七色のステンドグラスを背景に、吸血鬼と思しき少女とカメリアが熾烈な戦いを繰り広げている。
少女が紅い光弾を次々と放ち、カメリアが高速で駆けながら隙を見てデザートイーグルを撃つ。
光弾を躱すカメリアの速度は既に人智を超えていた。
「疾っ…。」
「アイツ本当に人?」
少女は恐らく吸血鬼であろうから身体能力が極めて高いのも頷けるが、人間であるはずのカメリアも負けず劣らずの身体能力を発揮していた。
あまりにも疾い、あまりにも精密。
その現実を見てしまっては、夢月の言葉を簡単に肯定することは不可能であった。
困惑する私達に気づいたその少女は、依然光弾を放ちながらニヤリと口角を上げる。
「ギャラリーが来たぞ、カメリア」
「えっ…」
俊敏に駆け続けていたカメリアだったが、少女のその言葉で反射的に後ろを振り向いた。
私達を視界に入れたカメリアは目を見開き、その場で立ち止まってしまう。
光弾の雨が降り注ぐ地獄の中で、だ。
「カメリアッ!?」
立ち止まったカメリアに迫る光弾に気づいた私が叫んだ時にはもう遅かった。
私の方を向いて立ち止まっているカメリアは為す術もなく数多の光弾に被弾してしまう。
強烈な衝撃と共に私の方へ吹っ飛ぶカメリア。
私は反射でカメリアを抱きとめるが、カメリアは生を感じない目で口から血を流していた。
「あ…かね…」
「カメリア…。」
項垂れるカメリアを抱えながら、私は光弾を放った主を見つめた。
少女は蝙蝠のような黒い羽をパタパタとはためかせ、空中から私達のことを見下ろしている。
少女の目が私と合った瞬間、少女は紅い槍を生成して私に投げつけてきた。
強烈な魔力を感じる槍、もし喰らえばひとたまりもないだろう。
それに今、私に槍が刺さるとカメリアにもダメージがいく。
それだけは、阻止しなければならない。
「世話のかかる戦友だ。」
私はカメリアを横に突き飛ばし、能力で篭手が一体化した棘だらけの盾を召喚して構える。
通称“ランタンシールド”、外側からは分からないが、持ち手側の方にランタンがぶら下がっており、夜戦でも灯りを確保しながら盾を構えることが出来る一品だ。
これは武器にもなるので、なんとか私の能力で召喚することができるらしい。
少女の槍の速度はついに音速を超えるほどまでに達し、着弾までの短い時間ではカメリアを突き飛ばすだけで精一杯だったのだ。
盾を召喚できただけまだ及第点と言うべきだろうか。
来たる衝撃に備えていると、つい最近聞きなれた声が耳に届いてきた。
「アンタもでしょ」
その声が聞こえた瞬間、私に放たれていた槍が突然爆音で爆ぜる。
見ると迫っていた槍は真ん中から真っ二つに切り裂かれており、私に背を向けるようにして夢月が立っていた。
その両手には黒鉄の刃を携えている。
「…ありがと、夢月。」
「アンタに死なれたら困るんだってば!」
苛立ちを見せる態度で大声を出す夢月。
その表情の中に心做しか照れくささを感じたが、私は見て見ぬふりをして微笑んだ。
私の心情に気づいてか気づかずかは分からないが、夢月は私から目を逸らすようにして黒刃をグルグルと回す。
それを見た吸血鬼であろう少女は興味深そうに夢月を見つめ、ニヤリと口角を上げた
「ほう…悪魔が人の盾となるか」
「ふん、利害が一致しているだけよ」
夢月の言葉を聞いた少女は高らかに笑い、地上に降り立つ。
その少女の行動に警戒しつつ、表情を崩さない夢月。
そんな夢月を見て、少女は夢月に手のひらを向ける。
「まぁ待て、闘争は終わりだ。」
「…?」
新たに熾烈な戦いが始まる空気であったが、その空気は少女の言葉によって終わりを告げた。
少女が何をしたいのか理解できない私達は目を見合せ、少女と咲夜に連れられて別室に案内されたのであった。