太陽は既に傾き、元より薄暗かった寝室は更に陰りを見せている。
レミリアの「カメリアが起きたら話す」というのは、夢月の直球な質問によって粉々に砕かれた。
ほぼ全ての事情を理解した私は席を外し、バルコニーでタバコに火を灯す。
「カメリアがハーフヴァンパイアねぇ…。 」
未だに信じられない…というわけではなく、私はそれを聞いてむしろ少し納得した。
カメリアの異常な知識、身体能力、生活。
その全てを当てはめても、彼女がハーフヴァンパイアである事に不思議は無いのだ。
いやでも、太陽が出ている日はなるべく外に出ないとはいえ、彼女は陽光を浴びてもなんらダメージを負っている様子はない。
これこそ彼女がハーフヴァンパイアであるからこそなのかもしれないが、わかんないよね普通。
フゥーッと吐いた煙は空高く昇っていき、天まで届く前に雲と混ざりあって消え失せた。
再び大きく煙を吸って、肺の奥の奥の奥まで煙を充満させる。
「ちゃんと言えよ…馬鹿女。」
ため息と共に煙が吐き出され、私の視界がブワッと白くなる。
友人である私にくらい、話してくれたっていいものを。
正体を知ったら離れると思ったのか?
軽蔑すると思ったのか?
ふざけやがって。
とはいえ人外が存在しないのが常識の現世で、そんな事言えるわけないか。
今までずっと誰にも言わず隠してきたのだろう、それも仕方の無いことかもしれない。
そんな事を考えていると、背後からガチャリと扉の開く音が聞こえた。
「…誰?」
扉の方を振り返ると、そこには傘を差した金髪の少女が立っていた。
その少女は赤いワンピースに身を包んでおり、サイドテールの金髪を白いナイトキャップで隠している。
そして何より目を引くのが、少女の背中から生えた羽のようなもの。
枯れた枝のような骨に七色の石が連なっており、見るもの全てを引き込むような美しさ。
そんな美しい羽を生やした少女は、どこか寂しげな表情を浮かべてそこに立っていた。
「お姉さん、カメリア姉様とお友達なの?」
見たところ、齢五歳六歳程度の少女は私に寂しそうな紅い瞳を向けて問いを投げかけた。
カメリア姉様…ふむ、髪色こそ違えどレミリアと瓜二つだし、恐らくカメリアやレミリアの妹と言ったところだろう。
それにしてもお姉さんか…悪くない、悪くないな。
「そうだよ、君のお名前は?」
私は煙草を消し、少女の目の前にしゃがんで目線を合わせた。
目線を合わせることで少女の綺麗な顔立ちがよりハッキリする。
全てを消し去るような真っ白な肌、一片の無駄も感じさせないシャープな輪郭、血のように紅い大きな瞳、閉口していても尚はみ出る八重歯。
見れば見るほど、彼女は私の遥か上に位置する事が明確になるのであった。
「私はフランドール・スカーレット、フランって呼んで。レミリアお姉様の、妹だよ」
幼さを感じさせる辿々しい言葉選びでその少女、フランは自己紹介をした。
フランドール、聞いた事のない名である。そりゃ当然か。
「フランちゃんか、よろしくね。私は灯音、何かご用?」
お姉さんとか呼ばれてから心がなんだかポカポカしているような気がするが、私は何ら変わりなくフランに接した。
別にフランだから優しく話しかけてるわけじゃない、きっとこれはたまたまだ。
すると少し考える素振りを見せ、フランは少し声を張って言い放った。
「お姉様…レミリアお姉様を止めて欲しいの!」
紅魔館のバルコニーに冷たい風が吹き荒れた。