東方空蝉録   作:Amaryllis___

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冥闇ヲ照ラシシ蒼炎

くるみの相手をカメリアに任せ、私と夢月は奥へ歩を進める。

エントランスを越えた先には一直線の暗黒を齎す広い廊下、なんの存在も感じさせない純度の高い闇が広がっていた。

 

その廊下のタイルに一歩、コツンと足を踏み入れると、近くの壁に飾られていた蝋燭に火が灯り、次々と廊下の奥深くまで蝋燭に火が灯っていく。

あっという間に蒼炎に照らされた大廊下は、廊下の奥で道を塞ぐように立っている女性の姿を明らかにさせた。

 

紅のドレスを纏ったその女性はクルンとカールした金髪に純白の帽子を被せており、不自然な程に湾曲した逆刃の大鎌を肩に乗せていた。

 

そんな古典的な演出に感動を覚えた私は、場違いに軽口を零す。

 

 

 

「まるでRPGみたいだね、嫌いじゃないよ。」

 

 

「アイツがエリー。灯音、気をつけてね」

 

 

「わかった、夢月は先を急いで。」

 

 

「うん、任せたよ」

 

 

 

そう言った夢月はエリーの横を凄まじい速度で駆け抜けていき、エリーの背後にある扉の奥へ消えていった。

 

蒼く照らされた大廊下に取り残される私とエリーの二人。

見つめ合う私達は互いに睨むことも無く、和やかな会話を始めた。

 

 

 

「貴女門番でしょ?行かせちゃって良かったの?」

 

 

「かく言う貴女こそ、行かせちゃって良かったのかしら?」

 

 

 

決して睨み合ってはいないが、確実に火花を散らしているであろう私とエリー。

互いに皮肉を言い合う二人は、さながらクラスに一組はいた犬猿の仲である女子高生のようだっただろう。

 

 

 

「柊 灯音でしょう?能力があるとはいえ、私を侮ってると痛い目見るわよ」

 

 

「でも貴女は私より下でしょ。」

 

 

「なっ…つ、強く出たわね…まぁいいわ」

 

 

 

戦前の論争はどうやら私の勝利に終わったらしいが、問題はこの後である。

「貴女は私より下」、完全なブラフをかました訳だが…これくらい強い発言をしなければ自分を鼓舞できない。

私の、弱いところである。

 

エリーはふぅとため息をついて、鎌をタイルの隙間に突き刺した。

 

 

 

「後悔…」

 

 

 

エリーのその行動に警戒を示し、私は一先ず汎用性の高いロングソードを召喚した。

この廊下の広さならばロングソードという長物でも壁や天井に弾かれることは無い。

 

エリーの次の行動を予測しつつ、私はロングソードを両手で構えた。

 

 

 

「しないといいわねッ!!」

 

 

 

エリーはそう叫ぶと、タイルの隙間に突き刺していた鎌を捻り抜き、床面のタイルを強引に飛ばしてきた。

流石に予測できなかった攻撃に困惑しつつ、私は片手でロングソードの刃面を支えてその攻撃を凌ぐ。

タイルを剥がして攻撃するって革新的すぎるでしょ、かなりびっくりしたよ私。

 

そしてその防御も束の間、エリーがグルグルと回転しながら大鎌の刃を私に振り下ろしてきた。

何とかロングソードの刃を斜めに添わせる事で攻撃をいなしたが、予想外の威力に堪らず武器を変えることにした。

 

 

 

「くぅ…結構いい攻撃するじゃん。」

 

 

「どう?降参する?」

 

 

「早すぎんでしょ。」

 

 

 

こうなったら此方も大物の武器を使うしかなさそうだ。

そう考えた私が次に召喚したのはツヴァイヘンダーという大剣。

長い刀身に直角のトゲがついており、刺突の際に急所を外してもトゲが牙を剥くという、これまた汎用性の高い武器である。

少々重量はあるが、エリーの業物に対抗するにはこれを行使するしかないのだ。

 

 

 

「流石、幽香が狙うだけの事はあるわね?」

 

 

「ふふ、不本意だけどね。」

 

 

 

ツヴァイヘンダーを肩に乗せてエリーを睨みつける私。

逆刃の大鎌を独特な構えで構えながら私に向けて口角を上げるエリー。

 

 

【挿絵表示】

 

 

どちらか一方が少しでも動くと同時に始まるであろう一触即発状態。

そんな状態で最初に足を踏み込んだのは…

 

 

 

エリーであった。

 

 

 

柄の先端を掴んでいた右手を勢いよく振り抜くエリー。

風を切る音が劈き一瞬たじろぎそうになるが、私は右肩に乗せていた重厚なツヴァイヘンダーを床にガリガリと添わせるようにして振り上げた。

ツヴァイヘンダーの刃に合わせて削られた床面が、その刀剣の重量を切に表していた。

 

ガキンと脳髄に響くような金属音を轟かせ、エリーの鎌は逆方向への力を働かせて刀身をビリビリと震わせた。

それに対して私は振り上げた勢いのままツヴァイヘンダーを背後に振り下ろし、棒高跳びの要領で剣を軸にバク宙をする。

 

 

 

「随分と奇っ怪なスタイルなのね?」

 

 

「武器がっ…武器だからね。」

 

 

 

第三者から見れば容易く行われた芸当に見えるだろう。

しかしこれは身体への負担が予想以上に大きく、肺の空気を中々に持っていかれるのだ。

高重量の大剣を振り上げると同時に、高威力の刃を弾くという行為。

そしてその勢いに任せたまま身体を回転させる、それが使用者の体力を奪うのは至極当然の事であり、本来ならばこんな重量のある近接武器を使うべきでは無いのだろう。

 

 

 

「とはいえ、これで終わりなんて有り得ないから。」

 

 

「ふふっ、それは楽しみね。一体どんな力を見せてくれるのかしら?」

 

 

「見てて。」

 

 

 

私はツヴァイヘンダーを無に帰し、私は次なる武器を召喚することにした。

バク宙をしたことで折角距離が生まれたのだ、ひとまず私はアサルトライフルを召喚し、少し離れた位置のエリーに向けて片手で銃弾をばら撒いた。

火薬の爆ぜる音が止めどなく響く大廊下。

堅牢な造りの大廊下は音を乱反射させ、銃声を酷く大きくさせていた。

 

 

 

「そんな近代的な武器があるのは!知っているわよ!つまり!対策済みってこと!」

 

 

「それは驚いた!流石って言った方がいいかなぁ!?」

 

 

「なぁに!?全然聞こえないわよっ!!!」

 

 

「えぇ!?何っ!?」

 

 

 

乱射された銃弾を素早い身のこなしで躱し、時には鎌を振り回して弾くエリー。

そんな人間離れした動きの(妖怪だから当然だが)エリーは銃声に負けじと大声を張り上げて私に自らの力を誇示した。

 

対策済み。

それは聞こえたが、その後の発言が全く聞き取れなかった。

恐らく「このまま続けても無駄だ」とか言う事を言っているのだろう、早々に次なる手を打たねば負けてしまう可能性も否めない。

 

 

 

「私の手数は!貴女が思っているよりも!たくさんあるんだよっ!!」

 

 

「聞こえないわよっ!喧嘩売ってるの!?」

 

 

「なんて!?もしかして!わざと!聞こえないように喋ってんの!?」

 

 

 

そんな私たち言葉は決してお互いに届くことなく、交わることの無い口喧嘩が勝手に始まっていた。

 

私達は轟く爆音の中、無意味に声を張り上げて叫び続けるのであった

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