原作女の子主人公(ミヅキ)がアニポケ世界のスクールに入学して自分の夢を探す話   作:きなかぼちゃん

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長くなりそうなので2つに分けることにしました。今回も心配されまくるミヅキchan...はやく明るい話にしてえなあ!


3.ヤトウモリとの出会い(1)

 その日のスクールは朝から騒然としていた。

 

 息を切らしながらミヅキが教室に飛び込んできたと思ったら、腕にはボロボロのポケモンが抱きかかえられていて、ククイ博士はじめみんな慌てたものの、ひとまずみんなで応急処置をした後にポケモンセンターへ運ぶことになった。

 

 そしてポケモンセンターに駆け込んだ後、ミヅキはポケモンセンターの治療室でジョーイさんに処置されるポケモンをガラス越しに見ていた。ボロボロだった肌には包帯がぐるりと沢山巻かれていて、とてもひどい怪我だったのだと改めて思う。

 

 あのポケモンはヤトウモリというらしい。スクールでの治療中にククイ博士とロトムがミヅキに教えてくれた。

 

 成り行きでたまたま見つけて助けたポケモンだけれど、自分からポケモンに対して深く触れ合った経験があまりないミヅキにとっては、あのヤトウモリがどこか自分にとって特別な存在なのではないかと思えて目が離せない。

 

「ミヅキ」

「ククイ博士……」

 

 ミヅキがひたすらヤトウモリの様子を見つめていると、隣からククイ博士が声を掛けてきた。ミヅキはそれ以上何も言えなかった。

 

『ククイ博士!! あの!! この子が怪我してて!! あの、そのっ!!』

『ミヅキ、落ち着くんだ。このポケモンは……ヤトウモリか』

 

 ミヅキは教室に飛び込んだ時の自分がまず何を言っていたのか思い出す。

 まず落ち着けと言われるくらい慌てていて、支離滅裂でよくわからなかっただろう。ほとんどポケモンの世話もしたことがないので、治療もクラスのみんなに任せきりだった。冷静になって考えると自分が恥ずかしい。

 

「ごめんなさい。わたし何していいかわかんなくて慌ててて、何もできなくて……」

「気にするな。ミヅキは今できるだけのことをしたんだ。ところで一つ聞きたいんだが……あのヤトウモリはどこにいたんだ?」

 

 とにかくヤトウモリを治療するのが最優先だったので後回しになってしまったけれど、ひとまず落ち着いた今博士はミヅキに経緯を聞いた。

 

「はい、スクールに行こうと思ったら、家の近くの草むらの近くでぐったりしてて……この辺で見かけないポケモンだったからなんか変だなって思って! それで、どうすればいいかわからなかったから、急いでそのままスクールに連れてきて……」

 

 博士はミヅキからそれを聞くと、何も聞き返すこともなく「そうか、よく頑張ったな」と優しげな顔で言った。ミヅキは張り詰めていた気持ちが一気に緩んで、なんだか少し涙目になってしまった。

 

「ひとまずヤトウモリは大丈夫だ。治療にも、もう少し時間がかかるだろう。だからミヅキもみんなと一緒にスクールに戻れ。ヤトウモリだけじゃない、みんな君のことも心配してる」

「わたしのこと……?」

「ああ、あんなに血相変えたミヅキを見るのは初めてだったからな。みんなびっくりしてたぜ。ヤトウモリのことは心配するな。目を覚ましたらジョーイさんに連絡してくれるように言ってある」

 

 治療されながら眠っているヤトウモリを見る。心配ではあったけれど、博士がそう言うなら大丈夫だろうとミヅキはポケモンセンターのホールに戻った。

 そこにはクラスのみんなが集合していて、一斉にミヅキの方を見た。

 

「ミヅキ、ヤトウモリは大丈夫そうか?」

 

 最初にそう聞いたのはカキだった。あくまで落ち着いた声音で聞いてくれるところにミヅキはカキの思いやりのようなものを感じた。

 

「うん、まだ治療中だけど……ひとまず大丈夫みたい。だからククイ博士もひとまずスクールに戻ろうって」

「そうか……よかったな」

 

