「愛してる」風に乗る言葉
きっと届かない
今はまだこの距離をそっと壊さぬように見守るだけ
お風呂に入るといろいろな事考えちゃう。本当は勉強で疲れた頭を休ませたいのに。
いつも考えるのは大好きな人達のこと。
でも辛い。だって好きだから。
ヒッキーの気持ちはゆきのんのほうにあるんだってこと。ずっとわかってた。だから背中押したし,今も応援してる。でもね。やっぱり辛い。
ヒッキーとゆきのんが仲良くしているのを見ると「良かった」って思う半分,よくわからない暗い気持ちになる。
じゃあ「もし」私とゆきのんの立場が逆だったら?なんてことも考えた。でもやっぱりそれはあり得ないんだと思う。
きっとあの二人は「運命」で繋がってるから。
二人ともお互いの進路も全く知らなかったのにヒッキーが志望校変えたら「偶然」同じ大学志望になるんだもん。凄いよね。きっとこれからもそんな「偶然」の繰り返しで。今私とゆきのんの立場が違かったとしてもきっと今みたいになったと思う。
やっぱり勝ち目ないのかなぁ……
こんなこと考えてても仕方ない。早く出よう。明日から学校だし。
***
次の日〜放課後〜
小町ちゃんは生徒会の手伝いに行くからって言ってて休みで,今部室にいるのはいつもの3人。
去年みたいに二人は読書,私はケータイをいじる。なんてことはない。3人ともちゃんと勉強してる。
ゆきのんは英語,ヒッキーは数学。数学!?をやってる。
私は生物基礎を復習することにした。私の受けたいところは看護学部だから,なんか必要そうだし。
ペンの走る音が部屋に響く。最近ではこの音が心地よく感じてきて,集中できる時間も長くなった。と思う。二人とも全く違う音だから面白い。ゆきのんはしゅっしゅっ,って感じで流れるような音。ヒッキーはペンが動くたびコンコン音が聞こえる。足音と正反対で少し面白い。
2時間くらい勉強したかな。ちょっと集中力が切れたから背伸びをしてみる。背中がじわーっと暖かくなる。あ,脇汗かいてないかな?
伸びをしながら自分の脇を見てみる。大丈夫。
ヒッキーと目があった。もしかして脇汗気にしてるところ見られた…?超恥ずい。急いで制服を直して参考書に向き合う。絶対今顔真っ赤だろうなぁ…
「あー…そんな気にしなくても匂いとか別にしねぇぞ。」
少し赤い顔で教科書に向かいながら言ってきた。
わざわざ言うなし。
「べ…別に気にしてないし!ヒッキー最低!」
「八幡?貴方彼女の前で他の女の子にセクハラかしら?いい度胸しているわね。」
「いや,今のはしゃーないだろ」
「「黙っていればよかったの(よ)!」」
「はぁ…もういい時間だし今日は終わりにして罰として今からスタバのフラペチーノ奢ってもらいにいきましょう。」
「おい待て。なんでたった一言が理由で千円も消費されなきゃいけないんだ」
「私傷ついちゃったなぁー。ヒッキーが奢ってくれないと許せないかもなぁー。」
「ちっ,わーったよ。サイズはグランデまでな。」
「貴方に決定権があるとでも?」
「あ,はい…」
***
スタバにて
結局3人ともサイズはベンティにした。夜ご飯食べれないかもなぁ。
「ヒッキーってなんだかんだ言ってお願い聞いてくれるよね。」
「逆らえなかっただけだ。」
「本当。貴方由比ヶ浜さんと一色さんと小町さんにはとことん甘いものね。」
「いや雪乃さん俺のこと睨んでるけど貴女が一番結衣の事甘やかしてるからね?」
「ひゃっはろー!なーんのはなししてんの?」
後ろから声をかけられ3人揃って肩が跳ねる。振り向くと陽乃さんがいた。
「陽乃さんかぁー…やっはろーです。びっくりしたー…」
「姉さん…なんの用?いきなり驚かさないで頂戴。」
「うっす。」
「いやー,スタバでレポートでも片付けようと思って来てみたら中良さそうに話してるんだもん。ちょっかいかけたくなるよねー」
