ありふれてない研究者(車椅子)が異世界に来ちゃった話《凍結》   作:排他的

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ハジメ

散々、愛子が吠えた後、他の客の目もあるからとVIP席の方へ

案内されたハジメ達。そこで、愛子や園部優花達生徒から

怒涛の質問を投げかけられつつも、ハジメは、目の前の今日限りというニルシッシル(異世界版カレー)。

に夢中で答えをおざなりに返していく。

 

Q、橋から落ちた後、どうしたのか?

A、後で答えます

Q、なぜ白髪なのか

A、後で答えます

Q、その目はどうしたのか

A、後で答えます

Q、なぜ、直ぐに戻らなかったのか

A、後で答えます

 

そこまで聞いて教諭が、「真面目に答えなさい!」

と頬を膨らませて怒る。全く、迫力がないのが物悲しい。

案の定、ハジメには柳に風……というより、飯に夢中といった様子だ。目を合わせることもなく、美味そうに、

時折ユエという子やシアという子と感想を言い合いながら

ニルシッシルに舌鼓を打つ。表情は非常に満足そうである。

 

その様子にキレたのは、愛子専属護衛隊隊長のデビッドだ。

愛する女性が蔑ろにされていることに耐えられなかったのだろう。

拳をテーブルに叩きつけながら大声を上げた。

 

「おい、お前! 愛子が質問しているのだぞ! 真面目に答えろ!」

 

 

 ハジメは、チラリとデビッドを見ると、はぁと溜息を吐いた。

 

「食事中ですよ?行儀よくしないと。」

 

 全く相手にされていないことが丸分かりの物言いに、元々、

神殿騎士にして重要人物の護衛隊長を任されているということから

自然とプライドも高くなっているデビッドは、

我慢ならないと顔を真っ赤にした。そして、

何を言ってものらりくらりとして明確な答えを返さないハジメから矛先を変え、その視線がシアさんに向く。

 

「ふん、行儀だと? その言葉、そっくりそのまま返してやる。

薄汚い獣風情を人間と同じテーブルに着かせるなど、

お前の方が礼儀がなってないな。せめてその醜い耳を

切り落としたらどうだ? 少しは人間らしくなるだろう」

 

侮蔑をたっぷりと含んだ眼で睨まれたシアさんはビクッと体を震わた。ブルックの町では、宿屋での第一印象や、

キャサリンと親しくしていたこと、ハジメの存在もあって、

むしろ友好的な人達が多かったし、フューレンでも蔑む目は

多かったが、奴隷と認識されていたからか直接的な言葉を浴びせかけられる事はなかった。

 

(ハジメから後でこれまでの旅を聞いていた)

 

つまり、ハジメと旅に出てから初めて、亜人族に対する

直接的な差別的言葉の暴力を受けたのである。

有象無象の事など気にしないと割り切ったはずだったが、少し、外の世界に慣れてきていたところへの不意打ちだったので、思いの他ダメージがあった。シュンと顔を俯かせるシアさん。

 

よく見れば、デビッドだけでなく、チェイス達他の騎士達も

同じような目でシアさんを見ている。彼等がいくら教諭達と

親しくなろうと、神殿騎士と近衛騎士である。

聖教教会や国の中枢に近い人間であり、それは取りも直さず、

亜人族に対する差別意識が強いということでもある。

何せ、差別的価値観の発信源は、その聖教教会と国なのだから。

デビッド達が教諭と関わるようになって、それなりに柔軟な思考が

出来るようになったといっても、ほんの数ヶ月程度で変わる程、

根の浅い価値観ではないのである。

 

あんまりと言えばあんまりな物言いに、思わず教諭が注意を

しようとするが、その前に俯くシアさんの手を握ったユエさんが、

絶対零度の視線をデビッドに向ける。最高級ビスクドールのような

美貌の少女に体の芯まで凍りつきそうな冷ややかな眼を向けられて、

デビッドは一瞬たじろぐも、見た目幼さを残す少女に

気圧されたことに逆上する。普段ならここまでキレやすい人間では

ないのだが、思わず言ってしまった言葉に、愛しい教諭からも

非難がましい視線を向けられて軽く我を失っているようだった。

 

「何だ、その眼は? 無礼だぞ! 神の使徒でもないのに、

神殿騎士に逆らうのか!」

 

 思わず立ち上がるデビッドを、副隊長のチェイスは

諌めようとするが、それよりも早く、ユエの言葉が騒然とする場に

やけに明瞭に響き渡った。

 

「……小さい男」

 

 それは嘲りの言葉。たかが種族の違い如きで喚き立て、

少女の視線一つに逆上する器の小ささを嗤う言葉だ。唯でさえ、

怒りで冷静さを失っていたデビッドは、よりによって教諭の前で

男としての器の小ささを嗤われ完全にキレた。

 

「……異教徒め。そこの獣風情と一緒に地獄へ送ってやる」

 

 無表情で静かに呟き、傍らの剣に手をかけるデビッド。

突如現れた修羅場に、生徒達はオロオロし、教諭やチェイス達は

止めようとする。だが、デビッドは周りの声も聞こえない様子で、

遂に鞘から剣を僅かに引き抜いた。

 

 その瞬間、

 

ドパンッ!! ドパンッ!!

