原作女の子主人公(ミヅキ)がアニポケ世界のスクールに入学して自分の夢を探す話   作:きなかぼ

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サトシがニャビーの世話をしている時のほかのみんなの話
読まなくても特に問題はないかもしれない



18.今はまだそれでいいと思う

「このところずっと雨だなー……」

「そうだねぇ……」

 

 放課後の教室の中でカキとミヅキがげんなりした顔で呟いた。これだけ雨が降っていると放課後に遊ぼうとかいう気も起きない。

 

 初夏のアローラ地方は梅雨に突入している。異様な湿気でただいるだけで服はべたつき気持ちが悪い。

 

「んー、残念ながら天気予報によるとここ1週間はずっと雨! 残念だったね、カキもミヅキも!」

『モキュキュ!』

「マジか……ハァー……」

 

 ホログラム・パソコンを起動して今週の天気を検索したマーマネが意地悪そうに言うと、カキはへろへろと机に突っ伏してそのまま伸びてしまった。ミヅキはそれを見て珍しいなあと目を丸くする。

 

「さすがのカキもこれだけ雨続くと元気なくなっちゃうって感じ?」

「いや、俺自身のことじゃないんだ。こうも長くミルタンクたちを放牧できないとストレスが溜まってな……そうするとミルクの質も落ちるし、だから梅雨は嫌なんだよなあ……」

「ああ~そういう……」

「ん~、毎年カキの牧場のミルク配達して貰ってるけど、梅雨時にそんな質が落ちてると思ったことないけどねえ」

 

 マオが首をかしげながらそんなことを言う。アイナ食堂に限らずカキの牧場のミルクを採用している店はたくさんあるし、マオも他の店からそんな話を聞いたことはなかった。

 

「マオ……そう言って貰えるのはうれしいがな、生産者にしかわからないこともあるんだよ。できるだけ完璧なものを届けたいっていつも思ってるからな」

 

 そう言ってカキは難しい顔をした。俗に言う職人の苦悩というやつかもしれない。

 

「それにしてもこれだけ毎日雨降ってると帰るのもしんどい」

「うんうん。ハァー、リーリエが車で帰るのがうらやましいよボク」

 

 マーマネとミヅキはため息をつきながら空になった席を見た。教室にいるのはカキとマオ、マーマネとミヅキの4人だけだ。

 

 リーリエは毎日車で送迎なので帰る時間が決まっている。スイレンはクラスの中では唯一雨の日になると元気になるので、梅雨時は授業が終わると雨の日にしか釣れないポケモンを求めて出かけていくのだった。

 

「サトシは最近どうしちゃったんだろうねえ」

 

 マオはここ数日みんなが思っている疑問を代弁した。サトシはここのところ授業が終わるとすぐに帰ってしまうことが多い。理由を聞いても「ちょっと用事あってさ」とはぐらかされるばかりだ。ククイ博士も今はそっと見守ってやってほしいと言うばかりだった。

 

「ククイ博士も心配してないみたいだし、そんなヘンなことしてるわけじゃないと思うけどねえ」

「でもなんか気になる……」

「だよねー! 授業中も心ここにあらずって感じだし、あんな真面目っぽい感じなのも珍しいし」

「ま、サトシにだって言いたくないことだってあるだろうさ。あまり詮索してやるなよ」

「ボクもなんとなくわかるよ。サトシはホントに困ってたらボクたちに言うだろうし。そうじゃないってことは1人でやりたいことがあるってコト!」

「そういうもんなの?」

「ああ、あれはそういう顔だからな」

「ふーん……?」

 

 マオとミヅキは気になっていたが、それをカキとマーマネがさりげなく止めた。男子にしかわからない何かがあるらしい。女子ふたりは首を傾げた。

 

 

 

 

「うーん……」

 

 しとしとと小雨が降る海の上。

 スイレンはラプラスに乗って釣りをしていたが、なんともモヤモヤした気分だった。達人らしくその間にもアタリは沢山かかるものの、気分は晴れない。

 

