更識簪さんがジオウの力を手にして令和に平成をキメる話 作:モノズエラ
「ジャヅサパゼンザビゾヅベデ ギスダシゴゴグメスグゾンレギ」
【各員に通達。無人機は教員部隊で全機抑え込むことに成功した。ただし、連中の実行部隊がそちらへ向かっている。襲撃者は三人、その内の首謀者一人はこちらが引き受ける。残り二人の対処をお前達に任せる】
「「「「「了解」」」」」
その理由は直前に告げられた作戦内容にあり、最初に相手に姿を見せたらすぐに彼だけ後方のアリーナの中へ下がるように命令されたのだ。
【織斑、連中の狙いはお前だ。お前が最前線に出るのは相手の思惑通りになる。分かるな?】
「だからって、みんなに任せて逃げるわけにはいかないです」
【黙れ。お前を守りながら戦うのでは他の連中が全力で戦えないことぐらい理解しろ】
「それじゃ、オレがISを使える意味がないじゃないですか!」
【お前が戦うのは最終手段だ。どの道、残りの連中がどちらかあるいは両方に突破された場合、独力で対処しなければならんのだからな】
「だけど! 織斑先生!!」
【だけどじゃない。分かれ、一夏】
普段の一夏なら千冬にここまで言われれば折れるが、今回はまったく譲る気配がなかった。再認識したばかりの彼自身の決意が自分一人だけの退避を認めさせなかったのだ。
「頼む!! 頼むよ、千冬姉!!」
【…………、……はぁ。各員、襲撃者両方の相手が難しいと判断した場合は片方をアリーナへ向かわせろ。アリーナのバリアで分断させての各個撃破に切り替える】
「っ!!」
なので、今度ばかりは千冬が折れた。今の指示は実質、片方を一夏の方に回せという意味だと全員が理解していた。
【吼えたからには最低限、自分の身は自分で守ってみせろ。いいな、一夏】
「ああ……ありがとう、千冬姉」
【……織斑先生だ、馬鹿者】
先に姉弟の口調に戻したのは千冬だったが、そこには誰も触れなかった。
そして――。
「ギンギソンザベパドビバブギヂゲビゼギドレデ」
【無駄話はそこまででいいか?】
「っ!!」
開放回線に声が割り込み、直後にISが二機飛んでくる。
「なぁるほど、こっちに回された虫は五匹か……標的は私がやる。残りはテメェに任せるわ、エム」
「……チッ。まあ、いい。命令は命令だ」
「話を聞いた限り、どうやら互いの希望は一致してるようだし……そっちの誘いに乗ってやるから、アリーナデートと行こうじゃねえか、織斑一夏!」
「みんな、頼む!」
それだけ言ってアリーナへと向かう一夏とそれを追うオータムをセシリア達はそのまま見送った。敵方のISを照合すると相手はそれぞれアメリカの第二世代機とイギリスの第三世代機で、そのうちの旧式の方が一夏を狙っていたからだ。
千冬の指示があるとはいえ、もしも相手が逆だったならば手傷の一つも負わせようとしただろうが、カスタム化されてもいない旧式機の方であれば相手取ることにまず問題はないはずだ。
ならば自分達がやることは目の前のもう一人の襲撃者を速やかに撃滅するまで。
「BT二号機『サイレント・ゼフィルス』……まさか同型機が相手になるとは思いませんでしたが、なればこそ確実に落としますわ!」
「なっ、この出力は……!? こいつらのISも限定解除されているだと!?」
スターライトMkⅢのレーザー・ガトリングが先制で放たれる。その弾幕を全て躱しつつも、そのレーザー出力にエムは驚愕していた。
亡国機業のISも同じく競技用ではない実戦仕様であり、その質の差で数の不利を補うつもりだった。直接戦うことは無かったが、彼女らの迎撃を任された二年生と三年生の専用機は確かに通常の制限仕様だったために、スコールも完全に想定外だろう。完全にIS学園側に裏をかかれたのだ。
「畳みかける……!」
さらに簪による荷電粒子砲の連続砲撃がサイレント・ゼフィルスを掠め、その衝撃で上空へ弾き飛ばす。本来であれば掠った程度ではビクともしないはずのシールドバリアを揺らがせる威力は明らかに限定解除されたものだった。
これ以上の追撃を避けるためにエムは瞬時加速で距離を取りつつ態勢を立て直す。出鼻を挫かれたが、このままサイレント・ゼフィルスの本領となる高機動戦闘に持ち込めば十分に挽回は可能であるが――。
「残念。一手、遅かったね」
既にシャルロットとラウラがセシリアと簪の対面から包囲し、退路を塞ぐように距離を詰めつつあった。
「貴様らぁ……!!」
◇ ◇
「制限された空間でのタイマンなら世代差もあるし勝てる……ってか? 甘えんだよカスが!!」
アリーナの試合場に入った途端、一直線に迫るオータムに一夏は驚いた。
近距離は白式が唯一、得意とする間合いなこともあり、接近戦なら誰にも負けないつもりだった。だから、この戦いは中・遠距離から攻めてくる相手を攻め崩すのが鍵になると思っていたのだ。
「性能差があろうと素質があろうと、素人同然のガキにオータム様が後れを取るわけがあるかよ!!」
だが、実際は想定の真逆。
オータムのISが展開した禍々しい蜘蛛の足のようなフレキシブルアームに翻弄され、防戦一方に持ち込まれてしまっている。予想外の流れに軽く動揺している自分に一夏は気付いていた。
(このままじゃ駄目だ。後手後手の流れのまま、押し切られかねない……!!)