 

 乾いた破裂音2つが〝水妖精の宿〟全体に響きわたり、同時に、

今にも飛び出しそうだったデビッドの頭部と肩が弾かれたように

後方へ吹き飛んだ。デビッドは、そのまま背後の壁に凄まじい音を

立てながら後頭部を強打し、白目を向いてズルズルと崩れ落ちる。

手から放り出されたデビッドの剣がカシャン! と派手な音を

立てて床に転がった。

 

 誰もが、今起こった出来事を正しく認識できず硬直する。

視線は、白目を向いて倒れるデビッドに向けられたままだ。

と、そこへ、大きな破裂音に何事かと、フォスがカーテンを

開けて飛び込んできた。そして、目の前の惨状に

目を丸くして硬直する。

 

 代わりに、フォスが入ってきた事で教諭達が我を取り戻した。

デビッドに向けられていた視線は、破裂音の源へと自然に引き寄せられる。

 

 其処には、教諭達にとって知識にはあるが、

実際には見たことのない、異世界にあるはずのない物、

騎士達にとっては完全に未知の物、〝銃〟を座席に座ったまま構えるハジメの姿があった。ドンナーからは白煙が上がっている。一応、撃ったのは非致死性のゴム弾だ。

 

そしてみながしっている、私のバースバスターからも光弾が

出たことから、みなは私が怒ってるのを理解しているだろう。

 

 詳細は分からないが攻撃したのがハジメと私であると察した

騎士達が、一斉に剣に手をかけて殺気を放つ。しかし、直後、騎士達の殺気などとは比べ物にならない凄絶な殺気が、

まるで天から鉄槌となって襲ってきたかのように降り注ぎ、立ち上がりかけた騎士達を強制的に座席に座らせた。

 

 直接、殺気を浴びているわけではないが、ハジメと私から放たれる

桁違いの威圧感に、教諭達も顔を青ざめさせてガクガクと震えている。

 

ハジメは、ドンナーをゴトッとわざとらしく音を立てながら

テーブルの上に置いた。威嚇のためだ。

そして、自分の立ち位置と教諭達に求める立ち位置を明確に宣言する。

 

「僕は、咲人以外いま興味がない。関わりたいとも、

関わって欲しいとも思いません。いちいち、今までの事とか

これからの事を報告するつもりもありません。

ここには仕事に来ただけで、終わればまた旅に出る。

そこでお別れです。あとは互いに不干渉でいきましょう。先生達が、

どこで何をしようと勝手ですが、僕の邪魔だけはしないでください。

今みたいに、敵意をもたれちゃ……つい撃ちそうになる」

 

わかりましたか? そう眼で問いかけるハジメに、

誰も何も言えなかった。直接、視線を向けられたチェイス達騎士は、

かかるプレッシャーに必死に耐えながら、

僅かに頷くので精一杯だった。

 

 ハジメは、続いて教諭達にも視線を転じる。教諭は、何も言わない。いや、言えないのだろう。迸る威圧感のせいだけでなく、

ハジメの言葉を了承してしまったら何も分からぬまま

人を撃った教え子を放置してしまうことになる。

それは、教諭の教師としての矜持が許さなかった。

 

 ハジメは、溜息を吐き肩を竦めると〝威圧〟を解いた。

教諭から返事はなかったが、なんとなくその心情を察したハジメは、

無理に返事を求めなかった。他の生徒達は、

明らかに怯えた様子だったので、敢えて関わっては来ないだろう

と推測したらしい。

 

 凄まじい圧迫感が消え去り、騎士達がドウッと崩れ落ちて

大きく息を吐いた。教諭達も疲れたように椅子に深く座り込む。

ハジメは、何事もなかったように食事を再開しながら、

シュンとしているシアさんに話しかけた。

 

「ねぇ、シアさん、これが〝外〟での普通なんだ。

気にしていたらキリがないよ?」

 

「はぃ、そうですよね……わかってはいるのですけど……やっぱり、人間の方には、この耳は気持ち悪いのでしょうね」

 

 自嘲気味に、自分のウサミミを手で撫でながら苦笑いをする

シアさん。そんなシアさんに、ユエさんが真っ直ぐな瞳で

慰めるように呟く。

 