 つい先日、お嬢様のレインによってからかわれた後(ほぼとばっちりみたいなものだが)、嫌でもスイレンはサトシのことを意識するようになってしまった。ちょっとだけ無意識に気になる男の子、くらいだったのに、あんな風に痴話喧嘩などと言われてしまうとどうしたって自分がサトシのことを「そう思っている」のだと自覚してしまう。

 

「気になるよね。見守っててって言われても……」

 

 授業中にどこか遠くを見つめているサトシの顔と、ククイ博士の「見守ってやってほしい」という言葉がスイレンの脳裏に思い出された。

 

 私は、サトシのことが好き、なわけではないと思う。

 でもなんとなく気になる男の子なのだとは思う。

 たぶん、だからこんなふうにモヤモヤしてる。

 まだ、私はその先に踏み込めるほどサトシと仲がいいわけじゃない……。

 

「なんだかな……」

『アゥ』

 

 一緒に乗っているアシマリも元気のなさそうなスイレンを見て心配そうな声をあげた。それを見てスイレンは申し訳ない気持ちになる。別に体調が悪いとかそういう話ではないのだ。

 

「ごめんね。アシマリ、心配させちゃった?」

 

 スイレンはアシマリに出来るだけ明るく笑いかけた。はあ、今日は釣りしててもあまり楽しくないなあ。

 

 空はここ数日ずっと暗い。太陽の光がないと気分もどんよりする。珍しくスイレンは早くこの梅雨が明けないかなと思った。

 

 

 

 

 連日の雨のせいでカキの牧場では手伝いがそこまで必要ないらしい。

 

 ということで今日の放課後、ミヅキはカキを誘ってハウオリシティに来ていた。薄暗いせいで昼にもかかわらず早くも街灯が薄く点灯している。

 

 マオは家の手伝い。マーマネも誘ったけれど雨の中遊ぶのもダルいということで先に家に帰った。どうせマーマネラボとかいう実験室に篭ってるんだろうな、とありありと想像できる。

 

「そーいえばカキと2人で遊びに行くって初めてかも」

「え、そうだったか?」

「うん。だってカキっていつも牧場の手伝い行ってるじゃん。だからこうやって普通に遊ぶの初めてじゃない?」

「そういえばそうか……でも俺もちょうど今日は手伝いがなくてどうしようかと思ってたからな。誘ってくれてありがたいよ」

「ちなみにわたしと一緒に遊びに行くと100%スイーツ屋に連れてくけどいい?」

 

 事後承諾である。ミヅキは食うことしか考えていない。ミヅキ迫真の表情を見てカキは笑った。

 

「え、ここ笑うとこ?」

「ハハッ、すまんすまん! マーマネがさっき同じこと言ってたからさ。ミヅキと遊びに行くと延々とスイーツはしごさせられるってな」

「マーマネェ……それじゃわたしが食いしん坊のデブみたいじゃんか」

「デブはともかく食いしん坊なのは事実だろ」

「カキさあ女の子にそういうこと言うのやめよ?」

「自分で言ったんだろ……」

 

 ミヅキはジト目でカキを見たけれど、ミヅキがスイーツ食いまくり女だということはみんな知ってるのでカキは閉口した。ミヅキの傍で歩いているヤトウモリも閉口した。

 

 バクガメスは街中で外に出すと危ないのでボールの中に入っている(トゲを触ってトラップシェルで事故る可能性がある)。フワンテもボールの中で寝ている。

 

 そうしてしばらく下らない話をしながらたどり着いたのはハウオリのショッピングモールだ。ここにはペロリーム印のマラサダカフェがある。ミヅキは既にリピーターである。今日は大きいマラサダのセール日だった。

 

 ミヅキはモールの入り口でにっこりと笑ってカキに向き直った。

 

「今日はここのマラサダを食べようと思いまーす!」

「構わんがミヅキお前テンション高いな……」

 