ここは大技を使ってでも強引に流れを変えなければならない。そう踏んだ一夏はリスクを承知で零落白夜を発動させる。剣から溢れる白光が蜘蛛足の装甲脚を一つ吹き飛ばした。
「これで一気に決める!!」
「ハハッ、ハハハハハ!! 待ってたんだよ、そいつを使うのをなぁ!」
オータムが嘲笑う。この状況に持ち込むことこそが彼女の思惑だった。
一夏にはそうと悟られない様に煽ったが、ゴーレム戦での戦闘データから彼女のIS『アラクネ』ではまともに勝負すれば不利と読んでいた。
そのため、先制で叩いて一夏を動揺させて読み違いを生み、短期決戦で唯一の勝ち筋に持ち込むつもりだったのだ。
「さあ真っ向勝負だ、織斑一夏ぁぁぁ!!」
右手で蜘蛛の巣のようなエネルギー網を練り上げて白式へと飛ばし、直後に左手で四本足の機械虫のような何かを投げつける。その機械虫こそがオータムの切り札、亡国機業が白式略奪のために用意した
特殊エネルギーワイヤーの網は零落白夜でも無効化させるのは容易ではなく、仮に初見で対応してみせたとしても続け様に放たれた本命の剥離剤にまでは反応しきれない。
「いただくぜ、てめぇのISをよぉ! ギャハハハハハ!!」
勝利を確信したオータムの哄笑がアリーナに響いた。
◇ ◇
「――スコールもオータムもお前達も、勘違いしている」
「そ、そんなっ……!」
「シャルロットさんの攻撃を捌きながら、私のビットを打ち落とした!?」
数的不利を抱え、個々の戦力を読み違えたにも関わらず、エムの戦意はまったく揺らがなかった。近接ブレードで斬りかかるシャルロットを巧みにあしらいながら、同時にセシリアのビットの包囲攻撃を避けて逆に撃墜する動きのキレはむしろ明らかにギアが一段上がっている。
「私の実力を以てすれば、お前達如きは端から相手にならんのだ。オータムに織斑一夏の相手を任せたのも、奴では結果が見えていたからに過ぎん。私の目的はオータムを倒して戻ってきた織斑一夏をこの手で仕留めることだけだ」
サイレント・ゼフィルスからブルー・ティアーズ同様にBTビットが四基射出されて、各ビットからのホーミングレーザーが全員に襲い掛かる。
「
「数の差など関係ない……織斑一夏が戻るまで、じっくりと一匹ずつ片付けてやる!」
「――大口を叩いているが、一人につき一基のビットを差し向けた所で制限解除されたISのシールドバリアを突破できるものか」
一気に攻勢へと転じようとするエムを抑えるべく、シャルロットと入れ替わるようにラウラが躍り出る。
「貴様は確か、
「
ラウラのシュヴァルツェア・レーゲンから複数のワイヤーブレードが伸び、ラウラを狙うビットとエムとを襲った。それぞれが意思を持つかのような動きを取るワイヤーには攻性
(くっ、こいつにBTビットを落とされるのは面白くない……!)
