クラウスからの選別に、対戦車戦闘を行うことを強制されたライトン一行は、コンテナに入ってある大量のパンツァーファウストⅢ対戦車火器を手に取り、持てない分はリアカーに載せ、ゾンビ対空戦車の撃破に向かう。
指令書には、ゾンビ対空戦車を全て撃破して制空権を確保すれば、ヘリによる脱出を約束すると記載されていたのだ。
一同はこの約束を信じ、ゾンビ対空戦車の撃破に向かう。
道中、ナチゾンビがその行く手を阻んできたが、現代兵装で身を固めた一同の反撃で薙ぎ倒されるばかりで、ゾンビ対空戦車まで接近される。
「ゾンビが対空兵装を、持つんじゃねぇ!!」
ゾンビ対空戦車に向け、ライトンはパンツァーファウストⅢを発射する。有効射程距離まで接近する間に安全装置を解除し、照準器を覗いて発射したのだ。
その威力はRPG-22の比較には及ばず、一撃でゾンビ対空戦車を葬る。ついでに周囲のナチゾンビも爆風に飲み込まれて肉片と化した。
「パンツァーファウストの名は伊達じゃねぇぜ!」
一両目のゾンビ対空戦車を撃破した一同は、次の区画に居るゾンビ対空戦車の掃討に移った。
エリートゾンビやガンナーゾンビ、火炎放射ゾンビ、チェーンソーゾンビ、丸鋸ゾンビと並みいる強敵たちが、ライトン一行の行く手を遮るが、機関銃などの連発式の武器を持つ一行の敵ではない。そればかりかパンツァーファウストⅢを持っているので、一発撃ち込むだけで一瞬にして肉片と化す。
ゾンビ装甲車やゾンビ戦車も妨害に向かったが、パンツァーファウストⅢの前では単なる移動式射撃目標でしか無かったようだ。
掃討戦を続けている間に、ゾンビ対空戦車は残り一両となる。
「余裕だぜ! これなら小一時間後には街を脱出できるな!」
使えなくなったパンツァーファウストⅢの弾頭部分をナチゾンビに投げ付け、更には這いずりながら近づくナチゾンビの頭を踏み潰して言えば、ライトンは慢心する。
最後の一両を仕留めようと接近した瞬間、ライトンの慢心を打ち破る思わぬ伏兵が現れた。
「まさか…ゾンビティーガーだとっ!?」
最後のゾンビ対空戦車を守る壁は、ゾンビのティーガー重戦車であった。
「ティーガーまでゾンビになるのか!?」
ベッカーはティーガー重戦車までゾンビになったことに驚く中、一同は伝説の戦車のゾンビを前にして止まる。
だが、こちらには最強の対戦車火器であるパンツァーファウストⅢがある。それがあると分かっているライトンは、パンツァーファウストⅢを担いでゾンビティーガーの撃破に向かう。
「だからなんたってんだ! 俺はライトン・イェーガーだぞ!? ティーガー如きがなんだ! もう過去の遺物だぜ!!」
「おい、待て!」
「ちっ、援護しろ!」
単独で重戦車に突っ込むライトンに、英輔は止めるが、大男は止まらずに重火器を持ったゾンビの前に飛び出す。直ぐにシムハ等は援護射撃を行う。
カール、英輔、オルガ、ベッカー、リビーは各々が持つ銃で援護射撃を始める。ジークリンデはHK417狙撃銃を構え、重火器を持つナチゾンビの始末に回る。ナオミはミニミ軽機関銃の二脚をエルナに持たせ、後方から来るナチゾンビの対処に回っていた。
銃を持ったナチゾンビが優先的に始末されていく中、ライトンはパンツァーファウストⅢをゾンビティーガーに構えたが、既にティーガーは主砲の88ミリ戦車砲の照準を済ませている頃だった。
「まずい!」
撃つ前に気付いたライトンは即座に撃つのを止め、近くの遮蔽物に飛び込んで88ミリ戦車砲の砲撃を交わした。破片が飛んでくるが、ライトンは気にせずに強力な使い捨ての対戦車ロケットランチャーを発射する。
やはり大戦中は最強だった重戦車とは言え、現代兵器のパンツァーファウストⅢは流石に効いたようだ。だが、致命傷ではなく、まだ砲塔は動いている。流石はティーガーと言ったところだろう。
「クソっ、流石はティーガーだな!」
使えない筒部分で近付いてきたナチゾンビを撲殺しつつ、ライトンはティーガーを仕留めるために、パンツァーファウストⅢを満載したリアカーまで走る。
ベッカーは弾切れのヴィーガーK500軽機関銃からKS-23散弾銃に切り替え、背後から迫るナチゾンビをバラバラにする。英輔は再びチェーンソーを持ち、チェーンソーゾンビとの斬り合いを始めた。オルガは義足のパイルバンカーで、デカい鎧ゾンビであるジャイアントの頭を潰していた。
ジークリンデはスナイパーゾンビの始末に集中し、リビーはパンツァーファウストⅢを持って、二射目を撃とうと構える。パンツァーファウストⅢは歴代と同じく、発射する際に背後の排出口から高熱の排気ガスを噴出するので、後方確認をしてから撃ち込む。尚、ライトンは後ろを確認せずに撃っている。
「火傷するわよ!」