 学校ではげんなりしてたのになかなかどうして。ミヅキってスイーツ食べる時こんなにテンション高くなるんだな。カキはまたミヅキの新しい一面を発見したのだった。

 

 

 

 

『きょうもたべよぉ マラサダたべよぉ まだまだ マラサダー♪』

 

 テレビCMでいつも流れているお馴染みのテーマソングが流れる店内のカフェスペース。ミヅキとカキは向かい合っておおきなマラサダを頬張っていた。

 

「これはなかなかいけるな!」

「え、カキ食べたことなかったの? もしゃもしゃ」

『シュウウ』

 

 ミヅキとヤトウモリはもりもりマラサダを頬張りながら意外そうにカキの顔を見た。

 

「ああ、誘われない限りあまりこういうところは来ないからなあ……バクガメスはどうだ?」

『ガメェ!』

 

 隣の床を占拠しておおきなマラサダを美味しそうに食べているバクガメスを見ると、カキは柔らかい笑みを浮かべる。この店のカフェスペースはポケモンと兼用なので特に問題はない。

 

「カキはほんとにバクガメスと仲がいいんだねえ」

「当然だ。俺たちは熱い絆で繋がれたパートナーだからな。お互いに信じ合い、アーカラの大試練も突破してきた。このZリングはそんな俺たちの誇りであり、じいちゃんから受け継いだ魂そのものだ」

 

 カキは手首のZリングに目を落とした。そこにはホノオZが燦然と輝いている。

 

「すごいなあカキとバクガメスは。わたしなんて大試練なんか夢のまた夢って感じ」

「そうか? 俺はそんなことはないと思うけどな」

「えっ?」

 

 ミヅキは目をぱちくりさせた。ストイックなカキのことだから「大試練を舐めるなよ」とかそういう系の言葉が返ってくると思っていたのである。冗談かと思いきや、カキは真面目にそう言っているようだった。

 

「ミヅキとヤトウモリのバトルは俺も見てきた。もちろんまだトレーナーになったばかりだし荒削りなところもある。だがお前たちのバトルは……なんというか、どこか可能性を感じるんだ。このまま鍛錬を積めば大試練に挑むことだってじきにできるはずだ」

「そ、そんな買い被りすぎ! ねえヤトウモリ……って」

『シュウウッ!』

 

 ヤトウモリは鼻息荒くやる気のようだった。カキはその意識の差を見て苦笑する。

 

「……まあ、まずはヤトウモリとお前の意識の差を何とかした方がいいかもな。気持ちはわかるが謙遜するだけじゃ強くはなれない。お互いの力をしっかり信じ合うことだ。もちろんふたりが信頼し合ってるのはわかるけどな」

「お、おう……」

 

それはレインにも言われたことだ。

 

 いきなりの話でミヅキはただぽかんとしている。カキは思った。サトシとのバトルを見た時もそうだったけれも、ミヅキは明らかにバトルの才能がある。しかしそれはまだ無意識に行なっているものに過ぎない。自らの才能を意識してバトルをするようになれば、おそらくもっと強くなっていくだろうと。

 

(俺のライバルなり得るのはスクールではサトシだけだと思っていたんだがな)

 

 カキはくくっと笑う。

 

 サトシがスクールに転校してくるまで、カキはどこかバトルへの情熱を持て余しているところがあった。もはやスクールの同級生ではカキの相手にはならないのだ。だがそこにサトシが現れた。

 

 同年代の好敵手の登場によって、カキの心に再び炎が灯った。

 

 そして今、さらにもう1人の好敵手が生まれようとしている。友達とバトルで競い合えることがカキはただ嬉しかったのだ。

 

「カキ、なんかすごく嬉しそうだけどなんかあった……? あ! マラサダそんなに美味しかったかー! そっかー!」

「いやマラサダはうまいけどな……」

 

 もうそれでいいや。自己完結したミヅキにカキは苦笑いした。そんな様子を見てミヅキはふと思い出したように言う。

 