ラウラとシャルロットへの攻撃に回していたBTビットを引かせて、そのままセシリアと簪の介入を抑える方に回された。シャルロットのラファール・リヴァイヴ・カスタムⅡはライフルやマシンガンなどの実弾武器や実体剣のため、実戦仕様のシールドバリアの前では脅威とならないと切り捨てたのだ。
「ボクじゃ敵にならない、そう甘くみてくれたらって思ってたよ!」
ラウラの補助をすべく牽制射撃に回っていたシャルロットが背後から再び接近戦を仕掛ける。嫌な予感を覚えたエムが温存していたシールドビットを背後に射出するのと同時、
「シールドバリア貫通用に強化された特製バンカーだ、打ち貫けぇ!」
「ぐっ、ううっ!?」
シールドビットのエネルギー・アンブレラにバンカーが突き刺さり、そのまま六連撃発でシールドビットごと破壊する。その先にはこの一瞬で距離を取ることに成功しつつも驚きと怒りに顔を歪めるエムの姿があった。
「ゴメンっ、仕留めそこなった!」
「いいや、奴が温存していたカードを一つ失わせただけでも十分だ。それに、奴らもBT兵器を片づけたようだしな」
その言葉に仲間の方へと目を向ければ、セシリアがビットのうち三基までを自身のビットを用いて数の差で封殺し、簪も残り一基を後方に回転しながら銃で撃ち落としていた。*2。
「ちいぃぃぃぃ!!」
BTビットを全機落とされたエムは侮りを捨てて完全に本気になっていた。
距離を取った空中から機動力で攪乱させつつBTライフルで狙撃、反撃を許さず一方的に攻撃を続ける戦い方に切り替えたのは嬲り殺しにするためではなく、確実に殲滅せんとするためだ。
「さあ、織斑一夏が戻るまでに何人が生き延びられるか、試してやろうじゃないか!」
「――その必要はないわ! これを見ることね!」
「っ!?」
エムの言葉を否定する声が誰もいないはずの方向から響いた。
「待たせたな、みんな! オータムってやつはこの通り、倒したぜ!!」
声と共に現れたのはオータムを片手に抱えた一夏、そして鈴音の姿だった。
「貴様は!? スコールの方にいたのではなかったのか!?」
エムとオータムが現れた時には既にいなかった鈴音に、エムもオータムも彼女は千冬達の方に回されたものだとばかり思っていた。だが実際は千冬が一夏の提案に折れた時に伏兵として潜むように指示されていたのだ。
「あたしの存在に気付かないで迂闊に勝ったと浮かれてたこいつのマヌケ面ったら無かったわ。おかげで短時間で倒せた!」
「まだやるか? こっちは六人いるし、お仲間が人質だぜ?」
今度こそエムは完全に包囲される。逃げ場は下の海中ぐらいで、もはや勝敗は決していた。この場の誰もがこれで決着がついたと思った。
だが――
【――各員に緊急通達!第三勢力と思われる無人機がIS学園へと接近中です!現状での侵入者を敵性分子と判断し、発見次第の撃墜も許可します!】
その真耶からの伝達とほぼ同時に、空間を切り裂くほどの超音速で白銀の天使が戦場に乱入した。ハイパーセンサーが接敵を感知するよりも早いセンサー外からの侵入に、一斉に全員のセンサーがアラートを鳴らす。
「なに、こいつ! まさか!?」
「接近中ではなく、既にIS学園まで辿りついていたんですわ!」
「高性能のステルス機能……!?」
「いや、違う!」
IS学園の予測をも上回りマッハ5を超えるスピードで現れた『
撃墜許可は下りているものの、その異様と動きを止めた不気味な静けさは迂闊に攻撃を仕掛けるには躊躇され、開示された情報の確認をしながら様子を見る流れとなっていた。
(銀色の羽…! これが、シルバリオ・ゴスペル…、敵の本命…!)
そして全員をゆっくりと見渡した『福音』はしばらくの沈黙の後、巨大な光翼を広げ、銀色の光弾を標的へと放つ。
「う、うぉおおおおっ!?」
福音の最初の標的はサイレント・ゼフィルスだった。
雨あられと浴びせられる光弾は翼から放たれるだけあって羽のような形状をしており、ただ着弾するのではなくISの装甲に突き刺さってから次々と爆ぜていく。その仕様から速射性の高さに反して一発ごとの威力も馬鹿にならず、数発受けただけのサイレント・ゼフィルスの被弾部分はバリアシールドがあるにも関わらず破損していた。
「なっ……舐めるなぁぁっ!!」
もっとも、福音の攻撃を瞬時加速の連続使用により数発の被弾で切り抜けるエムの実力は流石だった。さらにエムは弾雨の攻撃範囲から
「何者か知らんが、返り討ちに……っ!?」
言葉の途中でエムが固まる。一瞬前までそこにあったはずの福音の姿が消えていた。異常な加速力と同様に、福音の機動力はサイレント・ゼフィルスをも遥かに上回っていたのだ。
福音が両翼をそのままエムへと向ける。
「後ろだー!! そのまま伏せろーーー!!」
「な……に!?」
『LaLa-----!』
「ぐあぁぁぁぁあああっ!!」