そう言ってから動けないゾンビティーガーに向けて発射すれば、その弾頭は重戦車に命中した。だが、これでも倒せず、未だに砲塔は動き続けている。もう一発ほど撃ち込むか、無視してこちらに四門の対空機関砲を向けるゾンビ対空戦車を仕留めた方が速そうだ。
「先に対空戦車を仕留めた方が速そうだな」
「でも、機関砲がこっちを向いているよ?」
「流石に厄介だな」
シムハはパンツァーファウストⅢを持ち、ゾンビ対空戦車を仕留めようと考えたが、機関砲が向いているので、至難の業と見える。
「ぐぁ!?」
「援護してくれ!」
「分かった!!」
その間にティーガーの砲撃を受け、カールが吹き飛ばされた。幸い、動けなくなるほどの重傷では無さそうだ。チェーンソーゾンビの斬り合いに勝利し、肉を切断した英輔が直ぐに駆け付け、ベッカーの援護を受けながら彼を抱えて安全な場所まで運ぶ。
「スナイパーダウン!」
オルガはカールが落としたPK軽機関銃を拾い上げ、周囲のナチゾンビに向けて乱射して数体を血祭りに上げる。ジークリンデはスナイパーゾンビを仕留めた後、P8自動拳銃を抜いて接近してきた自爆ゾンビを全て早撃ちで仕留めた。
「ケツにぶち込んでやるぜ!」
一方でパンツァーファウストⅢを補充したライトンは何を考えてか、二本持ちでゾンビティーガーの背後に全速力で駆ける。どうやら戦車の一番脆い部分である背後のエンジンを撃とうとするつもりだ。
これを見ていたシムハは銃の再装填を素早く済ませ、援護に適しているナオミに彼の援護をやらせた。
「代われ! ナオミ、あの馬鹿を援護しろ!」
「了解!」
指示に応じ、ナオミは機関銃を抱えながら移動し、ライトンの進路を妨害するナチゾンビに向けて掃射する。無論、エルナは二脚を持って安定させる役を続けている。
右耳に耳栓をしているにも関わらず、凄まじい銃声で鼓膜が破れそうになる中、ライトンの進路方向に居たナチゾンビは全て一掃された。これでライトンは一気にゾンビティーガーの背後へ回り込み、二発のパンツァーファウストⅢを撃ち込む。
「ツヴァイ・ファウスト!」
何故か必殺技を叫びながら両方のパンツァーファウストⅢの引き金を引けば、二発分の対戦車弾頭を受けたゾンビティーガーは砲塔が吹き飛ぶくらいの大爆発を起こして沈黙した。
後はこちらに対空機関砲を掃射し始めたゾンビ対空戦車の始末である。ライトンは背後から迫る対空機関砲を奇跡的に避け、遮蔽物へと飛び込む中、リビーは注意が大男に向いている間にパンツァーファウストⅢを撃ち込み、見事に対空戦車を仕留めることに成功する。
「ふう、これで脱出できる…!」
最後の対空戦車を仕留めたエルナは、これでようやく脱出できると安堵する。
対空砲と言う脅威が無くなれば、それを知らせるための信号弾を詰め込んであるHK69を、ライトンは空へ向けて発射した。
空へ放たれた信号弾は青で、その信号弾を確認したのか、ヘリのローター音が聞こえて来る。どうやら聞こえて来る数からして、数十機以上が飛来してきたようだ。数秒後に街中のあちこちから、銃声や砲声が聞こえて来る。一番大きな爆発音も聞こえる。どうやら戦車まで投入したようだ。
「これで終わりか…」
聞こえて来るドイツ連邦軍の機甲部隊の到来に、ライトンは安堵して懐から白ソーセージであるヴァイスヴルストを取り出し、法張り始めた。
「プゥッハッハッハッ! 行けぃ! ナチ共を地獄に叩き戻せェーッ!!」
指揮官であるクラウスは、TTH90ヘリに副官と連隊本部要員と共に乗り換え、配下の装甲連隊全部隊に突入するように怒号を飛ばしていた。
彼はバイエルン州に駐屯する装甲擲弾兵連隊の連隊長であり、予備大隊を含める連隊全戦力を持って、この惨状を終わらせようとしていた。クラウスが指揮下に置くティーガー戦闘ヘリ中隊は一方的に空よりナチゾンビを攻撃し、次々と肉片へと変えていく。対空砲の脅威もないため、数十機のUH-1からドアガンによる掃射も行われ、空からの掃討はスムーズに進んでいる。
更には戦車中隊を傘下に置いた装甲擲弾兵部隊も進み、周辺に居るナチゾンビを掃討する。その姿はまるで電撃戦だ。先の戦闘団で一個中隊を損失し、撤退したドイツ連邦軍とは思えない。
地上の掃討戦が進む中、これに気を良くしたクラウスは更に叫び、調子に乗る。その声は、ヘリのローター音に負けぬ程だ。
「いいぞォ! もっとやれェ!! 一匹残らず駆逐するのだァーッ!!」
「(煩いな、こいつ)」
声はヘリの操縦席まで聞こえたのか、機長らは興奮して叫ぶクラウスを睨んでいた。
副官はクラウスに、対空戦車を仕留めたライトン等を救出するかどうかを問う。
「あの、連隊長殿。対空戦車を仕留めた者たちは、どうされますか?」
「おっと、忘れていた。おい、ハノマーク2! 直ちに生存者の回収に迎え!
