めでたしめでたしの先……   作:こべりん

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君と,ずっと,肩を並べて,優しい気持ちで,手と手繋いで,歩いて行こう。



大好きだよ。


BE LOVE

2月の最終週。明日は離任式のため学校に行く。恩師平塚先生に会える最後のチャンスだ。正直すごくめんどくさくて行きたくないがあれだけお世話になって離任式をサボるのはあまりにも失礼だ。小町は両親と合格お祝いの旅行で沖縄に行っていて起こしてくれる人がいない。早めに起きれるよう7:00にはアラームをセットしておこう。

 

 

 

 

……やらかした。ただ今の時刻8:00。あれれ〜おかしいぞ〜?

ふざけている場合ではない。完璧なネックスプリングスをしベッドから降りる。

「サボりたい。嗚呼サボりたい。サボっちゃえ♡」などとほざく雑念を振り払い先輩のコンサートでバックダンサーをするジャニーズJrばりの早着替えで制服に着替え,顔を洗う。髪は…いいや。諦めよう。時間も自転車を飛ばせば問題ない。自分の早着替えの才能が開花したようでよかった。ジャニーズ応募してみようかしら。

 

「ヒッキー,やっはろー!!!」

 

靴を履き替えたところで後ろから声をかけられる。

 

「おう、おはよう…由比ヶ浜。朝から元気だなお前。見ているこっちが疲れるわ。」

 

「ヒッキーが元気ないのなんていつものことじゃん。ほらほら。遅れるから行くよ!」

 

と言いながら俺の背中を両手で押しながら進む由比ヶ浜。思っていたより普通に接してくれている。やっぱり優しくて強い女の子だ。

ふと,もし俺が二人いたなら,なんてありえもしない事を考えてしまう。傷つく覚悟で自分の心と向き合った彼女に失礼だ。こんな自分が嫌になる。どんどん暗い思考に陥りそうになるが,気持ちを切り替える。彼女とは「親友」としてしっかり向き合って行こう。

 

 

離任式が始まった。異動する先生はよくわかんない肥えに肥えた眼鏡の数学の女教員,対照的にものすごいひょろ長くて天然パーマの物理教員,事務員のおっさん。そして平塚先生だ。

 

それぞれの先生の言葉から始まる。

 

数学の教員は3年生のトップカーストあたりに茶化されながら話していた。正直知らない先生だったから内容は聞いていない。

 

物理の先生。あ…だめだこれ……ねむくなる……

 

離任式が終わり一年生から教室へ戻るようアナウンスされる。もう一度言おう。式が終わった。

 

あ…あれ…?平塚先生の言葉は…?

 

やってしまった。後で説教されるな。

 

**

放課後

 

雪ノ下から召集がかかった為,由比ヶ浜と部室に向かう。

 

「平塚先生泣いてたね。あたし感動してもらい泣きしちゃった。」

 

目を擦りながらいう由比ヶ浜のその言葉を愛想笑いしながら受け流した

 

「え?もしかして聞いてなかったの?ヒッキーマジ最低!」

 

「痛ぇよ…マジで申し訳ないと思ってるからもう殴らないでくださいお願いします」

 

こんな会話をしているうちに部室前に到着。由比ヶ浜に殴られた二の腕を押さえながらドアを開ける。

 

「やっはろーゆきのん!」

 

「こんにちは。由比ヶ浜さん……と………ボサ谷君」

 

「おい俺の名前忘れんな。ちょっと朝寝坊しただけだ。チャームポイントのはねてる1匹はちゃんと見えやすいからいいだろ」

 

「寝癖ぐらいちゃんと直しなさいよ。今日は式典よ?気が緩みすぎではないかしら。それとも私の躾が必要?」

 

「マジで厳しそうだからパス。」

 

「もう!ヒッキーもゆきのんも仲良いのは良いんだけど,早く寄せ書き完成させないと渡せなくなっちゃうよ!書いてないの後ヒッキーだけなんだから!」

 

「そうね。そういえば私の方で花束は見繕っておいたわ。お金は後で合わせてお願いね。」

 

確かに,入ってきた時机の上に綺麗な花束が置いてあった。花の種類は…カスミソウ,スイートピー,イチゴか? しかし,ふと疑問に思ったことがある。

 

「俺…何も聞いてないんだが?またハブられたの?」

 

「いいから寄せ書きを完成させて。花束代全額負担させるわよ。」

 

