いつか、クワガタムシに   作:荒井文法

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 輸血と鉄剤で血を増やして退院した妻は、自分の実家で1か月過ごしたあと、僕らのアパートに帰ってきました。『よし! これから家族3人で頑張っていくぞ!!』と、かなり強くフンドシを締めて育児生活に突入しましたが、えぇ、皆様のご想像どおり、そんなペラペラなフンドシ1枚はなんの役にも立たず、あっと言う間にボロボロになり、速攻フルチンにされた挙句、四六時中ギューっと握り潰されているような(比喩です。)最初の2か月間でした。

 具体的に申し上げますと、例えば夜泣き。インターネットで予習して、脳内シミュレーションを繰り返して『対処法と心構えは万全だ!』と息巻いていたにも関わらず、いざ突入すると、体力と精神力が1か月くらいで尽きてしまった夜泣き。今、冷静に考えれば、『あぁ、あのときの僕は限界だったんだなぁ……』と分かりますが、しかし、当時の僕は、フンドシがすでに無くなっていることに気付かず、夜泣きする長男くんをフルチン姿(比喩ですよ!)で抱えながら部屋の中を右往左往しておりました。

 体は正直なもので、しっかり限界サインを出してきました。お風呂で軽く皮膚を擦ると、その部分だけミミズ腫れになり、とてつもなく痒くなるのです。痒くなるので、また擦る → さらに大きなミミズ腫れになる → もっと痒くなる → さらに擦る → ミミズ腫れがプラナリア腫れに進化する……というような状態で、けっこうやばめのサインだと思うのですが、当時の僕は、『冬だから、すごい乾燥肌になっちゃったな〜』で済ませました。いやぁ〜、アホですね〜(笑)と、今だから笑えますが、体力・精神力が共に限界のときは、思考停止が甚だしく、もしかしたら、鬱の入り口にいたのかもしれません。

 当時の僕は30代前半で、それなりに社会経験を積んで、育児の大変さ・恐ろしさを覚悟して長男くんを迎えましたが、それでもやはり『足りなかった』のです。妻も同様で、「長男くんが3か月になった頃の私は、気が狂いそうだった」と、のちに述懐しております。『なぜ足りなかったのか』の答えを考えれば、おそらく『人手の少なさ』に行き着くのでしょう。このあたりの話を深掘りしていくと、ワンオペ、核家族、子育て支援政策、みたいな大きな話に膨らんでしまいそうなので、このエッセイでは、腫れ物を触るように全力で避けていきますね!(無責任)

 スナック菓子のように、軽くて、ハイ・カロリーな、育児の悲喜交々を描写するエッセイを目指して、邁進いたします。

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