窓から射し込む眩い朝日によって意識が覚醒する。
衣擦れの音と共に起き上がった私は眠い目を擦った
「…朝。」
あの後、食事を終えた夢月とも合流して帰宅した私達は夜も遅かったので早々に床についたのだ。
ふと銭湯の時の記憶が蘇り、顔を赤く染めた私は頭を抱えて溜息をついた。
「はぁ…恥ずかし…。」
横を見ると未だ夢から覚めやらぬ夢月がこれまた気持ちよさそうに眠っており、羞恥に苛まれた私の表情を緩ませる。
本当に子供のような寝顔を見せるものだ。
反対側にはいつも通りカメリアは居らず、綺麗に畳まれた布団が部屋の片隅に置かれていた。
「さて、とりあえず居間に向かうかな。」
私は手早く自分の布団を畳み、煙草に火を灯しながら居間へ向かった。
窓のない廊下は朝夜問わず暗がりが支配しており、もし荷物が置いてあったら躓いて転んでしまいそうな程に視界が悪い。
日頃の生活による慣れを活かし、私は迷うこと無く居間の扉を開けた。
「おはよう、灯音」
「おはよ、カメリア。」
居間ではカメリアが座して茶を啜っており、挨拶すると同時に私に微笑みかけた。
私もカメリアの対面に座し、既に沸いていた湯で茶を淹れる。
「夢幻館の件、そろそろケリつけないとね。」
「そうね、問題事を先延ばしにしてても仕方がないわ」
本当なら昨日全ての準備を終わらせる予定だったのだが、緋焔刃の購入による意図せぬ外出で本来の予定が崩れてしまった。
だから今日こそ全ての準備を終わらせ、早ければ夜にでも夢幻館へ突入しなくてはならない。
昨日の事はお互い触れず、私達はいつも通りを装っていた。
とはいえ、私が気にしているだけでカメリアは気にしていないのかもしれないが。
「それじゃ、サクッとご飯済ませちゃおっか。」
「そうね。いつもありがとう、灯音」
「うん、どういたしまして。」
古ぼけた灰皿に灰を落とし、私は朝食を作るべく台所へ向かったのであった。
〇
夢月が起床して朝食も済ませた後、私達は早速それぞれの準備に取り掛かり始めた。
カメリアは昨日購入した緋焔刃の刀身に打ち粉をポンポンとぶつけ、手入れをしている。
夢月は私が一度借りていた一本と合わせた計三本のブラックニンジャソードに刃こぼれが無いか入念に確認しており、時折砥石で細かいごく一部分を研いでいた。
ちなみにこのブラックニンジャソード、夢月は三本も持ち歩いているが、私に召喚して欲しい武器のメモにもブラックニンジャソードを何本か求める旨が書かれているのだ。実は消耗品だったりするの?
私は昨日と同じく、メモに書かれた武器を順番に召喚している。
既に召喚したのは七本のブラックニンジャソード、ИЖ-43というショットガン、十文字槍、戦鎌だ。
ИЖ-43はソ連の二連式散弾銃であり、恐らく…いや確実にカメリアが頼んだものであろう。
私はこの中に関して存在を知っているだけなので詳しい性能は分からないが、カメリアが望むだけの利点があるということだ。
「二人共、一旦武器取りに来て。」
「わかったわ」
「はーい」
私の呼び掛けに、一旦作業を中断して私のもとへ来た二人はそれぞれの武器を回収した。
ブラックニンジャソードと戦鎌は夢月で、ИЖ-43と十文字槍はカメリアが注文したものだった。
夢月は悪魔だから鎌も納得できるが、カメリアが十文字槍というのは意外である。
どちらかというと銃をメインに使っているイメージが強かったので余計にだ。
「少し振ってくるわ」
「私も行ってくる」
「OK、通行人殺さないでね。」
「分かってるよ!」
武器を受け取ったカメリアと夢月は、武器の慣らしの為に外へ向かった。
やはり悪魔なだけあって、大鎌を肩に乗せている夢月の後ろ姿はとても似合っていた。
カメリアは十文字槍であるが、意外な事にミスマッチというわけでも無く、これまた美麗な雰囲気を醸し出している。
その雰囲気で昨夜の事を思い出し、私は再び悶絶したのであった。
「あーもう…集中しよ。」
雑念を振り払い、煙草に火を灯した私は再び作業に取り掛かったのであった。