一夏の声も虚しく、福音の巨大な光翼でライフルとISアーマーを直接斬られたサイレント・ゼフィルスはそのまま追撃のかかと落としで海中に叩き落とされた。これまで数人がかりで抑え込んでいた相手が単騎相手に為す術なく倒される様にその場の全員が戦慄し、硬直してしまう。
だが次の瞬間、上空へと回った福音からの光弾が今度は一夏達目掛けて降り注いだ。
「うあぁぁぁぁぁ!!」
「きゃあぁぁぁぁぁ!?」
「全員、散れ!! このままでは一網打尽にされるぞ!!」
ラウラの叫びに慌てて全員が散開する。そして零落白夜を発動させた白式が――織斑一夏だけが攻勢へと転じた。
ビーム兵器が剣でもあり盾でもある相手、それもビーム兵器以外持たない相手には零落白夜は天敵である。そして白式は他の面々と違ってサイレント・ゼフィルスと戦わずに戦力を温存できている。この場で福音を止められるとしたら白式であると、ラウラを含めた全員がか細い勝機を一夏に見出していた。
だが……。
「待て! 貴様一人で真正面から挑んでどうにかなる相手ではない!!」
ラウラの制止も既に遅く、白式は瞬時加速をも使って一気に福音へと向かっていた。あるいは制止が先に届いていたとして、衝突したばかりの彼女の言葉では一夏を止められなかっただろう。
そんな一夏の動きを脅威と認めてか、福音は弾幕を止めて白式を迎撃せんと翼をはためかせる。
「おおおぉぉぉぉ!!」
そのまま間合いを詰めた一夏が零落白夜を振りかぶった。
◇ ◇
「……あれはお前達の仕業ではないというのだな?」
「勿論。あんなのを戦力に取り込めてたなら、私は今こんな醜態を晒していないわ」
IS学園地下特別区画のオペレーションルームでは侵入した主犯格のスコールが捕縛され、千冬と真耶による尋問を受けていた。
もう一つでも駒があれば自身を倒した真耶のISを引き離せて、結果も違ったと嘯くのはスコールのささやかな負け惜しみだが、同時に中立と宣言していた依頼主がこの場にいてIS学園側に協力しているのだから端から勝機など無かったものと理解もしていた。
だからこそ現状を醜態と表現するし、その元凶である束へ恨み言の一つもぶつけたくもなった。
「そもそも、聞くべきは私じゃなくてそこの束博士じゃないかしら。どうせ博士なら知ってるのでしょう? 私達を利用したように、あの福音とやらも……ぐふぅっ!?」
「お前はこちらからの質問だけに答えろ。次は殴るだけでは済まさん。……それでどうなんだ、束?」
機械義肢をスパークさせて沈黙したスコールを尻目に千冬は背後の束に問いかける。
この最深部は限られた人間以外には知らされておらず、この場にいるのは千冬と真耶とスコール、そして束と彼女の意向で同席している箒だけだったため、千冬も束に追求しやすい状況だった。
「福音のこと? 私も知ったのは今日、こいつらの動き探った時だよん」
箒の専用機作成の為にキーボードを弄っている束は問いかけに片手間に答える。すると、学園内の状況を映し出していたモニターが瓦礫の山となったハワイ基地の光景へと切り替わる。言うまでもなく束の仕業だ。
「アメリカとイスラエルが開発中の最新鋭軍用機に亡国機業から盗んだ無人機化技術を投入したみたいだけど、理解してもいない技術を入れたんだから当然失敗してあえなく暴走、オマケに何でか変な進化して二次形態移行までしちゃったみたい。そんなわけで、
「何?」
「待ってください、姉さん。こちらは同じ制限解除した第三世代機が六機もいるのです。暴走して統制も取れてないISならいくら何でも……!」
束の言葉に千冬が怪訝な顔を見せ、箒が食ってかかる。妹の様子に顎に指をあてた束はうーんと唸ると笑顔で返した。
「五機なんだけど*3、それはどうでもいいか。じゃあ現場を見てみるかい? ポチっとな」
束がIS学園のモニターと別に、空中に大きな投影型のスクリーンを映し出した。
そこに映し出されたのは――
「あ、あぁっ!?」
『La------!』
「一夏ぁぁぁぁぁぁ!!!」
スクリーンの光景に、作戦室に箒の絶叫が木霊する。
そこには、福音の両翼に包まれて焼かれている白式の姿が映し出されていた。
ここまでの各ヒロイン勢の活躍。
モッピー:戦闘不参加で逆にヒロインポイントを稼ぐ。
セシリア:リアクション係。同型機との因縁の戦い。
鈴:伏兵として大活躍。一夏と組めてご満悦。
シャル:分の悪い賭けは嫌いじゃない。
ラウラ:魔改造ぶりを発揮。タイマンでも実はエムと互角にやれた。
簪:地味ながら仕事はしている。福音に向けて力を温存してた。
千冬:意固地になった弟に譲るお姉ちゃんムーブ。
山田:千冬と組んで画面外でスコールを倒す。
会長:画面外で二対一の不利な状況の中、互角以上に戦っている。
ナターシャ:ハワイ基地大爆発で消息不明。「握った手の中、愛が生まれる」と言葉を遺す。