 カキは柔らかい笑みを浮かべた。

 

「よかったです……!」

「安心したよ……はぁ、ミヅキが血相変えて飛び込んできた時は何が起きたかと」

「うんうん。ほんとびっくりしちゃったんだから」

 

 リーリエとマーマネとマオが次々にほっとしたような表情でそう呟いた。

 

 そしてミヅキはみんなの顔を見渡した。みんなが自分の顔をほっとしたような、心配したような顔で見つめていた。ククイ博士が言っていたことはその通りなんだろうと思う。ミヅキは力ない顔でできるだけ笑ってお礼を言った。

 

「みんな、ありがとう」

「お礼なんかいい。友達なんだから。それよりミヅキ、元気ない」

 

 スイレンが力強くそう言った。普段はつかみ所がないけれど、こういう有無を言わさない断言するような口調の時のスイレンは凄みがある。

 言われるまでもなくミヅキは自分が落ち込んでいることを自覚している。ククイ博士には慰められたけれど、ポケモンのことをあまり知らなかったゆえに治療がみんな任せになってしまったことを引きずっていた。

 

「あのさ、治療とかみんなに任せっきりで何もできなくて……慌ててるだけでわたしってほんとダメだなって」

「そんなこと……ヤトウモリをミヅキが連れてこなかったらどうなってたかわからないんだぜ?」

『ピカピィ』

 

 サトシとピカチュウがミヅキをフォローするようにそう言った。

 

「そうだよ! わたしもね、悪いやつらに虐められて傷だらけになったアシマリをポケモンセンターに連れて行った時、ミヅキと同じだった。アシマリを心配するだけで何もできないって」

「えっ」

 

 ミヅキは面食らった顔でスイレンを見つめた。スイレンはかつてスカル団に襲われて怪我していたアシマリを連れてポケモンセンターに駆け込んだことを思い出していた。その時のことがきっかけで、スイレンとアシマリはパートナーになったのだ。

 スイレンはあの時に傷ついていたアシマリと、今のヤトウモリを重ねていた。

 

 スイレンはアシマリのことになると見境がなくなる。いつもの控えめなスイレンが嘘のように、一歩前に出てミヅキに訴えるようにして一生懸命喋っている。

 

「でも、そうじゃなかった。アシマリに人を嫌いになって欲しくないって思ったから、わたしそれから一生懸命お世話したの。アシマリが元気になるまで」

「そうだったんだ……」

 

 ミヅキはスイレンの傍らにいるアシマリを見つめた。アシマリは大丈夫というように優しげに一鳴きした。

 

「だから、ヤトウモリが目を覚ました後は側にいてあげて? ヤトウモリがなんで怪我してたのかは分かんない。けどたぶん、それはミヅキにしかできないこと」

 

 怪我が治った後のヤトウモリをフォローするのがミヅキの役割だというように、スイレンはニコリと微笑んでそう言った。

 

「……うん! ありがとう、スイレン」

 

 ミヅキはなんとなくすっと心が軽くなったような気がした。スイレンがこんな風に安心させるように笑ったのを見るのは初めてかもしれない。

 

 

…………

 

 

 みんなでスクールに戻り、今日は予定を変えて普通に座学をするということになった。ククイ博士いわく、元々は別の授業をやるつもりだったけれど予定を変えることにしたようだった。

 

「いい機会だからな。今日はちょっと予定を変えて、ヤトウモリの生態についての授業をしようと思う」

 

『はい! 博士』

 

 みんなの声が重なる。博士はミヅキの方をちらりと見た。表情を見るに暗さはだいぶ無くなり、ある程度元気になっているようで安心する。

 

「じゃあ最初にロトム、ヤトウモリの図鑑説明文を教えてくれるか?」

『任せるロトー! ヤトウモリ。どくトカゲポケモン。火山や 乾いた 岩場に 棲む。甘い 香りの 毒ガスを 放ち むしポケモンを おびき寄せ 襲う』

「ありがとな、スピードスターのように正確な説明だったぜ! さぁ、この説明を聞いてヤトウモリの生息地はどこだと思う? それじゃあ……カキ!」

 

