東方空蝉録   作:Amaryllis___

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それぞれの家族

レミリアとカメリアが和解した後、私達は食事に招待された。

100人以上は入るであろう広間で行われた小規模な食事会は数時間にわたって行われ、催しの中で様々な雑談をした。

レミリアとフランが催しに相応しい高貴なドレスを纏って会場に登場した時には、その気高き美しさに目を奪われたものである。

 

あっという間に過ぎ去った時間の後、私達は暁闇にて家路につくことにした。

 

月も朝焼けも無い暗闇の紅魔館門前までレミリアとフラン、咲夜の三人が私達を見送りに来てくれた。

 

 

 

「また会えるのを楽しみにしているわ」

 

 

 

「楽しい食事会だったよ、ありがとうレミリア。」

 

 

 

真っ暗な闇の中、レミリアの紅い瞳が妖しく輝いて見えた。

レミリアは妖艶な瞳でカメリアの方を捉える。

 

 

 

「本当に残らないの?」

 

 

 

少し寂しげな表情のレミリアに対し、カメリアはふふっと微笑んで片手で私の肩を抱いた。

さながら恋人のようである…が、私にはそういった趣向はない。

カメリアがどうなのかは知らないが。

 

 

 

「えぇ、今の私には守らないといけない人がいるの」

 

 

 

「そう…けれど、いつでも来てね?」

 

 

 

さながら恋人のようである。これさっきも言ったな。

そんなカメリアに、レミリアは仕方ないかといった様子で微笑んだ。

私としてはカメリアには家族と居て欲しい気持ちが大きいが、最終的には本人の気持ちが1番大事だ。

 

そこに私が割り入るような野暮な真似はできないし、無論するつもりもない。

 

 

 

「また会いましょ。レミリア、フラン」

 

 

 

「うん、私待ってるね」

 

 

 

レミリアの隣で佇むフランがどこか寂しげな笑顔で返す。

寂しいのは当然だ、しかしその感情を見せたらカメリアを困らせてしまうと思って笑顔を装ったのか。

精神病によって情緒が安定しないとはいえ、根本は非常に良い子なのだろう。

 

この姉妹には本当の意味で幸せになって欲しいものだ。

それは人だとか吸血鬼だとか、そういった種族の垣根など全て取っぱらった上での話である。

 

 

 

「行きましょう、灯音」

 

 

「うん、本当に残らなくていいの?」

 

 

「私には貴女がいる、フランにはレミリアがいる。今はそれで十分なのよ…きっとね」

 

 

「…そっか。」

 

 

 

人の寿命は吸血鬼と比べて非常に短い。

カメリアはそれを分かっているからこそ私を選んでくれたのだろう。

嬉しい話だが、同時に申し訳ない気持ちが湧き出る。

 

しかし何処か寂しげな横顔を見せるカメリアにそれ以上何を語ることもできず、私達は改めて紅魔館のメンバーに別れを告げて家路に着くのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

数刻後、既に陽光がチラつく中私達は漸く自宅に辿り着いた。

といっても私にとっての自宅なんだけれどね、二人は居候。なんかプリキュアみたいだ。

 

ひとまず時間も時間だし、早々に睡眠を取りたい。

夢月は既に居間で眠そうにグラグラ揺れているし、カメリアはポケーっと煙草を吹かしている。

 

ひとまずは入浴だ。

私は風呂を沸かす為に薪を持ってきて着火し、布団を敷くことにした。

 

 

 

「今の数分でもう寝てるよ…。」

 

 

「夢月はよく寝るわねぇ」

 

 

 

居間に戻ると、さっきまでグラグラしていた夢月が炬燵に突っ伏してスヤスヤと寝息を立てていた。

まぁ普段なら起こすけど、今は風呂が沸くまでとりあえずゆっくりさせてあげよう。

 

私は少し酒を入れようと思い、蔵からキンキンに冷えきった紅涙を持ち出す。

血液の味に近いこの酒は、しかし芳醇に舌を包み込むような味をしている。

 

風呂が沸くまでは、この前と同じようにカメリアとこの味を楽しむことにしよう。

ひとまず私は冷えきった蔵から脱出し、居間に戻った。

 

 

 

「カメリア。」

 

 

「どうしたの灯音?…あら、この前のワインじゃない」

 

 

「そう、一緒に呑も?」

 

 

 

カメリアは煙草を吸いながら私の呼び掛けに応じ、ふふっと微笑んで私の頭を撫でた。

突拍子もないカメリアの行為に少し驚いた私は、一瞬だけ呆けて固まってしまう。

 

 

 

「……え、急に何?」

 

 

「今の貴女の言い方が可愛くて、なんかフランを思い出したわ」

 

 

 

突然撫でてきたカメリアにそう言われ、なんだか少し照れくさくなって顔を背けた。

私は誤魔化すように煙草に火を灯し、誤魔化すように返した。

つまり何だ、私は幼女扱いされているという事なのだろうか。

 

 

 

「………呑まないってことでいい?」

 

 

「呑みましょ灯音、ふふっ」

 

 

「ムカつく…。」

 

 

 

子供扱いしてくるカメリアに対し、私は納得いかないながらも二つのグラスに紅涙を注ぐ。

でもカメリアって包容力あるんだよね、レミリアの時もそうだったし。

しかも注がれる愛情が純粋なものな気がして余計に調子が狂うし、多分私も顔赤くなってると思う。

 

 

 

「なんか負けた気分だな。」

 

 

「私は貴女より強いのよ、灯音」

 

 

 

種族を知った今、それを否定することはできないな……。

もし私がカメリアから逃げて独立しようとしたもんなら、その時には力づくで引っ張られて監禁されそうである。

 

私はカメリアと対面し、紅い芳醇な鉄錆を喉に流し込むのであった。

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