ありふれてない研究者(車椅子)が異世界に来ちゃった話《凍結》 作:排他的
ハジメがライセン大迷宮に入った頃です。
ガハルドとの対面から少し経ち、本当にバカが65階層を攻略した頃、
私とキリアさんは畑山教諭の部屋の前に来ていた。
「どうぞ〜」
「失礼します。」「失礼する畑山教諭」
「で、咲人くん何の用ですか?先生は寝たいんですが……」
「畑山教諭、旅に出るそうですね。」
「ええ。天職上仕方ないので……」
「私もついて行きます。」
「え?」
「キリアさん、私と畑山教諭の旅の道は一緒なのでしょう。」
「ええ。咲人さんは畑山さんとは違い、食料ではなく武装ですがね」
「ふぇ?」
「でどうでしょう?一緒に行って構いませんか?」
「ええ。佐野くんも私と同じですからね。
というかちょっと待ってください!なんでキリアさんと佐野くん
お互いに名前呼びなんですか?不純異性交友です!」
「え?」 「え?」
「ふぇ?」
「やだなァ畑山教諭。私とキリアさんはそんな関係じゃないですよ。
だって冴えない研究者ですよ私。何故か王宮に行くと貴族の令嬢の
方々が追いかけてきますが……」
「………………」
「佐野くんはいいとしてなんで、キリアさんあなた俯いてるんですか!貴方今顔赤いですよ?ねぇ!」
「帰りますよ咲人さん!」
「え?あはい。じゃあ先生明日門前にいますので〜」
なんでキリアさん顔赤いんだ?
咲人は恋愛なんてしたことも無いので、
キリアの気持ちに気づかないのです…………
ちょいと私天の声がなんでキリアが咲人の護衛に選ばれたかをー
え?あ、それは後述する?あ、わかったわかった。
え?あのー緋槍下げて下さー
アツイーーーーうわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ
畑山愛子、二十五歳。社会科教師。
彼女にとって教師とは、専門的な知識を生徒達に教え、
学業成績の向上に努め、生活が模範的になるよう指導するだけの
存在ではない。もちろん、それらは大事なことではあるのだが、
それよりも〝味方である〟こと、それが一番重要だと考えていた。
具体的に言えば、家族以外で子供達が頼ることの出来る大人で
在りたかったのだ。
それは、彼女の学生時代の出来事が多大な影響を
及ぼしているのだが、ここでは割愛する。とにかく、
家の外に出た子供達の味方であることが、
愛子の教師としての信条であり矜持であり、
自ら教師を名乗れる柱だった。
それ故に、愛子にとって現状は不満の極みだった。
いきなり、異世界召喚などというファンタスティックで
非常識な事態に巻き込まれ呆然としている間に、
クラス一カリスマのある生徒に話を代わりにまとめられてしまい、
気がつけば大切な生徒達が戦争の準備なんてものを始めている。
これはバカが悪い。
何度説得しても、既に決まってしまった〝流れ〟は容易く愛子の意見を押し流し、生徒達の歩を止めることは叶わなかった。
ならば、せめて傍で生徒達を守る! と決意したにもかかわらず、
保有する能力の希少さ、有用さから戦闘とは無縁の任務
(農地改善及び開拓)を言い渡される始末。必死に抵抗するも、
生徒達自身にまで説得され、愛子自身、適材適所という観点からは
反論のしようがなく引き受けることになってしまった。
まぁ咲人によって戦争参加を強制しないよう掛け合って
いたがな。
毎日、遠くで戦っているであろう生徒達を思い、
気が気でない日々を過ごす。
聖教教会の神殿騎士やハイリヒ王国の近衛騎士達に護衛されながら、
各地の農村や未開拓地を回り、ようやく一段落済んで王宮に戻れば、
待っていたのは南雲ハジメの訃報だった。
この時は、愛子は、どうして強引にでもついて行かなかったのかと
自分を責めに責めた。結局、自身の思う理想の教師たらんと
口では言っておきながら自分は流されただけではないか! と。もちろん、愛子が居たからといって何か変わったかと言われれば無理だろ。
彼女にとって教師とは、専門的な知識を生徒達に教え、学業成績の向上に努め、生活が模範的になるよう指導するだけの存在ではない。もちろん、それらは大事なことではあるのだが、それよりも〝味方である〟こと、それが一番重要だと考えていた。具体的に言えば、家族以外で子供達が頼ることの出来る大人で在りたかったのだ。
