「ふぁ……」
目が覚めるとどこか懐かしさを感じる一室。
横向きに傾いた視界には綺麗なドレッサーが映り込んでおり、ドレッサーの鏡の中には私の生き写しが此方を覗いていた。
「あぁ…500年ぶりの景色かもしれないわね」
この部屋が紅魔館の一室であることに気づくと同時に、私はレミリアとの一戦を思い出した。
純吸血鬼と半吸血鬼の熾烈な戦い。
ギャラリーが見ているとレミリアに言われ、一瞬の動揺をしたところまでは覚えている。
簡単な話だ、そこでレミリアの光弾をモロに受けたのだろう。
「そうか…私はあの時気絶したのね」
大きくため息をつき、ベッドから起き上がる私。
窓を開けて冷たい風を部屋に送ると共に、カチッとジッポライターで煙草に火を灯した。
憂鬱な気分が少しずつ晴れていく、その感覚を身体に染み込ませる。
「力が必要ね…もっと、もっともっと…」
グッと左の拳を力強く握りしめ、既に沈みつつある太陽を睨みつける。
私はハーフヴァンパイアだから実質害はないが、レミリアやフランにとっては大きな障害である太陽。
そうだ、太陽さえ消えれば…
「月光……」
私は煙草を口に咥えながら両手を広げた。
来たる月光に向けて、祈りを込めて。
月光がこの身に注がれれば“月の神託”は自在に操れるのだ。
私の、私だけの信仰の賜物。
この力でフランや灯音を救えると思うと、私はさらに月光への信仰が高まっていくのであった。
すると、ガチャリと部屋の扉が開いた。
その音に反応して銃口を咄嗟に向ける私。
「お目覚めね、カメリア姉様」
「レミリア…ここでもう一発カマすのかしら?」
レミリアには、先の戦いでの因縁がある。
それを理解した上でレミリアは敢えてこの部屋に立ち入ったのだろう、本当に癪に障る妹だ。
しかし、レミリアは手のひらを私に向け、首を振った。
「いいや、少し…話さないか?」
「……それは、“お話”だけで終わるものなの?」
警戒して依然銃を構えたままの私は、皮肉混じりにレミリアに問いかける。
するとレミリアは静かに丸テーブルにつき、対面に座るよう私に促した。
「“お話”で終われば、な」
「ふん、まぁいいわ」
レミリアに従い、レミリアの対面に座る私。
私はふてぶてしい態度でレミリアを睨みつけるが、そこでとあることに気づいた。
レミリアの表情、涙を流しているわけではないが、その表情には何処か寂しさや悲しさが漂っている。
しかし私はそこに何も触れず、レミリアの発言を待った。
気のせいかも、しれないしね。
「察しはついているだろうが、フランの話だ」
「…でしょうね、それで?」
レミリアは少し考えるような仕草を見せ、静かに唸りだした。
纏めてから話を始めてくれ…と言いたいところだが、話の内容が内容なので仕方が無いのかもしれない。
レミリアが私に向ける悲しげな表情から、私は少しだけ次の発言に期待をしていた。
もしかしたら、きっと、500年前の事を悔いて省みているのかもしれない。
そんな甘ったれた期待をしていた。
「いや……」
しかし数秒の空白を越え、レミリアがついに発した言葉は容易に私を憤らせた。
「やはり館を出た
「──ッ!!!」
その瞬間、私は無意識にマチェットを抜いてレミリアに振り下ろしていた。
しかしその刃にレミリアがみすみす当たるわけもなく、レミリアは紅い槍を須臾に生成して私のマチェットを防いだ。
「少しでもッ!期待した私が馬鹿だったわッ!!!」
「……ふん」
どこか明瞭としないレミリアの表情に更に憤りを覚えた私は、続けて何度も刃をレミリアに向けた。
宵と相違ない暗がりの中、私とレミリアは再び500年越しの因縁を晴らそうとしていたのであった。