特別に最後の方で出しますわ。
七人の生存者たちを迎えたライトンとエルナであったが、当のヒーロー気取りの彼は、この新たな七人に否定的であった。
理由は簡単。みんな凄くて、自分の出番が無さそうだからだ。
最初に英輔を見たライトンは、自分を超えることは無いと思う。なんたって武器がチェーンソーで、銃を扱ったこともない日本人だからである。
尚、彼らが脱出の手段とそれに必要な装備や弾薬を何処で調達するか話し合っている最中に見ている。
「(このフリージャーナリストは大丈夫だ。なんたって日本人だからな。銃に関しては、こっちが上だ。おまけに武器がチェーンソーだからな。問題は…)」
次にオルガを見て、少々自分の立場を危うくすると判断する。
「(このウクライナ系のアメリカ人の女は危ないな。G3ライフルを二丁も持ち、おまけにリボルバーも二丁だ。しかも義足にパイルバンカーと来てる。何処の映画から出て来たんだ?)」
義足のパイルバンカーのことを気にしつつ、ベッカーに視線を向ける。
「(この東の爺さんは、元特殊部隊出だろう。NVAやシュタージと言うところってことか。素振りを見りゃあ分かる。危険だな。おまけに自宅に旧東ドイツや旧ソ連の武器を保管してるだって? バイエルン警察は何やってんだ? 後で通報しておくか)」
元人民警察の第9中隊と言うことは見抜けなかったが、その手の類の出身であるとライトンは見抜いた。
それと自宅に自衛と表して旧ソ連や東ドイツの武器を保管していると聞くや否や、バイエルン州の警察は何をやっていたとクレームを入れる。直ぐに脅威認定した。
カールの方へ視線を向けたが、武器がツヴァイハンダーであるために自分で勝手に作ったリストから外す。
「(ユンカーで飲んだくれのバイエルン野郎は、外して構わねぇだろう。ニーダーザクセン州生まれの俺から言わせれば、南部のバイエルンなんぞ甘ちゃんだぜ)」
ユンカーで使用武器、そして出身地で自分の方が上だとライトンは勝手に思う。お前はそれでもヒーローか?
「(この治安部隊の生き残りの女は、身体以外は脅威じゃねぇな。中尉だって? ぜってぇ身体で使ってるだろ。つか、隠れてAVとか出てそうだな)」
ジークリンデの身体を舐めるように眺めつつ、ライトンは心の中で無礼なことを思いながら、自分の立場を脅かすものでは無いと判断する。
生存者四名を勝手に見定めたライトンは、リビーは拳銃以外撃てないと判断して、自分の中で一番の脅威であるシムハとナオミを見た。
「(問題はこの二人だ。こいつ等、モサドだな、絶対にそうだ。こいつ等はあの四名を超える化け物だ。おそらく街中のナチゾンビを全滅させるだろう。俺とエルナちゃんのナチゾンビ退治の劇の邪魔はさせねぇぞ)」
もうこの男、駄目かもしれない。
ライトンは一番頼りになるシムハとナオミを、自分がヒーローの立場を維持するために排除する気でいるのだ。なんと身勝手な男だろうか。
無論、ライトンの態度で他の者たちは気付いている。ある者は、ライトンが大麻を常習しているのではないかと疑っていた。
「では、ベッカーの自宅に行き、そこで装備を調達する。途中、治安部隊の隊員や兵士の遺体を見付ければ、装備を出来る限り回収しろ。彼らには必要もない物だ」
もう話し合いは終わりなのか、シムハは途中で治安部隊の隊員や軍の将兵の遺体を見付ければ、装備を回収しておくように告げれば、エルナを除く一同は同意した。
「(私、銃使えないんですけど!)」
「まぁ、MP5じゃ役不足だからな。そろそろ、G36かHK416くらいでも調達しねぇと」
「そうだな。では、五分後に出発だ。荷造りをしておけ」
シムハが代表して言えば、一同は荷造りを始めた。ちなみに、銃の整備は終わっている。