「……シアのウサミミは可愛い」

「ユエさん……そうでしょうか」

 

 それでも自信なさげなシアさんに、

今度はハジメが若干慌てた様子でフォローを入れる。

ユエさんに「メッ!」されることが多くなってから、

シアさんに対する態度が少しずつ柔らかくなっているハジメの、

精一杯の慰めだ。

 

「あのさ、この人達は教会やら国の上層に洗脳じみた教育

されてるから、忌避感が半端ないだけさ。

兎人族は愛玩奴隷の需要では一番なんだ。それはつまり、

一般的には気持ち悪いとまでは思われてないってことだよ。」

 

「そう……でしょうか……あ、あの、ちなみにハジメさんは……その……どう思いますか……私のウサミミ」

 

 ハジメの言葉が慰めであると察して、少し嬉しそうなシアさんは、

頬を染めながら上目遣いでハジメに尋ねる。

ウサミミは、「聞きたいけど聞きたくない!」というように

ペタリと垂れたまま、時々、ピコピコとハジメの方に耳を向けている。

 

「……別にどうも……」

 

 そんなウサミミをチラリと見たハジメは、何かを誤魔化すように

視線を食事に戻し、ぶっきらぼうに答えた。少し残念そうに

ふにゃりと垂れるウサミミ。しかし、つぐユエさんの言葉に、

一気に元気を取り戻してヒュパ! と立ち上がった。

 

「……ハジメのお気に入り。シアが寝てる時にモフモフしてる」

 

「ユエッ!? それは言わない約束だよね!?」

 

「ハ、ハジメさん……私のウサミミお好きだったんですね……えへへ」

 

 シアさんが赤く染まった頬を両手で押さえイヤンイヤンし、

頭上のウサミミは「わーい!」と喜びを表現する様に

わっさわっさと動く。

 

 ついさっきまで下手をすれば皆殺しにされるのではと

錯覚しそうな緊迫感が漂っていたのに、

今は何故か桃色空間が広がっている不思議に、愛子達も騎士達も

目を白黒させた。しばらく、ハジメ達のラブコメちっくなやり取りを見ていると、男子生徒の一人相川昇がポツリとこぼす。

 

「あれ? 不思議だな。さっきまで南雲のことマジで

怖かったんだけど、今は殺意しか湧いてこないや……」

 

「お前もか。つーか、あの二人、ヤバイくらい可愛いんですけど……

どストライクなんですけど……なのに、目の前にいちゃつかれるとか

拷問なんですけど……」

 

「……南雲の言う通り、何をしていたか何てどうでもいい。

だが、異世界の女の子と仲良くなる術だけは……聞き出したい!

 ……昇! 明人!」

 

「「へっ、地獄に行く時は一緒だぜ、淳史!」」

 

バカじゃねえか!

 

 グツグツと煮えたぎる嫉妬を込めた眼で、

ついさっき自分達を震え上がらせたハジメを睨みながら、

一致団結する愛ちゃん護衛隊の男勢三人。

すっかり、シリアスな雰囲気が吹き飛び、

本来の調子を取り戻し始めた女生徒達が、

そんな男子生徒達に物凄く冷めた目を向けていた。

 

 チェイスが、場の雰囲気が落ち着いたのを悟り、

デビッドの治癒に当たらせる。同時に、警戒心と敵意を押し殺して、

微笑と共にハジメに問い掛けた。

ハジメの事情はともかく、

どうしても聞かなければならない事があったのだ。

 

「南雲君でいいでしょうか? 先程は、隊長が失礼しました。何分、我々は愛子さんの護衛を務めておりますから、愛子さんに関することになると少々神経が過敏になってしまうのです。どうか、お許し願いたい」

 

 ハジメは、神経過敏になっていきなり人殺し? 

とツッコミを入れたくなったらしいが、人殺しについては、

ハジメも大きなことは言えないので黙って手をヒラヒラと振るに

止めた。そのおざなりな態度に、チェイスの眉が一瞬ピクッとなるが、微笑というポーカーフェイスは崩れない。

そして、頭の回転が早いチェイスの見立てでは到底放置できない、

目の前のアーティファクトらしき物に目を向けハジメに切り込んだ。

 

「そのアーティファクト……でしょうか。

寡聞にして存じないのですが、相当強力な物とお見受けします。

弓より早く強力にもかかわらず、魔法のように詠唱も陣も必要ない。

一体、何処で手に入れたのでしょう?」

 