「はい! ヤトウモリはヴェラ火山公園に生息しています」

 

 カキは自身に満ちた表情でそう答えた。それを聞いて博士はニカッと笑った。

 

「正解! 流石カキだな!」

「はい! 毎日ヴェラに祈りを捧げてますから、ヴェラ火山のポケモンは知り尽くしてます!」

 

「カキ、すっげー!」

「そりゃサトシ、ヴェラ火山はカキの地元だし当然でしょ……」

「えーでもすげえよ! オレ全然分かんなかったし!」

 

 マーマネが苦笑いしながら言うものの、サトシはそれでもすごいすごいと言う。割と気軽に友達を褒めるところはサトシの美徳だった。カキはまんざらでもない様子で鼻を掻く。

 

「マーマネったら素直じゃないんだから……」

 

 マオが小さくため息をついた。マーマネは素直に人を褒められなかったり、割と秘密主義なところがあったりして少しひねくれているところがある。ただクラスのみんなは慣れているので特にそれが原因で喧嘩するということはない。

 

「あれ、じゃあなんでヤトウモリはうちの近くにいたんだろ……」

「そういえばそうですね。ミヅキの家はメレメレにありますから」

 

 ミヅキが首をかしげながら呟く。ミヅキの家の近くは平地の草むらばかりだ。岩場というとテンカラットヒルがあるけれど、家からはけっこう距離がある。

 

「お、いい着眼点だぞミヅキ! ポケモンにもそれぞれ性格がある。ミヅキが見つけたヤトウモリは森の近くにいたらしいが……火山や岩場でなく森を好むヤトウモリも存在するということだ。例えばガラル地方のヤトウモリは火山ではなく荒地を好む生態を持っているんだぜ」

 

 ガラル地方。アローラからはかなり遠く、みんなにとってそこまで馴染みのある場所ではない。どんな場所なんだろう。なんてミヅキは考える。

 

「ガラル地方ですか!」

「オレ行ったことないや! リーリエ知ってるの?」

 

 リーリエがわぁっと声を上げる。リーリエはガラル地方について何か知っているようだった。みんなの目線がリーリエに集中した。

 

「ええ、ガラル地方はポケモンバトルが盛んで、トレーナーがポケモンジムに挑戦する時でも大勢のお客さんが見ているスタジアムの中で行うそうですよ!」

 

「えー! すっげえじゃん! 一度行ってみたいな~! な、ピカチュウ!」

『ピカピ!』

 

「サトシ、バトルのことになるとすぐスイッチ入る……」

「サトシらしいね……」

 

 授業とは関係の無いところでテンションの上がるサトシにスイレンとマオが呆れたように突っ込みを入れる。

 

「おいおい、バトルもいいが今は授業に集中してくれよ?」

「あ、へへへ……博士ごめんなさい」

 

 ククイ博士が苦笑すると、サトシは素直に反省した。

 

「さ、授業の続きだが……もちろんロトムが説明してくれた図鑑の説明は正しい。でも時にはそうでない場合もある。ということをみんな覚えておくといい。その一例に『隠れ特性』というものがある」

 

『隠れ特性?』

 

 みんなが首を傾げた。あまり馴染みのない言葉だ。

 

「例えば……ヤトウモリの特性は『ふしょく』と言って、これははがねタイプやどくタイプのポケモンもどく状態にできるという強力な特性だ。しかし、まれにそうではない特性を持って生まれてくるヤトウモリもいる。これを『隠れ特性』と呼ぶんだ」

 

『ボクも知っているロト! でも隠れ特性が確認されているポケモンはまだ一部だけで、どんな隠れ特性があるのか分かっていないポケモンもたくさんいるらしいロト』

 

「生息場所、性格、特性……同じ姿をしていても、実際にはどのポケモンも全く違う特徴を持っている。みんなのパートナーはどうかな?」

 

 博士にそう言われて、クラスのみんなは自分のパートナーポケモンと顔を見合わせた。

 その直後、博士のポケットに入っているスマートフォンが振動した。画面を見るとポケモンセンターからだ。

 

