僕と広町七深という女の子   作:小鴉丸

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2話 平和な夏の終わり

「えーっと……どこに付き合えばいいのかな。買い物?」

 

 聞き間違えだろうと信じながら聞き返す。しかし僕の言葉はいつもの笑顔と共に否定され、先程聞こえた冗談が再び耳に届く。

 

「あはは、違うよー。こーくんとお付き合い、したいの。広町達カップルだよー。青春しようねー」

 

 承認してもいないのに勝手に完結され、勝手に行動を決められる。

 

 その場で楽しそうにクルクルと回る広町さんからはやはりというか、いつものような“本人の思い付き”での行動だったと思える。

 

「付き合う、ってバカバカしい。広町さんは僕の事好きなの?」

 

「? うん好きだよ。こーくんと一緒に居ると楽しいし」

 

 ……完全に面を食らった。

 まさかそんなストレートに女子から“好き”だなんて言われる日が来るとは思ってなかったからだ。それに……。

 

「ん? どうしたの? あ、もしかして……私に好きって言われてときめいちゃったのかなー?」

 

 普通に美少女の部類に入る彼女にそう言われれば嫌でもこういう反応をしてしまうだろう。ただの女友達としか見ていない僕だが、広町さんがそこらの女子よりも魅力的で可愛いのは分かっている。

 

「(黙ってれば、だけど)」

 

 突拍子のない言葉、常人なら思い付かない事、少しズレた感性。まぁ一庶民である僕とこのお嬢様だと考え方の違いはいくらでもあるのだろうが、それにしてもおかしすぎる。

 

 口を開かなければ、とはよく言ったものだ。

 

「全く。ところで今回はどうしてそんな愉快な事を思い付いたの? 変な物でも食べた?」

 

「酷いなぁこーくんは」

 

 ため息混じりに言うと「心外だ」と言わんばかりの反応をされる。

 

「私だって今をときめく女の子、恋愛の一つや二つしてみたくなるもんだよ」

 

「ときめくならそう軽々しく付き合うだなんて言わない方がいいよ。……広町さん、愛してるよ」

 

「うぇっ!?」

 

 なんだその反応。

 

「うぇ、ってなに。うぇ、って」

 

 無感情に吐いた言葉に変な反応をされせっかく言ってあげたのに、と複雑になる。一方広町さんはというと柄にもなく顔を赤らめて──。

 

「…………何照れてんの」

 

「てっ、ててて照れてなんかないよ!? そんな安い言葉に踊らされる広町じゃないよ!?」

 

 慌てて取り繕ってるのがバレバレだ。照れるくらいならやらなければいいのに……大方、誰かに唆されたとか、恋人居るのが普通とか言われたんだろう。

 

「それにしても──」

 

「な、なに?」

 

「どうして付き合おうだなんて言い始めたの? いつもに増して理解不能なんだけど」

 

「相変わらず酷いなぁ」

 

 口を尖らせ拗ねるように言う。

 

「分からないんだよねぇ、異性を好きになるっていうのが。だから私の中で一番親しい君でそれを感じてみたいわけ」

 

「訳分かんない」

 

 なんで“だから僕と付き合う”になるんだ。そもそもそんな適当な気持ちでそれを感じれるとは思わないし……。

 

 というか感じて何があるんだろう。夏休みの自由課題にでも──するのかなぁ。

 

「(僕が何言ってもどうせ聞かないんだろうな)」

 

 不思議と嬉しそうに体を揺らす彼女は自分がこの少女と出会ってから、過去最大級に“楽しい”と思っているようだった。

 

 別に僕に害が起こるわけでもないし、期間を決めてなら別に付き合っても問題ないだろう。それこそ、夏休みはまだ半分残ってるのだ。

 

「……まぁいいや。じゃあ取り敢えず付き合おっか、僕達」

 

「ほんと!? やった──」

 

「ただし!」

 

 喜ぶ寸前で停止をかける。

 

「付き合う期間は夏休みが終わるまで。それまででいい?」

 

「うんうん、十分だよ〜。夏休みのメインイベントはまだ終わってないからねぇ、これはこーくんと夏祭りデートが……! それに他にも──」

 

 突然今後の案だろうか、それをブツブツと楽しそうに口にする。

 

 ほんと、そんな無邪気な笑顔で居られるとただの可愛い女の子なのになぁ。と、つくづく思うのだった。

 

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