森の中を延々と彷徨い続ける私と夢月。
木々の隙間からは数多の細い線が降り注ぎ、私達を水玉模様に照らしている。
次第に私達の口数は減り、ついには話す事も無くなっていた。
ボーッとしながら森を歩いていると、気づけば霧のかかった湖を眼前に迎えていた私達。
見覚えのあるその景色に、私はつい「あっ」と声を上げる。
「ここってまさか…。」
「え、場所わかったの?」
私の反応に対して期待の眼差しを向ける夢月だが、正確な場所がわかったわけではないのでそこまで喜ばしいことではない。
そういえば人里の人間は「湖の畔に紅魔館はある」と言っていたが、もしかしたらこの湖の事だろうか。
しかし、霧のせいで非常に視界が悪い。
これでは紅魔館があったとしても見つけるのは一苦労だろう。
「…森も出た事だし、とりあえず一旦休憩しよっか。」
「そうね。そういえば、干し柿っていうのを持ってきたよ」
「やっぱ遠足感覚だこの子。」
休憩がてら煙草に火を灯して煙を煽りながら、私は夢月から干し柿を一つ貰って口に放り込んだ。
その干し柿は非常に甘く、私の口腔に多量の涎を発生させる。
あまりの甘さに喉が渇いてきた私は鉈を召喚し、近くにあった木の大枝を切り落とす。
枝の切り口から溢れ出す水を口に流し、ふぅと息を吐いた。
「これ美味しいけど喉渇くね、夢月も飲む?」
「え?…私はいいかな」
安全な水なのに…と思いながら、私は切り落とした枝をポイッと投げ捨てる。
すると枝を投げた先から「いてっ」と声が聞こえた。
何かと思って見てみれば、そこには見覚えのある白黒。
黒いとんがり帽子を被った金髪の少女が居た。
「魔理沙、久しぶりじゃん。」
「まずは謝れよ!」
枝が当たったであろう頭を擦りながらその少女、魔理沙はツッコミを入れた。
香霖堂で霊夢と一緒に来ていたという魔法使いの魔理沙である。
「ごめんごめん、なんでこんな所に?」
「いや何、私も紅魔館に行こうと思ってな」
男勝りな口調でふふんと腕を組んだ魔理沙。
そういえば、かつて紅魔館が異変を起こした時は魔理沙と霊夢が二人で解決したんだっけな。
そうだ、紅魔館の話はその時に聞いたんだ。
「用事でもあんの?ちなみに私達は招待されたから行くんだけど。」
正確には私達ではなく、私だけだが。
夢月は何かあった時のために着いてきてくれているわけだし、拒まれる事は無いだろう。
ていうか普通に考えて、カメリアは招待されてないのに迎えてもらえたのかな?
私の問いかけに少し考える素振りを見せたあと、ニヤリと口角を上げて答える魔理沙。
「まぁ…モーニングルーティンみたいなもんだ」
「……?」
朝から紅魔館に行くことがモーニングルーティンということなのだろうか。
朝の散歩がてら友達の家も寄っちゃいました〜みたいな?クッソ迷惑じゃね?
まぁそれは…私には関係ない事だけれど。
どちらにせよ、いつも紅魔館に行っているのであれば道はわかるのだろう。
ここで魔理沙に会えた事には吃驚したが、きっとこれは良い兆しだ。多分ね。
「お願い、私達を紅魔館まで案内してくれない?」
「いいぞ。その代わり今度香霖堂行った時、なんかくれよ」
「ありがと、それくらい全然いいよ。」
私のお願いに二つ返事で返してくれた魔理沙に感謝の念を抱いた私は、魔理沙が来たことなんて知らぬ存ぜぬといったように干し柿を食べ続ける夢月に「さ、行くよ。」と声をかける。
夢月は甘い干し柿を頬張りながら立ち上がり、私と魔理沙に着いてきた。
こうして確かな希望の光を感じた私達は、再び紅魔館へ向けて歩みを進めるのであった。