〝死〟という圧倒的な恐怖を身近に感じ立ち上がれなくなった生徒達と、そんな彼等に戦闘の続行を望む教会・王国関係者。愛子は、もう二度と流されるもんか! と教会幹部、王国貴族達に真正面から立ち向かった。自分の立場や能力を盾に、私の生徒に近寄るなと、これ以上追い詰めるなと声高に叫んだ。
咲人の援護あり。
結果、何とか勝利をもぎ取る事に成功する。戦闘行為を拒否する生徒への働きかけは無くなった。だが、そんな愛子の頑張りに心震わせ、唯でさえ高かった人気が更に高まり、戦争なんてものは出来そうにないが、せめて任務であちこち走り回る愛子の護衛をしたいと奮い立つ生徒達が少なからず現れた事は皮肉な結果だ。
「戦う必要はない」「派遣された騎士達が護衛をしてくれているから大丈夫」そんな風に説得し思い止まらせようとするも、そうすればそうするほど一部の生徒達はいきり立ち「愛ちゃんは私達(俺達)が守る!」と、どんどんやる気を漲らせていく。そして、結局押し切られ、その後の農地巡りに同行させることになり、「また流されました。私はダメな教師です……」と四つん這い状態になってしまったことは記憶に新しい。
ちなみに、この時、愛子の護衛役を任命された専属騎士達が、生徒達の説得を手伝うのだが、何故か生徒達を却って頑なにさせたという面白事情がある。なぜ、生徒達が彼等護衛達に反発したのか。それは生徒達の総意たる、このセリフに全てが詰まっている。
「愛ちゃんをどこの馬の骨とも知れない奴に渡せるか!」
生徒達の危機意識は、道中の賊や魔物よりも、むしろ愛子の専属騎士達に向いていた。その理由は、全員が全員、凄まじいイケメンだったからだ。これは、愛子という人材を王国や教会につなぎ止めるための上層部の作戦である。要はハニートラップみたいなものだ。それに気がついた生徒の一人が生徒同士で情報を共有し「愛ちゃんをイケメン軍団から守る会」を結成した。
だが、ここで生徒側に一つ誤算が生じていた。それは、ミイラ取りがミイラになっていたということを知らなかったことだ。その証左に、生徒達への騎士達の説得の言葉を紹介しよう。
神殿騎士専属護衛隊隊長デビッド
「心配するな。愛子は俺が守る。
傷一つ付けさせはしない。愛子は…俺の全てだ」
神殿騎士同副隊長チェイス
「彼女のためなら、信仰すら捨てる所存です。
愛子さんに全てを捧げる覚悟がある。これでも安心できませんか?」
近衛騎士クリス
「愛子ちゃんと出会えたのは運命だよ。
運命の相手を死なせると思うかい?」
近衛騎士ジェイド
「……身命を賭すと誓う。近衛騎士としてではない。一人の男として」
この時、生徒達は思った。「一体何があった!?
こいつら全員逆に堕とされてやがる!」と。つまり、
最初こそ危機意識の内容は愛子がハニートラップに
引っかかるのでは? だったのだが、このセリフを聞いた後では
「馬の骨に愛ちゃんは渡さん!」という親的精神で、生徒達は愛子の傍を離れようとしなかったのである。
なお、彼等と愛子の間に何があったのかというと……
話が長くなるので割愛するが、持ち前の一生懸命さと空回りぶりが、
愛子の誠実さとギャップ的な可愛らしさを周囲に浸透させ、〝気がつけば〟愛子の信者になっていたという、まぁそんな感じの話だ。語り出せば、新たな物語が出来てしまうくらい……色々あったのだ。色々。
まぁそんなことを天の声の私が解説したんだ!
凄いだろ!天才だろう!
おい待て作者グレイシャルエレクトリックランスを出すなおい!
ぎゃあああああああああ!
門前ー
お、畑山教諭きたきた。
「畑山教諭、おはようございます〜」
「「「「「「「…………お前なんで居るの?」」」」」」」
「HAHAw私も同行するからに決まってるからじゃないか。」
「お前…………俺らの敵だろ!」
「…………なんかしたか?私……」
相川昇、仁村明人、玉井淳史、清水幸利に睨まれている。
「お前、毎回毎回王宮来る度貴族の女の子に追いかけられて!」
「ホルアドとかに行ったら街の女の子に追いかけられて!」
「挙句の果てには護衛が女騎士って!」
「羨ましいんだよ!ちくしょーめー!」
………………そんな理由?
