空は既に黒の面影もなく、月と入れ替わるように陽光が地を照りつけていた。
こんな時間まで、カメリアが夜通ししてくれた話。
───レミリア・スカーレットとは
かつてはイギリスにおいて幼少ながら企業を起こし、神童とすら謳われた資本家である。
前話で話したスカーレットワイナリーも、元々はレミリア・スカーレット所有の店であった。
しかし、レミリア・スカーレットが持ち上げられて有名になっていくにつれ、こういった噂が流れ出した。
“レミリア・スカーレットは吸血鬼である。”
とはいえ、こんな噂など最初は根も葉もない噂だと誰もが思っていた。
一握りのオカルト好きは違ったようだが、その時は世論になんら影響がなかったのだ。
しかし、とある緋色月の夜に事件は起こる。
レミリア・スカーレットが吸血鬼であると決めつけていた連中が、スカーレット邸を襲撃した。
それまでは良かった。
しかし、その事件の翌日、スカーレット邸を襲撃した連中が帰ってこない事を不審に思った仲間がスカーレット邸を訪れると、そこには─
──串刺しにされ、見るも無惨な姿の仲間達が
その事件は瞬く間に広がり、レミリア・スカーレットは吸血鬼であるという噂はやがて人々の中で真実として刻まれることとなる。
そしてこの事件を境にレミリア・スカーレットは全ての事業を第三者に譲り、行方を眩ましたのであった。
これがカメリアが知っているレミリア・スカーレットの全容だが…この話を聞いて私は思い出した。
レミリア・スカーレットという名の既視感。
その既視感の正体は、幻想郷の紅い館、紅魔館を治めるレミリアという吸血鬼だ。
とてもこの繋がりは偶然とは思えない。
恐らくレミリア・スカーレットは今、幻想郷に存在しているのだろう。
だとしたら、カメリアがこのワインの味に覚えがあるのもおかしな話ではない。
非常に興味深い。
ひとまず時間も時間だし、未だ眠気を感じていないので寝るのも渋られる。
私は軽く朝食を作り、夢月を起こしに行ったのだった。
○
「少し…話しすぎたかしらね」
灯音が席を外し、残された私は一人煙を嗜んでいた。
タールを重く含んだ煙が喉を通って肺に終着し、その全てを再び喉を通すことで口から吐き出す。
レミリア・スカーレット…久しく忘れていた名だが、まさか幻想郷に行き着いていたとは。
「……とても言えないわね、
目を瞑り、かつての記憶を掘り返す。
走馬灯のように映し出される記憶は私の心を昂らせる。
再び肺に送った煙をゆっくりと吐き出すと、灰色の煙は眩い太陽の元へ消えていった。
煙が昇っても、空は晴れたまま鬱陶しい太陽を曝け出していた。
「…秘匿されるべきなのだから」