あの後、私とカメリアが入浴を済ませたあと、未だ炬燵でスヤスヤと眠っていた夢月を私はどうにか起こして風呂場へと誘導した。
眠気のあまりフラフラな夢月を支えつつ、どうにか入浴を促す。
「幻月姉さんどこ〜…」
「ここには居ないから、ぬるくなんないうちに入っちゃって。」
とまぁこのように寝ぼけまくっている夢月だが、その後どうにか入浴を済ませ、私達は一緒に床に就いた。
布団に入って早々にスヤスヤと寝息を立て始めた夢月を見てふふっと微笑んだ私は、仰向けになって目を閉じた。
「子供みたいだ。」
最近、可愛らしい夢月の寝顔を見る度に思う。
普段は天然だったり冷ややかだったり忙しい夢月だが、寝ている時はいつも気持ちよさそうにヨダレを垂らしているのだ。
まるで妹のようである。
「貴女も人のこと言えないんじゃない?灯音?」
「…っ起きてたんだ。」
ポツリと呟いた独り言にまさか返答が返ってくるとは思っておらず、ビクッと目を開ける私。
隣を見ると、カメリアが私の方を向いて微笑んでいた。
そんなカメリアを見て、紅涙を呑む時に夢月に子供扱いされたのを思い出し、私は再び顔を赤く染めたのであった。
「布団入ったばっかりじゃない」
「…確かにそうだけど。」
そうだ、私達3人は同じタイミングで布団に入ったのだ。
一瞬で眠りについた夢月に気を取られ、完全にカメリアの事を失念していた。
ある意味平和ボケしているのかもしれない、きっとそれは悪いことではないと思いたいが。
私はカメリアから視線を外し、再び仰向けになった。
そこから何も言葉を発することなく、暫くの時間が過ぎていった。
私が未だに寝付けずに仰向けのまま瞳を閉じていると、少し湿りを感じるカメリアの声が耳に届いた。
「…ねぇ、灯音?」
「…どうしたの?」
湿っぽいカメリアの呼び掛けに驚いて再びカメリアの方を向くと、カメリアの目から枕にかけて雫が走っていた。
涙を流しながら私をじっと見つめるカメリアは、何処か不安そうで、何処か寂しそうな面持ちであった。
「本当に、私は貴女の隣に居ていいのかしら…」
カメリアの不安そうな声、表情。
初めて見聞きするその現象に私は驚いた。
今までずっと正体を隠して私と接していたからこそ、簡単には整理できないのだろう。
カメリアはいつでも冷静だった。
どれほど強大な敵に恐怖することもないし、どれほどの重圧にも耐えきれる精神力が彼女には備わっていた。
そんなカメリアが、私に見せてくれた初めての“負”。
それは同時に、私を大切に思ってくれていること、そして今カメリアの精神が本当に追い込まれていることを意味しているのだろう。
だから私はそんなカメリアにふふっと微笑み、徐にカメリアを抱きしめた。
「当たり前でしょ、紅魔館で私が言った事忘れたの?」
「っ灯音……」
カメリアはいつでも私の味方だった。
いつでも私の支えであり、大切な友であった。
ならば今、私にできることは一つ。
同じようにカメリアを支えていく事だけだ。
「ごめんね…ありがとう」
「いいさ…疲れたでしょ、寝よ?」
「えぇ…おやすみ、灯音」
「うん、おやすみ。」
涙に濡れた枕をキュッと握っていたカメリアは、もう一方の手で私の手を握り続けた。
私もそれに応えるようにカメリアの手を握り返し、そのまま微睡みに身を投げ込んだのであった。