「そういえば、カキって女の子と2人で遊びに来てもなんとも思わないのね」

「え? そもそも友達と一緒に遊びに行くのはおかしなことじゃないだろ」

「あ〜、そうだね。カキはそういうのあんま興味なさそうだもんね」

 

 ミヅキは思った。カキは女の子よりも鍛錬にしか興味なさそうだな……。

 

「カントーのスクールじゃ男の子と2人で遊びに行こうものならスッゴイからかわれるの確定だからねー」

「からかわれるって何がだ?」

「ほら、この間レインちゃんがサトシとスイレンのこと痴話喧嘩ってからかったじゃん。ああいうやつだよ。男の子と2人でいるだけでひゅーひゅー! 付き合ってるのかよ! ってね」

 

 カントーのスクールは大人数だったので遊ぶにしてもだいたいグループは男女別に別れる。なのでそこから逸脱するとからかわれる。ただこのクラスはそもそも7人しかいないので男女の垣根がほぼない。

 

 カキは呆れたようにため息をついた。

 

「なんだそれは……いくらなんでも子供っぽすぎやしないか? カントーは変わってるんだなあ」

「わたしからしたらカキの方が変わってるけどね……」

「え? どの辺がだ?」

 

 ミヅキは怪訝そうな顔をしているカキを見た。カキの服装は相変わらずズボンに上半身裸である。いつもこれである。

 

「……カントーの街中でその格好してたら間違いなくジュンサーさんが飛んできそうなところ」

「な、なんだとぉー!?」

 

 カキはその理由がわかっていないようだった。慌てる様子を見てただミヅキはくすりと笑った。

 

 

 

 

 おおきなマラサダを完食して満足した2人は帰路についていた。そろそろバイバイしようと思った時、ハウオリ市場のあたりでふらふらと歩いている見慣れた顔があった。

 

「あれ、スイレン?」

「えっ? 今日も釣りに行ったんじゃなかったのか?」

「そのはずなんだけどねえ、もう終わったのかな? おーい、スイレーン!」

 

 ミヅキが大きな声で呼びながら手を振ると、スイレンは気付いたようで近づいてくる。でもどこか浮かない表情をしていてなんとも違和感があった。

 

「ミヅキ、カキもどうしたの? こんな雨の日に」

「さっきまでスイーツ食べに行ってたんだ。スイレンこそどうしたの?」

「うん……ちょっと気分転換。釣りの調子が悪くて」

 

 スイレンはバツが悪そうにそんなことを言うとミヅキとカキは目を見開いた。

 

「スイレンの釣りの調子が!?」

「悪いだと!?」

「え、っと。なんでそんなに驚いてるの? ふたりとも。調子悪い時だってあるよ。わたしだって」

「いやそうなんだけど意外過ぎて」

「ああ、魚が釣れないスイレンなんて見たことないからな」

 

 ミヅキとカキは信じられないようだった。スイレンが釣りをすれば毎回のように入れ食い状態なのでまるで信じられない。

 

「いや、釣れてないわけじゃない。だけど、その……」

 

 スイレンは言い淀んだ。なにか言いにくい理由でもあるんだろうか。ミヅキが口を開こうとすると、スイレンの向こう側のさらに先、遠くに見慣れた赤い帽子を被った人間と黄色いポケモンが見えた。

 

「あれ、サトシとピカチュウじゃない?」

「えっ」

 

 スイレンはつられてミヅキの目線の先を見た。遠目でフルーツ屋のおばちゃんから袋いっぱいのきのみを貰っているサトシとピカチュウがたしかに見えた。

 

「あんなにきのみ持ってどこいくんだろ? おーいサト……もごごご」

「ミヅキよせ! ククイ博士がそっとしておけって言ってたろ?」

「あ、そうだった……ごめん。ってスイレン? どこいくのー!?」

「おい、スイレン!」

 

 カキがミヅキの口を押さえている間に、いつのまにかスイレンはサトシを追って走り出していた。

 

「サトシの様子見に行ったのかな」

「とりあえず追いかけるぞ。スイレンのあの歯切れの悪さも気になるしな」

「いたしかたなし!」

 

