オーバーロード ナザリックのキセキなペット枠 作:キーボス
「うめぇ!!」
「うんうん、そうだね」
彼と一緒に数日歩くと村についた。
そこからさらに旅を続けている。
いろんな人と会い、いろんなところをさ迷った。
だいたいの地形を把握して、なんだかんだ楽しくやっていると、次第に贅沢になっていたのは仕方ないさ。
「リアルのチューブが科学薬品の味がしてたのが、やっぱりおかしかったんだねぇ」
「あんなの食えたもんじゃないですよ!俺は水とブロック、合成大豆の肉もどきが主食でしたよ?」
リーダ君の返しに、さすがの僕も驚く。
「肉もどきなんて贅沢品を食っていたのかい!?!?」
そこじゃない。
「ま、まぁ、今はこうして天然の肉を食べているんだし、いいんだけどさ」
「ですね!それにしてもこの世界って比較的レベルが低いんですかね?30の俺が蹴散らして苦もなく旅できてるし」
そうなんだよね、この世界、せいぜい強いのがレベル15くらいで、ほとんど会わないわけで。
いや、平和なのは良いことだし、それでいて人助けして金も稼げるからリーダ君の精神衛生上大変よろしい。
え、僕?いや、ほら僕人間じゃないし、全耐性獲得してるし、人間死のうが生物滅びようが何の呵責も無ければ、正直虫けら・・・とは言わないけど、どちらでも構わないよ、うん。
一応、ゲーム時のカルマ値が影響していると思うよ?ほら、僕中立中庸でどちらでもなかったから。
そして人間じゃ無くなったからね。
関わる人以外はそこまで気にならないかなぁ?
「師匠!次どこ行きますっ?」
まったく、リアルで30越えたとはいえ、まだ若いつもりだったけど、この10代の勢いは着いていけそうにないなぁ。
「それは次の町で噂でも聞いて決めればイイじゃないか。今僕らの知っている情報はーーー」
そうして、月日は流れていった。
そしてそれから3年、世界の各地を旅をした。
ただ今の世界では、暴れる魔神の噂を耳にし、話を聞けば聞くほどにユグドラシルの事を思い出す。
それをリーダ君も気にしていたらしい。
3年の月日は歴史を作る。
早い話が"いろいろ"あった。
色々あれば仲間も増えるし、僕だって立場が変わる。
それこそリーダ君以外の弟子も出来るわけで。
「先生!」
「うん?」
自分の中で情報を整理していると、こちらに声がかかった。
赤い外套を纏ったおチビさんだ。
「どうしたんだいキーノ君」
「魔神って、何なんでしょうか?」
プレイヤーの事を始めて知った彼女には刺激が強いかも知れない。
だが、知っていれば対処も出来るかも知れない。
「いいかい、魔神ってのはだね、僕たちプレイヤーが居た世界で、プレイヤーを主人として生み出された存在さ。つまり、彼らは大切な主人が死んで、またはどこかに消えて、気が狂ってしまったのさ」
そう、ギルドだけ転移してきたのか?それとも一緒にプレイヤーが来たのかは別にして、彼らは主人と所属したギルドが無くなって気が狂ったか、何かにすがってしまい、人間に取って不都合な事をしているのだ。
例えば、主人を復活させるために莫大なユグドラシル金貨が必要なのに、その金貨を略奪したりとか。
彼らの中では正しいのだ。
「それは、それではあまりにも・・・」
キーノ君はプレイヤーが転移してきた事を責めるでも無く、ただその魔神となってしまったNPCの事を哀れんでいるようだ。
彼女は優しい。
彼女を仲間にしたときも思ったが、こんな精神で大丈夫かい?と声を掛けたくなる。
人間の頃の感覚が抜けず、カルマ値もたぶん善性だろう。
アンデッドに善性とか正気を疑いそうだが、仕方無い。
「キーノ君、無理をする必要はない。これはユグドラシルから来た私達がやらねばならぬことだ」
そう言って、キーノ君の肩に飛び乗り頬を、そして目尻を舐めてやる。
アンデッドだからと涙は出ないが、それでも彼女はまだ人間の感覚が抜けていないから。
「先生、どうにかならないのか、な?」
涙は出ない筈なのに、今にも泣いてしまいそうな彼女を、どう納得させるかと悩みながら、
「彼らはもう・・・、自分では止まれないんだ。元々悪性だろうと善性だろうと関係なく、自分の命よりも大事な主がいない、主との繋がりだったものが無い。彼らには主がどうにか出来る希望があるならやらないと言う選択肢が無いんだ。そう言うふうに生まれたんだよ」
先程よりも辛そうだ。
「彼らは自分ではもう戻れない、望む望まざると。だから、僕やリーダ君の様なプレイヤーが責任を持って・・・、終わらせてあげるしか無いんだ」
あぁ、こんな話したくはない。
だが、あの、ユグドラシルを楽しんでいたモノとしては、その残滓は自分の事のようで。
もし、ナザリックがギルメン無しで来ていたら、それはこの世を地獄にしていただろう。
セバスやユリなどの数名しか善性のいないナザリックでは・・・。
僕自身がもうだいぶ人間の部分が無い。
かつての僕は性格くらいで、判断基準はリーダ君などの仲間にあわせているだけなのだから。
どんな言葉をかけても、彼女は辛そうだ。
「キーノ、そのままにしていては、彼らとて辛いんだ。彼ら自身も別に望んでいないかもしれない。もう、終わらせるんだ」
彼らのため、彼らのため、彼らのため、僕はそうでも無いけども、リーダ君や他の子達が言うのなら、それでいいと思うから。
「そう、だよね。彼らを、もう休ませてあげるんだね」
あぁ、そうだよ。
彼らのため、彼らのため、ぜーんぶ彼らのためさ。
そう、今ここに居る子達も、今魔神と呼ばれている子達も、そう、そうだ、白銀、いや、探知でわかってる。
"ツァインドルクス=ヴァイシオン"
この世界で最強の一角のドラゴンロード。
彼のためでもあるか。
彼は僕とリーダ君の監視のつもりなんだろう。
まったくもって、人付き合いの仕方を知らないお子ちゃまだ。
そんなんじゃ、いつまでたっても友達って奴が出来ないぞ?
それと、世界を守っている気になっていて、とても大人になりきれないかわいそうな彼。
それを伝えたらどう言うのだろうか?
僕以外の関係者全ての心を満たす戦いが、これから始まるのだ。
すでに人間としての感覚を捨ててるってヤーツ