生存者たち九名がベッカーの自宅に向かおうとする中、都市ではティーガー戦闘ヘリ二機による掃討戦が行われていた。
上空からの攻撃に、ナチゾンビ等は成す術もなく一方的に機関砲やミサイルによって薙ぎ倒されていく。
「ブワッハッハッ! 良いぞやれェい!! 最強の重戦車の名を継ぐ戦闘ヘリよォ!!」
UH-1に乗るクラウスは、上空から一方的に攻撃を浴びせる二機のティーガーヘリを見て、自分らが圧倒的に有利になったと判断して調子に乗る。
「何っ!? 戦車が居るだと!?」
「なんだァ!? どうしたァ!?」
「戦闘団長殿、戦車であります! 機種はⅢ号戦車! 砲塔の隙間から肉らしき物が見えているそうで!」
「せ、戦車だとォ!? うわぁぁぁとッ!」
だが、ここに来て報告にあった戦車の存在が知らされる。この報告を聞いたクラウスは、ヘリから落ちそうになる。それに機関砲を搭載した装甲車の存在も知らせる。
「機関砲を搭載した装甲車もあるそうです! あっ! あちらに!」
「装甲車もだとォ!? うぉ!? 本当だァ! Sd.Kfz.251の上に、20ミリ機関砲が載っているぞォ!!」
部下の知らせで、その指差した方向を双眼鏡で見れば、残骸と化したはずのSd.Kfz.251が無理に二十ミリ機関砲を搭載し、周囲を走行していた。後部のハッチからはナチゾンビが吐き出されている。
噂のゾンビ戦車の存在も確認できた。報告通り、残骸と化したⅢ号戦車が走行していた。砲塔は浮かんでおり、そこから肉が見えている。これらの要因が、治安部隊全滅の原因だ。
しかし、航空機の脅威たる対空砲を持っていないので、それを見たクラウスはまた調子に乗り、ティーガー戦闘ヘリにそれらの撃破を命じる。
「ブハハハ! 馬鹿かあいつ等! やっぱりゾンビだなァ!! 対空砲の一門も持っていやがらねぇぜッ! ティーガー戦闘ヘリ隊、蹂躙してしまえ! 対戦車ミサイル発射だァ!!」
この喧しい指揮官の指示通り、ティーガー戦闘ヘリ部隊は使わず仕舞いのはずだった対戦車ミサイルを、ゾンビ戦車やゾンビ装甲車に向けて発射。現代主力戦車ですら一瞬にしてスクラップにするミサイルを受けた双方のゾンビ戦闘車両は、一撃で元の残骸へと戻る。それはクラウスにとって、爽快であった。
「スカッとするぜェーッ! 敵戦車を吹っ飛ばすなんてよッ!! さぁ、掃討を再開…」
爽快感に乗り、引き続き上空からナチゾンビの掃討を行おうとしたクラウスであったが、ここで予期せぬ事態が発生する。ゾンビ対空戦車が現れたのだ。
『こちらヴィットマン
『ヴィットマン
「た、対空機関砲だ! 奴ら、投入してきやがった!!」
「なにィーッ!? 対空機関砲だとォ!? 2 cm Flakvierling 38だァーッ!!」
戦闘ヘリが対空砲を浴び、怯んで逃げたので、搭載されているMG3機関銃を持っている機銃手は、四連装対空機関砲である2 cm Flakvierling 38を載せたⅣ号戦車の残骸を見て叫ぶ。
四門の二十ミリ対空機関砲は、早い戦闘機には全く意味が無いが、空中に留まって地上を支援する戦闘ヘリには脅威である。それを知っているクラウスは大いに叫び、直ぐにこの場から退避するようにまた叫んだ。
「退避だ! UH-1なんぞ一瞬でハチの巣だぞォ! 早くせんかァ!!」
「言われなくても!」
ヘリの機長に退避するように叫べば、機長は言われなくともクラウスの言う通りにこの場から退避した。
基地へと撤退の最中、まだ戦っているライトン等の情報を聞かされる。
「戦闘団長殿、信じられぬかもしれませんが、未だに戦っている生存者がいるようで…」
「生存者だとッ!? みんな死んだと思っていたが…! おっ、良いことを思い付いたぞォ!」
副官よりライトン達の情報を聞かされたクラウスは、あろうことか、彼らにゾンビ対空戦車を排除させようと思い付いたのだ。