 微笑んでいるが、目は笑っていないチェイス。

先ほどのやり取りで、魔力が使われたような気配がないことから、

弓のように純粋な物理な機構が用いられているなら

量産が可能かもしれないと考える。

そして、そうなれば、戦争の行く末すら左右しかねないため、

自分達が束になってもハジメには敵わないかもしれないとは

思いつつも、聞かずにはいられなかったのだ。

 

 ハジメが、チラリとチェイスを見る。

そして、何かを言おうとして、興奮した声に遮られた。

クラス男子の玉井淳史だ。

 

「そ、そうだよ、南雲。それ銃だろ!? 何で、そんなもん持ってんだよ!」

 

 玉井の叫びにチェイスが反応する。

 

「銃? 玉井は、あれが何か知っているのですか?」

 

「え? ああ、そりゃあ、知ってるよ。俺達の世界の武器だからな」

 

 玉井の言葉にチェイスの眼が光る。

そして、ハジメをゆっくりと見据えた。

 

「ほぅ、つまり、この世界に元々あったアーティファクトではないと……とすると、異世界人によって作成されたもの……作成者は当然……」

 

「僕ですね」

 

「今の私でも作れそうだね。」

 

 ハジメは、あっさりと自分が創り出したと答えた。

チェイスは、ハジメに秘密主義者という印象を抱いていたため、

あっさり認めたことに意外感を表にする。

そして、

 

「あっさり認めるのですね。南雲君、

その武器が持つ意味を理解していますか? それは……」

 

「この世界の戦争事情を一変させる……でしょ? 量産できればね。

大方、言いたいことはやはり戻って来てとか、せめて作成方法を

教えてとか、そんな感じでしょ? 当然、却下です。

咲人に作って貰ってください。」

 

 取り付く島もないハジメの言葉。

あらかじめ用意していた言葉をそのまま伝えたようだ。

だが、チェイスも食い下がる。銃はそれだけ魅力的だったのだ。

 

「ですが、それを量産できればレベルの低い兵達も高い攻撃力を

得ることができます。そうすれば、来る戦争でも多くの者を生かし、 勝率も大幅に上がることでしょう。あなたが協力する事で、咲人さんやお友達や先生の助けにもなるのですよ? ならば……」

 

「なんと言われようと、協力するつもりはないよ。

奪うならその時は……殺すよ?覚悟をしてね。」

 

 ハジメの静かな言葉に全身を悪寒に襲われ口をつぐむチェイス。

そこへ教諭が執り成すように口を挟む。

 

「チェイスさん。南雲君には南雲君の考えがあります。

私の生徒に無理強いはしないで下さい。南雲君も、

あまり過激な事は言わないで下さい。

もっと穏便に……南雲君は、本当に戻ってこないつもり何ですか?」

 

「ああ、戻るつもりはないよ。明朝、仕事に出て依頼を果たしたら、

そのままここを出る。咲人一緒に来ない?」

 

「スマンが私には任務があってだな。金は私が払っとくから

済まないな。」

 

「構わないよ。」

 

「どうして……」

 

 愛子が悲しそうにハジメを見やり、理由を聞こうとするが、

それより早くハジメが席を立った。いつの間にか、

ユエさんやシアさんも食事を終えている。教諭は引きとめようと

するが、

ハジメは無視してユエさん、シアさんを連れ二階への階段を

上っていってしまった。

 

さて、そこのデビッドコノヤロウの粛清でもするか。

 

「さて、デビッドさん?覚悟はいいか?」

 

「いやあの、流石に私は神殿騎士の誇りがある訳でして、」

 

「ちょっと外出ようか?教諭もですよ。」

 

「ふぇ?」

 

「なぁーに逆ハーしてるくせにハジメのこと悪く言えましたね……」

 

「いやちょっとそのですね……」

 

「チェイスさん……はいいや。べつに。」

 

「あ、はい。」

 

「キリアさん外に蹴り飛ばしてください。」

 

「わかりましたぁー」

 

笑顔で蹴り飛ばそうとするキリアさん。

 

畑山教諭は車椅子のサポートアームで掴む。

 

「止めないんですか?」

 

「昔、咲人のことをクリスが怒らせましてね。

あん時のことと言ったら、クリスのことを氷漬けにしてましたよ。」

 

(( ¯• •¯ ))ガクブル(( ¯• •¯ ))ガクブル

 

「凍結砲照射!」

 

「「ぎゃああああ」」

 

「凍って反省していてください。」

 

教諭達を凍らして、少し気が晴れました。( ^ω^)ニコッ

 

《次回に続く》




こんにちはヽ(^0^)ノ排他的です!
ハジメの旅の話は次回です。
今回、シアユエに斬り掛かるデビッドを咲人とハジメで抑えました。
…………教諭とデビッドをまとめて凍らすか悩みました。
次回もよろしくお願いします!
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