闘争を、この身全てに闘争を。
人外に与えられたただ一つの問題解決法、闘争。
人も動物も、古来より他を喰らうことで生き永らえてきた。
そして進化し、或いは絶滅し、新たな生命が紡がれていった結果、現代の生命が在るのだ。
私は人ではない。
人として現世で生きてきたが、本物の人にとっては私は動物でしかない。
勿論、それは私だけに留まらず、目の前で紅い槍を構えている吸血鬼も例外ではないのだ。
「お互い、野蛮ね」
「…そうかもな」
私の思った通り、レミリアの“お話”は“お話”で終わらなかった。
むしろ始まってすらいなかった、始まる前から終わっているのだ。
紅い槍を突きつけるレミリア、マチェットの切っ先を向ける私。
数秒の睨み合いの末、私たちは同時に動き出した。
凄まじい勢いで突き出されたレミリアの槍を辛うじて回避する私。
上半身を捩ることで大抵の攻撃は回避ができる。
その際、その道のプロともなれば下半身の重心を保ち、二撃目も難なく回避ができる。
聞いた話ではない、実際に私はそれが可能なのだ。
「格闘技を知らない貴女に、接近戦のやり方を教えてあげるわ」
槍を両手で回転させることで不規則な攻撃を放つレミリア。
やはり“技”というものを知らないのだろう、取ってつけた不規則は、不規則なようで規則性があるのだ。
私は槍を回避しつつ、確実な隙を狙ってマチェットをレミリアに振り下ろした。
「技を極めた程度で、私に届くと思うな」
「…ッ!!」
確実な隙をついたはずの攻撃は空を切った。
回避…といえば回避なのかもしれない、レミリアは身体を無数の蝙蝠に変化させて私の刃を容易く躱したのだ。
純吸血鬼だからこそ成せる技を、あたかもハーフヴァンパイアである私への当てつけのように見せつけてきたレミリア。
私はどうにか憤りを抑え、なるべく冷静な心持ちでレミリアの気配を探った。
「どこに行ったのかしら?」
平静を装っているつもりではあるが、どうしても苛立ちが先行した口調になってしまう。
ハーフヴァンパイアであることに対する侮辱、それは私の実父をも侮辱していると同義だ。
怒りは収まらず、マチェットを握る手に力が入る。
耳を欹て、周囲の全てを集音──
「……今回は貫く」
「─ッ!!」
何処から来てもいいように構えてはいた。
しかし予想外なことに、私が備えていた声は頭上から聞こえてきたのだ。
その一瞬の動揺が、一瞬の隙を生んでしまう。
反射でマチェットを振り上げる私だが、間に合わない。
レミリアの槍が私の目玉から突き刺さり、そのまま身体全てを穿ち尽くすだろう。
身近に迫る死を感じ、私は静かに目を閉じた。
「なにしてんの?」
「…えっ?」
その瞬間、私に安心感を与えてくれる大好きな声が耳に届く。
目を開けると、そこには灯音と咲夜とフランが立っていた。
そして…
私の隣には紅い槍を床に突き刺したレミリアが、目を見開いて静止していたのだった。