「空軍に連絡だ! 至急、多数のパンツァーファウストⅢを広場に投下するのだ! その生存者らに対空戦車を撃破させ、制空権を確保させるッ!」
「し、しかし…民間人ですぞ! 対戦車訓練など受けていない彼らに、出来るでしょうか…?」
「フン、未だに抵抗を続けていると言うことは、退役軍人か除隊した軍人だ。それに我が軍の全歩兵科には、対戦車訓練を施しておる。否が応でも、やってもらわねば困る!」
副官は反対するが、クラウスはライトン等を退役軍人や除隊軍人だと決め付け、対戦車榴弾火器であるパンツァーファウストⅢを使えると言って聞かない。何故なら、連邦陸軍の歩兵全科は、対戦車訓練を受けていると言う理由だからだ。
確かに間違っていないが、果たして、ライトン等はクラウスの意図を読めるだろうか。
「東側の武器は、訓練を受けたことが無いから使いたくないな…」
一方で道中のナチゾンビ等を倒しながら、ベッカーの自宅までたどり着いたライトン一行は、彼の自宅に保管されている東側の装備類で補給を受けていた。
だが、ライトンは東側の武器での訓練を受けていないので、道中で拾ったG36ライフルを使用し続ける。なんたって予備弾倉やクリーニングキットは治安部隊の隊員や軍の将兵からの遺体から回収できる。ついでにP8自動拳銃も回収した。
「中々揃えた物だな。よく警察に踏み込まれなかったな」
「なぁに、善良な市民を演じてれば、気付かんよ」
「汚い爺さんね、あんた。本当なら通報して逮捕してるところよ」
シムハはベッカーの揃えた年代物の代物を見て、警察にばれなかったと感心する中、元特殊部隊員である老人は下種な笑みを浮かべながら騙していれば免れていたと答える。
これに治安部隊の隊員であるジークリンデは汚い爺とベッカーを蔑み、本当なら逮捕している所だが、状況が状況なので、今は見逃して置いておく。
「それにしても、こないなもん。良く今日まで持たせたのぅ。壊れたり、故障したりすんとちゃうんか?」
「馬鹿言え! ちゃんと整備しておるわ! 新品同然に磨き上げておる! パーツなんぞ、ブラックマーケットでゴロゴロしておるわ!」
「銃なんて撃ったこともないな…」
「私は拳銃くらいよ」
カールが心配そうに、東ドイツのAK-47であるMPi-K突撃銃を抱えながら、安全に稼働するのかと問えば、ベッカーはちゃんと整備していると怒鳴り散らす。
英輔も東ドイツ製のAK-74突撃銃を抱えながら、初めて銃を撃つことに抵抗感を覚えつつも、ソ連製のAKM突撃銃を持つリビーは、拳銃しか撃ったことが無いとぼやく。オルガはスチェッキンAPS自動拳銃を取り、気に入ったように構えたり眺めている。
ライトンを除く各々が東側の銃火器を手に取って眺める中、一人銃を使えないエルナは、右往左往していた。
「(この中で私、役立たず…!?)」
銃が使えない英輔も銃を取っているので、エルナはこの中で役立たずだと思い始める。
そんな彼女にライトンは自分の使っていたMP5A5を進める。軽いし、扱い易いからだが、エルナは民間人で銃なんて取ったことは無い。コスプレイヤーでは取っていたが、それはエアガンである。
「あぁ、エルナさん。これ使ってください。こいつ、反動も軽くて本体も軽いですから…」
「私、銃なんて一度も使ったこと無いんですけど!」
「えっ? アメリカとか、そういう所に行ってるんじゃ…?」
「だ・か・ら! 使ったことないって言ってんの!!」
銃を使ったこともないのに、銃を使わせるなと言うエルナに、ライトンは困惑する。その様子を、一同は冷たい目で見ていた。
「あいつ等、この状況理解してんの?」
「これだから平和ボケは」
オルガが代表して言えば、ナオミは呆れ果てた。