「みんなちょっとごめんな。……はい、ククイです……なんですって!? はい……今すぐ向かいます」

 

 なにやらただならぬ様子にみんなが博士の方を見る。ミヅキはなんとなく嫌な予感がして胸騒ぎがした。

 

「博士……何かあったんですか?」

 

「みんな落ち着いて聞いてくれ、ヤトウモリが……ポケモンセンターから逃げ出したらしい」

 

 

…………

 

 

授業を中断してみんなで急いでポケモンセンターに向かうと、エントランスホールでジョーイさんが出迎えてくれた。

 

「まだ動ける状態じゃなかったはずなんだけど、私とハピナスが目を離した隙に……本当にごめんなさい」

『ハピ……』

 

 ジョーイさんはそう申し訳なさそうに言うと頭を下げた。それを見てククイ博士が慌ててフォローする。みんなも続いて「そんなことないです」と口々に言った。いつもポケモンのことでお世話になっている人が頭を下げているのを見るのはあまりにいたたまれない。

 

「ジョーイさん、頭を上げてください」

「そうだよ、ジョーイさんたちのせいじゃないです」

 

 サトシが力強くそう言う。

 

「ありがとう。でも、今はヤトウモリを探すのが一番。野生のポケモンを治療するとたまにこういうことがあるの。彼らには彼らの世界があるから。人とはできるだけ関わりたくないって、完治してないのに出て行っちゃう子がいるのよ」

「そういえばニャビーもそうだったな……」

 

 サトシはニャビーのことを思い出した。ニャビーが怪我したとき、治療の途中でポケモンセンターから逃げ出して仕方なくサトシが無理矢理家に連れて帰ったことがある。

 

「ヤトウモリ、どこにいっちゃったんだろう……」

 

 マオが心配そうに言う。それを聞いてジョーイさんは少し考えるような素振りをしたが、突然何かを思いついたようにハッとなった。

 

「あ、野生のポケモンなら……! ミヅキちゃん、もしかするとあなたがヤトウモリを助けた場所に戻っているかもしれないわ」

「えっ」

 

 ミヅキは暫くぼうっとしていてジョーイさんの言葉について行けていなかった。何も考えていないわけではない。ただ心配な気持ちが頭をぐるぐる回っていて、混乱していてうまく言葉が出てこなかった。

 

「ミヅキ、大丈夫?」

「あ、う、うん。ヤトウモリを見つけた場所は、えっと……私の家の近くの道。草むらのすぐ近くだったはず」

 

 スイレンがミヅキに声をかけた。それでようやく思考が鮮明になり、ヤトウモリをどこで拾ったか順序立てて思い出した。それを聞くとクラスのみんなはお互い頷いてすぐに行動に移る。

 

「よし、行こう! ミヅキ、案内してくれるか?」

「うん、ついてきて!」

 

 カキが力強くそう言った。早く見つけないと。ミヅキも険しい顔のまま頷いてみせる。

 

「みんな! 俺はオーキド校長に事情を説明してくる。気をつけてな」

「わたしはポケモンセンターで待機しています。みんな、キュワワーを連れて行って。あときずぐすりも。見つけて弱っているようだったらキュワワーと一緒に応急処置をして、ポケモンセンターに連れて帰ってきて! お願いね」

『キュワワ!』

 

「はい、ジョーイさん!」

 

 ミヅキはジョーイさんからきずぐすりが入った薬箱を受け取った。大丈夫、さっき見ていたからやり方は分かっている。不安を押し殺すようにぎゅっと箱を抱きかかえて、ミヅキ達はポケモンセンターを出た。

  

 

…………

 

 

 ジョーイさんの予想通りで、ヤトウモリはすぐに見つかった。ミヅキがヤトウモリを拾った道ばたに、包帯をぐるぐる巻きにした痛々しい姿のままヤトウモリは佇んでいた。朝見たときのように倒れてはいないので様子も大丈夫そうではある。

 

「よかった~、やっぱりここにいたんだ……」

 

 ミヅキはほっと肩の力を抜いた。逃げ出したと聞いたときは不安で胸がドキドキしていたけれど、ようやく張り詰めていた緊張感が和らいできたように思う。

 