「いや待て、相川、仁村、玉井、清水。ただ単に私の研究目当て
じゃないのか?ついでに言うとキリアさんが私に恋愛感情持つわけ
ないだろ!こんな冴えない研究者に!」
「うるせぇ!鈍感野郎!愛ちゃん先生と同類か!そうなのか!」
「何が研究目当てだ!地味に仮面ライダー再現しやがって!
すげえな!」
「何が冴えないやつだ!一旦鏡見直してこい!このイケメン野郎!
天之河と同類か!」
「おい!護衛の騎士さん泣いてるぞ!
というか園部達に慰められてる!」
…………褒めてんだか貶してんだか。
「はぁーーーー。デビッドさん。荷台に乗ってください。
どっちにしろです。お前らもはよ乗れ!」
渋々、みんな乗り始める。
「よし。キリアさん。乗りましょうか。」
「え、あはい。」
そのまま乗るキリアさんと私。
そのままウルの街に向かうのだった。
道中の愛ちゃん護衛隊とキリアと護衛騎士たち。
「まぁムカつくけど、車なりを開発してくれてありがたいよな。」
「まあな。ムカつくけど」
「キリアさん。元気だして。昔から鈍感だったぽいし。
まだチャンスは…………」
「…………訓練所でステータス確認してらっしゃる時に
南雲殿をフォローして、勇者殿を倒しているところに惚れて、
護衛騎士に志願したのに………………
咲人さん。研究に没頭すると、3日ぐらい閉じこもるし、
優しいのに、外に出ませんかって言っても、
研究研究で…………(*´・ω・`*)シクシク」
「…………ある意味私たちの性なのよね……」
「?なんでだ?」
「いや、佐野は俺達の戦争参加を止めてるだろ。」
「あ、確かに。」
「やっぱり騎士なのがいけないのでしょうか……
なら騎士を辞めれば……いやそんなことしたら会えなくなる……」
「あいつの好み分からないのよね。南雲が一緒だから
南雲が知ってるんだろうけど…………」
「佐野くんって最初のメイドに反応してなかったよね。
さすが大人だねぇー。」
「……いやあいつタブレット弄ってたぞ。」
「…………あいつ前にこの子いいなーって言ってたけど。」
「本当か!清水!」
「…………ただ。人間じゃねぇしまず人型じゃねぇ。」
「 は?」
「あいつ、魔法をこの子って言ってたからな?」
「「「「「「「「………………難攻不落だ。」」」」」」」」
だが一筋の光明が出てきた。
「咲人の好みなら私が聞いてやろう。」
「デビッドさん。出来るんですか?」
「( ´-ω- )フッキリアほどでは無いが、私も咲人と親しいからな。」
「任せます。デビッド殿」
みなが期待の眼差しで見る中、
「咲人、お前の好みの子はどんなタイプなんだ?」
「…………なぁ、デビッドさん。」
「なんだ?」
「6歳から研究者な私がそんなタイプなんて、
考える暇あると思うか?」
「…………済まなかった。」
やばい。難攻不落云々の前にこの研究者枯れてやがる。
「キリアさん。希望を持ってください!私がそれとなく聞いて来ますからね。こういうのは、先生に言ってくれるもんなんですよ!」
「「「「「「「愛ちゃん先生それ言っちゃあかん!」」」」」」」
「佐野くん!どんな子が好きなのか教えてください!」
「仕方ないですね。先生だけですよ……コショコショ」
小声で言った咲人の言葉により、愛ちゃんの顔が茹でダコのように
赤くなる。
「どうしたの?愛ちゃん先生。」
「実は…………小動物みたいで、一生懸命で、やる気が
から回る、そんな子って…………」
「…………愛ちゃん先生?」
「冗談だぞ。」
「「「「「「「「「「「だろうな!」」」」」」」」」」」
「よし。ここで一旦野営だな。」
そう言ってテントなりを貼るみんなだった。
天の声が送りました。
難攻不落な枯れてる佐野くん!でした!
《次回に続く》
デビッド達。
「焦った…………」
これで連投を終わりたい。
愛ちゃんの旅について行くことになりました。
次回はハジメとの再会です。次回もよろしくです。