準備が万全に整い、腹拵えも済んだ私達は宵をついて出発することにした。
あれから追加でいくつかの武器を召喚したわけだが、今のところ疲れを感じているということは無い。
大量の武器を召喚するという行為は未だかつてした事の無いイレギュラーであったので、疲労感に苛まれる可能性を考慮していたのだがどうやら杞憂に終わったらしい。
しかしカメリアと夢月の武器は全て召喚したが、私は戦闘中に適宜武器を召喚しようと考えているのでその時に身体が着いてきませんとなってしまったら話にならない。
なので私は念の為、宵までの僅かな時間だけでも休息を摂ることにした。
「陽が落ちた頃に起こして。」
「えぇ、ゆっくりおやすみ」
「ありがとね、おやすみ。」
カメリアは愛銃の具合を確認しながら私にそう微笑みかけ、最終調整を続けた。
夢月はというと魔力を練る為の精神統一だと言って、庭に突き刺したブラックニンジャソードの上で片足立ちを続けているようだ。
カメリアに背を向けるように横たわり、静かに目を瞑る私。
香霖堂で突然の出会いを果たした本件の元凶、幽香。
その彼女が研ぎ澄まされたナイフのように鋭く、放つオーラは恐ろしい程に狂気的であった。
いくら私とカメリアが現世で強い存在であったとしても、ここは幻想郷。
凶悪な悪魔である夢月が味方についていることを差し置いても、育った世界の違いは火を見るより明らかだ。
カメリアはハーフヴァンパイア、夢月は悪魔。
そんな心強い二人の仲間が居るわけだが、私はどうにも不安を拭えずにいた。
焦燥感、何か強い胸騒ぎがする。
絶対に起こってはならぬ事件、絶対に避けねばならぬ運命。
しかし避けることのできない完全無欠の“負の未来”が、私の脳に深く穴を空けていた。
「灯音」
気づけば私の身体は悪寒に震えていた。
しかしその震えも、私の肩に置かれた冷たい手によってピタリと治まる。
手の主を見ると私の大切な友人、カメリアが私を見下ろして微笑んでいた。
「大丈夫よ、私がついてるわ」
私の心を全て悟ったように優しく語りかけるカメリア。
どうやら余計な心配をかけてしまったらしい。
悪い事を考えるのはやめだ、私にはカメリアさえ居れば充分だ。
私はカメリアに釣られて微笑み、静かに頷いた。
「……うん。」
私を襲っていた“負の未来”は最早潰えた。
カメリアさえいれば、私はどこにでもいける。
私はカメリアの手を両手で包み込み、静かに目を閉じた。
その手はまるで、安らぎを与えてくれる母の手のようで………
…………
…私の母って、誰だっけ?