「こんなところにいたんだ……ククイ博士が言ってたみたいに、このヤトウモリやっぱり森に住んでたのかなあ」

「…………」

 

 マーマネが顎に指をあてて呟く。マーマネは研究者肌なところがあるので、こういう疑問にはいち早く気づくことがあった。カキはそんなマーマネの言うことを聞いていたが、何か迷っているような、のどに何かがつっかえたような顔で何も言わなかった。

 

「カキ? どうしたの?」

「いや……なんでもない。とにかく見つかって良かったな」

 

 マーマネが難しい顔をしているカキを見る。カキは取り繕うようにしてそう答えた。

 

「? 変なカキ」

 

「ほらヤトウモリ、まだ全然怪我もよくなってないんだからポケモンセンターに帰ろ?」

 

 そう言ってミヅキはヤトウモリに手を伸ばして抱きかかえようとする。その時だった。

 

『シャーッ!』

「痛ッ!?」

 

 一瞬何が起きたかわからなかった。ミヅキは痛みでついヤトウモリを腕の中から逃がしてしまう。抱きかかえた途端にヤトウモリの尻尾で顔をぶん殴られたことに気づいたのは頬がヒリヒリしているのに気づいたからである。

 

 思わず痛みで顔を押さえるミヅキに女子3人が思わず駆けよった。

 

「ミヅキ大丈夫ですか!?」

「う、うん……」

 

 びっくりしたけど。ミヅキはじわじわと痛みの残る顔を前に向けてヤトウモリを見た。ヤトウモリは意地でもここを動かないという風にこちらに向かって威嚇している。

 

「どういうことなの……?」

 

 ミヅキはヤトウモリの薄紫色の瞳を覗き込んだ。キッと射貫くような視線が合わさると、ヤトウモリにとってはここにいることが大事なのだと、なんだかそう言われているような気がした。

 

 

…………

 

 

「どうすればいいんだろう……」

 

 やがて7人は困り果てていた。

 

 クラスのみんなで色々と試してみたが、結果としてヤトウモリはその場所を一歩たりとも動くことはなかった。無理矢理連れて行こうとしても暴れて何度も同じ場所に走り戻ってしまう。

 

 どうにもならないので、とりあえずみんなはその場は持ってきた傷薬とキュワワーのフラワーヒールで体力を回復させることにした。暴れるかと思ったけれど、ヤトウモリは治療だけは大人しく受けてくれるようでその場でじっとしていた。

 

「動かそうとしなければ大人しいんだね」

「うん、そうみたい」

「なんでだろ……」

 

 マオ、ミヅキとスイレンが顔を見合わせながら疑問に思う。ヤトウモリはとにかくここにいなければいけない理由があるみたいだったけれど、人にはポケモンの言葉はわからない。

 

 そして警戒を解かないままミヅキに傷薬を吹きかけられるヤトウモリを見ながら、サトシはヤトウモリをただ見ていた。

 どこか既視感のあるポケモンの行動。サトシはその答えになんとなく心当たりがあった。間違ってた方がいいけど、とも。ただ「何となく」でそういうことを言ってはいけないこともまた知っていた。

 

「うーん……」

『ピカピ……?』

 

 サトシの心の中にはモヤモヤした気分が広がっていた。ピカチュウが何だろうといった風にサトシの顔を見る。

 サトシはふとカキの方を見た。カキもどこか難しそうな顔をしてヤトウモリを見つめていた。カキと視線が合う。それだけでなんとなく2人はどちらも同じ事を考えているということに気づいた。

 

 ククイ博士に相談しよう。そこまで考えが同じだったかは分からないけれど、サトシとカキはお互いにこくりと頷いた。

 

「このままじゃ埒があかない。俺はククイ博士に事情を話して連れてくる。サトシはジョーイさんのところに行ってきてくれないか?」

「ああ、わかったぜ! みんなはここでヤトウモリのこと頼むな! 行くぞピカチュウ、モクロー」

『ピカピ』

『ホロロロ』

 

 皆にそう言ってサトシとカキは元来た道を走り出した。

 

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