そんな時に、ライトンは広場に落下傘で落ちていく複数のコンテナを確認する。それと同時に、ドイツ連邦軍で集合場所を知らせる緑の煙を確認する。
「おっ!? あれは、集結命令を知らせる緑の煙! 広場から焚かれている!? なんだ、生き残りが居るのか!?」
「善は急げだ。行くぞ!」
集合場所を知らせる煙を、付近の広場で確認したとライトンが言えば、シムハは急行すると言ってベッカーの自宅を飛び出した。
緑の発煙弾が炊かれ、コンテナが投下された広場に一同はナチゾンビを血祭りに上げながら急行する中、PK軽機関銃を手にしたカールは、乱射しながら大いに喜ぶ。
「文明の利器ってすげぇぇぇ!!」
「乱射してないで行くぞ!」
カールが機関銃を乱射する中、英輔は東ドイツ製のAK-47を撃ちながら頭を叩いて正気に戻す。
「いい精度だ! 流石はドイツ版SR-25!」
ライトンは陸軍の歩兵部隊より拝借したHK417狙撃銃で、スナイパーゾンビを狙撃して撃ち落とす。
ジークリンデは東側装備を持たなかったものの、同じライトンと同じ狙撃銃で狙撃し、フレイムゾンビやフライデーモンを倒していく。
オルガやベッカーも、新たに補給した突撃銃でナチゾンビを掃討しつつあった。リビーも劣らずに初めて扱う東側の突撃銃を撃ち、ナチゾンビを倒している。シムハとナオミは言わずもかな、敵なしの状態であった。
「キャーッ! 来ないで!」
エルナは銃を持っているにも関わらず、戦わずにその爆乳を揺らしているだけであった。だが、彼女には強い味方がいる。ライトンである。直ぐにエルナのピンチに駆け付け、周囲のナチゾンビを一掃した。
その奮戦する一同に、ゾンビ装甲車が姿を現す。
「っ!?
「こいつの出番じゃな!」
オルガがゾンビ装甲車を見て叫べば、ベッカーは背中の使うことが無さそうだと思っていた使い捨ての対戦車火器であるRPG-22を取り、安全装置を解除してから照準器を覗いて発射する。
古い対戦車火器であり、西側の同じ使い捨て対戦車火器のM72と同じであるが、威力は古い戦車なら一撃で撃破できる。それを戦車でもない装甲車に向けて発射すれば、一撃でゾンビ装甲車を撃破した。
「脅威は去ったな。さて、生き残りが居るかどうか行こう」
ゾンビ装甲車が黒煙を上げながら潰れて行けば、シムハは広場へと先行して急行した。
「生き残りは居ない!? あるのは落下傘で落ちてきたコンテナだけか…!」
広場へと急行した一同であったが、そこには軍の兵士は一人たりとも居らず、ただ投下された救援物資と、やや大き過ぎるコンテナだけであった。
先に救援物資から食料と医療品等を回収する中、ライトンは同封されていたドイツ連邦陸軍の指令書を手に取る。その内容に目を通せば、驚いた表情を見せる。
「おいおい、俺たちは民間人だぞ! ホワイトベース隊じゃねぇ!」
ライトンの叫びに一同はそこに集まり、シムハが指令書を取って内容を確認する。
「我々に対戦車戦闘をしろと言うのか。あのデカいコンテナは、おそらく対戦車火器が大量に入っているのだろう」
「クソっ、ナチゾンビ共に戦車がいるって事じゃなぇか…! 対戦車戦闘の訓練はしているが、まさか実戦でやることになるとはな…!」
シムハはあの大きめのコンテナは、対戦車火器を収めていると睨めば、ライトンは実戦で対戦車戦闘をする羽目になると思って緊張する。
軍に居た頃には対戦車戦闘の訓練を受けていたが、実戦での経験は無い。それどころかこの惨状が初の実戦である。だが、今の自分はヒーローだ。敵の戦車如き、倒せるはずだと思い、俄然やる気になる。
「だが、今の俺はライトン・イェーガー様だ…! 戦車だろうが、ヒットラーであろうがやっつけてやるぜ!!」
このライトンの決意の言葉に、聞いていた一同は凍り付いた。
R18禁版も投稿しようかな…