」

「そりゃ言ってないもの。ミヅキは今までそれほどポケモントレーナーに興味なかったでしょう? だから私、ミヅキがポケモンに興味を持ってくれてるのが嬉しいのよ」

 

 ミヅキははっとする。心当たりはあった。たしかにそうだ。ママはカントーでもわたしをスクールに通わせていたし、直接は言わなかったけれど、わたしにもポケモントレーナーになってほしかったのかもしれない。

 

「だから、ミヅキ。あんたもヤトウモリやフワンテと一緒にいろんなところに冒険してみなさい。それがきっと、かけがえのない財産になるから」

「財産……?」

「そう。でも今はまだ、あんたが毎日を楽しいと思ってくれるだけで十分! それが一番嬉しいわ」

 

 ハラさんも同じようなことを言っていた気がする。きょとんとしたミヅキの顔を見て、ミキの瞳が少しだけ揺れた。

 

「私ね、このアローラに来て最初はすごく心配してた。環境を変えて、もしかしたらミヅキにすごく無理させてるかもしれないって。でも、よかった。あんたにもたくさんの友達ができて、ヤトウモリやフワンテと出会って……ね、ミヅキ。今、楽しい?」

「うん! わたし、今すっごく楽しいよ! アローラに来てよかったって思う!」

 

 ミヅキはにっこりと笑ってそう答えた。すると声が大きかったのか、ヤトウモリがミヅキの右肩に乗っかってきて、フワンテはご丁寧に帽子をミヅキに被せたあと頭の上に座り始めた。

 

『シュゥゥ』

『ふわんわ』

「ヴォエッ、フワンテはともかく……ヤトウモリあんた相変わらず重い……」

 

 ヤトウモリ(4.8kg)を肩に乗せてしぶい顔をしているミヅキを見ながら、ミキはくすくすと微笑んだ。きっとこのアローラの海と大地は娘にかけがえのないものを与えてくれる。今も、きっとこの先も。

 

「ヤトウモリ、フワンテ。これからもミヅキと仲良くしてあげてね」

「えー! これどう見ても虐げられてるんですけどっ!?」

 

 賑やかになった家で、今日も夜が更けていく。

 

 

 

 

 夜。リリィタウン、ハラの館。

 その応接間で、ハラとジュンサーが難しい顔をして話し合いをしている。

 

「ジュンサーさん。本日テンカラットヒルまで見回りにいってきましたが……あなたの報告通り、ゴーストタイプのポケモンが増えていましたぞ」

「しまキング、調査いただき感謝します。やはりそうでしたか…….」

「私も噂では耳にしていましたが、テンカラットヒルの生態が少しづつ変化しているというのは本当だったのですな」

「ええ、登山者からいくつかそういった報告がありまして。昼間にもかかわらずゴースやムウマに出会うことが多くなったと」

 

 ゴーストタイプは基本的に墓場や廃墟、暗闇を好むポケモンだ。スナバァやガラガラのように砂浜や火山帯に住むポケモンもいるが、それでも少数派である。

 

「しかし、なぜでしょう? 人為的なものでしょうか?」

 

 ジュンサーの問いに、ハラは首を横に振った。

 

「いいえ、一通り見て回りましたが、特に人の手が入った違和感はありませんでしたな。ポケモンスクールの子供たちが遊びに来てはいましたが、その程度の話。いつも通り、静かで美しい山でしたぞ」

「そうですか……」

 

 ジュンサーは安心したような、それでも不安がぬぐいきれないような微妙な表情をした。ゴーストタイプの大量発生は殺人や行方不明など、なにかしらの事件性をともなうことも多いので警戒せざるを得ない。

 

「ジュンサーさん、あなたは《かがやきさま》をご存じですかな?」

「え? ええ……子供のころ歴史の授業で教えられましたが、アローラ創造神話に語られる伝説のポケモンですよね?」

 

 唐突にハラは話を変えた。その意図がわからず、ジュンサーは戸惑いがちに答えた。

 

「その通りです。アローラはかつて、かがやきさまがもたらした光によって今のような自然の恵みに満ちた世界になったと言われていますな。しかし……それより前にも、確かに人とポケモンによる文明が存在していたという説があります。闇に包まれた影の王国が」

 

 光をもたらし、今現在に繋がるアローラを作り出したと言われるかがやきさまの伝承。それ以前に存在したと言われるアローラの古代王朝についての資料は殆ど残っていない。かろうじて、そのようなものがあった、と推測できる程度のものだ。

 

「えっ、そうなのですか? それは知りませんでした……」

「でしょうな。本当にあるかどうかもあやふやなものですから、いまだ公式の歴史としては認められておりません。ですが……私はそういったロマンを信じてしまうタチでしてな! ははは」

 

 闇と星に彩られた影の王国。名も失われたその王朝は、歴史研究家の間ではそう呼ばれている。光がなかったその頃のアローラは、ゴーストタイプのポケモンが今よりずっと多かったとも。

 

「え、ハラさん。つまり……今回のゴーストタイプの大量発生はその、過去の文明が関係しているということでしょうか?」

「それはわかりません。ですが、自然の変化は時に人の手にはあまるもの。大いなる流れに人は逆らえません。今回の件も、そういったものなのかもしれませんな」

「はあ……」

 

 ジュンサーはよくわからないといったふうに返事をした。

 

 カプ・コケコに命じられ、長年しまキングとして任を帯びてきたハラはシャーマンとしても名高い。特にアローラの自然と共に生きるという意識を強く持っている。ゆえに、ときにはハウオリのような都会で暮らす只人には理解できないことを言うこともある。

 

(うーん、そろそろ帰りたくなってきちゃったわ)

 

 ジュンサー本人は現実的な事件性を考えていたのに、ハラから飛び出したのはやたらとスピリチュアルな言葉だ。まあ、しまキングが人為的なものではないというのなら、きっとそうなんだろう。

 

 残業疲れも重なり心の中でため息をついて、ジュンサーは今日も仕事終わりに一杯引っかけることを決意した。

 




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