太陽が真上に昇ってもなお薄暗い紅魔の廊下で、私と夢月、咲夜の三人は並んで歩いていた。
永遠にも感じるほど長い廊下で、私は二人に不満を垂れ流す。
「なんであんなすぐ終わらせちゃったのさー…。」
口を尖らせながら、夢月のブラックニンジャソードを指を駆使してグルグル回す私。
初めて触れた実物に内心感動し、心と身体にその感触を染み込ませる。
「剣闘かと思ってたのに能力使われたから、ちょっとムキになって…」
「一目見た時から人間じゃないことは分かっていたから、ハンデとしてちょうどいいと思ったのだけれど…」
それぞれの言い訳事情を話す二人。
とはいえ私は夢月達がどんな戦い方をするのか興味本位で知りたかっただけなので、別にそこまで怒っているわけではない。
でもブラックニンジャソード二刀流で舞う悪魔とかめちゃめちゃ格好良さそうじゃん、しかも剣舞にゼロレンジコンバット取り入れるとか私見た事なかったし。
もう想像するだけで脳髄が鳴動するし、血液がグツグツと煮え滾る
この感覚がまさに私が戦闘狂であり武器マニアであるという事をよく実感させた。
私がゾクゾクと身体を震わせていると、夢月が申し訳なさそうに私の顔を覗き込んできた。
「悪かったって…機嫌直してよ」
別にそんなに怒っているわけではないのだが、どうやら勘違いされているようだ。
ん…良いこと思いついた。
それならば、夢月には悪いがその勘違いを利用させてもらおう。
私は心の中でニタリと笑いつつ、無表情のまま夢月に言った。
「この剣しばらく貸してくれたら許す!」
私は卑怯な事にブラックニンジャソードを引き合いに出した。
我ながら本当に卑怯だ、私は性格悪いのかもしれない。
それを聞いた夢月は驚いたような、困ったような表情で叫ぶ。
「はぁ!?何のための能力よ!?」
「実物が良いんだもん…!召喚したらなんか味気ないじゃん!」
あくまでも武器マニアの心は譲れない。
私がかつて手を伸ばしても届かなかった武器は、今では念じるだけで簡単に召喚することができる。
しかし、そのせいで私は新たな武器を手にする喜びが薄れてしまったのだ。
そんな幻想郷生活で彗星の如くやってきた“本物の武器”。
それも私が予てから欲しかった一品だ。
そんなの…手離したくないに決まってるじゃん!
すると、夢月は諦めたように苦笑して両手を広げた。
「しょーがないな、でも必要な時は返してよ?」
「ほんと!?惚れていい!?」
「アンタが私に惚れようと、私は幻月姉さん一筋よ」
トテモ=ウレシイ
ホントのホントに使いたかったものなので、私はつい夢月に惚れ込んでしまいそうになった。
まぁ、それに関しては冷ややかに撥ねられてしまったが。
さて、そんなこんなでずっと歩いていたわけだが、気づけば私達は大きな門の前に立っていた。
「ここがお嬢様の間よ、お嬢様はここで灯音を待ってる……のだけれど」
歯切れ悪く言葉を紡ぐ咲夜。
そんな咲夜に対して何も言わない私達だが、理由は簡単だ。
扉の中から大きな金属音や爆発音が響いているからだ。
「ねぇ夢月…これってもしかして…」
「私も思ってたよ…アイツは朝っぱらからドンパチやりにここまで来たってことなのかな?」
呆れたように話し合う私と夢月。
紅魔館に来てから、私達は一度もカメリアを見ていない。
しかし門番の美鈴が「今日はお客さんが多い」と言っていたので、カメリアが紅魔館に来ているのは咲夜も知っているのだろう。
カメリアと私達に関係があるのは知らないだろうが。
咲夜は少し考える素振りを見せた後、多少俯き気味にボソッと呟いた。
「どうして素直になれないんですか…」
「「……?」」
本当に小さな声で呟いた咲夜だったが、私達はその言葉を確かに聞き取った。
しかし、私達がその言葉に対して質問をすることは無い。
私も夢月もきっと触れてはならないのだろうと思った、ただそれだけの理由だ。
咲夜は少し俯いた後、思い切ったように主の間の扉を開け放つ。
「はぁ…予想通りだけど…」
扉の先では思った通り、カメリアが背中から黒い蝙蝠のような羽を生やした水髪の少女と死闘を繰り広げていたのであった。
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