 

 

 

 サトシは小走りで水路にかかった橋まで来ると、そのまま降りていき橋の下に入った。そこには捨てられたソファで丸まって眠っているニャビーがいた。

 

 スイレンはバレないように遠くからそれを見ていた。サトシが何を喋っているのかはわからない。ただ、優しげな顔でニャビーに話しかけて、きのみを分けてあげているようだった。

 

(サトシ、ずっとここに来てたのかな)

 

 ニャビーを世話している。ように見える。ククイ博士がこれをそっとしておいてほしいと言った理由はわからない。

 

「あ、いた! スイレンいきなり走り出すからびっくりしちゃったよ」

 

 近くから声をかけられる。声の方を見ると傘をさしたミヅキとカキがいた。どうやら探させてしまったらしく申し訳なくなる。

 

「ごめん……サトシが何してるのか気になっちゃって」

「スイレン、ククイ博士も言ってたろ? サトシのことはそっとしておいてやれって」

「そうだけど……」

 

 スイレンは押し黙って橋の下を見た。そこでミヅキとカキもサトシが何をしているか気づく。

 

「あ、あのニャビーって前にサトシが捕まえたいって言ってた……」

「前に諦めたって言ってたが違ったのか……捕まえるためにニャビーの元へ通ってるのか?」

「わかんないけど、そっとしといたほうがいいんじゃないかな」

 

 ミヅキはなんとなく、あの場所に近づいてはならないような気がした。あそこはサトシとそのポケモンたちだけの世界だ。

 

 サトシはただソファで丸まっているニャビーの前に座り、ピカチュウとイワンコとモクローと一緒に話しかけていた。その表情はただ優しさだけに満ちていた。

 

 やがてスイレンが絞り出すように途切れ途切れに呟いた。

 

「わかんないの。こういう時どうすればいいのか……もちろんそっとしておくのが1番ってわかってるけど……それでも気になるの。こんな気持ちになったことなくて。ヘン、だよね。気持ち悪いよね」

「スイレン……お前……」

 

 カキはそれ以上何も言えなかった。スイレンは泣きそうになっていた。自分の気持ちをどう処理していいのかよくわからないのだ。この気持ちを恋と判断するにはあまりに早すぎる。かといって無関心でいられるほど遠くはない。

 

「スイレン、こっち見て」

「えっ?」

 

 ミヅキは傘を下げてスイレンの両肩に手を置いた。その瞳はただ優しげだった。

 

「そんなことない。スイレンは変じゃない。困ってそうな友達がいたら助けたくなるなんて当たり前じゃん。スイレンはただサトシの力になってあげたかっただけ。それでさ、今回はそんな大ごとじゃないみたいだから、よかったねって。それでいいと思う。明日からいつも通りサトシと接すればいいんだよ。きっと」

「ミヅキ……」

「……俺もミヅキに賛成だ。スイレン、俺は……お前がサトシのことをどう思っているのかはわからん。でも、困ったり苦しんでたりしたら、それがどんな理由でも笑ったりはしない。だって俺たちは、友達だからな」

「ちょっとカキ! わたしめっちゃいいこと言ったのにいい感じに締めないでよー! ずるい!」

「ミヅキお前それ色々と台無しだぞ……」

 

 あんまりな発言にがっくりきているカキにミヅキはぷりぷり怒っていた。そんなふたりを見てスイレンはくすりと笑う。

 

「あは……ミヅキ、カキ、ありがと。そうだよね。わたし、この前から考えすぎてたかも」

 

 痴話喧嘩と言われてからサトシとの距離感を意識しすぎて悩んでしまったのだ、でもカキの言う通り、わたしたちは友達だ。

 

(うん。今はまだ、それでいいと思う)

 

 きっとこの感情がまた変わることもあるのだろう。でも、まだそれは心に秘めておいたままでいい。

 

 遠目でサトシの姿を見ながら、スイレンはただ、そう思った。

 


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