副官に言われるまで忘れていたのか、クラウスは空いているTTH90一機にライトン等の回収を命じ、UH-1一小隊、地上の装甲擲弾兵大隊と装甲偵察中隊には、まだ生きている生存者の捜索を命じた。
もうこちらが勝利したと思っているクラウスであったが、その慢心はまたしても、新手によって打ち砕かれた。それは、巨大なゾンビヒトラーであった。
「っ!? ヴィットマン4がやられました!!」
「なんだとォ!?」
部下からの報告に、直ぐに墜落していくティーガー戦闘ヘリを双眼鏡で確認する。
そのヘリを撃墜した正体も、双眼鏡で見えており、それを見たクラウスは、驚くあまり機内で尻もちをついてしまう。なんたって、巨大なヒトラーが歩いているからだ。
「ひ、ひ、ひひひヒトラーだァァァ!? な、なんでヒトラーがここにィ!? しかもゾンビで巨人ダァァァ!!」
双眼鏡が必要ないくらい見える巨大なゾンビヒトラーに、クラウスを初め、彼の部下たちも驚愕せずにはいられなかった。
現れたゾンビヒトラーに装甲擲弾兵連隊の将兵らは驚愕する中、クラウスは正気に戻り、ゾンビヒトラーを攻撃するように命じる。
「な、何をしておる!? 攻撃だ! 攻撃せんかァ!!」
現れたかつての独裁者の巨人を見て固まっている将兵らに対し、クラウスが通信機で怒号を飛ばせば、配下の将兵らは一斉にゾンビヒトラーに攻撃を始める。
山一つを消し飛ばす勢いの攻撃であるが、巨大なゾンビヒトラーには通じず、口から邪悪な光線で一個中隊以上が消し飛ばされる。
「第三装甲擲弾兵中隊、通信途絶!」
「い、一個中隊を消し飛ばす交戦だとォ!? ば、化け物だァ! 化け物その物だァァァ!!」
一個中隊が消し飛んだとの報告を耳にしたクラウスは、自分らではゾンビヒトラーでは勝てないと思い、絶叫する。
そんな連隊本部を兼ねているTTH90ヘリに、ゾンビヒトラーの巨大な拳が飛んでくる。それを見た機長は回避行動を行うが、間に合わない。
「こ、拳が当機に接近!」
「キェアアア!? もう駄目だァァァ!!」
クラウスが乗るTTH90はゾンビヒトラーの拳を受け、彼の絶叫と共に街へと墜落していった。
「馬鹿でかいヒットラーじゃねぇか…!」
クラウスが寄越したヘリで、もうじき街から脱出しようとするライトンは、巨大なゾンビヒトラーを視認した。
そのゾンビヒトラーはドイツ軍の攻撃を物ともせず、ある宣言を行う。
『復活した余は今のドイツを見た。見るに堪えない物だ。余とその英霊たちが破壊尽くさねばならない! ドイツのみならヨーロッパ、否ッ! 世界中がそうである! 見るに堪えない物で溢れておるではないか! これ以上は退化の一歩を突き進むだけである! 余はここに、全世界の破壊を宣言する! 余自らと、その英霊たちが世界中を破壊し、生き延びた優良種が世界を再編するのだッ!!』
それは、自分とその配下のナチゾンビ軍団で世界を破壊し、生き延びた人類を選ばれし者と選定して再生を行うと言う物であった。
無論、自分がヒーローとなり、ヒロインであるエレナと結ばれる人生を破壊せんとするゾンビヒトラーを、許すライトンではない。ヘリから飛び降り、破壊宣言するゾンビヒトラーをラスボスと決め、蛮勇にも巨人ゾンビに挑んだ。
「えっ、なんなのっ!?」
「見るに堪えないから破壊するだと…!? ふざけやがって、チョビ髭伍長閣下が! このライトン・イェーガー様が、ラスボスのテメェを地獄に叩き返してやるぜッ!!」
エルナが思わぬ行動に混乱する中、ライトンはそう言って巨大なゾンビヒトラーに向かって突っ走った。
ゾンビ総統閣下登場。
次回のゾンビヒトラー戦で、最終回となります。