氷の女王に理不尽な仕打ちを受けながら寄せ書きに向かう。雪ノ下,由比ヶ浜,一色からの感謝の言葉が綴られていた。俺は空いている枠にそれっぽい言葉を書く。

 

【クソお世話になりました。 比企ヶ谷】

 

これでいいだろ。

 

「比企ヶ谷君。書き終わったなら早く職員室に行くわよ。先生が帰ってしまうわ。」

 

少し焦った様子で雪ノ下から催促される。

 

「あぁ,大丈夫だ。行くか」

 

***

 

職員室 平塚先生の机

 

「平塚先生。今までありがとうございました。こちら,細やかながら,私たちからです。」

 

「先生!あ゛り゛がどう゛ござい゛ま゛じだ!」

 

「うっす。」

 

雪ノ下が先生に声をかけ,由比ヶ浜が号泣しながら花束を,俺が寄せ書きを渡す。

 

「ありがとう。君たちは本当に手がかかる生徒だった。最も皆私の1番のお気に入りだ。君達を最後まで面倒見ることができないのは残念だが,頑張りたまえ。」

 

涙目で言う先生。正直俺も泣きそう。 

 

「私も時間があればいくらでも相談に乗ってやろう。気軽に連絡してくれ。ラーメン屋に連れまわしてやる。」

 

「ところで比企ヶ谷。お前私があれだけ感動する話をしたというのにその間爆睡してたな?いい度胸だ。ここに来い。根性叩き直してやる。」

 

あ,終わった……

 

***

 

先生が繰り出したギガインパクトが鳩尾に決まり,俺が悶え苦しんでいる間に先生と奉仕部で焼肉に行くことに決定していた。

 

「人の金で食べる肉最高……」

 

「ヒッキー本当最低…」

 

「先生。比企ヶ谷君にはしっかり払ってもらいましょう。彼は今家族が旅行に行っている日数分の食費をもらっているので無駄にお金を持っています。」

 

「やめろ雪ノ下。せっかく本を買う金を得られたところなんだ。先生マジで願いします今度ラーメン屋紹介しますから」

 

「はぁ…本当に君ってやつは…まぁいい。沢山食え。奢ってるって言ったのは私だ。貸し1つということにしておいてやる。」

 

***

 

帰り道

 

先生達と別れ,雪ノ下を家まで送っている。外は完全に暗くなっており,もう季節の区分的には春とはいえまだ肌寒い。

 

「食い過ぎた…苦しい…」

 

「貴方本当に容赦ないのね…先生最後の方顔色悪くなってたわよ。」

 

「奢ってくれるって言ったんだ。容赦ないくらいがちょうどいいんだよ」

 

「ふふっ,そうね。次回集まることがあればそうするわ。」

 

そんな話をしながら歩いている。こんな中身の無いような会話も彼女と肩を並べて歩くだけでとても特別なことのように思える。

 

手が当たる。お互い手を引っ込める

 

「す…すまん」

 

「い…いえ…だいじょうぶよ」

 

そんな微妙な距離感のまま無言で歩き続ける。雪ノ下のマンションが見えてくる。

 

 

まだ着かなきゃいいのに。

 

「あー,雪ノ下。少し寄り道しないか?そこまで遅くはならないと思う。」

 

「え,ええ、そうね。あれだけ食べたのだから食後の運動は必要よね。付き合うわ。」

 

「おう、じゃあ目の前の公園入るか。」

 

公園の中に入る2人。中には街灯と遊具,ランニングコースがあるだけで誰もいない。しばらく無言で歩く。

 

ベンチを見つけ,そこに座った。彼女も隣に座る。

 

もう一度手が触れる。彼女の手は冷たくなっていた。今度は手を引っ込める事はなかった。ゆっくり手を絡める。いわゆる恋人つなぎってやつだ。

 

雪ノ下が頭を肩に乗せる。

 

1分経ったくらいだろうか,それとも1時間くらいそうしていたのだろうか,全くわからない。

ただなるべくずっとそうしていたい。そう思った。

 

 

変わらない物がない事はわかっている。平塚先生が異動したように,自分たちが進級するように,いつか物事には終わりがある。それでもこの手を握る強さ,温度はずっとこのままであって欲しい。

 

結局,明け方までずっと公園にいた。奇跡的に二人とも風邪は引かなかったが彼女のことを大事にするのであれば控えるべきであろう。心の中のマニュアルに今回の反省点を刻んでおこう。

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