「そうだ八幡〜。このネックレスの石なんだかわかるー?一昨日奮発して買っちゃったんだ〜。色綺麗でしょ〜?」
そう言うと陽乃さんは自分の胸を強調しながらヒッキーに近づく。
ヒッキーも顔赤くしない。ゆきのんに怒られるよ。私もそういうのちょっと嫌だし。
「姉さん。八幡にちょっかいかけないでって何回言ったら通じるの?」
「えー。だって雪乃ちゃんの八幡ならお姉ちゃんの八幡でもあるでしょ?」
「姉さんが気軽に八幡って呼ばないで。」
「ほら…あの…ヒッキーも嫌がってますし」
訂正。全然嫌がってはなさそうかも。
「はいはい。で?八幡?これなんでしょう?」
「あー…自信ないっすけど…スファレライトだったりしますか?ハチミツみたいな色で…その大きさでそのギラギラ具合だと…それくらいしか思いつかないです。」
「わぁ〜!正解!さすが八幡!やる〜!ご褒美にお姉さんの関節キスをあげよう。これ一口もら
「ダメ!!」「やめて!!」
「ちぇ〜。二人ともけち〜。お姉さんだってフラペチーノ飲みたかったなぁ〜」
「自分で買ってくればいいじゃない。」
「それもそっか。じゃ〜ね〜。」
やっと離れてくれた…ヒッキーもゆきのんもどこかほっとしてるように見える。
***
帰り道
ゆきのんのこと家まで送った後,ヒッキーと二人きりになる。わざわざ遠回りしてまで家まで送ってくれる。やっぱりヒッキーは優しすぎると思う。
「ねぇ。ヒッキー。」
「なんだ?」
ちゃんと返事が返ってくる。それだけでも嬉しい。
「私にはどんなアクセサリーが似合うと思う?」
「あー…山尾さんから聞いた話なんだが,最近は小さい色石のシンプルなやつが結構流行ってるらしいぞ。要するにルビーとかサファイアみたいな色がついてるような石な。んー…わりかし安いのだとクンツァイトが結構いい色のやつがバイト先にあったぞ。最近あの人ジュエリーまで買い付け始めたからな。」
「それってどんな色?」
「淡いピンク色だ。あ,そういえばアウイナイトっつーすげー青い石があるんだがそれのネックレスがとんでもない安さで手に入ったって今日メールが来てたな。本来ウン十万するようなやつが2万くらいになったらしい。話によると少し石にヒビが入ってるらしいけどな。」
「そうなんだ…ありがと。そのあういないと?ってやつ明日買いに行ってもいい?」
青色。私の好きな色。ヒッキーがくれたシュシュと同じ色だから。
「あぁ。山尾さんに連絡しとく。あー。なんつーか。バイト入ったばっかの時はあんまり知り合いには来て欲しくねぇって言ったけどな。こないだの俺の誕生日会やってくれた時もそうだがもう全然気にしてないから。」
「そっか。…ならよかった。……そういえばこないだあげたエプロン…使ってくれてる…?」
「あぁ。めっちゃ使ってる。エプロンあるのとないので全然違うのな。何気にポケットがあるのがめっちゃ良い。世界変わったわ。」
「なにそれ。おおげさ。」
ちょっとおかしくて笑っちゃった。
そんな話をしているうちに家の近くまで来ちゃった。まだ喋りたいけど。ここで引き留めたら私はずるい女の子だから。
「送ってくれてありがとね。気をつけて。また明日。」
「おう。ここでいいのか?」
「うん。」
「そうか。じゃあな。」
後ろ髪をひかれる思いをしながら家に向かう。振り向くと小さくなったヒッキーがまだこっちを見ていた。
大好きだよ。なんてね。
つぶやいた言葉は風に乗って消えていく。ヒッキーには届かない。
私ってやっぱわがままだなぁ。ヒッキーが欲しかった。ダメだった。でもやっぱり……
いや。今は我慢。きっといつかは楽しい思い出になるって信じて。私が入れなかった分。この関係がもう壊れないように。見守るんだ。