「随分と家族が増えたのね」
「そうね、姉様が居た時とは全然違うと思うわ」
紅魔館の廊下を3人で歩きながら話す私達。
昔は私とレミリアとフランしか居なかったといあのに、今では門番が居たり、図書館に魔法使いが居たり、メイドがたくさん居たりと賑やかだ。
私はレミリアに案内され、大きな広間に足を踏み入れた。
広間の奥には豪華な赤い椅子が鎮座しており、そこは私もよく覚えている場所であった。
「…玉座の間」
「そうよ、今では私が座っているけれどね」
レミリアは私に少し自慢げに語った。
500年ほど前からこの館はレミリアが治めているわけだから、レミリアが玉座に座るのはおかしな話ではない。
しかし、そんなことはどうでも良い。
私にとって最も解せない事はフランの幽閉についてだ。
私が渋い顔をしていると、私の心情を察したであろうレミリアは玉座に座って私に語りかけた。
「幽閉の件、納得いってないのよね?」
「えぇ、500年前からね」
「なるほど…」と呟くレミリア。
少し考える素振りを見せた後、レミリアは口角を上げ、両手と翼を同時に広げた。
レミリアから放たれる不可思議なオーラ。
吸血鬼としての“力”が、そこには確かに存在している。
「五世紀ぶりの姉妹喧嘩といくか、
「お姉様…!?」
レミリアの言葉に困惑するフラン。
しかしレミリアはそんなフランを無視し、私から目を離そうとはしない。
純吸血鬼とハーフヴァンパイアという事もあり、かつてレミリアと分かり合えなかった時、私は力でねじ伏せられた。
当時の私には戦闘経験もなく、純吸血鬼のセンスには到底及ばなかったのだ。
その忌むべき過去と同じ戦いが今始まろうとしている。
しかし、今私は不思議と何も感じていない。
恐怖、そんな邪魔なものは全て500年の間に捨ててきた。
「後悔しないといいわね、レミリアッ!」
私はデザートイーグルを取り出し、スライドを引いて銃弾を装填する。
500年越しの因縁が、今ここで晴らされるのだ。
○
人里から外れ、少し歩いた地点にある森。
魔法の森とは違う、普通の森である。
人体になんら影響がなく、妖怪も少数しか存在しないその森で私と夢月は歩いていた。
陰りのある面持ちで歩いている私達だが、何かが吹っ切れたように大声を出す夢月。
「ピコン!“さすらいの旅人”の称号を手に入れた!」
「つまるところ迷ってんだよね、さすらってるんじゃなくて彷徨ってんだよね。」
まるで現世のゲームのようなセリフを吐く夢月に反射でツッコんでしまったが、なんで夢月そんなの知ってんの?
もしかしてもうPS3とか幻想入りしてたりする?いや有り得ないよね。
私にとってPS3とかまだ発売してそんな経ってないから、幻想入りとか有り得ないから。
「森を避けるように回れば着くって言われたのに、近道しようとして森の中突っ切るからこうなるんだよ夢月…。」
「くそっ!反論したいのに反論できない!
やけにテンションの高い夢月にハァとため息をつく私。
夢月この状況下でピクニック気分だったりしないよね?なんか楽しんでる気がするんだよね。
「でも大丈夫、ここで秘密兵器使うわよ!」
「秘密兵器?」
そう言って自信満々に夢月が取り出したもの、それは四つに折り畳まれた一枚の紙だった。
まぁもしかしなくても地図だろう、なぜ夢月は最初っからこれを見なかったのか非常に謎である。
やっぱり夢月この状況楽しんでたよね?
ふふふ〜っとニコニコしながら地図を開く夢月だが、地図を開くと同時に夢月の笑顔が引き攣った。
「…なにこれ」
「どうしたの?」
訝しげに思った私は夢月の手にある紙を覗き込む。
地図の上には“フィールドマップ”の文字。
…なんかもう嫌な予感してきた。
私は恐る恐る目線を下に運び、地図部分を見つめる。
見覚えのある地形、見覚えのあるタッチ、見覚えのある
ついに頭を抱えてしまった私は、大きく青空を仰いで叫んだ。
「これド○クエⅠのマップじゃん!!!!!」
「うわぁびっくりした!」
突如大声を発した私に吃驚する夢月だが、私はそんな事お構いなしに続けた。
「さ〜て、世界救っちゃいますかぁ…じゃないんだよ!!!ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙ア゙!!!!」
「えっ、なに!?えっ!?」
気が狂ったように叫ぶ私、恐らく私も私で変なテンションになっているのだろう。
多分それは間違いない、確実にそうだ。
こういう時は落ち着くのが一番だ。
私は煙草に火を灯して煙を大きく吸い込み、ゆっくりと吐き出した。
「一旦落ち着こうか、夢月。」
「いやそれ灯音でしょ!大丈夫!?」
「ふふっ、何言ってるの?大丈夫だよ。」
飽くまでも平静を装う私に夢月は余計困惑しているようだが、実際煙草は凄い。
煙を肺に通すことで脳細胞の全てがクールダウンするのだ。
煙草は万能薬、古事記にもそう書いてある。
ゆっくりと息を吸い込んでゆっくりと息を吐き出す夢月、いわゆる深呼吸という奴だろう。
深呼吸をした夢月はフゥとため息をつき、私に向かって言った。
「とりあえず止まってても仕方ないし…歩くしかないよね」
「そうだね、ゆっくり歩こっか。」
私の激しい感情の起伏に恐怖の表情を浮かべていた夢月だが、深呼吸することで漸く落ち着きを取り戻したのか、地図を投げ捨てて歩き始めた。
そして私もそれに着いていくように歩き出す。
再び、私達の彷徨いの旅が始まったのであった。
「騒がしい奴等だな…」
そんな私達をはるか上空から見つめる存在に気付くことも無く───